ミキちゃんちのインキュバス 2 !!

千両文士

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【ミキちゃんちのインキュバス2!(第93話)】「微ホラー回!? 実践厳禁(注)こっくりさんとカルピスかき氷」

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 8月某日、都内某所にあるマンション。
「ねえ、本当に やるの?」
 エアコンはついているものの、カーテンを閉め切って灯りも消した真っ暗な部屋で友人と共にテーブルを囲む女の子・田辺 麻弥(たなべ まや)、10歳は100円ショップで買って来たランタン型LEDライトで照らされた面々に問う。
「マヤ、今更何を言ってるのよ……」
「そうだぜ、母ちゃんが居ない今がチャンス……そうだろ?」
 中央の丸枠内に鳥居マークが描かれ、それを囲うようにあいうえおの50音表と(はい)、(いいえ)の項目が設けられたA4サイズの紙と10円玉を用意していく麻弥の兄である田辺裕次郎、12歳とその2人の友人は不安げな表情を浮かべる麻弥にかまうことなく夏の肝試し回の準備を進めて行く。
「まあ最近コレをやった人気動画投稿者も大丈夫だったし、やり方はきちんとスマホで確認したわけだから大丈夫でしょ……それにこんなもんお遊び、お遊び!! 気楽にやろうよ、麻弥ちゃん」
「でも……」
「はい、じゃあ始めるぞ!!」
 妹の異議を無視してその手を掴み、指先をむりやり紙中央部の鳥居マーク円上の10円玉に乗せた裕次郎。
 その友人女子と男子はすぐさま指を乗せて逃げられないように押さえてしまう。
「さあ、始めるわよ!! こっくりさん、こっくりさん……おいでくださいませ、おいでくださいませ……」

 昨今の人気動画投稿者による実況で再度ネット上で話題になった昭和の遊び「こっくりさん」。
 余談ではあるがヨーロッパの占い『テーブル・ターニング』をルーツに持ち、諸説あるものの19世紀頃にウイジャボードと言う形で日本に入ってきた「こっくりさん」。
 日本人はそのために用いた竹の足に伏せたお櫃を乗せた簡易テーブルが「こっくり」と動く様に狐・戌・狸の文字をあてて「こっくりさん」と言う名称が確定したという

「……何も起こらないね」
 動画投稿者がやった通りに試したものの、ピクリとも動かない10円玉。
「まあ、そうだろなあ」
「良かったあ……」
 麻弥が安堵の息を吐くとほぼ同時に動き出したゆっくりとずり動き始めた10円玉。
 兄やその友人達によるドッキリいたずらかと思った麻弥は3人の顔を見回すが、驚きの表情を一様に浮かべる様にこれが演技ではない事に気づいてしまう。
『いざ べ らさん? どうし たの? すま ほおとし たの?』
「いざべらさん……ですか」
 一瞬止まっての加速や急旋回の動きが示すこっくりさんのメッセージを必死で記憶する4人の小学生。
『ちが うの? もし かして だけど だ れかが こっくり さんをや ってるの?』
「そっ、そうです!!」
『い まどき め ずらし いね、 ど こで やりかた を し った のか きい て いい?』
「動画投稿サイトで……見ました」
『あ あそ れね。ぼ く もそ の どうが みた よ!! で も あれ はえ んぎ だね』
「そうなんですね、はじめまして こっくりさん」
 妙にフランクで文明の利器に詳しいこっくりさんの意図が分からず、どうにか機嫌を損ねないように無難な回答を選ぶ。
『ぼ くの ゆうじんも さい き ん それ で しった ひと に よ ばれ た らし いけ どぼく じしん は はじめ てだな』
「ははっ、そうなんですね……」
『せ っ かく だからなにかききたいことはある? なんでもこたえるよ?』
 何を聞こう、決めてなかった。
 4人の小学生は思わず顔を見合わせる。
「じゃあ俺がやってるオンラインゲームで次の限定アイテム配信日かコラボイベント開始日を教えてください!!」
 とにかく無害な質問で穏便にお帰りになってもらわねば、裕次郎少年は言いだしっぺとして割り入る。
『いいとも!! 次のコラボイベントは大人気ライトノベル『ダンジョンメイカー先輩!!』。
 コラボ武器は雲渡リーダーの二刀流・青龍&神紋剣。NPCコラボキャラとして登場するのは雲渡リーダーと』
 この情報を信用できるかはとにかく、好きな事を喋るときは暁舌な早口になるヲタクの如き10円玉の素早い動きからしてこっくりさんは機嫌をよくしたようだ。
 4人の子供達はどうにかなりそうな雰囲気に安堵する。

「と、言う事がこの前あったんです……」
「へえ、いまどきこっくりさんとはねえ……」
 数日後の週末、S区中央商店街の裏通りにある大芭神社境内。
 赤髪ロングヘアに爆乳ボンキュッボン、胸元に青い薔薇の刺繍が入った紅色のノースリーブミニワンピースと言う本来のサキュバスクイーンの姿でギンコさんと週末デート中のイザベラ・インマはプラカップに入ったカルピスかき氷の甘酸っぱいひんやりしゃりしゃり感を楽しみつつギンコさんが召喚されてしまった令和キッズによるこっくりさん体験談を聞く。
「まあ今回はたまたまきちんとした神狐族の僕が応じれたから良かったですけど……万が一質の悪い半グレ悪霊が割り入ってしまうケースも多々あるので二度とやらないように言っておいたので大丈夫だと思います」
「そうよね、私もそれがいいと思うわ。 ところでギンコさんって占いも出来るなら私もお願い出来るかしら?」
「もちろんですよ、この場で出来るのは……水見占ならぬかき氷占いですかね。
 イザベラさん、お手とかき氷に失礼します」
 そう言いつつカルピスかき氷を持ったイザベラさんの手に自身の両手を重ねるギンコさん。
 神狐とサキュバスクイーンの魔力を注がれたかき氷はずももももと隆起して何かの文字を表面に形成し始める。
「……これは『か』ですわね?」
「そのようですが、これは……?」
 ひらがなの 『か』 を示す氷を前に大芭神社本殿の階段に座った2人は首をかしげるのであった。

【FIN】
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