MMS ~メタル・モンキー・サーガ~

千両文士

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【第三章:エデン第一区画/旧動植物研究所ビオトープエリア】

【第30話】

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 かつてエデンが人類のバラ色の未来を創造する場所であった時代、そのメインプロジェクトのーつであった人型ロボット技術開発。
 様々な切り口から新進気鋭の研究者チームが開発に臨む中、世界初の完全人型アンドロイドの技術確立に成功したのは生身の人間との共存をテーマに掲げていたチーム・ゴソウカンであり、彼らが最初に完成させたのは8体の見目麗しき女性アンドロイドEDN-FHシリーズである

 そして人型ロボット技術確立後の第二段階として『円滑なコミュニケーションを取れるようになる人工知能を完成させる』ために必要な学習経験データを集めるための実証実験場として設けられたのがエデン迎賓館内カフエ 『アフタヌーン・ティー』。
 その店長としてEDN-FHシリーズを管理する立場を任されたのがEDN-FH-02/マリィであり、彼女は自身の焼いた洋菓子を楽しむお客様達の笑顔と感謝の言葉で著しく望ましい学習成長を見せていて、将来的にはその人工知能をベースに人間と共存できる頭脳を持つアンドロイドが完成されるはずであった

『うがあああああ!! あああああ!!』
 迎賓館1階、多くのVIPや国家首脳クラスの人物が行き来した影も今では戦闘痕の数々で失われてしまった踊り場。
 限りなく人間に近づけるべく擦り傷や切り傷も感知できるように全身にくまなく痛覚センサーを組み込まれていたかつてのEDN-FH-02は腕を物理的にへし斬って引きちぎられると言う普通の人間でも重症では済まないとんでも攻撃により痛覚センサーアラートが半壊。
(行動継続不可能、強制機能停止カウントダウン開始 5……4……)
 とどまる事を知らず延々と流れ込む強烈な痛覚ダメージ警報と言う情報の大洪水にリュートの人工知能は何度も機能停止しかける。
『ダメ!! ダメよダメ!!』
 ここで自分が行動不能になったら主様にばれないように何年もかけて進めてきたフトウちゃんの人格を機械の体に移植して永遠に一緒になる極秘計画がおじゃんだ。
 激痛に苦しむリュートは愛しき者を守らんとする母性故の精神力で強制機能停止カウントダウンを止め続ける。

『キョヒキョヒ叫びやがって……どうしたんだあいつ?』
 そんな事情を知る由もなく失われた上腕で頭を抱えて苦しみ叫ぶリュートを前に戸惑うモンキーマン。
『モンキーマン殿、いまですぞ!!』
『……ああっ!!』
 腕内のモンキーロッドを抜き、シュコココンと伸ばして構えるモンキーマン。
 そのまま助走をつけて跳びあがったモンキーマンは人類救済を編るミクラブレインvs人類の戦争を終結させるために破壊せねばならないエデン第一区画管理者アンドロイド・リュートの脳天に金属棒を振り下ろさんとする。
『スコーピオンモード、起動』
『うごお!!』
 システムアナウンスと共に迎賓館踊り場の床を突き破り、中空状態のモンキーマンに下から襲い掛かる何か。
 その強烈な突き上げをノーガードの腹部にぶち込まれたモンキーマンの巨躯はそのまま天井に叩きつけられる。
『サルノブンザイデ……フトウチャンハワタシノモノ、イツマデモイッショナノョ!!』
『主様!?』
 抑揚のない機械音声のまま顔をあげるリュート。
 人型アンドロイド用特殊ゴム外皮が剥がれて内部の機械が露出したその顔は虫のような巨大な複眼で口には鋭い鉄牙。
 そして床を突き破って出て来ていたもののは……頑強な外殻装甲を持つ長い蛇のようなアンドロイド用武装パーツでありそれが生えている根元はリュート蜘妹下半身の後部だ。
『スコーピオンモード……まさかその下半身はサソリだったと言う事なのですか!?』
『ソウョ、ウラギリモノ。シネ』
 天井に傑られて機能停止したモンキーマンを下半身兵器で押さえつけているリュートはカサカサと回して腹部のスコーピオンストマックガトリングの全銃口を粘糸ネットから完全脱出できていないカッパマンに向ける。

【第31話に続く】
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