ミキちゃんちのインキュバス 2 !!

千両文士

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【ミキちゃんちのインキュバス2!(第31話)】「社外秘情報守秘せよ! 黒猫アランのミッション・ニャンポッシブル!?」

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 平日午前中、都内S区某所にあるオフィスビル街。
(よしっ、ここまでは無事に来れたぞ!! あとはどうゃってミキさんに……これを渡せばいいんだろうか?)
 ミキちゃんが自宅に忘れた社外秘業務資料データ入りUSBメモリに気づき、ここまで文字通り飛んで来た淫魔族の青年アラン・インマは物陰で魔界暗器『ステルスマント』をズボンのポケットに押し込みつつ、かのUSBメモリの無事を確かめる。

(連絡つかず……しかしなぁ、目的を聞かれた場合どうすれば?)
 スマホのチャットアプリで連絡しても未読無視な状況で裏の警備員室近くまで来てしまったアランであるが、警備員さんに事情を話してミキちゃんを呼び出してもらうのもよろしくない…… と考え直す。
(待てよ、警備員さん? そうだ、僕には淫魔のあの手があるじゃないか!!)
 アランは最近見たネット動画をヒントに誰も傷つけず、穏便に侵入する方法を思いつく。

(ああ、今日もいい天気だなぁ……)
(だるいわあ、マジで眠い……)
 オフィスビルの門番として裏口に立っているのがお仕事の警備員2人組。
 老年男性と若い女性の2人は桜も散ってポカポカ陽気の中、ビル内巡回担当との交代時間を待つ身の幸さと戦う。
「にゃあん!」
「んっ…… ? なんでここに猫が?」
 そんな中、どこからともなく現れた短い手足に白ソックスな黒猫ちゃん。
「近所の迷い猫とかですかね、どうします田中さん?」
「ううん、そうだとしたら困るなぁ……ええと、保健所の連絡先は」
「みゃぁお? あらぁん?」
 老年男性警備員の田中さんがスマホで保健所の連絡先を検索中、若い女性警備員の前で仰向けになりバンザイポーズを取った黒猫は腰をくねらせつつきゅるきゅるのオッドアイでおねだりする。
「……きゃっ、きゃわいい!! 人懐っこいわあ!!」
「ごろごろ、あらぁぁん……あらぁぁぁん」
 全身もふられてとろっとろに惚ける黒猫ちゃん。
 動物好きの女性警備員はその愛くるしさに職務も忘れてもふもふ愛でつつ抱き上げて猫吸いを始める。
「キミはどこから来たんでちゅか? ママやパパはどこでちゆかあ?」
「あらぁん!! あらぁぁぁん!!」
「中村君、保健所に連絡がついたよ。飼い猫の可能性もあるから首のチップを調べるそうだ……とりあえず交代時間まで警備員室の段ボールでも入れておこう」
「わかりました!」
 昼休みに保健所に連れて行くのが自分なのはさておき、お昼まではこの可愛い猫ちゃんと一緒。
 テンションアゲアゲな女性警備員の中村は黒猫を抱きかかえたままオフイスビルに入る。
「にゃあああああん!」
「えっ!?」
 野獣化した黒猫は女性警備員の腕を飛び出して逃走、ビルの階段を駆け上りだす。

「ええと、ではこの件については……はい、そそれでよろしくお願いいたします。では後日」
 所変わって同ビル内14階、株式会社サウザンドフロアの廊下。
 スマホ通話を終えた同社人事部社員にして採用担当者の守屋美希。通称ミキちゃんはいつのまにか廊下角に人だかりが出来ているのに気づく。
「あらぁん!! にゃああん!! にやああ!!」
「ちっちやくてかわいい!」
「どこから来たのかしら?」
「クッキー食べる?」
「もふもふさせて!!」
 若い女性社員の黄色い声に混じて聞こえる猫の怯えた悲鳴。
「アラン君!?」
「あらぁぁぁん!!」
 人垣に向かってくるミキちゃんを視認するや否や足元をすり抜けて脱出し、その胸に飛び込む黒猫アラン。
「どうしてここに……あっ」
 黒猫アランが口にくわえていたUSBメモリで全てを察したミキちゃんはそれをすぐにスーツ上着胸ポケットに隠す。
「その子、守屋さんのだったんですか?」
「えっ、ええそうなのよ。アランちゃん。お家から追って来ちゃったの?」
「あらぁん!!(そうです、 ミキさん)」
 ミキちゃんの豊満な美胸の上で優しく抱かれたアランは安堵の表情を浮かべる。
「ウチのスフレちゃんの次に可愛いですね! 会社にお連れになったんですか?」
「クッキーあげたいですう!! アランちゃん、あ―ん!」
「会社に連れて来るなんて……守屋さん、実は相当な猫沼だったんですね!!」
 予期せぬ来訪者に興奮のあまり詰め寄って来る株式会社サウザンド社員達。
「見つけたわよ、黒猫ちゃん!! お仕置きで吸いまくってやるわ、覚悟なさい!!」
 ビル内に浸入した黒猫を追って乱入する女性警備員の中村。
 逃げ場のない事態が混迷を極める中ミキちゃんはスーツ上からでも立派なお胸に顔をうずめて怯える黒猫アランを守るように抱きしめる。

『怪盗ナル脱出王 (エスケープテレポーテーション)』
 次の瞬間、 ミキちゃんの胸元からドロンと消えたアラン。
「あれっ、私……?」
「どうしたのかしら?」
「……? きゃあぁぁ、会議が始まってるわ!!」
「中村君!! 持ち場を離れてはいかん」
「すみません、田中さん!! すぐに戻ります」
 それと同時に正気に戻って散り散りに去っていくサウザンド社員達と2人の警備員。
『アランクンカラチャットダヨッ!!』
 わけもわからぬまま立ち尽くすオフィスミキちゃんはスマホ着信を確認する。
『ミキさん、急に押しかけてごめんなさい!! あれしか穏便にお渡しする方法が思いつかなくて……』
『僕は今、魔界暗器でビルの外に脱出しています。 あの場の人たちも僕を見た記憶は無いはずです』
『お仕事頑張ってください!!』
『ありがとうアラン君!! 助かったわ!!』
 今日中にこのデータに関する仕事は終わらせてUSBメモリはIT担当者に返してしまおう。
 チャットアプリに返信しつつそんな事を考えていたミキちゃんはこれからの予定と仕事の優先順位を変更しつつ猫毛だらけになったスーツの胸元を払うのであった。

【完】
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