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【第四話:ファースト・ゲーム】
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『ビビーッ!! ビビビビーッ!!』
「うおう!!」
真っ暗な部屋で腕に埋め込まれたスマートウォッチの強烈なバイブと金切り音アラームで二段ベッドから飛び起きた9人の老若男女。
「いででで!! 骨が、骨があ!!」
腕全体どころか骨と神経にダイレクトに来る強烈な震動を必死で止めようとする9人であるが、止めるボタンは画面上のどこにもなく、いつ終わるともわからない苦しみに腕を押さえてもだえ苦しむ。
『おはようございますわ、皆様!! よく眠れましたかしら?』
「はぁ……はぁ……うぐぅぅぅ」
スマートウォッチのアラームが終わった直後、SOUND ONLYな非通知着信と共に陽気な声で現れたゲームマスター・レデイ。
『さて、今日は皆さまにとって初めてとなるファースト・ゲームの日。 先日お話できなかったルール説明と私の華やかな顔見世もありますからお早めにお着換えの上、ゲームルームにいらしてくださいませ、楽しみにしておりますわ!!』
通話がブチッと切れ、勝手に明るくなっていく二段ベッドルーム。
いつの間にか各々の枕元に置かれていたビニール袋に気づいた9人はすぐにそれを手に取る。
「これは……何なんだ?」
「何をさせられると言うんだ?」
「ヂッ!!」
中に入っていた物に戸惑いを隠せない9人であるが、00:45:31からのカウントダウンを続けるスマートウォッチに逆らう事は出来ず同封された来付けマニュアルと共にあわててそれらを身に付けて行く。
~それから約一時間後~
『皆さま、レデイのファースト・ゲームヘようこそ……お似合いですわよ、うふふ』
指定の衣装に着替え、昨日は入れなかったゲームルームに入った9人を出迎えるゲームマスター・レディ。
部屋の角に4本の朱塗りの柱が建てられた、一面朱塗りの部屋の上座、強化ガラス壁の後ろに坐するゲームマスター・レディは昨日のヴィクトリアンドレスとは一転。
竜虎相打つ金屏風を背に色とりどりの着物を幾重にも重ね着して金銀べっ甲のかんざしを髪に差し、黒狐の半面を付けたミステリアス花魁スタイルの妖艶な口元でにっこりと笑う。
「……とにかく枕元にあった物を着て来たが、これでいいんだろ?」
指示通り着物に袴、チョンマゲかつらを装着した直樹は漆塗りの螺錮仕立てキセルで紫煙を楽しむ花魁レディーに問う。
『もちろんOKよ!! ドレスコードを重んじる私のゲームには指定の衣装以外での立入禁止。仮に私の指示を無視して無粋な衣服で押し入ろうものなら……センサーが作動してそのスマートウォッチに内蔵された劇毒が体内に打ち込まれるのよ?』
「!?」
事実だとしたら昨日の電気ショック椅子とは比較にならないトンデモ爆弾発言。
チョンマゲサムライとなった9人は思わず腕に目をやってしまう。
『うふふ、今は大丈夫よ……私の気分を害さなければソレは起動しないから!! さて、ファースト・ゲームの説明に入ってよろしいかしら?』
ABC15のファンどころか何者かも分からないが、こいつはヤバいサイコパス女だ。そう察した9人は黙ってうなずく。
『さて、今日のゲームは昔懐かしのチャンバラごっこよ!!』
「はぁ?」
サムライのコスプレとは全く関係ない懐かしくもクソも無いゲームに全員突っ込んでしまう。
『リチャード、例のモノを!』
「はっ!」
ミステリアス花魁の後ろに直立不動で控えていた翁の能面を付けたサムライ男が天丼から下がった太縄をぐいっと引くと、上座以外の壁天丼ガラガラと言う音と共に縄梯子が落下してくる。
「忍者屋敷!?」「いや、この縄梯子……木刀だ!!」
和田の指摘で縄梯子をよく見た8人は、そのステップ全てがミニLED液晶を持ち手に組み込んだ木刀で、縄梯子と思われたそれは壁掛けタイプの刀掛けである事に気づく。
『スマートウォッチの画面を見てくださる?』
直樹がスマートウォッチに目をやると、カウントダウン000000ではなく0/0と言う表示に切り替わっており、右の数字横には刀のようなアイコンが描かれている。
『このチャンバラ刀は全て安全に考慮した柔らか素材製。ただしそれぞれにスコアが設定されており、誰かを打ち据えた回数×刀のスコア分のポイントが入りますわ。その小さな画面はそれを表示するためのもの、ご参考になすって下さいませ』
「そんな、棒で人を殴れだなんて……出来ません!!」
「そうだ!! そんな事許されると思っているのか!!」
ゲームマスター・レディに抗議する唄子と源太郎。
『あら、でしたら何もしなくてもいい事ですのよ? ただし……最下位になって脱落となったら源太郎さんは二度と 奥様や娘さんに会えませんし、唄子さんは大切なご家族の待つお家に帰れなくなりますけどね!! まあ人生万事ケ・セラ・セラと言う事でよろしいんじゃないかしら。ウフフフフ……』
鶴と亀の扇を優雅に広げ、口を歪めて笑うレディ。
最初の電気椅子処刑と冗談とは思えない劇毒発言、『脱落』が意味する最悪の可能性を察した9人はまだ何も表示されていないチャンバラ刀のミニ液晶を思わず見回してしまう。
『うふふ、皆さん準備万端のようですね……制限時間は15分。フアースト・ゲーム、出陣ですわ!!』
サムライ姿のリチャードはどこからか取り出した立派な法螺貝を口に当てる。
【第五話:バイオレント・サムライに続く】
「うおう!!」
真っ暗な部屋で腕に埋め込まれたスマートウォッチの強烈なバイブと金切り音アラームで二段ベッドから飛び起きた9人の老若男女。
「いででで!! 骨が、骨があ!!」
腕全体どころか骨と神経にダイレクトに来る強烈な震動を必死で止めようとする9人であるが、止めるボタンは画面上のどこにもなく、いつ終わるともわからない苦しみに腕を押さえてもだえ苦しむ。
『おはようございますわ、皆様!! よく眠れましたかしら?』
「はぁ……はぁ……うぐぅぅぅ」
スマートウォッチのアラームが終わった直後、SOUND ONLYな非通知着信と共に陽気な声で現れたゲームマスター・レデイ。
『さて、今日は皆さまにとって初めてとなるファースト・ゲームの日。 先日お話できなかったルール説明と私の華やかな顔見世もありますからお早めにお着換えの上、ゲームルームにいらしてくださいませ、楽しみにしておりますわ!!』
通話がブチッと切れ、勝手に明るくなっていく二段ベッドルーム。
いつの間にか各々の枕元に置かれていたビニール袋に気づいた9人はすぐにそれを手に取る。
「これは……何なんだ?」
「何をさせられると言うんだ?」
「ヂッ!!」
中に入っていた物に戸惑いを隠せない9人であるが、00:45:31からのカウントダウンを続けるスマートウォッチに逆らう事は出来ず同封された来付けマニュアルと共にあわててそれらを身に付けて行く。
~それから約一時間後~
『皆さま、レデイのファースト・ゲームヘようこそ……お似合いですわよ、うふふ』
指定の衣装に着替え、昨日は入れなかったゲームルームに入った9人を出迎えるゲームマスター・レディ。
部屋の角に4本の朱塗りの柱が建てられた、一面朱塗りの部屋の上座、強化ガラス壁の後ろに坐するゲームマスター・レディは昨日のヴィクトリアンドレスとは一転。
竜虎相打つ金屏風を背に色とりどりの着物を幾重にも重ね着して金銀べっ甲のかんざしを髪に差し、黒狐の半面を付けたミステリアス花魁スタイルの妖艶な口元でにっこりと笑う。
「……とにかく枕元にあった物を着て来たが、これでいいんだろ?」
指示通り着物に袴、チョンマゲかつらを装着した直樹は漆塗りの螺錮仕立てキセルで紫煙を楽しむ花魁レディーに問う。
『もちろんOKよ!! ドレスコードを重んじる私のゲームには指定の衣装以外での立入禁止。仮に私の指示を無視して無粋な衣服で押し入ろうものなら……センサーが作動してそのスマートウォッチに内蔵された劇毒が体内に打ち込まれるのよ?』
「!?」
事実だとしたら昨日の電気ショック椅子とは比較にならないトンデモ爆弾発言。
チョンマゲサムライとなった9人は思わず腕に目をやってしまう。
『うふふ、今は大丈夫よ……私の気分を害さなければソレは起動しないから!! さて、ファースト・ゲームの説明に入ってよろしいかしら?』
ABC15のファンどころか何者かも分からないが、こいつはヤバいサイコパス女だ。そう察した9人は黙ってうなずく。
『さて、今日のゲームは昔懐かしのチャンバラごっこよ!!』
「はぁ?」
サムライのコスプレとは全く関係ない懐かしくもクソも無いゲームに全員突っ込んでしまう。
『リチャード、例のモノを!』
「はっ!」
ミステリアス花魁の後ろに直立不動で控えていた翁の能面を付けたサムライ男が天丼から下がった太縄をぐいっと引くと、上座以外の壁天丼ガラガラと言う音と共に縄梯子が落下してくる。
「忍者屋敷!?」「いや、この縄梯子……木刀だ!!」
和田の指摘で縄梯子をよく見た8人は、そのステップ全てがミニLED液晶を持ち手に組み込んだ木刀で、縄梯子と思われたそれは壁掛けタイプの刀掛けである事に気づく。
『スマートウォッチの画面を見てくださる?』
直樹がスマートウォッチに目をやると、カウントダウン000000ではなく0/0と言う表示に切り替わっており、右の数字横には刀のようなアイコンが描かれている。
『このチャンバラ刀は全て安全に考慮した柔らか素材製。ただしそれぞれにスコアが設定されており、誰かを打ち据えた回数×刀のスコア分のポイントが入りますわ。その小さな画面はそれを表示するためのもの、ご参考になすって下さいませ』
「そんな、棒で人を殴れだなんて……出来ません!!」
「そうだ!! そんな事許されると思っているのか!!」
ゲームマスター・レディに抗議する唄子と源太郎。
『あら、でしたら何もしなくてもいい事ですのよ? ただし……最下位になって脱落となったら源太郎さんは二度と 奥様や娘さんに会えませんし、唄子さんは大切なご家族の待つお家に帰れなくなりますけどね!! まあ人生万事ケ・セラ・セラと言う事でよろしいんじゃないかしら。ウフフフフ……』
鶴と亀の扇を優雅に広げ、口を歪めて笑うレディ。
最初の電気椅子処刑と冗談とは思えない劇毒発言、『脱落』が意味する最悪の可能性を察した9人はまだ何も表示されていないチャンバラ刀のミニ液晶を思わず見回してしまう。
『うふふ、皆さん準備万端のようですね……制限時間は15分。フアースト・ゲーム、出陣ですわ!!』
サムライ姿のリチャードはどこからか取り出した立派な法螺貝を口に当てる。
【第五話:バイオレント・サムライに続く】
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