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【第一章:エデン/入島】
【第2話】
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「間違いないわ……あれは、うっ」
洋上に建てられた巨大なドーム型建造物。
十数年前……ミクラ・ブレインの暴走により一夜にして地獄絵図となったあの日の記憶がフラッシュバックしたサン博士は思わずロを押える。
「博士、大丈夫か? 到着までもう少しあるから休んだ方がいい」
「ありがとう、モンキーマン。大丈夫よ」
口の中の苦みを呑み戻したサン博士は機内後方に置かれた支給品バックパックを確認し、サイドバックベルトを腰に装着していく。
『ザッ……ザザッ……ジジッ……ジザー……』
「大佐殿? 再通信か?」
そんな中、機内スピーカーから流れだすノイズ。
『……アイタカッタゾ、ワガムスメヨ』
「!!」
『モンキーマン……オマエモヒサシブリダナ』
「なにっ!?」
愛しき者に呼びかけるような口調ながらも抑揚のない不気味な機械音声。
絶対に忘れられないそれに呼びかけられた2人は背筋が寒くなる。
『アンシンシナサイ、イマワオマエタチニキガイハクワエヌ』
敵の拠点近くまで来ているとは言え遠隔操作で機内のメインコンピューターにハッキングしてきたと言う事は、その気になればこの垂直離着陸機のエンジンを強制停止させて眼下で荒れ狂う海に叩き落とすことも可能だと言う事。
サン博士とモンキーマンはそうなっても脱出出来るように各々身構える。
『コノママ イチバン ヘリポートニチャクリクシロ……ブヂッ……』
歓迎されていないどころか敵視されている事を察してかメシア・ブレインは通信を早々に終えて接続を切る。
「モンキーマン、1番ヘリポートへ」
「ああ、向かっている」
モンキーマンは眼下の人工島から突き出した3本の埠頭1本へ向かう。
それからほどなくして……人造島メシア・1番ゲート。
「ひでえ雨だな……ここって昔からこんなに荒れてたのか?」
荒天の中、垂直離着陸機を埠頭ヘリポートに安全着地させ周囲の安全確認を終えたモンキーマンは呟く。
「それは無かったわ。そもそもここは大洋上でも波が安定していて台風も発生せず、通り道にもなりえない場所だから最終的に建造地に決まったのよ」
ボディースーツとプロテクター上にフード付きレインコートを羽織って埠頭に降りたサン博士はモンキーマンのそんな呟きに答える。
「流石は博士!! 色々な意味で生き字引だな……それより俺らはどこに向かえばいいんだ? あそこから入ればいいのか?」
「多分そうでしょうね、行きましょ……誰かいるわ!?」
入場ゲートの前で腕を組んで立つ何者かに気が付いたサン博士は腰の拳銃に手をかける。
『ようこそ、我らが人工島エデンへ。 サン・フトウ博士殿と……モンキーマン殿だな?』
「そうだ」
フード付きレインコートで顔を隠した謎の者に2人は警戒しつつも答える。
「我が名はタイガーマン。メシア唯一の入場口となる埠頭を守る番人三兄弟・長兄である」
フードを取った大柄な人物は虎の頭部を見せつつ自己紹介する。
「なるほど……博士が俺を作った技術を流用しやがったと言う事か。せこい奴だぜ。
それで、お前は俺と博士の案内でこんな嵐の屋外にお出迎えに来たっていう事か?」
そう言いつつ腰に差した30センチほどの鉄棒を抜き、一振りで1・5メートルまでシュコンと伸ばしたモンキーマンはタイガーマンに問う。
『否、我が主が命じたのはそなたの完全破壊とサン博士の捕縛連行……かかれ弟共!!』
『メタルネットガン!!』
次の瞬間、埠頭の何もない2人の背後からばっと現れた熊頭の男と大角牛頭の男は脇に抱えていた大型バズーカーの引き金を引く。
「博士、危ねぇ!!」
頭上から覆いかぶさってくる特殊合金ワイヤー製の網
自身とサン博士も最前線で何度もお世話になったアンドロイド兵捕縛用メタルネットの恐ろしさを良く知っているモンキーマンはすぐにサン博士を抱きかかえるようにかばってうずくまり、逃げ場の無い前後頭上から襲い来る網から身を挺して守る。
『ふふふ、予測通りだな!! 弟共よ!!』
『スイッチONだぜ!!』
『ぼちっとな!!』
長兄の声にすぐさま弾切れバズーカーを投げ捨て、メタルネットガン持ち手のスイッチを押すベアーマンとブルマン。
『うぎゃああああああ!!』
『きゃあああああ!!』
網を伝わって流れる電気ショックの激痛で2人は悲鳴を上げる。
『よしっ、そこまでだ弟共!!』
『スイッチOFFだぜ!!』
『ぽちぽちっとな!!』
長兄の命ですぐさま電撃ネットガン攻撃を止める2体。
『あとはこのスクラップになったエテ公を鉄くず再利用だな!? アニキ』
『女は生け捕りにして確保とのことだが……これは大丈夫なのか、アニキ?』
人間の女に覆いかぶさったまま内部からショートし、完全に動かなくなったモンキーマンを見やりつつベアーマンはタイガーマン兄貴の顔をチラチラ見る。
『ふふふ、弟よ安心しろ。 その電撃ネットガンは俺らアンドロイドには致命傷になるが人間は失神させる程度に出力調整済みだ。それにニンゲンってのは心肺停止しても脳は生きてるっちゅうじゃろ? ヘイ、カモン!!』
タイガーマンの呼びかけに応じて空から現れた一台の大型ドローンは謎機械の台座に設置された黄色い溶液で満たされた円筒形タンクをその傍らに安置する。
『最悪の場合……脳だけここにぶち込めばいい』
『流石はアニキだぜ!!』
『そこにしびれるあこがれるぅ! !』
『そうときまりゃあさっさとやるぞ!! まずはそのデカブツをどかすんだ!!』
『イェッサー!!』
2体は早々に仕事を終えるべく金属棍棒を手に網に近づいて行く。
【MMS 第3話に続く】
洋上に建てられた巨大なドーム型建造物。
十数年前……ミクラ・ブレインの暴走により一夜にして地獄絵図となったあの日の記憶がフラッシュバックしたサン博士は思わずロを押える。
「博士、大丈夫か? 到着までもう少しあるから休んだ方がいい」
「ありがとう、モンキーマン。大丈夫よ」
口の中の苦みを呑み戻したサン博士は機内後方に置かれた支給品バックパックを確認し、サイドバックベルトを腰に装着していく。
『ザッ……ザザッ……ジジッ……ジザー……』
「大佐殿? 再通信か?」
そんな中、機内スピーカーから流れだすノイズ。
『……アイタカッタゾ、ワガムスメヨ』
「!!」
『モンキーマン……オマエモヒサシブリダナ』
「なにっ!?」
愛しき者に呼びかけるような口調ながらも抑揚のない不気味な機械音声。
絶対に忘れられないそれに呼びかけられた2人は背筋が寒くなる。
『アンシンシナサイ、イマワオマエタチニキガイハクワエヌ』
敵の拠点近くまで来ているとは言え遠隔操作で機内のメインコンピューターにハッキングしてきたと言う事は、その気になればこの垂直離着陸機のエンジンを強制停止させて眼下で荒れ狂う海に叩き落とすことも可能だと言う事。
サン博士とモンキーマンはそうなっても脱出出来るように各々身構える。
『コノママ イチバン ヘリポートニチャクリクシロ……ブヂッ……』
歓迎されていないどころか敵視されている事を察してかメシア・ブレインは通信を早々に終えて接続を切る。
「モンキーマン、1番ヘリポートへ」
「ああ、向かっている」
モンキーマンは眼下の人工島から突き出した3本の埠頭1本へ向かう。
それからほどなくして……人造島メシア・1番ゲート。
「ひでえ雨だな……ここって昔からこんなに荒れてたのか?」
荒天の中、垂直離着陸機を埠頭ヘリポートに安全着地させ周囲の安全確認を終えたモンキーマンは呟く。
「それは無かったわ。そもそもここは大洋上でも波が安定していて台風も発生せず、通り道にもなりえない場所だから最終的に建造地に決まったのよ」
ボディースーツとプロテクター上にフード付きレインコートを羽織って埠頭に降りたサン博士はモンキーマンのそんな呟きに答える。
「流石は博士!! 色々な意味で生き字引だな……それより俺らはどこに向かえばいいんだ? あそこから入ればいいのか?」
「多分そうでしょうね、行きましょ……誰かいるわ!?」
入場ゲートの前で腕を組んで立つ何者かに気が付いたサン博士は腰の拳銃に手をかける。
『ようこそ、我らが人工島エデンへ。 サン・フトウ博士殿と……モンキーマン殿だな?』
「そうだ」
フード付きレインコートで顔を隠した謎の者に2人は警戒しつつも答える。
「我が名はタイガーマン。メシア唯一の入場口となる埠頭を守る番人三兄弟・長兄である」
フードを取った大柄な人物は虎の頭部を見せつつ自己紹介する。
「なるほど……博士が俺を作った技術を流用しやがったと言う事か。せこい奴だぜ。
それで、お前は俺と博士の案内でこんな嵐の屋外にお出迎えに来たっていう事か?」
そう言いつつ腰に差した30センチほどの鉄棒を抜き、一振りで1・5メートルまでシュコンと伸ばしたモンキーマンはタイガーマンに問う。
『否、我が主が命じたのはそなたの完全破壊とサン博士の捕縛連行……かかれ弟共!!』
『メタルネットガン!!』
次の瞬間、埠頭の何もない2人の背後からばっと現れた熊頭の男と大角牛頭の男は脇に抱えていた大型バズーカーの引き金を引く。
「博士、危ねぇ!!」
頭上から覆いかぶさってくる特殊合金ワイヤー製の網
自身とサン博士も最前線で何度もお世話になったアンドロイド兵捕縛用メタルネットの恐ろしさを良く知っているモンキーマンはすぐにサン博士を抱きかかえるようにかばってうずくまり、逃げ場の無い前後頭上から襲い来る網から身を挺して守る。
『ふふふ、予測通りだな!! 弟共よ!!』
『スイッチONだぜ!!』
『ぼちっとな!!』
長兄の声にすぐさま弾切れバズーカーを投げ捨て、メタルネットガン持ち手のスイッチを押すベアーマンとブルマン。
『うぎゃああああああ!!』
『きゃあああああ!!』
網を伝わって流れる電気ショックの激痛で2人は悲鳴を上げる。
『よしっ、そこまでだ弟共!!』
『スイッチOFFだぜ!!』
『ぽちぽちっとな!!』
長兄の命ですぐさま電撃ネットガン攻撃を止める2体。
『あとはこのスクラップになったエテ公を鉄くず再利用だな!? アニキ』
『女は生け捕りにして確保とのことだが……これは大丈夫なのか、アニキ?』
人間の女に覆いかぶさったまま内部からショートし、完全に動かなくなったモンキーマンを見やりつつベアーマンはタイガーマン兄貴の顔をチラチラ見る。
『ふふふ、弟よ安心しろ。 その電撃ネットガンは俺らアンドロイドには致命傷になるが人間は失神させる程度に出力調整済みだ。それにニンゲンってのは心肺停止しても脳は生きてるっちゅうじゃろ? ヘイ、カモン!!』
タイガーマンの呼びかけに応じて空から現れた一台の大型ドローンは謎機械の台座に設置された黄色い溶液で満たされた円筒形タンクをその傍らに安置する。
『最悪の場合……脳だけここにぶち込めばいい』
『流石はアニキだぜ!!』
『そこにしびれるあこがれるぅ! !』
『そうときまりゃあさっさとやるぞ!! まずはそのデカブツをどかすんだ!!』
『イェッサー!!』
2体は早々に仕事を終えるべく金属棍棒を手に網に近づいて行く。
【MMS 第3話に続く】
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