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第三章:『挟撃のハルメン平原!! 聖魔王子VS二大魔獣!』
【15話】
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ローランとリィナがハルメン平原にあるニハイル牧場に到着してから数時間後……草木も眠る丑三つ時。
『ブフォ、ブフォ……ブギギギギ』
「ギギギギギ……」
「ギャギャァァ……」
広大なハルメン平原の北方を武装した数十匹のゴブリンを引き連れてのしのしと我が物顔で歩く巨大な二足歩行生物。
種族として身長1・5メートル前後が成長限界のゴブリン族でありながら狂魔化により全長3メートル近くに巨大化し、脂肪たっぷりのでっぷりとした腹、野太い腕と足、尖った耳で漬れたちんくしゃ顔の魔物・ゴブリンヘツド。
日中堂々、自身の縄張りでの部下の大量殺数におよんだ狼藉者の件を受け、ボスの座を揺るがしかねない有事だと判断したゴブリンヘッドは自身の築いた地位の安寧と部下に対する示威行為のため自ら出陣。
現場に残されたその匂いを捕捉追跡してハルメン平原の農場へと向かっていた。
『グハルルル……』
ほぼ同時刻、広大なハルメン平原南方エリア。
ゴブリンヘッドとほぼ同時期に狂魔化した事で強大な力を得てウルフの群れでリーダー下剋上に成功した魔物・ウルフリーダー。
爪と牙は大きく頑強に鋭利化し、体躯も全長2メートル程に大型化し、それに伴う体幹と全身の筋肉増強により二足歩行も可能となったウルフリーダーも自身の縄張りたるハルメン平原に入り込んだ狼藉者によるゴブリン大量殺数の件を把握。
自身の縄張りを我が物顔で暴れ回る厄介なゴブリンに続く新たな敵の出現を受けて自ら出陣したウルフリーダーもゴブリンバラバラ殺戮現場に残された狼藉者の匂いを捕捉追跡。
真っ赤に爛々と光る目を見開き、牙を剥き出しの殺意MAXでハルメン平原の農場に部下を引き連れて駆けていた。
所変わってハルメン平原、ニハイル農場家屋の屋根上。
「リィナさん、2体の敵はここに向かって二方向から来ています……もうすぐ到着します」
『感知の奇跡』を発動させて広範囲に散布した魔力で2体の魔物の動きを察知していたローランと手足を組んで目を閉じて坐し、精神統一中のリィナ。
非戦闘員のナナシノゴンベエと依頼人ご家族には事情を説明した上で安全な『無限収納の奇跡』の異空間収納に隠れてもらっているし、敵は2体とは言えあのブラッディラフレシアと比べるとはるかに格下。
それを分かっているとは言え大気中の魔力が希薄すぎるこのおばあさまの故郷で自身が弱体化している事は事実だし、聖魔皇子として習得した多くの奇跡の力は使えないと言う事実が不安なのも事実……ローランはおばあ様より授かった魔王の指輪を触りつつ心を落ち着かせる。
『ブフォォォォン!!』
ニハイル牧場に結集し、三者三様の思惑と目的を持って口火を切ったゴブリンキングVSウルフリーダーVS人間冒険者の三つ巴の戦い。
両勢力よりも先手を打つべく部下のゴブリン達を前に出していたヘッドの指示で乱射される矢に投石攻撃。ウルフリーダーとその部下の狼達は身を低くして守りに入る。
『茨の奇跡!!』
飛び道具から身を守りつつそこを狙って奇跡を発動させるローラン。
地面から突き出してきた茨に全身を絡め取られたゴブリンとウルフの全身に鋭い棘が突き刺さる。
「吸血はどうだ?」
この奇跡にブラッデイラフレシアのような吸血効果があるのか確かめようとその反応を確かめるべく絡みつく茨塊内でもがいて全身傷だらけになり痛みに苦しむ魔物の様子を見ていたローラン。
しかしながらあの時の賊のような死に方をしている魔物は1匹もいないようだ。
「無いなら無いで好機!! 私はあのデカブツを殺るわ」
「じゃあ僕はあの狼男を!!」
そう言いつつ身軽に屋根を飛び降りたリィナはつま先立ちで茨の上に着地。
そのまま棘を避けつつ茨塊上を飛び跳ね回り、身動きの取れないゴブリン達をナイフ急所攻撃で確実に葬っていく。
『ブゴォォォ!!』
分厚い脂肪のおかげで茨のダメージをある程度は減少できているとは言え痛い事に変わりはない状況。
夜目もある程度以上効くとは言え、相手は闇夜に溶け込む黒衣で目にも止まらぬ速度で攻撃してくる。
無尽蔵の体力と脂肪&筋肉の鎧、配下のゴブリン軍団による数の暴力でハルメン平原を支配してきた力自慢のゴブリンキングは自身の戦法が通じない狼藉者を前に大きく息を吸い込み口を固く閉ざす。
(今だ!!)
ローランの足止めで捕らえた厄介な弓矢ゴブリンを全て始末したリィナ。
パニックに陥った巨大な狂魔化ゴブリンが野太い腕で顔を覆い、視界を封じた好機を前に腰に力を入れそのまま大跳躍。
巨大化ゴブリンの脳天を一撃で貫いて終わらせるべくナイフを逆手持ちに切り替えて下突き自由落下体制に入る。
『スオオオオ……バオオオオオオオオオオオオン!!』
「きゃああああ!!」
そんな中、至近距離でゴブリンヘッドが発した肺活量MAXの大咆嘩。
それを無防備な空中で食らったリィナはどうにか耳を塞ぎつつ、気合と根性で失神は回避したものの受け身着地に失敗。ローランの奇跡で召喚された茨上に腹と胸、四肢をしこたま叩きつけてしまう。
『ゴブッ……ゴブヒヒヒヒ』
「ぐっ……ぐぎぎ」
身動きが取れない状態で足を掴んで逆さに持ち上げられ、武器を奪われたリィナは鼻を近づけて全身を嗅ぎまわるゴブリンヘッドの目に泌みるほど強烈な獣臭に顔をしかめる。
【第16話に続く】
『ブフォ、ブフォ……ブギギギギ』
「ギギギギギ……」
「ギャギャァァ……」
広大なハルメン平原の北方を武装した数十匹のゴブリンを引き連れてのしのしと我が物顔で歩く巨大な二足歩行生物。
種族として身長1・5メートル前後が成長限界のゴブリン族でありながら狂魔化により全長3メートル近くに巨大化し、脂肪たっぷりのでっぷりとした腹、野太い腕と足、尖った耳で漬れたちんくしゃ顔の魔物・ゴブリンヘツド。
日中堂々、自身の縄張りでの部下の大量殺数におよんだ狼藉者の件を受け、ボスの座を揺るがしかねない有事だと判断したゴブリンヘッドは自身の築いた地位の安寧と部下に対する示威行為のため自ら出陣。
現場に残されたその匂いを捕捉追跡してハルメン平原の農場へと向かっていた。
『グハルルル……』
ほぼ同時刻、広大なハルメン平原南方エリア。
ゴブリンヘッドとほぼ同時期に狂魔化した事で強大な力を得てウルフの群れでリーダー下剋上に成功した魔物・ウルフリーダー。
爪と牙は大きく頑強に鋭利化し、体躯も全長2メートル程に大型化し、それに伴う体幹と全身の筋肉増強により二足歩行も可能となったウルフリーダーも自身の縄張りたるハルメン平原に入り込んだ狼藉者によるゴブリン大量殺数の件を把握。
自身の縄張りを我が物顔で暴れ回る厄介なゴブリンに続く新たな敵の出現を受けて自ら出陣したウルフリーダーもゴブリンバラバラ殺戮現場に残された狼藉者の匂いを捕捉追跡。
真っ赤に爛々と光る目を見開き、牙を剥き出しの殺意MAXでハルメン平原の農場に部下を引き連れて駆けていた。
所変わってハルメン平原、ニハイル農場家屋の屋根上。
「リィナさん、2体の敵はここに向かって二方向から来ています……もうすぐ到着します」
『感知の奇跡』を発動させて広範囲に散布した魔力で2体の魔物の動きを察知していたローランと手足を組んで目を閉じて坐し、精神統一中のリィナ。
非戦闘員のナナシノゴンベエと依頼人ご家族には事情を説明した上で安全な『無限収納の奇跡』の異空間収納に隠れてもらっているし、敵は2体とは言えあのブラッディラフレシアと比べるとはるかに格下。
それを分かっているとは言え大気中の魔力が希薄すぎるこのおばあさまの故郷で自身が弱体化している事は事実だし、聖魔皇子として習得した多くの奇跡の力は使えないと言う事実が不安なのも事実……ローランはおばあ様より授かった魔王の指輪を触りつつ心を落ち着かせる。
『ブフォォォォン!!』
ニハイル牧場に結集し、三者三様の思惑と目的を持って口火を切ったゴブリンキングVSウルフリーダーVS人間冒険者の三つ巴の戦い。
両勢力よりも先手を打つべく部下のゴブリン達を前に出していたヘッドの指示で乱射される矢に投石攻撃。ウルフリーダーとその部下の狼達は身を低くして守りに入る。
『茨の奇跡!!』
飛び道具から身を守りつつそこを狙って奇跡を発動させるローラン。
地面から突き出してきた茨に全身を絡め取られたゴブリンとウルフの全身に鋭い棘が突き刺さる。
「吸血はどうだ?」
この奇跡にブラッデイラフレシアのような吸血効果があるのか確かめようとその反応を確かめるべく絡みつく茨塊内でもがいて全身傷だらけになり痛みに苦しむ魔物の様子を見ていたローラン。
しかしながらあの時の賊のような死に方をしている魔物は1匹もいないようだ。
「無いなら無いで好機!! 私はあのデカブツを殺るわ」
「じゃあ僕はあの狼男を!!」
そう言いつつ身軽に屋根を飛び降りたリィナはつま先立ちで茨の上に着地。
そのまま棘を避けつつ茨塊上を飛び跳ね回り、身動きの取れないゴブリン達をナイフ急所攻撃で確実に葬っていく。
『ブゴォォォ!!』
分厚い脂肪のおかげで茨のダメージをある程度は減少できているとは言え痛い事に変わりはない状況。
夜目もある程度以上効くとは言え、相手は闇夜に溶け込む黒衣で目にも止まらぬ速度で攻撃してくる。
無尽蔵の体力と脂肪&筋肉の鎧、配下のゴブリン軍団による数の暴力でハルメン平原を支配してきた力自慢のゴブリンキングは自身の戦法が通じない狼藉者を前に大きく息を吸い込み口を固く閉ざす。
(今だ!!)
ローランの足止めで捕らえた厄介な弓矢ゴブリンを全て始末したリィナ。
パニックに陥った巨大な狂魔化ゴブリンが野太い腕で顔を覆い、視界を封じた好機を前に腰に力を入れそのまま大跳躍。
巨大化ゴブリンの脳天を一撃で貫いて終わらせるべくナイフを逆手持ちに切り替えて下突き自由落下体制に入る。
『スオオオオ……バオオオオオオオオオオオオン!!』
「きゃああああ!!」
そんな中、至近距離でゴブリンヘッドが発した肺活量MAXの大咆嘩。
それを無防備な空中で食らったリィナはどうにか耳を塞ぎつつ、気合と根性で失神は回避したものの受け身着地に失敗。ローランの奇跡で召喚された茨上に腹と胸、四肢をしこたま叩きつけてしまう。
『ゴブッ……ゴブヒヒヒヒ』
「ぐっ……ぐぎぎ」
身動きが取れない状態で足を掴んで逆さに持ち上げられ、武器を奪われたリィナは鼻を近づけて全身を嗅ぎまわるゴブリンヘッドの目に泌みるほど強烈な獣臭に顔をしかめる。
【第16話に続く】
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