MMS ~メタル・モンキー・サーガ~

千両文士

文字の大きさ
上 下
17 / 111
【第三章:エデン第一区画/旧動植物研究所ビオトープエリア】

【第17話】

しおりを挟む
「ナビによればこの先、もう少し進めば中央制御塔が見える開けた場所に出るはずなんだけど……」
『博士はとにかく、俺は沈んじまうなあ……』
 居住者の憩いの場として整備された公園と動植物生態研究者向けの施設が明確に区別されていたエデン第一区画。
 かつては存在しなかったはずのメタセコイア級の巨木とその他もろもろの巨大化植物で中生代を想起させる原生林と化し、両者の区別すらつかなくなったそこで獣道(?)と思しき開かれた場所を進んでいたサン博士とモンキーマンは目の前に現れた大きな池で足止め。
 サン博士がガントレットデバイスを開いてマップ画面を出し、迂回ルートを探そうとしたその時だった。
『あぶねえっ!!』
「きゃっ!!」
 いきなりサン博士の顔スレスレで鉄腕右ストレートを決めるモンキーマン。
 その腕に鋭い音でぶつかり、地面に落ちるのは金属の針だ。
『そこかあっ!!』
 すぐに背中のモンキーロッド専用アタッチメントパーツ、ヴォルトアクスヘッドを掴み、目の前の池にブーメランスロー投入するモンキーマン。
 戦闘用アンドロイドをも焼き焦がす高圧電流放電を喰らった池は青い光と共にショック死した小さな虫や小魚が浮いてくる。
『ふふっ、流石はモンキーマン殿ですな……噂にたがわぬ動体視力、見事でございますぞ』
 池の側でそびえ立つメタセコイア級の巨木幹に細長い指の間の膜をべったりと付けて垂直に立つ細身の準人型アンドロイド。
 鶴やトキのような長いくちばしに暗視ゴーグルのような出っ張った眼を持ち、時代劇のような笠を被ったそれは吹き矢の棒を持ったままケタケタと笑う。
『お前が今の攻撃を仕掛けて来た奴だな?』
『いかにも、私は上位管理者アンドロイド・リュート様の配下にして水陸両用型戦闘用アンドロイド、SYK-022・カッパマン!! 主様の命によりサン博士殿をお迎えにあがりました!! 覚悟!!』
 背中の二刀流を抜き放って幹を蹴って加速しつつの自由落下アタックを仕掛けるカッパマン。
 あの刃に触れてはいけない、と直感的にそう判断したサン博士とモンキーマンはすぐさま身を低くしてそのヘッドチョップスラッシュを頭上通過させる。
「このっ!!」
 地面にうつ伏せになったまま電撃銃を抜き、電撃弾幕を張るサン博士。
『遅い!!』
 地面に着地したままのカエル座りからバックジャンプでそれらを股下通過させたカッパマン。
『ヨホホホホ!!』
 着地してニンジャダッシュの構えを取ったそれは正面で大きく腕を開いてサン博士に迫る。

 ここがそもそも敵のホームグラウンドで戦闘用アンドロイドの巣窟である事はさておき、色々な意味でHENTAI臭しかしないこいつにだけは捕まったらアカン。
 コイツは自分の下に滑り込むように入り込み、掴み上げたまま肩に乗せてヒトサライ運びで駆け出すのだろう。
 女とか云々ではなく生存防衛本能的に察しつつも間に合わないと察した体が動かないサン博士。
『どっせえい!!』
 そんな博士の危機をすくうべくでモンキーロッドを伸ばしたモンキーマンは一気に跳びあがる。

 ゴガチィィィィン!!

『ぎゃふううううん!!』
 サン博士と自身の間に突き立てられたしなやかで頑丈なモンキーロッドに顔面から突っ込んでしまったカッパマン。
 後方に弾き飛ばされ転がったそれはダメージセンサーアラート全開な顔面をおさえてさする。
『おい、変態ニンジャ野郎……さっきのは不意を突かれたが俺様の目が黒れえうちに博士を攫おうなんて百年早ええよ。まずは俺をぶっ壊してみろやあ!!』
 サン博士を下がらせつつ中指を立て、大音声で敵のヘイトを集中させるモンキーマン。
『ふふふ、変態ニンジャとは言ってくれますねえ……いいでしょう、貴方に対する破壊命令変更はありませんので先にそうさせてもらいましょうか!!』
 背中の二刀流を抜き構えるカッパマンとモンキーロッドを構えるモンキーマン。
 2体の戦闘用アンドロイドは宿命の激突カウントダウンに入る。

【MMS 第18話に続く】
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

おねしょ合宿の秘密

カルラ アンジェリ
大衆娯楽
おねしょが治らない10人の中高生の少女10人の治療合宿を通じての友情を描く

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

kabuto

SF
モノづくりが得意な日本の独特な技術で世界の軍事常識を覆し、戦争のない世界を目指す。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

処理中です...