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第一章:『滅びし王国の平原』
【第3話】
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「逃がすか!!『大地の奇跡!!』」
瓦礫をかき分けて地下に逃げ込み、地面を盛り上げながら浅い地下を爆走して平野へ逃げ込もうとする敵を前に触腕茨を飛び越えて大跳躍したローランはそのままレオルアン王都の城郭を足場にして二段ジャンプ。
強い光を帯びた大剣を上段に構えたまま自由落下し、力任せに地面に叩きつける。
「ギャァァァァァァ!!」
レオルアン王都城郭廃墟を震源地として『滅びし王国の平原』を突如として襲った強烈な地揺れ。
巨大植物魔物ブラッディラフレシアが命からがら地中に逃げ込んで脱兎の如く逃げんとした所に直撃したプレートテクトニクスや地質学を完全無視した『奇跡』そのものに地面はひび割れて隆起。
のどかな平原は瞬時に地表と地下がひっくり返ったかのような大災害に見舞われる。
「ギッ……グェェェ……ギィィィィ」
地面から突き上げられ、心臓部となる巨大な球根を白日の下に晒した巨大植物魔物はその最大の弱点である太陽光を全身に注がれ、動く力も失って断末魔のうめき声を上げながら枯れ死んでいく。
「よし、これでヤツは動けないだろう。あとは自然蘇生されないように心臓部となる魔石を取り出せば……」
警戒しつつ干からびた地下茎上にのぼったローランは白銀の大剣をその頂部に突き立てて穴を開け、その中をえぐり返して何かを探す。
「あった!! これがこいつの魔石か!! こんな大きい物は魔界でも見たことないぞ……おそらくこいつがそれだけ強力で危険なヤツだったと言う証拠だ。 とりあえずこれはこのデカイ骸から引き離して……『無限収納の奇跡!!』」
両手で抱える程の巨大な翠玉石にして魔物の魔力エネルギー源となる魔石をどうにかその体内から抜き出したローランはどんな物でも無制限に収容保存出来る奇跡の魔力収納スペースを開こうとしたが何も起こらない。
「あれっ?『無限収納の奇跡!!』」
もう一度詠唱しても結果は変わらない。
「ううん、困ったなぁ……何で奇跡が発動しないんだ? それに廃墟とは言えおばあ様の故郷にこんな汚い魔物の骸を放置しておくわけにもいかないし」
そんな事を考えていて、西の空に傾きつつある太陽に気づいたローラン。
おばあ様の故郷たるレオルアン王国が無人の廃墟と化しているばかりか野蛮な賊も近づかない凶悪な魔物の住み着く『滅びし王国の平原』と言う禁足の地扱いされていると言う事実を確かめ、巨大な魔物の骸を処理する人足を呼んでもらうためにも人里に出る必要性がある事に気が付いたローランは立ち上がって周囲を見まわす。
「ううん……人はおろか動物の気配も。いや、近くに2つ……反応があるぞ!! あれは、あの3人の賊が乗っていた馬車と馬だ!!」
廃墟の地面を突き破って巨大植物魔物が出現した瞬間、馬車に繋がれたまますぐに死に物狂いで平原に逃げ出していたであろう馬。
隆起した大地に取り残され、ただ怯えて震える哀れな動物にローランは駆け寄る。
「よしよし、怖くないよ。もう大丈夫だからね……」
「ブルルル……」
万物の意思を汲み取り、意思疎通を図れる『慈愛の奇跡』で優しくなだめつつ、怯えて震える馬に近づくローラン。それが通じたのか賊の馬車に固定されたままの馬は落ち着きを取り戻し、近づいてくるローランにすり寄る。
「君はどこから来たんだい? この近くに人里は……あるんだね!! お願いだ、どうかそこまで連れていってくれないか?」
「ブルルル、ブヒヒン!」
「ありがとう、助かるよ!! えっ、連れて行ってやるからまずは可哀そうな女の子を助けてやってくれだって? 女の子が……どこに?」
賊が移動拠点として使っていた馬車内に入ったローラン。
略奪品と思しき金目のゴミが無造作に詰め込まれた袋の数々と保存食に酒瓶。
そんな薄汚い馬車の角に安置された人間サイズの大きな木箱に気づいたローランは恐る恐る近づき、軽く叩いてみる。
「んんーぅ! ううーっ! ぅぅぅ!」
「うわあああ!!」
軽く叩いた瞬間、ガタガタと暴れ出す箱。
早ぅやらんかと非難するような馬の目に耐え切れず、暴れる木箱に近づいたローランは中に閉じ込められている生き物が猛獣で無い事を祈りつつ、木箱の蓋を開ける。
「なんて酷い事を……大丈夫ですか!? しっかり!!」
形ばかりのぼろ布クッションの敷き詰められた箱に手足を縛られて口枷を付けられ、膝を折り曲げるように身を小さくして閉じ込められていた金髪の女の子。
衣服を剥ぎ取られ、薄着で震える女の子の枷を切り外しすぐに助け出す。
「その銀髪は……半魔族なの?」
「ハンマゾク?」
「まさか……あの3人組。私を半魔族に奴隷として売り飛ばしたの? 悪い半魔族の奴隷だなんて……嫌ぁぁぁぁ! 助けてお父様ああ!!」
手足が自由になった女の子はもつれる足で転げ落ちるように馬車から逃げ出し、辺りを見回す。
「あれはお父様も言っていた超巨大植物魔物……ブラッディラフレシアよね……死んでいるの?」
初めて目近に見るレオルアン王国廃城、滅茶苦茶になった平原で息絶えた巨大植物魔物の骸。囚われの身から解放された直後で一気に流れ込んで来た視覚情報の処理がおいつかなかった女の子は腰が抜けてしまい地面にへたり込んでしまう。
【第4話に続く】
瓦礫をかき分けて地下に逃げ込み、地面を盛り上げながら浅い地下を爆走して平野へ逃げ込もうとする敵を前に触腕茨を飛び越えて大跳躍したローランはそのままレオルアン王都の城郭を足場にして二段ジャンプ。
強い光を帯びた大剣を上段に構えたまま自由落下し、力任せに地面に叩きつける。
「ギャァァァァァァ!!」
レオルアン王都城郭廃墟を震源地として『滅びし王国の平原』を突如として襲った強烈な地揺れ。
巨大植物魔物ブラッディラフレシアが命からがら地中に逃げ込んで脱兎の如く逃げんとした所に直撃したプレートテクトニクスや地質学を完全無視した『奇跡』そのものに地面はひび割れて隆起。
のどかな平原は瞬時に地表と地下がひっくり返ったかのような大災害に見舞われる。
「ギッ……グェェェ……ギィィィィ」
地面から突き上げられ、心臓部となる巨大な球根を白日の下に晒した巨大植物魔物はその最大の弱点である太陽光を全身に注がれ、動く力も失って断末魔のうめき声を上げながら枯れ死んでいく。
「よし、これでヤツは動けないだろう。あとは自然蘇生されないように心臓部となる魔石を取り出せば……」
警戒しつつ干からびた地下茎上にのぼったローランは白銀の大剣をその頂部に突き立てて穴を開け、その中をえぐり返して何かを探す。
「あった!! これがこいつの魔石か!! こんな大きい物は魔界でも見たことないぞ……おそらくこいつがそれだけ強力で危険なヤツだったと言う証拠だ。 とりあえずこれはこのデカイ骸から引き離して……『無限収納の奇跡!!』」
両手で抱える程の巨大な翠玉石にして魔物の魔力エネルギー源となる魔石をどうにかその体内から抜き出したローランはどんな物でも無制限に収容保存出来る奇跡の魔力収納スペースを開こうとしたが何も起こらない。
「あれっ?『無限収納の奇跡!!』」
もう一度詠唱しても結果は変わらない。
「ううん、困ったなぁ……何で奇跡が発動しないんだ? それに廃墟とは言えおばあ様の故郷にこんな汚い魔物の骸を放置しておくわけにもいかないし」
そんな事を考えていて、西の空に傾きつつある太陽に気づいたローラン。
おばあ様の故郷たるレオルアン王国が無人の廃墟と化しているばかりか野蛮な賊も近づかない凶悪な魔物の住み着く『滅びし王国の平原』と言う禁足の地扱いされていると言う事実を確かめ、巨大な魔物の骸を処理する人足を呼んでもらうためにも人里に出る必要性がある事に気が付いたローランは立ち上がって周囲を見まわす。
「ううん……人はおろか動物の気配も。いや、近くに2つ……反応があるぞ!! あれは、あの3人の賊が乗っていた馬車と馬だ!!」
廃墟の地面を突き破って巨大植物魔物が出現した瞬間、馬車に繋がれたまますぐに死に物狂いで平原に逃げ出していたであろう馬。
隆起した大地に取り残され、ただ怯えて震える哀れな動物にローランは駆け寄る。
「よしよし、怖くないよ。もう大丈夫だからね……」
「ブルルル……」
万物の意思を汲み取り、意思疎通を図れる『慈愛の奇跡』で優しくなだめつつ、怯えて震える馬に近づくローラン。それが通じたのか賊の馬車に固定されたままの馬は落ち着きを取り戻し、近づいてくるローランにすり寄る。
「君はどこから来たんだい? この近くに人里は……あるんだね!! お願いだ、どうかそこまで連れていってくれないか?」
「ブルルル、ブヒヒン!」
「ありがとう、助かるよ!! えっ、連れて行ってやるからまずは可哀そうな女の子を助けてやってくれだって? 女の子が……どこに?」
賊が移動拠点として使っていた馬車内に入ったローラン。
略奪品と思しき金目のゴミが無造作に詰め込まれた袋の数々と保存食に酒瓶。
そんな薄汚い馬車の角に安置された人間サイズの大きな木箱に気づいたローランは恐る恐る近づき、軽く叩いてみる。
「んんーぅ! ううーっ! ぅぅぅ!」
「うわあああ!!」
軽く叩いた瞬間、ガタガタと暴れ出す箱。
早ぅやらんかと非難するような馬の目に耐え切れず、暴れる木箱に近づいたローランは中に閉じ込められている生き物が猛獣で無い事を祈りつつ、木箱の蓋を開ける。
「なんて酷い事を……大丈夫ですか!? しっかり!!」
形ばかりのぼろ布クッションの敷き詰められた箱に手足を縛られて口枷を付けられ、膝を折り曲げるように身を小さくして閉じ込められていた金髪の女の子。
衣服を剥ぎ取られ、薄着で震える女の子の枷を切り外しすぐに助け出す。
「その銀髪は……半魔族なの?」
「ハンマゾク?」
「まさか……あの3人組。私を半魔族に奴隷として売り飛ばしたの? 悪い半魔族の奴隷だなんて……嫌ぁぁぁぁ! 助けてお父様ああ!!」
手足が自由になった女の子はもつれる足で転げ落ちるように馬車から逃げ出し、辺りを見回す。
「あれはお父様も言っていた超巨大植物魔物……ブラッディラフレシアよね……死んでいるの?」
初めて目近に見るレオルアン王国廃城、滅茶苦茶になった平原で息絶えた巨大植物魔物の骸。囚われの身から解放された直後で一気に流れ込んで来た視覚情報の処理がおいつかなかった女の子は腰が抜けてしまい地面にへたり込んでしまう。
【第4話に続く】
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