23 / 82
【第三章:エデン第一区画/旧動植物研究所ビオトープエリア】
【第23話】
しおりを挟む
『なるほど、事情は分かった!! 要するにお前のボスの計画がうまくいきゃあ俺とサン博士、お前に8体。合計11体の大所帯になれるっちゅう事じゃねえか』
エデン第一区画、旧動植物研究所ビオトープエリアの獣道で上位管理者アンドロイド・リュートの部下、スパイダーメイド七人衆の蜘妹の糸による奇襲で地面に傑られたモンキーマン。
攫われる直前に博士が装着し終えていたキンコジュで新たな仲間となった人型戦闘用アンドロイド・カッパマンの油液散布で粘着力を無効化し、拘束から抜け出す事に成功したモンキーマンはさらわれたサン博士を救うべくカッパマンの案内で樹海の奥にある敵の拠点を目指して疾走する。
『ええ、ワタクシも主様とサン様の関係性を考えればそれが理想の最適解だと言う事は重々承知でございます。
ただこうしてサン様の配下となったワタクシが恐れているのは……それが上手く行かなかった場合のサブプランなのです』
モンキーマンと並行してニンジャダッシュするカッパマンは頭に巌められた金色のキンコジュをそろりと撫でつつ言う。
『サブプラン?』
『ええ、リュート様のお話によりますと……』
時を同じくして、エデン第一区画内。かつては迎賓館でもあった洋館。
『……どう、美味しい?』
部下の蜘妹アンドロイドメイドに命じてサン博士を閉じ込めた貴賓室に大皿に盛りつけたフィナンシェとマドレーヌ、クッキーと紅茶を運ばせてきたリュート。
「はい、とても美味しいです」
敵地潜入任務で囚われの身となった状況下で何を仕込まれているかわからないこのようなモノに手を付けるべきではないのだが、10年ぶりの人間の客人に自慢の菓子を振る舞えると言う喜びと期待でワクワクな表情の戦闘用アンドロイドを前に拒否しようものなら何をされるかわかったものではない。
セクシーランジェリー上にバスローブを羽織ったサン博士は至近距離でじっと見つめて来るリュートに気取られないようにゆっくり味わっている演技で慎重に毒味し、安全確認しながら懐かしの洋菓子をかじる。
『そうよね!! もう何年も焼き菓子なんて作っていなかったからきちんと出来ているか不安だったけどサンちゃんに喜んでもらえてよかったわ!!』
(私だってもう一度マリィさんのお菓子を食べられるなんて思っていなかったけど……そんな反応をされちゃうとどうすればいいのか……)
『紅茶に浸したマドレーヌの香り』ではないが、人類全体の命運と自身の幸せな記憶の狭間で揺れ動くサン博士。
目の前で優しく微笑むこの女性はかつてのマリィ店長ではなく今や戦闘用アンドロイドであり、任務のために完全破壊しなくてはならない6体の内の1体である。
気を抜けば毒見である事を忘れてしまいそうなほどに懐かしくて甘美なフィナンシェやマドレーヌを咀嚼しつつサン博士は電撃銃もナイフも無い生身の徒手空拳で上位管理者アンドロイド・リュートを破壊する手段が無いか思考する。
『人類の命運と私の気持ち……どっちを優先すればいいの?』
「!? げほっ、げほっ……げほぉん!!」
心を読まれたかのような言葉の不意打ちで咀嚼中のフィナンシェ塊をのどに詰まらせかけたサン博士はすぐにティーカップの紅茶を一気飲みする。
『まあ大変、そんな熱いのを一気飲みしたら喉を火傷しちゃうじゃない!!
ジェインちゃん、すぐにお冷を!!』
『かしこまりました』
すぐに大皿とティーセットを載せて来た横の台車の氷水のピッチャーを取り、切子のグラスに注いでサン博士に渡すジェイン。
「あっ、ありがとうございます……ジェインさん」
『どういたしまして、フトウ様』
長い金髪を後ろでエレガントに丸くまとめた蜘蛛メイドアンドロイド七人衆のリーダー。
SYK-72-01・ジェインは人型アンドロイド用特殊ゴム外皮で造られた顔で目を細くして微笑む。
『ありがとう、ジェインちゃん。
それで、フトウちゃんも私も幸せになれる方法を考えてみたんだけど……あれをお願いできるかしら?』
『了解しました、主様』
リュートに命じられたジェインはシャカシャカと部屋を出て行く。
【MMS 第24話に続く】
エデン第一区画、旧動植物研究所ビオトープエリアの獣道で上位管理者アンドロイド・リュートの部下、スパイダーメイド七人衆の蜘妹の糸による奇襲で地面に傑られたモンキーマン。
攫われる直前に博士が装着し終えていたキンコジュで新たな仲間となった人型戦闘用アンドロイド・カッパマンの油液散布で粘着力を無効化し、拘束から抜け出す事に成功したモンキーマンはさらわれたサン博士を救うべくカッパマンの案内で樹海の奥にある敵の拠点を目指して疾走する。
『ええ、ワタクシも主様とサン様の関係性を考えればそれが理想の最適解だと言う事は重々承知でございます。
ただこうしてサン様の配下となったワタクシが恐れているのは……それが上手く行かなかった場合のサブプランなのです』
モンキーマンと並行してニンジャダッシュするカッパマンは頭に巌められた金色のキンコジュをそろりと撫でつつ言う。
『サブプラン?』
『ええ、リュート様のお話によりますと……』
時を同じくして、エデン第一区画内。かつては迎賓館でもあった洋館。
『……どう、美味しい?』
部下の蜘妹アンドロイドメイドに命じてサン博士を閉じ込めた貴賓室に大皿に盛りつけたフィナンシェとマドレーヌ、クッキーと紅茶を運ばせてきたリュート。
「はい、とても美味しいです」
敵地潜入任務で囚われの身となった状況下で何を仕込まれているかわからないこのようなモノに手を付けるべきではないのだが、10年ぶりの人間の客人に自慢の菓子を振る舞えると言う喜びと期待でワクワクな表情の戦闘用アンドロイドを前に拒否しようものなら何をされるかわかったものではない。
セクシーランジェリー上にバスローブを羽織ったサン博士は至近距離でじっと見つめて来るリュートに気取られないようにゆっくり味わっている演技で慎重に毒味し、安全確認しながら懐かしの洋菓子をかじる。
『そうよね!! もう何年も焼き菓子なんて作っていなかったからきちんと出来ているか不安だったけどサンちゃんに喜んでもらえてよかったわ!!』
(私だってもう一度マリィさんのお菓子を食べられるなんて思っていなかったけど……そんな反応をされちゃうとどうすればいいのか……)
『紅茶に浸したマドレーヌの香り』ではないが、人類全体の命運と自身の幸せな記憶の狭間で揺れ動くサン博士。
目の前で優しく微笑むこの女性はかつてのマリィ店長ではなく今や戦闘用アンドロイドであり、任務のために完全破壊しなくてはならない6体の内の1体である。
気を抜けば毒見である事を忘れてしまいそうなほどに懐かしくて甘美なフィナンシェやマドレーヌを咀嚼しつつサン博士は電撃銃もナイフも無い生身の徒手空拳で上位管理者アンドロイド・リュートを破壊する手段が無いか思考する。
『人類の命運と私の気持ち……どっちを優先すればいいの?』
「!? げほっ、げほっ……げほぉん!!」
心を読まれたかのような言葉の不意打ちで咀嚼中のフィナンシェ塊をのどに詰まらせかけたサン博士はすぐにティーカップの紅茶を一気飲みする。
『まあ大変、そんな熱いのを一気飲みしたら喉を火傷しちゃうじゃない!!
ジェインちゃん、すぐにお冷を!!』
『かしこまりました』
すぐに大皿とティーセットを載せて来た横の台車の氷水のピッチャーを取り、切子のグラスに注いでサン博士に渡すジェイン。
「あっ、ありがとうございます……ジェインさん」
『どういたしまして、フトウ様』
長い金髪を後ろでエレガントに丸くまとめた蜘蛛メイドアンドロイド七人衆のリーダー。
SYK-72-01・ジェインは人型アンドロイド用特殊ゴム外皮で造られた顔で目を細くして微笑む。
『ありがとう、ジェインちゃん。
それで、フトウちゃんも私も幸せになれる方法を考えてみたんだけど……あれをお願いできるかしら?』
『了解しました、主様』
リュートに命じられたジェインはシャカシャカと部屋を出て行く。
【MMS 第24話に続く】
1
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
AIRIS
フューク
SF
AIが禁止され、代わりに魔法という技術が開発された2084年
天才的な青年により人間と変わらない見た目を持ち、思考し、行動するロボットが作られた
その名はアイリス
法を破った青年と完璧なAIアイリスは何処へ向かっていくのか
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ラスト・オブ・文豪
相澤愛美(@アイアイ)
SF
技術の進歩により、AIが小説を書く時代になった。芥川、夏目、川端モデルが開発され、電脳文豪(サイバライター)が小説を出版する様になる。小説好きの菊池栄太郎はある男と出会い、AI小説の危険性を聞き、AIとの小説対決をする事になる。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる