ミキちゃんちのインキュバス 2 !!

千両文士

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【ミキちゃんちのインキュバス2!(第26話)】「いきなりモフモフ回!? アラン君ちのハム三郎現る!」

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 都内S区某所にあるマンション、平日日中の508号室。
「へえ、ハムスターってたくさん種類があるんだなぁ……」
 図書館から借りて来た『動物図鑑』を片手に携行型水槽内を観察する男淫魔のアラン。
 その中でふわふわの巣材を蹴散らし、掘り返して走り回っているのは背中に黒い一本スジを持つ茶色い小動物、ハムスターだ。

 事の発端は数日前。株式会社サウザンド人事部のミキちゃんの同僚社員にして二児の母でもある田辺マダムは子供達との春休み旅行のため体暇取得。その際に娘さんが飼い始めたジャンガリアンハムスターのハム三郎ちゃんは餌と共にお留守番させる予定だったが、『アランお兄様に預かって欲しいの!!』と言う娘さんの主張もあって田辺さんはミキちゃんに相談。
 それをミキちゃん経由で聞いたアランは(人間界の愛玩動物文化と小動物生態調査のチャンスとして)承諾したのである。

「ハムスターと言う生き物はよく走り回り、ヒマワリの種や猫や犬と同じカリカリ、レタスやキャベツを食べる……」
 かくして数日間を守屋家で過ごすことになったハム三郎を観察していたアランは淫魔ギルドに提供する自主調査記録を100円ショップで買ってきたノートにまとめる。
「あとは、知能レベルの測定だが……どうしたもんかな?」
 水槽の4つ角を掘り返してふわふわ巣材を中央盛り上げ、小山にしていくハムスターを見ていたアランは魔界スマホで『ハムスター 知能検査』と検索してみるが役に立ちそうな情報は出てこない。
(ナベシマ姐さんの時のようにいくかは分からないが……やってみる価値はあるかもしれない。ハム三郎……聞こえますか? 聞こえますか?)
 ダメもとで微弱なテレパシーを送った瞬間、後ろ足で巣材を蹴り散らしていたハムスターの動きが止まる。
(オマエ……ナニモンダ?)
 拙いテレパシーで聞き返しつつ立ち上がって鼻をピスピスさせつつ周囲を探るハムスター。
「ここだよ、見えるかい? コンコン……」
 水槽に顔を近づけ、軽く叩くアランの方をハム三郎は向く。
(… …キコえルぞ、おマエおれのナカマなのか? 随分デカイな?)
 水槽の壁にへばりついてアランを観察するハム三郎。
(そうだよ、ハム三郎。初めまして僕はアラン)
 猫股一歩手前のナベシマ姐さんはさておき、ノイズ混じりとは言えハムスターまでテレパシーで切り返してきた事に驚くきつつもアランはテレパシーで切り返す。
(へぇ、よろしくな!! ところでさぁ……なんかかじるモノ持ってないか? オレっちこんな狭い場所でストレス溜まってて、何でもいいからかじりたいのよ?)
(何でもいい? じゃあちょっと待っててくれ)
 なるほど、かじるのはそういう事か……アランはハムスターの生態と思考を脳内メモしつつ良さげなモノを探す。

(うきょきょきょぉ!! いえぇぇい!!)
 捨てる予定だったトイレットペーパーの芯を小さい体で抱え込み、夢中でかじるハム三郎。
 そのワイルドな様にアランはビビリつつも魔界スマホで資料動画撮影する。
(ありがとな、アラン!! こいつは最高だぜ!! 後は……何かこう、運動不足を解消する何かが欲しいんだが、何かぐるぐる回すアレってある?)
(ぐるぐる回すアレ? ちょっと待ってくれ)
 アランはハム三郎が言う『ぐるぐる回すアレ』を魔界スマホで調べる。
「もしかしてこれか?」
 動画サイトで回し車なるハムスターおもちゃ動画を見つけたアランはハム三郎に見せる。
(そうそう、これよこれ!!)
(…… ううん、すぐに見つかるかは分からないけど午後の買い物の時にあるか見て来るよ)
(ありがとな、アラン! 恩に着るぜ!!)
 回し車が楽しみでたまらないハム三郎は興奮のあまりふわふわの巣材の上を転げまわってしまう。

 それから数時間後、夜。
「へぇ、ハムスターって小っちゃいのに温かいのね……それにふこふこで可愛いわ」
(ミキちゃんいい匂い!! それにココ柔らかくてほどよく温かくて大好き!!)
 鼻をピスピスさせるハム三郎を乗せた手を胸に押し乗せるようにして安定させ、手の中を動き回る様をしげしげと観察するミキちゃん。
「ひまわりの種食べる?」
 そんな彼女は大人しくしているハム三郎に気を配りつつ、右手につまんだひまわりの種を差し出してみる。
(わぁい、いただきます! ミキちゃんありがとう!!)
「へぇ、前の手で器用に食べるのね……かわいい!!」
 大喜びで受け取ったハム三郎が器用に皮を剥いで白い中身を頬袋に入れていく微笑ましい様をミキちゃんは愛でる。

(……)
 グラマー美女・ミキちゃんの胸の上をてちてちと動く小動物と言うフォトウコウ映えMAXな光景をスマホカメラ撮影していたアラン。
 おばばさんがおもちゃ屋の不良在庫だからと回し車をタダでくれた事や人間界の愛玩動物文化調査における有意義な記録が得られた事はさておき、ハム三郎の心の声を受信し続けているアランの心の内は何となくモヤモヤする。
(『ハムスターは嗅覚に頼るところが大きいようであるが、脳の大きさに反した知能の高さ故に色好きな傾向もあるようだ』で決まりだな)
 そんな気持ちを代弁するかのような調査記録の締めとなる文言を決めたアランはにこやかにスマホカメラを構えたままシャッターを切るのであった。

【完】
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