MMS ~メタル・モンキー・サーガ~

千両文士

文字の大きさ
上 下
12 / 111
【第二章:エデン第二区画/旧関係者居住エリア】

【第12話】

しおりを挟む
『うっ、ぐぐっ……』
 手足の関節や生命維持に欠かせない臓器と言った戦闘用人型アンドロイドでも有効な人体急所を的確に狙ったモンキーマンの斧槍連突で完全に動きを封じられたコクフウカイ。
 栓となる頭を引き抜いて内装兵器であるブラックウインドガスを噴出させる事が出来れば生身のサン博士を発狂自死させる事もできようが、両腕の機械神経を電撃斧で焼き切られた今ではそれも叶わない。
『終わりだぜ、コクフウカイ』
 万がーに備えて下がっていたサン博士に代わってモンキーロッドでトドメを刺そうと向かうモンキーマン。
 殴るのに丁度いい警棒サイズに縮めたそれを容赦なく頭に振り下ろす。
「モンキーマン!! うしろ!!」
『えっ、 うわああああ!!』
 身長2メートル、体重百キロオーバー級の機械人間にして戦闘用アンドロイド・モンキーマンの足を掴んで逆さに持ち上げる全身真っ白なアルビノの化け物、スーパーミュータントアニマル。
 予期せぬ奇襲でアンドロイドクレードルの直撃を後頭部に食らったものの、全身を覆う皮下脂肪とヒダとなって垂れ下がる程柔らかい皮膚がクッションとなり軽い脳震盪で一時的に気絶していただけのそれはモンキーマンの足を掴んで逆さ吊りにし、長い黒髪が生えた頭部の空洞と化した眼孔と歯の残骸と思しき白いものが点々と残った口を近づけて嘆ぎまわり、何かを確かめている。
 (……くっ、どこを狙えば!!)
 人型の特殊ミュータントアニマルとは言え下手に大声を出したりして刺激しようものなら相方が危ない。
 軍人として様々な修羅場をくぐり抜けてきたサン博士はパニックにならず、静かに後ずさりしながら電撃銃で狙うべき場所を冷静に思考する。
『ほーほっほ、ナイスですぞスーパー君!! さあそいつをバラバラのくず鉄にしてしまいなさいな!! ゲホッ、ゲホゲホッ!!』
「……ツッ、ばか!!」
 そんな状況で大声を上げ、咳き込みながらブラックウインドガスを口から漏れ出させるコクフウカイ。
 サン博士が物陰に身を隠そうとしたその時だった。

『ギャォオォォォォォオオオオ!!』
『キミ、やめなさい!! 倒すのはそいつと小娘だ!! 私は動けないんだぞ!! コラッ、ご主人様の言う事が聞けんのか!!』
 突如興味を失ったモンキーマンを捨て、地面に倒れたコクフウカイに駆け寄っていくスーパーミュータントアニマル。
 子供がクマのぬいぐるみを抱きしめて愛でるかのようにコクフウカイを前に抱えたそれは動物のように紫桃色の巨大な舌を出してべロべロとその全身を紙め回す。
『フンガフンガ……フガッ?』
『よしよしいい子だ……じゃあ私は地面に置いて、ぎゃあああああああ……!!』
 何を思ったのかコクフウカイの頭に右腕と一体化した巨大ドリル先端をそっと当てたスーパーミュータントアニマルはそのまま電元ON。
 駆動時間は一瞬とは言えその衝撃と震動&掘削をゼロ距離で食らったコクフウカイの熊頭部は一瞬で削りクズと化して辺りに飛び散る。

(なっ、なんなのアイツ!? )
 モンキーマンが解放されるや否や共に距離を取って物陰に隠れ、この様子を見ていたサン博士。
 上位管理者アンドロイドとしての頭脳を失い、内蔵されたブラックウインドガス生成機工しか駆動していないその邪魔な手足をプチプチと千切り捨てる醜いスーパーミュータントアニマルと言う光景に彼女は気合と根性で吐き気を抑える。
(よく見ろ、アイツの目当てはあのガスだ!!)
 ビアジョッキのようにそれを抱え、中から出て来るブラックウインドガスを夢中で吸っていたそれは快感のあまり全身を震わせている。
(とりあえず、上位管理者アンドロイドの1体は破壊されたようだし……すぐにここを逃げましょう)
(ああ、そうだな!! あんな戦うだけ無駄なバケモノほっとくに限る……ぜ?)
 無手勝流からは程遠い決着ではあるが、敵の人工知能が鉄削り節になってしまった以上ロック解除は無問題ないはず。
 サン博士とモンキーマンが抜き足差し足でその場を離れようとしたその時、狂ったようにブラックウインドガス生成器を抱え込んで貧り吸っていたスーパーミュータントアニマルは予想外の行動に出る。

【MMS 第13話に続く】
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

おねしょ合宿の秘密

カルラ アンジェリ
大衆娯楽
おねしょが治らない10人の中高生の少女10人の治療合宿を通じての友情を描く

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

kabuto

SF
モノづくりが得意な日本の独特な技術で世界の軍事常識を覆し、戦争のない世界を目指す。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

処理中です...