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第四章:『突然変異!? 聖魔王子VS巨大軟体魔物・ギガントスライム!』
【第21話】
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イサ地方に駐在する王立騎士団によるハルメン平原の狂魔化魔物の討伐がなされてからしばらくして……冒険者ギルド・ハルメン支部。
「おはようござ…… うおっ!!」
「なっ、何!? 朝から大虎になっているのは誰よ!?」
いつものように日銭稼ぎでクエストボード確認に訪れた下級銅冒険者のローランとリィナは冒険者のワーキングタイムたる日中から1階に充満する強烈な酒の匂いに思わず顔をしかめる。
(リィナちゃん、し一っ!!)
(あっち、あっち!! あっちを見て)
そんな2人に無言のままジェスチャーで何かを伝えようとする緊張した面持ちの冒険者達らが揃って指さす方向に2人は首を向ける。
冒険者食堂のテーブルに山積みにされた巨大ステーキに骨付き肉、その他肉料理の山。
それらを野獣の如くバリバリと食いまくるのは赤髪ロングヘアで2メートルオーバーな筋骨隆々のがっちりした巨躯にビキニアーマーを装着した女戦士。
「よお、リィナちゃん! 久しぶりじゃないのよ!!」
猛牛の如き大胸を覆う胸当てだけの隠す気すらないゴリゴリ腹筋に剛健な上半身。
ともあれば尻のみならず色々な物が見えてしまいそうな動きを阻害しない短めの腰鎧に金属製のブーツ。
肉感的なダイナマイトバディを見せつけるようなほぼ裸装備でありながら色気というよりかは畏怖の感情を抱かせる明らかにこの辺りの者ではない大女は酒瓶をダイレクトラッパ飲みしつつリィナとローランを手招きする。
「ギルティ!? 何でここにいるの!?」
驚いた表情でそちらに向かうリィナにわけも分からぬまま続くローラン。
「そりゃ決まってるでしょ、アタシは冒険者だよ? 仕事があるからここまでやってきたのさ」
空にした酒瓶を床に置きつつ巨大骨付き肉に手を伸ばす謎の大女・ギルティ。
その食いちぎるような食べっぷりに怯えながらもローランはひとまず黙って様子見する。
「さて……腹7分目ぐらいになったし。アタシのおごりだ、残りはあんたらで食っていいよ。
受付のお姉さん! 例のモノをお願いします!」
「はい、直ちに!!」
ギルティに呼ばれて鍵を片手にこちらに向かってくる受付嬢のパテイ。
ヘヴィー重量級ボディで潰れる寸前のオンボロ椅子から立ち上がったギルティはリィナとローランについてくるように目配せする。
「ギルティ様、こちらのお部屋をお使いください」
冒険者ギルド4階にある宿泊施設フロア。
冒険者達が日々常用する安い相部屋とは明らかに違う『開かずの間』として有名な1室の前にギルティを案内した受付嬢は緊張した面持ちで鍵を渡す。
「おう、サンキュー!!」
気さくで陽気なお礼に一礼して去っていく受付嬢のパテイ。
「さっ、あんたらも入りな……」
そう言いつつ2人を『開かずの間』に招き入れるギルティ。
『リィナ先輩の知り合い(?)が何者かは分からないが、抵抗したらただでは済まない』
そう判断したローランは無言で筋肉ビキニアーマー女についていくリィナに従う。
「まあ何にもない所だけどさあ、くつろいでよ!!」
ローランにとっては初めて入る『開かずの間』。
ホコリ1つない丁寧な掃除が隅々まで行き届いた室内、清潔なシーツにふかふかの布団と枕のゴージャスなビッグサイズベッド、立派なテーブルとイス、最高の日当たりをもたらすべく配置された素敵な窓……。
「あっ……」
質素な冒険者生活開始以来すっかり忘れていた故郷の聖魔王城を思い出したローランの口から感嘆の声が漏れる。
「それで、ギルティ……アナタともあろう者が何の用事でこんなド田舎のギルドに来たわけ?『狂戦士(ベルセルク)』幹部ともあろう者が田舎の冒険者相手に大飯食ってとお大臣ごっこするなんてよっぼどおヒマなのね?」
壁に掛けられた花瓶と花の絵を楽しむローランに構うことなく言葉で先制切り込みをかけるリィナ。
「ああ、その件だが……ここなら誰にも聞かれないだろうね」
右、左、右、右と頭を振って部屋を見回し、家具やベッドの下を覗き込んで盗み聞きされていないか確かめるギルテイ。
昔から嘘をつくのが下手な脳筋女ではあったが、この動き方のクセは目的が何であれロクでもない事だ。
そう察したリィナはローランの腕を掴み、無言で部屋を出て行こうとする。
「あの狂魔化ゴブリンとウルフを倒したのはリィナちゃんとローランさんだろ?」
「!!」
突如発せられたその言葉に足を止めたリィナは思わず向き直ってしまう。
「やっばりね!! リィナちゃんが動揺した時に右のまぶたがぴくつくクセ……まだ治ってなかったんだ!!」
右目を押さえて明むリィナを前にベッドに座ったギルティは膝を叩いてグラグラ笑う。
「ギルティ様、横から失礼いたしますが……何故そのような事をおっしゃるのですか?」
面倒事を避けるべくシュタイン兵士団長に狂魔化魔物討伐の手柄を譲ったローラン。
このギルティと名乗る女性とリィナ先輩の過去までは分からないが、旧知の友(?)として手の内を知り尽くされているであろうリィナ先輩では100%勝てない。
それにこの事実がばれてしまった以上、今出来る最善手で最良の結果を出す事を考えねば。
聖魔王子として高名な国家宰相や武人に師事してきたローランは交渉技術と戦闘思考の記憶を総動員する準備にかかる。
【第22話に続く】
「おはようござ…… うおっ!!」
「なっ、何!? 朝から大虎になっているのは誰よ!?」
いつものように日銭稼ぎでクエストボード確認に訪れた下級銅冒険者のローランとリィナは冒険者のワーキングタイムたる日中から1階に充満する強烈な酒の匂いに思わず顔をしかめる。
(リィナちゃん、し一っ!!)
(あっち、あっち!! あっちを見て)
そんな2人に無言のままジェスチャーで何かを伝えようとする緊張した面持ちの冒険者達らが揃って指さす方向に2人は首を向ける。
冒険者食堂のテーブルに山積みにされた巨大ステーキに骨付き肉、その他肉料理の山。
それらを野獣の如くバリバリと食いまくるのは赤髪ロングヘアで2メートルオーバーな筋骨隆々のがっちりした巨躯にビキニアーマーを装着した女戦士。
「よお、リィナちゃん! 久しぶりじゃないのよ!!」
猛牛の如き大胸を覆う胸当てだけの隠す気すらないゴリゴリ腹筋に剛健な上半身。
ともあれば尻のみならず色々な物が見えてしまいそうな動きを阻害しない短めの腰鎧に金属製のブーツ。
肉感的なダイナマイトバディを見せつけるようなほぼ裸装備でありながら色気というよりかは畏怖の感情を抱かせる明らかにこの辺りの者ではない大女は酒瓶をダイレクトラッパ飲みしつつリィナとローランを手招きする。
「ギルティ!? 何でここにいるの!?」
驚いた表情でそちらに向かうリィナにわけも分からぬまま続くローラン。
「そりゃ決まってるでしょ、アタシは冒険者だよ? 仕事があるからここまでやってきたのさ」
空にした酒瓶を床に置きつつ巨大骨付き肉に手を伸ばす謎の大女・ギルティ。
その食いちぎるような食べっぷりに怯えながらもローランはひとまず黙って様子見する。
「さて……腹7分目ぐらいになったし。アタシのおごりだ、残りはあんたらで食っていいよ。
受付のお姉さん! 例のモノをお願いします!」
「はい、直ちに!!」
ギルティに呼ばれて鍵を片手にこちらに向かってくる受付嬢のパテイ。
ヘヴィー重量級ボディで潰れる寸前のオンボロ椅子から立ち上がったギルティはリィナとローランについてくるように目配せする。
「ギルティ様、こちらのお部屋をお使いください」
冒険者ギルド4階にある宿泊施設フロア。
冒険者達が日々常用する安い相部屋とは明らかに違う『開かずの間』として有名な1室の前にギルティを案内した受付嬢は緊張した面持ちで鍵を渡す。
「おう、サンキュー!!」
気さくで陽気なお礼に一礼して去っていく受付嬢のパテイ。
「さっ、あんたらも入りな……」
そう言いつつ2人を『開かずの間』に招き入れるギルティ。
『リィナ先輩の知り合い(?)が何者かは分からないが、抵抗したらただでは済まない』
そう判断したローランは無言で筋肉ビキニアーマー女についていくリィナに従う。
「まあ何にもない所だけどさあ、くつろいでよ!!」
ローランにとっては初めて入る『開かずの間』。
ホコリ1つない丁寧な掃除が隅々まで行き届いた室内、清潔なシーツにふかふかの布団と枕のゴージャスなビッグサイズベッド、立派なテーブルとイス、最高の日当たりをもたらすべく配置された素敵な窓……。
「あっ……」
質素な冒険者生活開始以来すっかり忘れていた故郷の聖魔王城を思い出したローランの口から感嘆の声が漏れる。
「それで、ギルティ……アナタともあろう者が何の用事でこんなド田舎のギルドに来たわけ?『狂戦士(ベルセルク)』幹部ともあろう者が田舎の冒険者相手に大飯食ってとお大臣ごっこするなんてよっぼどおヒマなのね?」
壁に掛けられた花瓶と花の絵を楽しむローランに構うことなく言葉で先制切り込みをかけるリィナ。
「ああ、その件だが……ここなら誰にも聞かれないだろうね」
右、左、右、右と頭を振って部屋を見回し、家具やベッドの下を覗き込んで盗み聞きされていないか確かめるギルテイ。
昔から嘘をつくのが下手な脳筋女ではあったが、この動き方のクセは目的が何であれロクでもない事だ。
そう察したリィナはローランの腕を掴み、無言で部屋を出て行こうとする。
「あの狂魔化ゴブリンとウルフを倒したのはリィナちゃんとローランさんだろ?」
「!!」
突如発せられたその言葉に足を止めたリィナは思わず向き直ってしまう。
「やっばりね!! リィナちゃんが動揺した時に右のまぶたがぴくつくクセ……まだ治ってなかったんだ!!」
右目を押さえて明むリィナを前にベッドに座ったギルティは膝を叩いてグラグラ笑う。
「ギルティ様、横から失礼いたしますが……何故そのような事をおっしゃるのですか?」
面倒事を避けるべくシュタイン兵士団長に狂魔化魔物討伐の手柄を譲ったローラン。
このギルティと名乗る女性とリィナ先輩の過去までは分からないが、旧知の友(?)として手の内を知り尽くされているであろうリィナ先輩では100%勝てない。
それにこの事実がばれてしまった以上、今出来る最善手で最良の結果を出す事を考えねば。
聖魔王子として高名な国家宰相や武人に師事してきたローランは交渉技術と戦闘思考の記憶を総動員する準備にかかる。
【第22話に続く】
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