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【第三章:エデン第一区画/旧動植物研究所ビオトープエリア】

【第28話】

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『モンキーマン殿、この先正面玄関ロビーとなっており、そこに地下室へ繋がる隠し扉があります!!』
 迎賓館の階段を下りつつ前方のモンキーマンに叫ぶカッパマン。
『隠し扉あ? なんでそんな面倒なモンがあるんだよ!?』
『それは話せば長くなるのですが お聞きになりたいですか?』
 笠を目深に被りうにゃうにゃと話し渋るカッパマン。
『それならいい!! とにかく博士の救出が先だ!!』
 階段を下りきって1階に到着したモンキーマンは正面玄関に向かう。

『そなたがモンキーマンとやらか……』
『リュート様!!』
 玄関ホールに駆け込んだ2人を待ち構えていた先刻のメイド軍団と同じく2対8本の節足を持つ小判型の下半身にプロテクター装着済みの上半身を持つ黒髪ロングヘアの女性型アンドロイド。
 エデン第一区画、旧動植物研究ビオトープエリアを管理する上位管理者アンドロイド・リュートは般若の形相で腕を組み、サン博士の救出に来たモンキーマンと自身を裏切ったカッパマンを無言で睨む。
『……やるしかねえようだな』
 無言ながらも殺意ビリビリの敵を前にロッドを構えるモンキーマン。
『お通し願えませんようなので……やむを得ません』
 そう言いつつ背中の超振動ブレード二刀を抜くカッパマン。
『……』
 無言のまま両腕をほどいたリュートは背中に手を回し、全長40センチ程の分厚い両刃剣を取り出す。

『跳ぶのデス!!』
『!?』
 2人のリーチ圏外であるにもかかわらず両刃剣を抜き打ちで横に振ろうとするリュートを前に叫ぶカッパマン。
 モンキーマンはわけもわからぬまますぐに踊り場天井近くまで飛び上がる。

 グジャシャァァァァァ!!

『!!』
 2人が跳びあがりリュートが両刃剣を振り抜くや否や、密室内に充満したぐにゃり感とでも言うべき奇妙な歪み感覚。
 その直後に2人が立っていた背後の壁はえぐり削られるように大きく引き裂かれ、巨大な斬撃痕が刻まれる。
『今のは何だ!?』
 流石に今のを食らっていたら即死だった。
 カッパマンの機転と警告に感謝しつつもすぐに確認するモンキーマン。
『あれはキンカク&ギンカク様謹製の特殊物理兵器・グラビディブレイドでございます!! まさか我々如きにアレを用いるとは……モンキーマン殿、主様はマジでございます!!』
『ああ、そうだな!!』
 サン博士ならとにかくただの人型戦闘用アンドロイドでしかない自分にはあの武器の正体はわからないが、今のド派手な轟閃と敵の内情を知るカッパマンの反応的に手品やトリックの類ではないのは間違いなさそうだ。
 モンキーマンはロッドを構えたまま戦闘用アンドロイド人工知能をフル稼働して最善手を模索する。

『リュートちゃん、ブチギレだねー』
『やばいねーどうしよ、ジェインちゃん?』
 エデン第5区画・特殊物理学ラボエリア中央管理施設。
 旧迎賓館での激闘をソファーに座ってモニタリングしつつ仲良し姉妹トークをしているのは充電お昼寝タイムを終えた額に金色の角を生やした白肌に金髪、金色チャイナドレスの幼女と額に白銀の角を生やした褐色肌に銀髪、白銀のチャイナドレス幼女。
 上位管理者アンドロイドにして対をなすキンカクとギンカクである。
『ご安心ください、主様。万がーリュートがあの者らに破壊されるようなことがあった場合……機密保持のため私が回収に向かいます』
 その問いかけに答えるのはコウガイジではなく蜘妹の下半身と女性の上半身を持つ人型アンドロイド……蜘妹メイドアンドロイド七人衆のリーダー、SYK-72-01、ジェインだ。
『でもさあ、それだとサンちゃんが大変な事になっちゃうんじゃない?』
『そうだよねえ どうしよ?』
 手元のポップコーンのパウチをポンッ!!と開いてボリボリ食べ始めたキンカクはギンカクにもおすそ分け差し出す。
『チンゲン君はとにかくとしてさあ、コウ君やギュウ君はぜったいに納得しないよ? むしろ激おこぷんぷん丸だと思うよ?』
『そだよねえ……じやあこうしよっか』
 ポップコーンの袋をギンカクに預け、口をティッシュで綺麗にしたキンカクはジェインを手招きしその耳元に口をあてこしょこしょと話す。
『かしこまりました、主様……失礼いたします』
 ジェインは胸に手を当ててかしずくと室内に現れた闇穴にカシャカシャと入って消えていく。

【第29話に続く】
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