ミキちゃんちのインキュバス 2 !!

千両文士

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【ミキちゃんちのインキュバス2!(第104話)】「淫魔アランと迷子の小鳥 がんばれゴロウマル!!」

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 都内S区某所にあるマンション、508号室。週末午前中。
『ピーッ!! ピーッ!! ピーッ!!』
「この音は洗濯機ね……」
 ソファーに寝そべって週末だらだら読漫中の株式会社サウザンド人事部採用担当者、守屋 美希・通称ミキちゃんは漫画にしおりを挟んで立ち上がる。
「じゃあ僕、取りに行きますんで!!」
 そんな彼女の傍らで床に座り、同じくのんびり読漫中だった金髪碧眼のイケメン。
 大学浪人生なミキちゃんの親戚として同居中の魔界人にして男淫魔アラン・インマも同じく漫画にしおりを挟んで立ち上がる。
「アラン君が取りに行くならベランダ開けとくね!!」
「ありがとうございます、ミキさん!!」
 アランが洗濯機を開け、洗濯物をカゴに移している間にベランダ窓に向かったミキちゃん。
 ベランダ窓を開けて網戸も解放したその時……何かの物理的物体が一陣の風と共に飛び込んでくる。
「えっ、鳥……? 鳥やハトやスズメの類ではないわね……」
 ミキちゃんとアランの目の前でジョイステーションエックス上に乗り、ブルブル震える深緑色の羽をもつ小鳥。
「えっ、ええと……猫や犬なら警察に届けなきゃならないけど……小鳥の場合はどうすれば? そもそもこれは野鳥なのか、誰かに飼われていた家鳥(?)なのか……」
 不安げに508号室内を見回している小鳥を前に洗濯カゴを床に置き、そっと向かっていくアラン。
 おどおどしつつもアランを恐れず逃げる気配の無い緑色の小鳥に対し、アランはそっと指を差し出してみる。
「ピピッ……」
 ためらうことなくジョイステーションエックス上からアランの指に横歩きで移ってくる深緑色の小鳥。
「ミキさん、乗っちゃいましたけどどうしましょう?」
 指乗り小鳥を前に戸惑いつつもほんわかとした癒されスマイルを見せるアラン。
「とりあえず……間古さんに相談しましょうか?」
 野鳥でない事を確信した2人は近くに置いてあったイリオモテヤマネコ便空箱にタオルを敷いてそっと小鳥を入れ、ゆるく蓋をして静かに玄関へ歩き出す。

 それから数日後……
「ピピッ、ピピッ……」
 小さな鳥かご内の棒に掴まり、ご機嫌に鳴いている深緑色の小鳥。
「人間界の鳥は本当に小さくて可愛いなあ……」
 間古さんに事情を話し、彼女が以前飼っていた文鳥のケージを借りて餌と水を用意したアラン。

 子供のころ、淫魔財閥事業の一環で個人移動手段として調教済みの小型魔界猛禽類(※翼幅数メートル級)に乗った時の事を思い出しつつケージ内の小鳥を見ていたアラン。
 大学浪人生にして主夫と言う立場上、必然的に日中のお世話担当となったアランはチラシを見た飼い主さんか取得物届けを出した警察から連絡がないか魔界スマホをチラ見するが反応はない。
「せめて魔力で意思疎通が出来ればなあ……」
「ピピッ?」
 魔力テレパシーで意思疎通を図らんとするアランの目線に気付き、可愛らしく首をかしげる深緑色の小鳥。
「まてよ、鳥……なら!!」
 何かに気が付き、すぐにパーソナルスペースの物置に向かうアラン。
 押し売りおじさんの宝物の横に置かれた段ボール箱に腕を突っ込んだアランはそのまま肩辺りまでずずずと差し入れて何かを探る。
「あった、これだ!!」
 のらえもんが主に武器庫として用いている無限収納スペースと同性能な段ボール擬態型魔界暗器『無限ニシテ底ナキ厘(マジックボックス)』から黒いブニブニゼリー塊を取り出したアラン。
「ピピッ?」
 押し入れから出てきたアランは好奇心旺盛な小鳥の小屋に目隠し布をかけて床にそれを置く。
「……溶けよ 『強欲ナ軟体』」
 アランに魔力を注入され、部分的に融解しはじめる黒ゼリー塊……そこから出てきたのは鳩の頭部だ。
「グポーッ!? グポポポーッ!?(おっ、俺様生きてるのか!? どっ、どうなってやがるんだ!?)」
「久しぶりだな、ゴロウマル」
「ポポッ!! ポポポォッ!?(おま……いや、貴方はあの時のインムさん!? 俺はどうなってるんだ、動けねえぞ!?)」
「淫魔だよ、鳥頭……まあそれはさておきお前に頼みたいことがある」
 ベランダを糞まみれにし、ミキさんのスーツに落とし物を食らわせた性悪鳩のゴロウマルをものすごく久しぶりに目覚めさせたアランは魔力テレパシーで説明を始める。

「ぴぴっ? ぴいぴ?」
「ポポーッ……(つまりこいつの言葉を翻訳して伝えろと? インマの旦那、こいつどう見ても俺と違うんだけど無理がありやせんか?)」
 小鳥の鳴き声の通訳を命じられ、閉口するゴロウマル。
 そんなゴロウマルに対し、無言で『無限ニシテ底ナキ厘(マジックボックス)』に手を入れ
 たアランは青い卵を取り出し親指と人差し指の間に挟んで力をかけはじめる。
「……分かるな?」
「グポーッ!! グポポポーッ!!(不肖ゴロウマル!! 誠心誠意、一字一句逃さず翻訳いたします!! 何なりとお申し付けください!!)」
 やらなければ大切な自分の遺伝子が入った卵を潰されてしまう、と理解したゴロウマルは小鳥との会話を開始。
 氷の微笑を浮かべたアランとは対極的にピィピィポッポポッポと傍目微笑ましく鳴きあい始める。

 ~それからしばらくして~
「グポッ、クーッ、クーツ……(アランの旦那、わかりましたぜ……こいつの名前は 『ズンダちゃん』ですっごく遠くから来たそうですぜ)」
 ズンダちゃんなる小鳥からどうにか聞き出せた情報をアランに伝えるゴロウマル。
「それだけか?」
「グポーッ!! ポポーッ!! (マジでこれだけっす!! だから指に力を入れるのをやめてくだせえ!!)」
「まあ良しとしよう……んっ、ズンダちゃん?」
 ミキさんの会社絡みで聞き覚えのある名前を思い出そうとするアラン。
『ミキサンカラチャットダョッ!!』
 そんな中でチャットアプリ着信お知らせと共に震える魔界スマホをアランは掴み取る。
『アラン君、この前の小鳥さんだけど飼い主さんが見つかったの!!』
『人事の木賀田(きがた)さんがこの前お迎えした指乗り小鳥のズンダちゃんが行方不明らしいの!!』
『今日の夜、木賀田さんと一緒に帰って確認するから待っててね!!』
「ポポーッ、グーッ?(どうやら解決したようですね、インムの旦那!! じゃああっしはこれで……)」
「インマだよ、鳥頭」
 アランはゴロウマルを捕え固めたままの 『強欲ナ軟体』 を魔力操作して膨張させ、再度ゴロウマルと青タマゴをゼリー固め化。それを魔界暗器段ボールに入れて持ち上げたアランは物置定位置に戻しに行くのであった。

【FIN】
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