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【ミキちゃんちのインキュバス2!(第27話)】「イザベラ・インマとギンコさん!! 復活の大芭桜・花吹雪の舞」
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4月の週末S区中央商店街、裏通りにあるうらびれた神社。
「おばばさん、ゴミ出し完了しました!!」
「ご苦労様、蓮美ちゃん……いつもありがとうねぇ」
S区中央商店街裏通りにある小さな神社・大芭神社境内の掃除を終え、お供え物のお稲荷の入ったパックを取り出していたおもちゃ屋オババは週末の神社清掃に協力してくれる近所の派遣社員、砂岡蓮美に感謝する。
「さて、じゃあ……神様、今日も境内の掃除が終わりましたよ。どうぞお供えです」
おばばと蓮美はお供えのお稲荷2つと桜餅を置き、神社の前で並んで手を合わせる。
「さて、あたしゃ店を開けるから……お稲荷さんの始末はいつものように任せたよ、蓮美さん」
「わかりました、大芭さん!!」
神様への報告を終え、掃除道具をまとめたオババはお稲荷さんと桜餅2つが入ったパックを社殿に置いて商店街に戻っていく。
「イザベラさん、今日も神社を掃除してくれてありがとう!」
「喜んでもらえて何よりだわ!」
大芭神社を覆う神狐結界内で魔力擬態を解き、赤髪ロングヘアで真紅のボディコンが似合うスーパーグラマーボディ女淫魔に戻ったイザベラさんと銀髪ロングヘアから生やした白銀の狐耳と袴から白銀のふかふか狐しっぽを生やした大芭神社の担当神狐のギンコさん。
以前はイザベラさんお駄賃用1個だったはずのお供えお稲荷が何故か2個になっているのはさておき、3週間前から男女のお付き合いを始めたラブラブな2人は春を感じさせる陽気の中週末お稲荷ピクニックを楽しむ。
「このピンク色のお稲荷さんは……初めてみますわね?」
葉っぱが巻かれたピンク色で表面がつぶつぶした不思議なお稲荷さんをしげしげとみるイザベラさん。
「イザベラさん。これは季節の和菓子、桜もちですよ」
イザベラさんの前で道明寺を2つに割って、中の餡子を見せつつ半分差し出すギンコさん。魔界では見たことも聞いたことも無い人間界の食べ物を受け取ったイザベラさんは恐る恐る一口食べてみる。
「わぁ、美味しい!!」
桜の葉っぱの香りに餡子の程よい塩気と甘味の塩梅……初めての桜もちを喜んではむはむするイザベラさんをギンコさんはにこやかに見守る。
「桜かぁ、昔……まだ百さんや千さんが生きていた頃大きな桜がそこにあったんだ」
ギンコさんは神社隣にある地域の防災倉庫を指さす。
「へぇ、そうだったんですか?」
「うんでも十之助(じゅうのすけ)さんが亡くなった後、彼を追うようにバンちゃんの思い出の桜も台風と落雷でボロボロになってしまって倒壊……いまではその存在も忘れられて跡地は防災倉庫になっているんだ」
百さんと千さんはさておき、初めて聞く十之助さんと言うのは夭逝したオババさんの夫だった人なんだろうなぁ……そんな事を考えていたイザベラさんは大芭神社の栄枯盛衰と凋落、激動の歴史を見て来た神狐ダーリンの哀しそうな眼に気づく。
「あの、ギンコさんは……神狐族として魔力操作は出来るんですよね?」
「僕? まあ使えない事は無いけど……でも常に人間に魔力擬態しているイザベラさん程の精密操作は無理だし、大気中の魔力が希薄なこの人間界で全力を出すのは無理かと」
「でもその桜のイメージはあるんですよね?」
「ああ、うん。もちろん」
「じゃあ十分ですわ!! いつもお世話になっているオババさんに見せてあげたい物があるから協力してくださいます?」
桜もち2つを食べ終え、にっこりと笑うイザベラさん。
それに魅了されてしまったギンコさんは黙ってうなずく。
それから1週間後……
「今日もありがとうね、蓮美さん」
「いえいえ、弟や守屋さんはお忙しい身なので構ってもらえず……私も大芭さんのお手伝いが出来て楽しいです!」
掃除道具を持って大芭神社の階段を昇るおもちゃ屋オババと砂岡蓮美(イザベラさん)。
「それはうれしいねえ、ありが……と?」
そんな会話の最中、どこからか飛んできてオババの服に付着したピンクの物。
あるはずのない可憐な桜の花びらに驚いたおばばは思わずその方向を見る。
「こっ、これはどういう事だい?」
隣の防災倉庫があるはずの場所、数十年前に無くなって久しいはずの大芭神社の大桜が在りし日の威風堂々とした姿で満開となっている光景におばばは思わず目をこする。
「蓮美ちゃん?… …ああ、なるほど。そういう事か」
煙の如く消えてしまった蓮美……直感的に何かを察したおばばは社殿の階段に腰を下ろす。
(懐かしいねぇ……まだあたしがとおにもならない頃、おじいさんとここで桜をみていたなぁ)
桜吹雪の中、少女の頃の記憶を手繰り寄せるおばばの脳裏に眉間にビキビキなしわが寄っていて強面ながらも優しかった祖父・百之助が甦る。
(あの頃は母みたいに美しく舞える巫女になりたくて神楽舞を練習していたねぇ……)
学校の帰り社殿前で一人セーラー服姿のまま舞い励み、夢を追っていた思春期の日々。
(ピチピチの生娘だった頃は十之助さんとここで桜をみていたなぁ)
……将来を約束し、愛し合った人と身を寄せ合ってぬくもりを味わっていた場所。
桜吹雪の中、大芭神社と共に人生を歩んで来たおばばは懐かしき日々を邂逅する。
「さて……いつまでもここにいるわけにはいかないから帰らないとねぇ。蓮美ちゃん、もう十分だよ?」
そう言いつつおばばはそっと目を閉じる。
「えっ、ええと……大芭さん、大丈夫ですか?」
再び目を開いたおもちゃ屋おばばの目の前に広がる大芭神社……その境内でゴミ袋片手に心配そうに見守る蓮美。
「蓮美ちゃん、一人でやらせてごめんねぇ。あたしもトシだからこの陽気で眠くなっちまったみたいだ」
美しい桜吹雪からうらびれたボロ神社に戻って来たおばばは腰を伸ばしつつ立ち上がる。
「いえ、気持ちよさそうだったのでお声掛けできず……申し訳ありません」
「とんでもない! むしろあたしの方がごめんさ。いい夢みせてくれて……本当にありがとね」
蓮美の正体を含め、ギンコさんとの事も(多分)分かっているであろうおもちゃ屋おばばは含みのある微笑みでイザベラさんに感謝するのであった。
【完】
「おばばさん、ゴミ出し完了しました!!」
「ご苦労様、蓮美ちゃん……いつもありがとうねぇ」
S区中央商店街裏通りにある小さな神社・大芭神社境内の掃除を終え、お供え物のお稲荷の入ったパックを取り出していたおもちゃ屋オババは週末の神社清掃に協力してくれる近所の派遣社員、砂岡蓮美に感謝する。
「さて、じゃあ……神様、今日も境内の掃除が終わりましたよ。どうぞお供えです」
おばばと蓮美はお供えのお稲荷2つと桜餅を置き、神社の前で並んで手を合わせる。
「さて、あたしゃ店を開けるから……お稲荷さんの始末はいつものように任せたよ、蓮美さん」
「わかりました、大芭さん!!」
神様への報告を終え、掃除道具をまとめたオババはお稲荷さんと桜餅2つが入ったパックを社殿に置いて商店街に戻っていく。
「イザベラさん、今日も神社を掃除してくれてありがとう!」
「喜んでもらえて何よりだわ!」
大芭神社を覆う神狐結界内で魔力擬態を解き、赤髪ロングヘアで真紅のボディコンが似合うスーパーグラマーボディ女淫魔に戻ったイザベラさんと銀髪ロングヘアから生やした白銀の狐耳と袴から白銀のふかふか狐しっぽを生やした大芭神社の担当神狐のギンコさん。
以前はイザベラさんお駄賃用1個だったはずのお供えお稲荷が何故か2個になっているのはさておき、3週間前から男女のお付き合いを始めたラブラブな2人は春を感じさせる陽気の中週末お稲荷ピクニックを楽しむ。
「このピンク色のお稲荷さんは……初めてみますわね?」
葉っぱが巻かれたピンク色で表面がつぶつぶした不思議なお稲荷さんをしげしげとみるイザベラさん。
「イザベラさん。これは季節の和菓子、桜もちですよ」
イザベラさんの前で道明寺を2つに割って、中の餡子を見せつつ半分差し出すギンコさん。魔界では見たことも聞いたことも無い人間界の食べ物を受け取ったイザベラさんは恐る恐る一口食べてみる。
「わぁ、美味しい!!」
桜の葉っぱの香りに餡子の程よい塩気と甘味の塩梅……初めての桜もちを喜んではむはむするイザベラさんをギンコさんはにこやかに見守る。
「桜かぁ、昔……まだ百さんや千さんが生きていた頃大きな桜がそこにあったんだ」
ギンコさんは神社隣にある地域の防災倉庫を指さす。
「へぇ、そうだったんですか?」
「うんでも十之助(じゅうのすけ)さんが亡くなった後、彼を追うようにバンちゃんの思い出の桜も台風と落雷でボロボロになってしまって倒壊……いまではその存在も忘れられて跡地は防災倉庫になっているんだ」
百さんと千さんはさておき、初めて聞く十之助さんと言うのは夭逝したオババさんの夫だった人なんだろうなぁ……そんな事を考えていたイザベラさんは大芭神社の栄枯盛衰と凋落、激動の歴史を見て来た神狐ダーリンの哀しそうな眼に気づく。
「あの、ギンコさんは……神狐族として魔力操作は出来るんですよね?」
「僕? まあ使えない事は無いけど……でも常に人間に魔力擬態しているイザベラさん程の精密操作は無理だし、大気中の魔力が希薄なこの人間界で全力を出すのは無理かと」
「でもその桜のイメージはあるんですよね?」
「ああ、うん。もちろん」
「じゃあ十分ですわ!! いつもお世話になっているオババさんに見せてあげたい物があるから協力してくださいます?」
桜もち2つを食べ終え、にっこりと笑うイザベラさん。
それに魅了されてしまったギンコさんは黙ってうなずく。
それから1週間後……
「今日もありがとうね、蓮美さん」
「いえいえ、弟や守屋さんはお忙しい身なので構ってもらえず……私も大芭さんのお手伝いが出来て楽しいです!」
掃除道具を持って大芭神社の階段を昇るおもちゃ屋オババと砂岡蓮美(イザベラさん)。
「それはうれしいねえ、ありが……と?」
そんな会話の最中、どこからか飛んできてオババの服に付着したピンクの物。
あるはずのない可憐な桜の花びらに驚いたおばばは思わずその方向を見る。
「こっ、これはどういう事だい?」
隣の防災倉庫があるはずの場所、数十年前に無くなって久しいはずの大芭神社の大桜が在りし日の威風堂々とした姿で満開となっている光景におばばは思わず目をこする。
「蓮美ちゃん?… …ああ、なるほど。そういう事か」
煙の如く消えてしまった蓮美……直感的に何かを察したおばばは社殿の階段に腰を下ろす。
(懐かしいねぇ……まだあたしがとおにもならない頃、おじいさんとここで桜をみていたなぁ)
桜吹雪の中、少女の頃の記憶を手繰り寄せるおばばの脳裏に眉間にビキビキなしわが寄っていて強面ながらも優しかった祖父・百之助が甦る。
(あの頃は母みたいに美しく舞える巫女になりたくて神楽舞を練習していたねぇ……)
学校の帰り社殿前で一人セーラー服姿のまま舞い励み、夢を追っていた思春期の日々。
(ピチピチの生娘だった頃は十之助さんとここで桜をみていたなぁ)
……将来を約束し、愛し合った人と身を寄せ合ってぬくもりを味わっていた場所。
桜吹雪の中、大芭神社と共に人生を歩んで来たおばばは懐かしき日々を邂逅する。
「さて……いつまでもここにいるわけにはいかないから帰らないとねぇ。蓮美ちゃん、もう十分だよ?」
そう言いつつおばばはそっと目を閉じる。
「えっ、ええと……大芭さん、大丈夫ですか?」
再び目を開いたおもちゃ屋おばばの目の前に広がる大芭神社……その境内でゴミ袋片手に心配そうに見守る蓮美。
「蓮美ちゃん、一人でやらせてごめんねぇ。あたしもトシだからこの陽気で眠くなっちまったみたいだ」
美しい桜吹雪からうらびれたボロ神社に戻って来たおばばは腰を伸ばしつつ立ち上がる。
「いえ、気持ちよさそうだったのでお声掛けできず……申し訳ありません」
「とんでもない! むしろあたしの方がごめんさ。いい夢みせてくれて……本当にありがとね」
蓮美の正体を含め、ギンコさんとの事も(多分)分かっているであろうおもちゃ屋おばばは含みのある微笑みでイザベラさんに感謝するのであった。
【完】
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