ミキちゃんちのインキュバス 2 !!

千両文士

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【ミキちゃんちのインキュバス2!(第38話)】「魔界刑事捕物帳@大芭神社!! オババが処さねば誰が処す!?」

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 都内S区某所にあるマンション、408号室。
「さて、お2人揃って……いらっしゃるとはただ事ではありませぬな?」

 ロング銀髪からはみ出した狐耳とふこふかの白狐尻尾を白狩衣の袴から出した神狐族のギンコさん。

 美爆乳な真紅のフラメンコドレスにロング赤髪姿のクイーンサキュバスにして淫魔財閥次期総帥のイザベラ・インマ。

 額の捻じれドリル角と鋭く長い犬歯、赤肌の鬼神族の姿に戻った老魔界刑事ラビオ。

(こんな壮絶な風景……三度と見れねぇぞ!!)
 よく冷えた麦茶を出し終え、そのお盆を持ったまま部屋の隅で大人しくしている謎グラフィテイTシャツにジーンズの青年・出戻り魔界刑事の烏魔は3人の魔界人が本来の姿でちゃぶ台を囲む光景を魔界スマホで撮影したい衝動を押し殺しつつ大人しく見守る。

「はい、実は……私が担当している大芭神社が少し困った事になっているんです」
「困った事ですとな?」
 凛とした鈴のような声にハスキーボイスで聞き返すラビオ刑事。
「ええ、最近このS区周辺で復活した迷惑な暴走族はご存知ですよね?」
「うむ、真夜中にバリバリバリバリと轟音を立てておる連中じゃな?」
「そいつらがギンコさんのお社を勝手に休憩スポットにしていて……夜な夜な酒盛りをし、コンビニ弁当やカップ麺、缶のゴミをそのままにしていくんです。
 ボランテイアで週末清掃している私も出勤前に大芭さんを手伝って掃除はしているんですけど、本当にきりがないんです」
「イザベラさん、本当にごめんよ……」
「いぇ、素敵なダーリンのお家がゴミだらけなんて可哀そうだし、大芭さんもお年ですから……」
 ギンコさんとイザベラさんはため息をつく。
「なるほど、お二方の事情はお分かりしましたぞ。ただ、魔界刑事として人間界に滞在中のわしらの仕事はイザベラ殿とアラン殿をお守りする事……冷たいようですがギンコ殿の件は管轄外なのですじゃ」
「そうだな、オヤジ……この件は人間界の警察がやるべき事であって魔界警察は触れるべきではないよな」
 魔界刑事としての正論に烏魔刑事もフォローしつつさりげなく2人にアドバイスする。
「そうですよね、お時間を取らせてしまってすみません」
「ギンコさんには申し訳ないけど、今度ゴミだらけの神社を撮影して大芭さんと一緒に警察に相談してみるわ」
 そう言いつつ人間の姿に化けて頭を下げ、帰ろうとするイザベラさんとギンコさん。
「そうしてくだされ、と言いたい所じゃが……人間界の警察も何らかの被害が無いと動かぬ。かといって近年改訂された天界法のせいでギンコ殿が神罰を下すのも容易ではない。 痒い所に手が届かぬとはこの事じゃのう」
「オヤジ?」
 ラビオのオヤジは何か悪い事を企んでいる。
 老刑事と長年の付き合いから直感的に察した鞍之介は背筋が震える。
「鞍之介、このメモにある物を今すぐ商店街で買うてくるのじゃ! その間にワシはイザベラ殿にお頼み申したい事を伝える。決行は今夜じゃ、荒事になるから覚悟しておくがよい」
「あっ、ああ!! 行ってくるぜオヤジ!!」
 金とメモ、大判エコバッグを受けとった鞍之介はすぐに408号室を出て行く。

 ……それから数時間後、夜。
「よしっ、今日も派手にやるぜ! !」
「うえぇぇい!!」
「ィェェェェ!!」
 ボディをバルバル震わせながらS区中央商店街近くにある神社の前に止まる3台のバイク。
 そこから降りてヘルメットを脱いだ3人組のおっさんは缶ビールやおつまみ、コンビニ弁当が入った袋を持ち石段を登りだす。
「今日もいい走りだったな、最高だったぜ!!」
「青春は終わらねぇ!!」
「俺達永遠の……!?」
 境内の社殿階段に座り、缶ビールでお先に出来上がっているお胸パツパツのへそチラTシャツに美脚を組んで見せつけるミニスカート姿のセクシー美女。
「あら、あなたたち誰かしらぁ?」
「おっ、俺達は……泣く子も黙る暴走族様だ!!」
 雑誌のグラビアページでも見たことが無い色気ムンムンな美女に大興奮のおっさん達。
「あら、そうなのぉん? せっかくだからイイ事し・な・い?」
 千鳥足気味ながらも、ピンヒールでこちらに向かってくる妖艶なお姉さんに我慢の限界のおっさん達は思わず駆け寄ってしまう。
『確保じゃ!!』
「おうっ!!」
 魔界暗器『ステルスマント』で隠れていた黒Tシャツにレスラーマスク姿の3人は暴走族のおっさん達の首を締め上げつつ手足を抑え、完全に動けない状態にしてしまう。
「アラン君!! すぐに警察を呼ぶのじや!!」
「はいっ! !」
 魔界刑事として護衛対象のイザベラさんに(ハニートラップをかけられて)手を出そうとした暴走族の男を取り押さえたレスラーマスク1号(ラビオ刑事)の後ろに控えていたレスラーマスク4号(アラン)はすぐに110番しようとする。

「お前さん達、ご苦労さんだね……あとはアタシの仕事だよ」
「オババさん!?」
 ラビオ刑事捕物帳もクライマックスの最中、薔薇模様の白ネグリジェにサンダル姿で現れた大芭神社に現れたヌシ、おもちゃ屋オババ。
「あっ、あんたは……あの時の暴カババァ!!」
「おや、覚えていたのかい? いい年こいて単車をバリバリやって迷惑をかけているなんてねぇ。馬鹿は死んでも治らないとはこの事だよ……」
 アラン達魔界人が知る由は無いが、数十年前に地域奉仕も兼ねた趣味と実益で近隣のヤンキーを徹底粛清し、一生モノの恐怖とトラウマを植え付けまくった『暴カババァ』の異名を持つおもちゃ屋オババは孫の手片手に動けない暴走族のオッサン達に向かって行く。
「さあ、お仕置きの時間だよ!! ケツを出しな」
「いゃぁぁぁぁぁ!!」
 老婆の痩せた細腕が振るう孫の手とは思えぬ空を切り裂く鋭い音。
 孫の手を臀部に叩きこまれた身動きのとれぬおっさんは暴走族は涙目のまま悲鳴にならない悲鳴で喉を詰まらせる。
「テツ!!」「ひええ!! 鬼じゃ!!」
「さぁ、こんなババァだがオールナイトと行こうかねぇ……ひっひっひ」
「いやあああああ!!」
「助けてぐれぇぇぇ!!」
 悲鳴をあげるおっさん暴走族の臀部にオババは容赦なく孫の手を振り下ろす。

 おっさん暴走族を物理的に取り押さえたレスラーマスク1号(ラビオ刑事)、2号(鞍之介)、3号(ギンコさん)とスマホ動画を撮影中の4号(アラン)。そしてハニートラップ担当のイザベラさんは目にも止まらぬ速度で暴走族のケツを何十発もしばくおもちゃ屋オババの楽しそうな満面の笑み……それを見せつけられた魔界人&神様は永遠なる絶対忠誠を彼女に誓うのであった。

【完】
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