異世界転身聖魔王子、モンスターハンターになる!? ~魔石と魔物と奇跡の巨剣~

千両文士

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第二章:『決闘、冒険者ギルド!! 聖魔王子VS女暗殺者!』

【第12話】

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 ハルメンの町、平民居住エリア内の商店区画。
「冒険者ギルドより納品です!!」
 斜め4等分に区切られた円盤に世界を構成する4大元素火・水・土・風の印章を刻んだ看板を下げた魔石屋に入店した冒険者のローランとリィナ。
「おう、いつもありがとう!! 本当に助かるよ」
 2人が腰の袋から青く薄光る小石と赤く薄光る小石を取り出して台に置いていく様を見守る白髪の老店主はルーペを卓上に置いて安全手袋を装着。
 依頼を受けてくれた冒険者2人が魔石採取してきたハルメンの町近隣に生息する軟体生物魔物・ヒートスラッグとアイススラッグの魔石の品質確認を始める。
「うん……これなら大丈夫、数も必要なだけある。余った分や破片は報酬に上乗せ買取で大丈夫かな?」
「それでお願いします」
 老店主は後日商品として店頭に並べる依頼分の魔石を鍵付き棚にしまい、2人が保険として確保していた数個の余りと破片を鑑定し始める。
 
 ……数日前、晴れて冒険者ギルドの一員となり、通例に従って5段階内で最下級の『下銅級(ロウァーカッパーランク)』冒険者として活動開始したローラン。
 表向きは最下級の『下銅級(ロウァーカッパーランク)』とは言え冒険者ギルドランクで言えば最上級の『上金級(アッパーゴールドランク)』クラスが数十人で対応してしかるべきブラッデイラフレシアを単騎で討伐したと言う噂を聞いたあちこちから魔物討伐依頼が舞い込み……と言うよくある成り上がリサクセスストーリー展開にはならなかったローラン。

 異世界の魔界王子ではなく一介の新人冒険者でしかないローランはパートナー冒険者のリィナと共に拠点となるハルメンの町周辺に生息する小型ナメクジ魔物を討伐し、人々の日常生活に欠かせない『火の魔石』や『水の魔石』を採取する日々を送っていた。
「ローランさん、ごめんなさいね……あなたの力を生かせなくて」
 店主によるクズ魔石鑑定と報酬&査定額準備の間、店内のウィンドウショッピングをしていたローランに申し訳なさそうに声をかけるリィナ。
「そんな、いいんですよ! 暮らしていけるだけのマニィは稼げているわけですし……僕の方こそリィナさんに苦労させてすみません」
 ランベルド伯爵の旧友を探す件や本来の戦闘能力を全く活かせない件はさておきユディタおばあ様の故郷である異世界の文化様式や生活スタイル、生息する魔物……雲の上に座していては知り得ない様々な貴重な情報を仕入れられるのみならず、美味しい物や楽しみもそれなりにある冒険者生活にそれなりに満足しているローランはリィナに逆感謝する。
「カッパーランクのお2人はもしかして強いのかい?」
 魔石片の現金買取の準備と2人が冒険者ギルドに提出して報酬と交換する依頼完了報告書にサインしていた老店主は耳に入って来た気になる言葉に聞き返す。
「あっ、はい……まあそれなりには」
「それならさ、私の知り合いで魔物討伐の依頼を出したい奴がいるんだけど……ギルドに依頼を出していいかな?」
「もちろんです!! いつもありがとうございます!」
 冒険者ギルド事務官だったリィナは喜んで答える。

 それから数日後……冒険者ギルドハルメン支部1階にあるメインロビー。
 そこに設けられた素材採取から魔物討伐、肉体労働まで様々な依頼が掲示されるクエストボード。
「久しぶりの魔物討伐で報酬もめちゃくちゃいいとは言え……これはおいおいだぜ、どうするよ?」
「俺は嫌だぜ、中青銅級(ミドルブロンズランク)のお前が受けろよ」
「はあ!? 悪い冗談は止せよ!! 俺、あんなタチの悪い奴ら相手で怪我したくねぇよ!!」
 クエストボードの前でざわつく銅級・青銅級の田舎者冒険者達。
 その日のパンと酒代を稼ぐべく出来るだけ楽で報酬がいい依頼を探す事に一生懸命な彼・彼女らは魔石屋の爺さんが知り合いの代理で依頼した新クエストの内容にぎわつきつつも誰も手を出そうとしない。
「だいたいランク条件無しってどういう事だよ、俺ら底辺冒険者に死ねって言うのか?」
 そのとばっちりでイラつく冒険者に罵倒されるクエスト受付担当の女性事務官。
「そっ、それを私に言われましても……ご依頼主の要望でこうなっており」
「それを調整するのがお前らの仕事だろうが!! 今すぐ何とかしろや!!」
「こんにちは!!」
「おはようございます!!……ってあれ、どうしたんですか?」
 そんな中、冒険者ギルドにやってきたローランとリィナの2人パーテイー。
「リィナ先輩!!」
 粗暴な武装した冒険者達に数の暴力で襲われかけていた女性事務官はすぐに元先輩に助けを求める。
「マリナちゃんどうしたの!? あなたたち、事と場合によっては……ただでは済ませないわよ?」
 半泣きの後輩事務官をかばいつつ、リィナは数の暴行におよばんとした冒険者達を睨む。
「リィナちゃん、待ってくれ!! ひとまずこのクエストを見てくれ、それから話し合おう。なっ!」
 あのリィナとローラン相手では束になっても勝てない。それをよく知っている田舎冒険者達はクエストボード前からさあっと引いて道を作り、2人に確認するように促す。
「ええと、スラッグの魔石採取に肉体労働、荷物配送……魔物討伐依頼だわ!! ローランさん、これって確か……あの人が言っていた」
「ああ、間違いない! すみません、これの詳細聞かせてもらえますか?」
「クエスト受注ありがとうございます! ではこちらへどうぞ!!」
 思惑通りに動いてくれた戦闘民族・リィナ先輩と半魔族のローランさんに感謝しつつ後輩事務官マリナは2人と共にロビーから退場。
 事務員に対する乱暴狼藉でお縄になりかけた冒険者達も各々の分にあったクエストを選んで受付窓口に並ぶ。

【第13話に続く】
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