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第四章:『突然変異!? 聖魔王子VS巨大軟体魔物・ギガントスライム!』
【第25話】
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「よしっ、ローラン君……まずは私がやるから見ていたまえよ!!」
そう言いつつ肩に金床鉄槌を乗せたままのギルティは手近なスライムに向かって行く。
「ふん、ふんのっ……ふんぬうつ!!」
足下でうねうねしている軟体魔物に狙いをつけたギルティは武器を上段に構え、軟体魔物めがけて金床鉄槌を勢いよく下段フルスイングする。
「ギルティさん! !」
あんな力任せの攻撃では採取アイテムのスライムコアもろともぐちやぐちゃに漬れてしまう。
クエストリーダーの暴挙にローランは思わず叫んでしまう。
「はいっ!!」
だがその予想に反してギルティは鉄塊を直撃させずに当たるか当たらないかのギリギリの距離で寸止め。
その衝撃を喰らったスライムはぐちゃぁと潰れて液体に戻り、直方体のスライムコアだけが残される。
「今のが、重量級武器使いに欠かせない基本テクの1つ。『寸止め』よ」
スライムコアを回収しつつ説明するギルテイ。
「ほら、ローラン君の使う大剣含む重量級武器ってさ叩き潰す系のパワー極振りで手加減が難しいじゃない? だからデケェ奴をぶっ殺する時には最適だけどそれ以外では無用の長物……この技はそんな武器としての弱点をフォローすべく編み出されたもの敵を傷つけずに失神させる事を目的としたものなのよ。
私が見ててあげるからやってみて!!」
「はいっ!!」
今は魔力的に使えないが、戦闘用の聖剣奇跡『衝撃の奇跡』『風の奇跡』を用いずに同じような効果を再現してしまう魔力を持たぬ人間の女戦士……自身が生まれ育った異世界では見たことも無い全く別系統の戦闘技術を見せつけられてゾクゾクする興奮を抑え込みつつローランは聖剣を抜いて近くの軟体魔物に向かって行く。
「こんな感じかな……ふんっ!!」
大剣なので勝手はちがうが、技の基本イメージは理解したローランは聖剣を上段に振り上げ。
「えいゃっ! !」
そのまま足元の軟体魔物を狙って下段フルスイングし、寸止めしようとしたものの……。
「あっ!!」
哀れ大剣を横から叩きこまれた軟体魔物はその衝撃でバラバラになり、生体軟粘液の破片が宙を舞って飛び散る。
「まあそりゃそうだよねぇ……気にすんな、ローラン。ここにはいっぱい練習用の軟体魔物がいるし、奴らの増殖速度はハンパねぇ!!」
高養分な仲間のバラバラ死骸片に群がり、それを食してポコポコと分裂増殖していく軟体魔物・スライム。
人間界で出会った大剣術の師から高度な戦闘技術を習得するチャンスを逃すまいとローランは気持ちを切り替えて息を整える。
……それから数時間後、夜。
「いやあ、こうしてると……音を思い出すねぇ」
「そうね、 ギルテイ」
『討伐採取クエスト:軟体魔物スライムとスライムコアの採取』でハルメンの町、東の森を訪れていた金上級冒険者のギルティと下級銅冒険者のローラン&リィナ。
日中のスライムコア採取量では必要数に満たず、一晩放置して軟体魔物が分裂増殖したところを再チャレンジする事にしたクエストリーダーのギルティは、森の入り口近くに停めた馬車まで戻って来て野営。
重量級武器を振り回す体力と集中力を要する武技の練習で疲れ果てて馬車の中で寝ているローランに代わって火の番をするギルティとリィナは満天の星空を見上げつつしみじみと語り合う。
「今更聞くんだけど……リィナちゃんは何でまた冒険者に戻ったの?」
火を挟んで対峙するリィナに問うギルテイ。
「そうね、色々あったの……まさかとは思うけどハルメン支部からの冒険者登用試験の報告が行ってないのかしら?」
「もちろんリィナちゃんが支部長秘書を辞する前に手合わせした半魔族の登用試験報告書は見たわ。
でもさぁ……おたくの冒険者登用試験官はドラムだっけ?『とにかくすごい奴だ、俺様では実力計測不能のため仮で下級銅とする』じゃあ何の事やら分からないわよ」
あのハゲ、言語化に窮して適当に書きやがったな。
ドラム試験官が報告書を提出するまで支部長秘書の座を辞するべきでは無かったと一瞬後悔したリィナであったが、もし仔細な戦況を書かれていたらローランが魔法の力で『神速』と呼ばれた自分と正面から斬り合った事を察知されてしまっていた。
それに不可避な事故とは言え最後にローランと自分が体を密着させて抱き合うようになってしまった事まで書かれていたら……嫉妬で怒り狂ったギルティが出合い頭にローランを撲殺しようとしたかもしれない。
結果論ではあるものの、起こりうる最悪の事態を回避できたリィナは安堵の息を吐く。
「まさかとは思うけど…… リィナちゃんはあの彼にホの字なのかい?」
後ろの馬車内で眠るローランを指さしつつ真顔で問うギルティ。
「ホの字では無いわ。ただ……私はかつて諦めた事をもう一度やり直したくなったの」
「……あの時のアレにもう一度挑むと言うの?」
驚きのあまり目を見開き、リィナの目を見据えてしまうギルティ。
「ええ、そうよ。姉さんや皆を否定するわけではないけど……あの時のメンバーだけではどうにもならなかった
のは事実。そのためには彼と言うパートナーが必要なのよ……わかるかしらギルティ姉さん?」
「……そうか」
険しい表情のまま腕を組んで考え込んでいたギルティは両膝をパァンと叩くと顔を上げる。
「リィナちゃ……いや、リィナ。シャドウバイトさん!! その時はアタシもまた一緒に行かせてくれ!! 例え大恩あるボスや皆に反対され、全てを失ったとしても……友のために殉ずる事が叶うならこのギルティ・ローレライ、一切の悔いは無い!!」
(ギルティ!! 声が大きいわ……まだ彼には話していないのよ!!)
(あっ、ああ……済まない。ついついいつもの癖で)
慌ててギルティの口を塞いだリィナは馬車で寝ているローランの入眠を確認する。
(大丈夫みたいね、とにかく……この件に関してはボスや皆には絶対言わないでね?)
(ああ、分かった。『狂戦士』の名に懸けて誓おう)
【第26話に続く】
そう言いつつ肩に金床鉄槌を乗せたままのギルティは手近なスライムに向かって行く。
「ふん、ふんのっ……ふんぬうつ!!」
足下でうねうねしている軟体魔物に狙いをつけたギルティは武器を上段に構え、軟体魔物めがけて金床鉄槌を勢いよく下段フルスイングする。
「ギルティさん! !」
あんな力任せの攻撃では採取アイテムのスライムコアもろともぐちやぐちゃに漬れてしまう。
クエストリーダーの暴挙にローランは思わず叫んでしまう。
「はいっ!!」
だがその予想に反してギルティは鉄塊を直撃させずに当たるか当たらないかのギリギリの距離で寸止め。
その衝撃を喰らったスライムはぐちゃぁと潰れて液体に戻り、直方体のスライムコアだけが残される。
「今のが、重量級武器使いに欠かせない基本テクの1つ。『寸止め』よ」
スライムコアを回収しつつ説明するギルテイ。
「ほら、ローラン君の使う大剣含む重量級武器ってさ叩き潰す系のパワー極振りで手加減が難しいじゃない? だからデケェ奴をぶっ殺する時には最適だけどそれ以外では無用の長物……この技はそんな武器としての弱点をフォローすべく編み出されたもの敵を傷つけずに失神させる事を目的としたものなのよ。
私が見ててあげるからやってみて!!」
「はいっ!!」
今は魔力的に使えないが、戦闘用の聖剣奇跡『衝撃の奇跡』『風の奇跡』を用いずに同じような効果を再現してしまう魔力を持たぬ人間の女戦士……自身が生まれ育った異世界では見たことも無い全く別系統の戦闘技術を見せつけられてゾクゾクする興奮を抑え込みつつローランは聖剣を抜いて近くの軟体魔物に向かって行く。
「こんな感じかな……ふんっ!!」
大剣なので勝手はちがうが、技の基本イメージは理解したローランは聖剣を上段に振り上げ。
「えいゃっ! !」
そのまま足元の軟体魔物を狙って下段フルスイングし、寸止めしようとしたものの……。
「あっ!!」
哀れ大剣を横から叩きこまれた軟体魔物はその衝撃でバラバラになり、生体軟粘液の破片が宙を舞って飛び散る。
「まあそりゃそうだよねぇ……気にすんな、ローラン。ここにはいっぱい練習用の軟体魔物がいるし、奴らの増殖速度はハンパねぇ!!」
高養分な仲間のバラバラ死骸片に群がり、それを食してポコポコと分裂増殖していく軟体魔物・スライム。
人間界で出会った大剣術の師から高度な戦闘技術を習得するチャンスを逃すまいとローランは気持ちを切り替えて息を整える。
……それから数時間後、夜。
「いやあ、こうしてると……音を思い出すねぇ」
「そうね、 ギルテイ」
『討伐採取クエスト:軟体魔物スライムとスライムコアの採取』でハルメンの町、東の森を訪れていた金上級冒険者のギルティと下級銅冒険者のローラン&リィナ。
日中のスライムコア採取量では必要数に満たず、一晩放置して軟体魔物が分裂増殖したところを再チャレンジする事にしたクエストリーダーのギルティは、森の入り口近くに停めた馬車まで戻って来て野営。
重量級武器を振り回す体力と集中力を要する武技の練習で疲れ果てて馬車の中で寝ているローランに代わって火の番をするギルティとリィナは満天の星空を見上げつつしみじみと語り合う。
「今更聞くんだけど……リィナちゃんは何でまた冒険者に戻ったの?」
火を挟んで対峙するリィナに問うギルテイ。
「そうね、色々あったの……まさかとは思うけどハルメン支部からの冒険者登用試験の報告が行ってないのかしら?」
「もちろんリィナちゃんが支部長秘書を辞する前に手合わせした半魔族の登用試験報告書は見たわ。
でもさぁ……おたくの冒険者登用試験官はドラムだっけ?『とにかくすごい奴だ、俺様では実力計測不能のため仮で下級銅とする』じゃあ何の事やら分からないわよ」
あのハゲ、言語化に窮して適当に書きやがったな。
ドラム試験官が報告書を提出するまで支部長秘書の座を辞するべきでは無かったと一瞬後悔したリィナであったが、もし仔細な戦況を書かれていたらローランが魔法の力で『神速』と呼ばれた自分と正面から斬り合った事を察知されてしまっていた。
それに不可避な事故とは言え最後にローランと自分が体を密着させて抱き合うようになってしまった事まで書かれていたら……嫉妬で怒り狂ったギルティが出合い頭にローランを撲殺しようとしたかもしれない。
結果論ではあるものの、起こりうる最悪の事態を回避できたリィナは安堵の息を吐く。
「まさかとは思うけど…… リィナちゃんはあの彼にホの字なのかい?」
後ろの馬車内で眠るローランを指さしつつ真顔で問うギルティ。
「ホの字では無いわ。ただ……私はかつて諦めた事をもう一度やり直したくなったの」
「……あの時のアレにもう一度挑むと言うの?」
驚きのあまり目を見開き、リィナの目を見据えてしまうギルティ。
「ええ、そうよ。姉さんや皆を否定するわけではないけど……あの時のメンバーだけではどうにもならなかった
のは事実。そのためには彼と言うパートナーが必要なのよ……わかるかしらギルティ姉さん?」
「……そうか」
険しい表情のまま腕を組んで考え込んでいたギルティは両膝をパァンと叩くと顔を上げる。
「リィナちゃ……いや、リィナ。シャドウバイトさん!! その時はアタシもまた一緒に行かせてくれ!! 例え大恩あるボスや皆に反対され、全てを失ったとしても……友のために殉ずる事が叶うならこのギルティ・ローレライ、一切の悔いは無い!!」
(ギルティ!! 声が大きいわ……まだ彼には話していないのよ!!)
(あっ、ああ……済まない。ついついいつもの癖で)
慌ててギルティの口を塞いだリィナは馬車で寝ているローランの入眠を確認する。
(大丈夫みたいね、とにかく……この件に関してはボスや皆には絶対言わないでね?)
(ああ、分かった。『狂戦士』の名に懸けて誓おう)
【第26話に続く】
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