25 / 26
【最終話:ネバ―・エンディング・ゲーム】
しおりを挟む
『岩谷様、こちらへどうぞ、』
信濃さんの犠牲により終了した第五ゲーム……最終勝者として仮面執事のリチャードに腕内のスマートウォッチを取り外してもらえた直樹は仮面メイドのアシュリーに案内されてグームルームの奥にある隠し部屋に向かっていた。
『おめでとう、直樹君!!』
薄暗い隠し部屋に入った瞬間、頭上のスポットライトと共に出現して出迎えたのは真紅のアンティークソファーに座った真紅のヴィクトアンドレスのグームマスター・レディ。
「あっ、ありがとうございます……レディ」
バニーガールから一瞬でこれに着替えたのかな、そんな疑間を抱えつつも直樹は波風立てない無難な返答を選ぶ。
「さて、まずは……君から預かっていた荷物を返さないとね。スマホに財布、学校の物、全部揃っているかしら?」
部屋の隅で控えていたメイドのアシュリーが運んで来た鞄を受けとった直樹はスマホの電源を入れて起動確認し、財布の中身と鞄の中に入った教科書やノートを確かめる。
「大丈夫です、レデイ」
『それは何よりだわ!! それで報酬の件なんだけど……ハイスクールスチューデントな君がこれを持って帰って大丈夫だと思う?』
続いてジェラルミンケースを取り出したリチャードはそれをミニアンティークテーブル上に置き、上下面にぎっしりと詰め込まれた現金を見せる。
(……これだけあれば)
タワマン最上階、別荘、高級車、老後資金……あまりにも圧倒的な金の魔力に獲り付かれそうになった直樹だが、あの時の謎の幻覚を思い返し、正気を取り戻す。
「お気持ちは嬉しいんですけど、辞退すると言うのは可能でしょうか?
ただでさえ2ヶ月も行方不明になっていたのにそれだけの現金を持って帰るなんて……怖すぎて出来ません」
電波受信中のスマホの日付から監禁期間を推測した直樹は交渉材料として利用する。
『まあそれもそうよね、賢明な判断だわ。 それで帰り道は……どうしましょうか』
「どうしましょうか、とは?」
『お恥ずかしい話なんだけど帰り道のエレベーターは急に壊れて修理手配中。リチャードの車も緊急整備中で無いのよ。 それで非常階段しか使えないんだけどそれでもいい? それともここでしばらく待つ?』
「わかりました! それでお願いします!!」
偶然と幸運により、幻覚の世界で自分の先人?が辿った末路とは別の選択肢が与えられた直樹。
とにかくここから早く出られるのであれば何でもいい、その思いから直樹は非常階段で即決する。
(とにかくここを出たらすぐに警察に行って保護してもらい……そして家族と再会して)
3人に見送られて謎の地下空間を脱出し、1人薄暗い非常階段を昇りつつ今後やる事を整理する直樹。
(そしてどこであったとしてもここに繋がる入口なる場所をスマホのGPSで把握しておこう)
あの毒スマートウォッチも完全に外されて解放されとは言えここはまだ敵地だ。そのメンタリティとともにレディの部下である2人の奇襲や強襲に備えて警戒を続ける。
(それにあのまだら金髪男はとにかくとして早川君、佐倉川さん、山田さん、牛田さん、聖さん、信濃さんのご遺族と……もし可能ならRINKOさんの親類縁者にもご訃報を伝えないと)
ゲームマスター・レデイの正体が何者であれ、8人の命を奪った罪は必ず償わせる。
そんな決意と共に階段を昇っていた直樹は最上階と思しきドアのある場所に到着する。
「よしっ…… !!」
どの道ここから出るしかない、覚悟を決めた直樹は扉を開ける。
「ここは工事現場? いや、どこかの廃墟か?」
不意打ちの類も無く、無事に出る事が出来た地上世界。
夜の月に照らされた重機が放置され、壊されたコンクリ塊と鉄骨が転がった場所。
開放感と安堵感と共に腰を抜かしそうになる直樹であるが……すぐにGPSでの場所確認と警察への連絡をすべくスマホを取り出す。
「……あれっ?」
しかしながらスマホ画面はぐちゃぐちゃの砂嵐になって故障していると言う異常事態。
直樹が慌てて再起動操作しようとしたその時……画面から発せられたものすごい閃光が眼と脳に叩きこまれる。
「うっ…… ううん、あれっ?」
「きゃあああ、何よこれ!!」
「私を誰だと思っているんだ、この無礼者!!」
「何が起こっとるんや!? どないしたねん!!」
「えっ、ええっ? えっ?」
真っ暗な部屋に響く老若男女の悲鳴と困惑の声。
(……ここは、どこだ?)
青ビニール手術着に腕内に埋め込まれた傷だらけのスマートウォッチ……拘束椅子に手足を完全拘束された男子高校生、岩谷 直樹は学校帰りに見た真っ白な何かを最後に記憶が無いものの明らかに異常事態に巻き込まれており、自分でもわけがわからないままに中途半端に冷静な思考で周囲を見回す。
『おはようございますわ、皆さま!! ご機嫌いかかがかしら?』
突如、目の前のモニターに映し出されたのは真っ赤なヴィクトアンドレスに仮面を付けた謎の女。
「お前、誰や!!」
「おうちに返してよお! !」
「私を誰だと思っている、この無礼者!!」
「うわぁぁぁん!! びぇぇぇぇぇん!!」
(ゲームマスター? なにか僕は……大事な事を忘れているような気がするぞ? だが、何だったのか……それすらさっばりだ?)
『さて、説明を始めるわよ! 皆さんにはこれから……』
椅子に拘束された9人の前で楽しそうにこれから始まる事の説明を始めるゲームマスター・レディ。
享楽的でありながら退廃的でもあるゲームマスター・レディの有閑にして倒錯的な5つの狂遊戯がこうして幕を開けたのであった。
【ゲームマスター・レディの有閑にして倒錯的な5つの狂遊戯:完】
信濃さんの犠牲により終了した第五ゲーム……最終勝者として仮面執事のリチャードに腕内のスマートウォッチを取り外してもらえた直樹は仮面メイドのアシュリーに案内されてグームルームの奥にある隠し部屋に向かっていた。
『おめでとう、直樹君!!』
薄暗い隠し部屋に入った瞬間、頭上のスポットライトと共に出現して出迎えたのは真紅のアンティークソファーに座った真紅のヴィクトアンドレスのグームマスター・レディ。
「あっ、ありがとうございます……レディ」
バニーガールから一瞬でこれに着替えたのかな、そんな疑間を抱えつつも直樹は波風立てない無難な返答を選ぶ。
「さて、まずは……君から預かっていた荷物を返さないとね。スマホに財布、学校の物、全部揃っているかしら?」
部屋の隅で控えていたメイドのアシュリーが運んで来た鞄を受けとった直樹はスマホの電源を入れて起動確認し、財布の中身と鞄の中に入った教科書やノートを確かめる。
「大丈夫です、レデイ」
『それは何よりだわ!! それで報酬の件なんだけど……ハイスクールスチューデントな君がこれを持って帰って大丈夫だと思う?』
続いてジェラルミンケースを取り出したリチャードはそれをミニアンティークテーブル上に置き、上下面にぎっしりと詰め込まれた現金を見せる。
(……これだけあれば)
タワマン最上階、別荘、高級車、老後資金……あまりにも圧倒的な金の魔力に獲り付かれそうになった直樹だが、あの時の謎の幻覚を思い返し、正気を取り戻す。
「お気持ちは嬉しいんですけど、辞退すると言うのは可能でしょうか?
ただでさえ2ヶ月も行方不明になっていたのにそれだけの現金を持って帰るなんて……怖すぎて出来ません」
電波受信中のスマホの日付から監禁期間を推測した直樹は交渉材料として利用する。
『まあそれもそうよね、賢明な判断だわ。 それで帰り道は……どうしましょうか』
「どうしましょうか、とは?」
『お恥ずかしい話なんだけど帰り道のエレベーターは急に壊れて修理手配中。リチャードの車も緊急整備中で無いのよ。 それで非常階段しか使えないんだけどそれでもいい? それともここでしばらく待つ?』
「わかりました! それでお願いします!!」
偶然と幸運により、幻覚の世界で自分の先人?が辿った末路とは別の選択肢が与えられた直樹。
とにかくここから早く出られるのであれば何でもいい、その思いから直樹は非常階段で即決する。
(とにかくここを出たらすぐに警察に行って保護してもらい……そして家族と再会して)
3人に見送られて謎の地下空間を脱出し、1人薄暗い非常階段を昇りつつ今後やる事を整理する直樹。
(そしてどこであったとしてもここに繋がる入口なる場所をスマホのGPSで把握しておこう)
あの毒スマートウォッチも完全に外されて解放されとは言えここはまだ敵地だ。そのメンタリティとともにレディの部下である2人の奇襲や強襲に備えて警戒を続ける。
(それにあのまだら金髪男はとにかくとして早川君、佐倉川さん、山田さん、牛田さん、聖さん、信濃さんのご遺族と……もし可能ならRINKOさんの親類縁者にもご訃報を伝えないと)
ゲームマスター・レデイの正体が何者であれ、8人の命を奪った罪は必ず償わせる。
そんな決意と共に階段を昇っていた直樹は最上階と思しきドアのある場所に到着する。
「よしっ…… !!」
どの道ここから出るしかない、覚悟を決めた直樹は扉を開ける。
「ここは工事現場? いや、どこかの廃墟か?」
不意打ちの類も無く、無事に出る事が出来た地上世界。
夜の月に照らされた重機が放置され、壊されたコンクリ塊と鉄骨が転がった場所。
開放感と安堵感と共に腰を抜かしそうになる直樹であるが……すぐにGPSでの場所確認と警察への連絡をすべくスマホを取り出す。
「……あれっ?」
しかしながらスマホ画面はぐちゃぐちゃの砂嵐になって故障していると言う異常事態。
直樹が慌てて再起動操作しようとしたその時……画面から発せられたものすごい閃光が眼と脳に叩きこまれる。
「うっ…… ううん、あれっ?」
「きゃあああ、何よこれ!!」
「私を誰だと思っているんだ、この無礼者!!」
「何が起こっとるんや!? どないしたねん!!」
「えっ、ええっ? えっ?」
真っ暗な部屋に響く老若男女の悲鳴と困惑の声。
(……ここは、どこだ?)
青ビニール手術着に腕内に埋め込まれた傷だらけのスマートウォッチ……拘束椅子に手足を完全拘束された男子高校生、岩谷 直樹は学校帰りに見た真っ白な何かを最後に記憶が無いものの明らかに異常事態に巻き込まれており、自分でもわけがわからないままに中途半端に冷静な思考で周囲を見回す。
『おはようございますわ、皆さま!! ご機嫌いかかがかしら?』
突如、目の前のモニターに映し出されたのは真っ赤なヴィクトアンドレスに仮面を付けた謎の女。
「お前、誰や!!」
「おうちに返してよお! !」
「私を誰だと思っている、この無礼者!!」
「うわぁぁぁん!! びぇぇぇぇぇん!!」
(ゲームマスター? なにか僕は……大事な事を忘れているような気がするぞ? だが、何だったのか……それすらさっばりだ?)
『さて、説明を始めるわよ! 皆さんにはこれから……』
椅子に拘束された9人の前で楽しそうにこれから始まる事の説明を始めるゲームマスター・レディ。
享楽的でありながら退廃的でもあるゲームマスター・レディの有閑にして倒錯的な5つの狂遊戯がこうして幕を開けたのであった。
【ゲームマスター・レディの有閑にして倒錯的な5つの狂遊戯:完】
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
感染した世界で~Second of Life's~
霧雨羽加賀
ホラー
世界は半ば終わりをつげ、希望という言葉がこの世からなくなりつつある世界で、いまだ希望を持ち続け戦っている人間たちがいた。
物資は底をつき、感染者のはびこる世の中、しかし抵抗はやめない。
それの彼、彼女らによる、感染した世界で~終わりの始まり~から一年がたった物語......
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
怪物どもが蠢く島
湖城マコト
ホラー
大学生の綿上黎一は謎の組織に拉致され、絶海の孤島でのデスゲームに参加させられる。
クリア条件は至ってシンプル。この島で二十四時間生き残ることのみ。しかしこの島には、組織が放った大量のゾンビが蠢いていた。
黎一ら十七名の参加者は果たして、このデスゲームをクリアすることが出来るのか?
次第に明らかになっていく参加者達の秘密。この島で蠢く怪物は、決してゾンビだけではない。
白城(しろぐすく)の槍
和紗かをる
大衆娯楽
痛快サイコパスエンターテイメント開幕。ある少年が出会う普通の世界の裏側の物語。策士の少女に恋をして、因果の反逆者を屠るただ一つの槍として駆け抜けた白城一槍(しろぐすくいちやり)の生とは。異形な暗殺者や超常の力を操る武芸家が織りなすハイテンションストーリーをご覧あれ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる