上 下
51 / 82
【第四章:エデン第三区画/旧総合医療技術研究施設棟】

【第51話】

しおりを挟む
「チンゲンさん、まさかとは思いますが……その電脳化クローン計画には我々第35部隊員も含まれていたのでしょうか?」
 捕囚の身とは言え、髪の毛や血液、皮膚片などを採取されている時点でおかしいと感じ続けていたソルジャー・マツモト。
 エージェント・サンの言葉でそれが確信に変わった彼女は深呼吸しつつ目の前の老人に問う。
『言いにくいが……そうだ。
 成長高速化クローンとして技術確立し、量産態勢が整っていたミュータントアニマルはとにかく……現段階ではクローン人間は遺伝情報からの卵子・精子の作成及び受精卵作成と人工子宮着床成功率が極めて低く、ミクラ・ブレインは多くの実験データを必要としていた。
 お嬢さん含むソルジャーさん達もクローンの安定供給が可能となればすぐに頭脳電子化処置の上、記憶移植実験に利用するように指示されていたんだ……』
「なっ、なっ……このサイコパスクソ野郎。私達をなんだと思ってるんだ!!」
 1人の人間ではなく1匹の実験動物として機械に拘束されて人間強制終了させられると言う恐怖と激昂、それをぶつけるべき相手が目の前にいると言う事実。
『やめろ、マツモト!!』
 モンキーマンはプロフェッサー・チンゲンの脳天にアサルトライフル銃座を叩き込もうとするマツモトを止めて銃を没収。
そのまま腕を捻り掴んで動けないようにする。
「ナイスよ、モンキーマン。マツモトをそのまま押さえておいて。
 チンゲン先生、事情はわかりました……私達はそれを阻止するためにここに来たんです。
 そして、これからどうすればよろしいのでしょうか?」
『ああ、ありがとうフウちゃん……まずはこれを』
 そう言いつつ白衣のポケットに手を入れ、何かを探るプロフェッサー・チンゲン。
『あった、これ……』
『あぶねえブウ!!』
『博士殿!!』
 ピッグマンの警告と共にカッパマンが放ったカッパワイヤーがサン博士の全身に巻き付き、一気に後ろに引かれる。

『よう、はじめましてだなS YK-000』
 何もない空間から一瞬で現れてプロフェッサー・チンゲンの頭を掴み捕え、そのまま持ちあげている燃え上がるような赤髪で白眼、ジーンズ一枚で上半身裸の細マッチョ。
「何者だ!!」
 何者かはわからないがこいつはサン博士を狙う敵だ。
 すぐに察したモンキーマン、カッパマンの2人はサン博士とマツモトを守りつつ各々の武器を抜いて対時する。
『お前ら、やめろブウ!? コウガイジ様にぶっコロされるぞブウ!?』
「コウガイジ!?」
 エデン第二区画のスーパーミュータントアニマルとのカーチェイスで特殊グレネードをドローンに運ばせ、旧迎賓館ではサン博士の頭脳を横抜きしてミクラ・ブレインを裏切らんとしたリュートを破壊殺害した上位管理者アンドロイド本人の出現にサン博士は驚くばかりだ。
『おいおい、人聞きがわるいぜピッグマン!! 元上司とは言えこんな気さくで部下想いの俺ちゃんにそう言う事を言うのはよろしいとは思えねえぞ?』
 白い歯を見せてニヤリと笑う上位管理者アンドロイド・コウガイジ。
『フウちゃん……逃げろ』
「動くな、チンゲン先生を放せ!!」
 サン博士は手の中のモノをすぐにウェストポーチに押し込み、真っ青な表情でガタガタ震えるピッグマンの巨躯を押しのけて電撃銃口を敵に向ける。
『貴女様程の方がそう仰るならそうしてあげたいのは山々なんだけどさあ……この人、この流れだと俺らにとって知られちゃマズい事も話しちゃうんだよね。どうしたもんだかなあ』
 恐怖のあまり言葉も出せないプロフェッサー・チンゲンの頭をがっちり掴んだまま考え込む仕草をみせるコウガイジ。
 次の瞬間、5人の目の前で信じがたい現象が発生する。

【MMS 第52話に続く】
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

入れ替われるイメクラ

廣瀬純一
SF
男女の体が入れ替わるイメクラの話

AIRIS

フューク
SF
AIが禁止され、代わりに魔法という技術が開発された2084年 天才的な青年により人間と変わらない見た目を持ち、思考し、行動するロボットが作られた その名はアイリス 法を破った青年と完璧なAIアイリスは何処へ向かっていくのか

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ラスト・オブ・文豪

相澤愛美(@アイアイ)
SF
技術の進歩により、AIが小説を書く時代になった。芥川、夏目、川端モデルが開発され、電脳文豪(サイバライター)が小説を出版する様になる。小説好きの菊池栄太郎はある男と出会い、AI小説の危険性を聞き、AIとの小説対決をする事になる。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

高校生とUFO

廣瀬純一
SF
UFOと遭遇した高校生の男女の体が入れ替わる話

処理中です...