26 / 119
【ミキちゃんちのインキュバス2!(第26話)】「いきなりモフモフ回!? アラン君ちのハム三郎現る!」
しおりを挟む
都内S区某所にあるマンション、平日日中の508号室。
「へえ、ハムスターってたくさん種類があるんだなぁ……」
図書館から借りて来た『動物図鑑』を片手に携行型水槽内を観察する男淫魔のアラン。
その中でふわふわの巣材を蹴散らし、掘り返して走り回っているのは背中に黒い一本スジを持つ茶色い小動物、ハムスターだ。
事の発端は数日前。株式会社サウザンド人事部のミキちゃんの同僚社員にして二児の母でもある田辺マダムは子供達との春休み旅行のため体暇取得。その際に娘さんが飼い始めたジャンガリアンハムスターのハム三郎ちゃんは餌と共にお留守番させる予定だったが、『アランお兄様に預かって欲しいの!!』と言う娘さんの主張もあって田辺さんはミキちゃんに相談。
それをミキちゃん経由で聞いたアランは(人間界の愛玩動物文化と小動物生態調査のチャンスとして)承諾したのである。
「ハムスターと言う生き物はよく走り回り、ヒマワリの種や猫や犬と同じカリカリ、レタスやキャベツを食べる……」
かくして数日間を守屋家で過ごすことになったハム三郎を観察していたアランは淫魔ギルドに提供する自主調査記録を100円ショップで買ってきたノートにまとめる。
「あとは、知能レベルの測定だが……どうしたもんかな?」
水槽の4つ角を掘り返してふわふわ巣材を中央盛り上げ、小山にしていくハムスターを見ていたアランは魔界スマホで『ハムスター 知能検査』と検索してみるが役に立ちそうな情報は出てこない。
(ナベシマ姐さんの時のようにいくかは分からないが……やってみる価値はあるかもしれない。ハム三郎……聞こえますか? 聞こえますか?)
ダメもとで微弱なテレパシーを送った瞬間、後ろ足で巣材を蹴り散らしていたハムスターの動きが止まる。
(オマエ……ナニモンダ?)
拙いテレパシーで聞き返しつつ立ち上がって鼻をピスピスさせつつ周囲を探るハムスター。
「ここだよ、見えるかい? コンコン……」
水槽に顔を近づけ、軽く叩くアランの方をハム三郎は向く。
(… …キコえルぞ、おマエおれのナカマなのか? 随分デカイな?)
水槽の壁にへばりついてアランを観察するハム三郎。
(そうだよ、ハム三郎。初めまして僕はアラン)
猫股一歩手前のナベシマ姐さんはさておき、ノイズ混じりとは言えハムスターまでテレパシーで切り返してきた事に驚くきつつもアランはテレパシーで切り返す。
(へぇ、よろしくな!! ところでさぁ……なんかかじるモノ持ってないか? オレっちこんな狭い場所でストレス溜まってて、何でもいいからかじりたいのよ?)
(何でもいい? じゃあちょっと待っててくれ)
なるほど、かじるのはそういう事か……アランはハムスターの生態と思考を脳内メモしつつ良さげなモノを探す。
(うきょきょきょぉ!! いえぇぇい!!)
捨てる予定だったトイレットペーパーの芯を小さい体で抱え込み、夢中でかじるハム三郎。
そのワイルドな様にアランはビビリつつも魔界スマホで資料動画撮影する。
(ありがとな、アラン!! こいつは最高だぜ!! 後は……何かこう、運動不足を解消する何かが欲しいんだが、何かぐるぐる回すアレってある?)
(ぐるぐる回すアレ? ちょっと待ってくれ)
アランはハム三郎が言う『ぐるぐる回すアレ』を魔界スマホで調べる。
「もしかしてこれか?」
動画サイトで回し車なるハムスターおもちゃ動画を見つけたアランはハム三郎に見せる。
(そうそう、これよこれ!!)
(…… ううん、すぐに見つかるかは分からないけど午後の買い物の時にあるか見て来るよ)
(ありがとな、アラン! 恩に着るぜ!!)
回し車が楽しみでたまらないハム三郎は興奮のあまりふわふわの巣材の上を転げまわってしまう。
それから数時間後、夜。
「へぇ、ハムスターって小っちゃいのに温かいのね……それにふこふこで可愛いわ」
(ミキちゃんいい匂い!! それにココ柔らかくてほどよく温かくて大好き!!)
鼻をピスピスさせるハム三郎を乗せた手を胸に押し乗せるようにして安定させ、手の中を動き回る様をしげしげと観察するミキちゃん。
「ひまわりの種食べる?」
そんな彼女は大人しくしているハム三郎に気を配りつつ、右手につまんだひまわりの種を差し出してみる。
(わぁい、いただきます! ミキちゃんありがとう!!)
「へぇ、前の手で器用に食べるのね……かわいい!!」
大喜びで受け取ったハム三郎が器用に皮を剥いで白い中身を頬袋に入れていく微笑ましい様をミキちゃんは愛でる。
(……)
グラマー美女・ミキちゃんの胸の上をてちてちと動く小動物と言うフォトウコウ映えMAXな光景をスマホカメラ撮影していたアラン。
おばばさんがおもちゃ屋の不良在庫だからと回し車をタダでくれた事や人間界の愛玩動物文化調査における有意義な記録が得られた事はさておき、ハム三郎の心の声を受信し続けているアランの心の内は何となくモヤモヤする。
(『ハムスターは嗅覚に頼るところが大きいようであるが、脳の大きさに反した知能の高さ故に色好きな傾向もあるようだ』で決まりだな)
そんな気持ちを代弁するかのような調査記録の締めとなる文言を決めたアランはにこやかにスマホカメラを構えたままシャッターを切るのであった。
【完】
「へえ、ハムスターってたくさん種類があるんだなぁ……」
図書館から借りて来た『動物図鑑』を片手に携行型水槽内を観察する男淫魔のアラン。
その中でふわふわの巣材を蹴散らし、掘り返して走り回っているのは背中に黒い一本スジを持つ茶色い小動物、ハムスターだ。
事の発端は数日前。株式会社サウザンド人事部のミキちゃんの同僚社員にして二児の母でもある田辺マダムは子供達との春休み旅行のため体暇取得。その際に娘さんが飼い始めたジャンガリアンハムスターのハム三郎ちゃんは餌と共にお留守番させる予定だったが、『アランお兄様に預かって欲しいの!!』と言う娘さんの主張もあって田辺さんはミキちゃんに相談。
それをミキちゃん経由で聞いたアランは(人間界の愛玩動物文化と小動物生態調査のチャンスとして)承諾したのである。
「ハムスターと言う生き物はよく走り回り、ヒマワリの種や猫や犬と同じカリカリ、レタスやキャベツを食べる……」
かくして数日間を守屋家で過ごすことになったハム三郎を観察していたアランは淫魔ギルドに提供する自主調査記録を100円ショップで買ってきたノートにまとめる。
「あとは、知能レベルの測定だが……どうしたもんかな?」
水槽の4つ角を掘り返してふわふわ巣材を中央盛り上げ、小山にしていくハムスターを見ていたアランは魔界スマホで『ハムスター 知能検査』と検索してみるが役に立ちそうな情報は出てこない。
(ナベシマ姐さんの時のようにいくかは分からないが……やってみる価値はあるかもしれない。ハム三郎……聞こえますか? 聞こえますか?)
ダメもとで微弱なテレパシーを送った瞬間、後ろ足で巣材を蹴り散らしていたハムスターの動きが止まる。
(オマエ……ナニモンダ?)
拙いテレパシーで聞き返しつつ立ち上がって鼻をピスピスさせつつ周囲を探るハムスター。
「ここだよ、見えるかい? コンコン……」
水槽に顔を近づけ、軽く叩くアランの方をハム三郎は向く。
(… …キコえルぞ、おマエおれのナカマなのか? 随分デカイな?)
水槽の壁にへばりついてアランを観察するハム三郎。
(そうだよ、ハム三郎。初めまして僕はアラン)
猫股一歩手前のナベシマ姐さんはさておき、ノイズ混じりとは言えハムスターまでテレパシーで切り返してきた事に驚くきつつもアランはテレパシーで切り返す。
(へぇ、よろしくな!! ところでさぁ……なんかかじるモノ持ってないか? オレっちこんな狭い場所でストレス溜まってて、何でもいいからかじりたいのよ?)
(何でもいい? じゃあちょっと待っててくれ)
なるほど、かじるのはそういう事か……アランはハムスターの生態と思考を脳内メモしつつ良さげなモノを探す。
(うきょきょきょぉ!! いえぇぇい!!)
捨てる予定だったトイレットペーパーの芯を小さい体で抱え込み、夢中でかじるハム三郎。
そのワイルドな様にアランはビビリつつも魔界スマホで資料動画撮影する。
(ありがとな、アラン!! こいつは最高だぜ!! 後は……何かこう、運動不足を解消する何かが欲しいんだが、何かぐるぐる回すアレってある?)
(ぐるぐる回すアレ? ちょっと待ってくれ)
アランはハム三郎が言う『ぐるぐる回すアレ』を魔界スマホで調べる。
「もしかしてこれか?」
動画サイトで回し車なるハムスターおもちゃ動画を見つけたアランはハム三郎に見せる。
(そうそう、これよこれ!!)
(…… ううん、すぐに見つかるかは分からないけど午後の買い物の時にあるか見て来るよ)
(ありがとな、アラン! 恩に着るぜ!!)
回し車が楽しみでたまらないハム三郎は興奮のあまりふわふわの巣材の上を転げまわってしまう。
それから数時間後、夜。
「へぇ、ハムスターって小っちゃいのに温かいのね……それにふこふこで可愛いわ」
(ミキちゃんいい匂い!! それにココ柔らかくてほどよく温かくて大好き!!)
鼻をピスピスさせるハム三郎を乗せた手を胸に押し乗せるようにして安定させ、手の中を動き回る様をしげしげと観察するミキちゃん。
「ひまわりの種食べる?」
そんな彼女は大人しくしているハム三郎に気を配りつつ、右手につまんだひまわりの種を差し出してみる。
(わぁい、いただきます! ミキちゃんありがとう!!)
「へぇ、前の手で器用に食べるのね……かわいい!!」
大喜びで受け取ったハム三郎が器用に皮を剥いで白い中身を頬袋に入れていく微笑ましい様をミキちゃんは愛でる。
(……)
グラマー美女・ミキちゃんの胸の上をてちてちと動く小動物と言うフォトウコウ映えMAXな光景をスマホカメラ撮影していたアラン。
おばばさんがおもちゃ屋の不良在庫だからと回し車をタダでくれた事や人間界の愛玩動物文化調査における有意義な記録が得られた事はさておき、ハム三郎の心の声を受信し続けているアランの心の内は何となくモヤモヤする。
(『ハムスターは嗅覚に頼るところが大きいようであるが、脳の大きさに反した知能の高さ故に色好きな傾向もあるようだ』で決まりだな)
そんな気持ちを代弁するかのような調査記録の締めとなる文言を決めたアランはにこやかにスマホカメラを構えたままシャッターを切るのであった。
【完】
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
MMS ~メタル・モンキー・サーガ~
千両文士
SF
エネルギー問題、環境問題、経済格差、疫病、収まらぬ紛争に戦争、少子高齢化・・・人類が直面するありとあらゆる問題を科学の力で解決すべく世界政府が協力して始まった『プロジェクト・エデン』
洋上に建造された大型研究施設人工島『エデン』に招致された若き大天才学者ミクラ・フトウは自身のサポートメカとしてその人格と知能を完全電子化複製した人工知能『ミクラ・ブレイン』を建造。
その迅速で的確な技術開発力と問題解決能力で矢継ぎ早に改善されていく世界で人類はバラ色の未来が確約されていた・・・はずだった。
突如人類に牙を剥き、暴走したミクラ・ブレインによる『人類救済計画』。
その指揮下で人類を滅ぼさんとする軍事戦闘用アンドロイドと直属配下の上位管理者アンドロイド6体を倒すべく人工島エデンに乗り込むのは・・・宿命に導かれた天才学者ミクラ・フトウの愛娘にしてレジスタンス軍特殊エージェント科学者、サン・フトウ博士とその相棒の戦闘用人型アンドロイドのモンキーマンであった!!
機械と人間のSF西遊記、ここに開幕!!

今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。




ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる