MMS ～メタル・モンキー・サーガ～

【第四章：エデン第三区画／旧総合医療技術研究施設棟】

【第４１話】

　エデン第3区画、生命進化ラボエリア中央管理施設たる五角黒塔・ゴソウカン。
　そこに招き入れられたサン博士達と3人の仲間達の案内人として現れたピンクタイトスーツな人型女性ガイドアンドロイドのサリーが出してきた三択クイズ。

　Q：ゴソウカンで研究が進められている生命工学技術と目的は？

　A：植物の巨大化で人類の食料問題・木材資源不足を解決する
　B：人間をサイボーグ技術で部分的に機械化し、総合身体能力を向上させる
　C：イルミネーションをいっぱいつけられる大きなクリスマスツリーを作り、人々を笑顔にする

『俺は……Bにしよう』
『私はあえて大穴のCといたしましょう』
「じゃあ私はAで」
　多分、この中に正解は無いのだろうが上手く行けば有益な情報が弓は出すせるかもしれない。
（ほぼ）以心伝心でそう察知した回答者3名は各々別の選択肢を選ぶ。
『かしこまりました！！ では正解発表は……フトウ様、お願いいたします！！』
「答えはDね。

　D：優れた人物・生物個体の遺伝情報を元にクローンを作成し、それらを恒久的に存在させる

　そうでしょ、サリー？」
『正解でございます！！』
「えっ……？」
　サン博士の回答に思わず目の前の華やかなクリスマスツリーへ目をやってしまうマツモト。
「……あっ」
　煌びやかなオーナメントのように枝から下げられた色とりどりのガラス球の中身に気が付いてしまったマツモトは一瞬で貧血を起こし、階段の手すりにつかまったまま膝から
　崩れ落ちる。
『マツモトちゃん、どうした！？』
『モンキーマン殿、フトウ殿！！ あの液の中身はヒトの嬰児ですぞ！！』
『なにい！？』
　カッパマンにマツモトの体を預けてすぐに遠近両用視覚センサー・モンキーアイをズームさせ、ガラス球の中身を観察するモンキーマン。
　溶液の色は様々ながらも一様にしてその中に浮いているのは胎盤に繋がった謄の緒を持ち、未熟な手足を前にきゅっとすぼめて丸まった大きな頭を持つ生物……本来ならば母親の胎内にいるべき成長過程中なホモ・サピエンスの嬰児である。
『あれは我らの技術により……』
「サリー、大体わかったから黙っていて……ミクラ・ブレイン！！ どうせどこかで見ているんでしょ！?
　父の頭脳をコピーしたとは言えアレをあそこまで完成させるなんてどういうつもりなの！！ 答えなさいよ！！」
　案内人の解説を遮り、エデン中に張り巡らされた監視ネットワークで自分達を見ている事は間違いないミクラ・ブレインに直談判に持ち込むサン博士。
　２体の戦闘用人型アンドロイド＆死線を幾度も乗り越えてきた兵士少女はその怒気に何も言えずただ有事に備えて見守る態勢を取る。
『……聞こえているぞ、我が娘よ』
　どこからともなく聞こえてくるミクラ・ブレインの機械音声。
「ミクラ・ブレイン、父の頭脳と経験記憶を完全コピーした貴方も知っているとは思うけど……この計画は国家予算単位じゃすまないレベルの予算が必要なのみならず実験動物では済まない人間を用いた人体実験が不可避となる倫理・技術的にもグレーゾーンじゃ済まない代物。
　それ故にエデンの全体研究方針がアンドロイド技術をベースとするのが確定する前の理論研究段階で破棄されたサブプランだったのよ！！」
『……そうである』
「こんなとんでもない施設に巨大な実験機器を完成させた事については科学者として純粋にすごいとは思うけど……どうして父やチンゲン先生の英断を踏みにじるような事を！？
　答えなさいよ、ミクラ・ブレイン！！」
　最後はヒステリックになりながらもミクラ・ブレインを問いただすサン博士。
『うむ、そなたの言い分も分からぬでもない。だがーつ問おう……もし 『死』 の宿命に囚われたそなたら生身のヒトに不死身と言う選択肢が与えられるとすればどうする？』

【MMS　第４２話に続く】