ミキちゃんちのインキュバス 2 !!

千両文士

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【ミキちゃんちのインキュバス2!(第83話)】「イザベラ・ナイトメア・イリュージョン!! レプリティアンと埴輪マスク!?」

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 平日日中、都内S区某所にあるアパート。
「よしっ、ここの鍵は……俺でも開けられるぞ!!」
 その周辺をうろうろしていたシャツとズボンにサンダル、腹巻を巻いて薄汚れた薄手の上着を羽織った男はある部屋の前で足を止めて中腰になり、腹巻に手を入れて怪しげな工具を数本取り出す。
(こうしてああして、よしっ!!)
 ガチャリと言う音と共に開いた扉。
 不審者はすぐに工具を腹巻に隠して音もなく室内に滑り込む。

「ほうほう……この部屋にお住まいなのは女性なのかな? しかし……最近の若い子は過激なんだねえ」
 部屋千し角ハンガーに干された女性ものの下着の数々。
 隠すべき場所がシースルーや穴になっている真っ赤なランジェリーパンティーや牛もびっくりな超巨乳用ブラジャーの数々に不審者はすこし引けてしまう。
「さて、金目のモノは……」
「いにゃあ?」
「!?」
 泥棒の本性を現した不審者が室内を物色しようとし始めたその時、気配もなく背後から聞こえた動物の鳴き声。
 振り向いた先にいたのはお座りして首をかしげる茶色と白の長毛種の猫だ。
「おや、ここのペットか……びっくりさせるな」
「いにゃあ?」
「よしよち、おじちゃんは大事な用事があるからじっとしててね!!」
「いにゃあ?」
「ええと……これとこれと……あと」
「いにゃあ? いにゃああん?」
 腹巻から取り出したエコバッグを広げて携帯型ゲーム機やゲームソフト、アクセサリーに漫画や本を放り込み始める泥棒。
 その後ろで長毛種の猫はしつこくにゃあにゃあ鳴き続ける。
「ああもう、うるせえ猫だな!! あっちに行きやが……れ?」
 猫を蹴飛ばして黙らせようと振り向いた泥棒。
 その真っ赤な瞳と目が合うや否や脳内で無限に反響しはじめる不気味な鳴き声に男はわけもわからぬまま意識がすうーっと消えて行く。

「うっ……ううん」
 ギャアギャア、ガオガオと言う音で目を覚ました泥棒男。
 恐る恐る薄目を開けた彼が倒れていたのは巨大な樹木が乱立する苔むした地面の森のような場所で、木々の隙間から見える頭上には明らかに鳥ではない翼竜が飛び交い、超巨大な首長竜が頭部と首を揺らしながら通過していく。
「これは夢だな、うん、そうだな!!」
 数日前にテレビの映画でコズミックホラーサバイバル映画、『レプリティアン・プラネット2』 を見ていた泥棒男。
 その世界そのものな場所を見て見ぬふりをして自分をぎゅっとつねるが、夢から目覚める事は無い。
「あれっ……嘘だろ?」
『ギャギャギャギャギャ!!』
『ガスニナ!! ナニスガ!!』
『ロエラト!! エトロラ!!』
「あっ、あれは……うわああああ!!」
 現実を受け入れる間もなく小型恐竜の背に乗ってこちらに駆けてくる腰巻一枚のトカゲ人間達。
 石斧や槍、弓矢を構えたハンターレプリティアン達を前に男は転がるように走り出す。
「ちくしょおおお、何でおれがこんな目に!! なんで俺ばっかり!!」
『キヤマル!! ヤルキマ!!』
『ニク!! センンシ!!』
「もっ、もうだめ……うわあっ」
 このままではあの映画の宇宙飛行士達のように生きたまま焼かれる。
 必死で走る泥棒男が捕まりかけたその時、ズボッと言う漫画効果音と共に目の前が真っ暗になる。

「こっ、こんどは何だ!?」
 たまたま地面の穴に落ちてレプリティアンをまくことに成功した泥棒。
 何の脈絡も無く仰向けのまま身動きがとれない状態になっていた彼を赤い光が照らす。
『ふっふっふ、世界征服をもくろむ悪の組織ジョッカー日本支部へようこそ押野 瓜雄(おしの うりお)君!! 私は日本支部長Jである、以後よろしく!!』
「イイーッ!!」
「イーッ!!」
 仰向けにクロス型拘東台に括り付けられていた男を見下ろす黒マントに埴輪マスクの怪人物とイーイー言いながら周囲を飛び跳ねる全身黒タイツ&埴輪マスク軍団。
「なっ、なんだお前達は!?」
『ふふふ、君には今から我が組織の泥棒怪人・ネズミコゾウになってもらおう!!』
「イーッ!! イイーッ!!」
 全身黒タイツ&埴輪マスクの1人が男の目の前に開いたスケッチブックには泥棒怪人・ネズミコゾウの表題と共に唐草手ぬぐいをほっかむりし、ネズミ鼻とネズミ耳を持つ毛むくじゃらの顔になった泥棒男が描かれている。
『戦闘員!! 改造手術用スリープガスを吸わせろ!!』
「イイーッ!!」
 抗議の声をあげさせる間も与えず怪しげなガスボンべを口に押し当てる黒タイツ戦闘員。
 甘ったるい匂いのするガスを無理やり吸わされた泥棒はそのまま意識を失っていくのであった……。

「おい、起きろ!!」
「はっ!?」
 何者かに揺すられて目を覚ました泥棒男こと押野 瓜雄(おしの うりお)。
 恐る恐る目を開けるとそこはコソ泥に入ったS区某所にあるアパートで、2人の警察官とスーツ姿の若い女性が床に倒れた自分を見下ろしている。
「これはお前の物か?」
 携帯ゲーム機とゲームソフト、アクセサリーに本や小銭が入ったエコバッグを指さしつつ確認する警察官。
「いいえ、この部屋にあった物で……す」
「そうか、なら来てもらおう」
 問答無用とばかりに左右から押さえて立たせる警察官。
(ああ、良かった……無事に帰って来れて……本当に良かった)
 レプリティアンに襲われ、悪の組織による恐怖の改造手術から生還できた押野は外のパトカーに運ばれながら安堵の息を吐くのであった。

【FIN】
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