ミキちゃんちのインキュバス 2 !!

千両文士

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【ミキちゃんちのインキュバス2!(第25話)】「電話の向こうは誰でSHOW!? 天使と淫魔のバッタリコメディー!!」

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 関東近郊県某所にある『ハツピーサプリメント株式会社』コールセンター。
「今日も暇ねぇ……」
 コールセンターで電話待ちしつつスマホでピン抜きゲームに興じていた2人の女性派遣社員は大あくびと共にスマホをデスクに置く。
「だいたいさぁ、こんな怪しげなサプリメント売れるわけないのにさぁ。こんなのに電話するバカなんているの?」
 金髪ロングヘアの若い派遣社員は怪しげな開運アイテムの広告動画に入ったスマホ画面と同社の新製品サプリメント『たった一ヶ月でこんなに急速成長!! スーパーバストボガン』の新聞折込チラシを手に取って見比べつつ鼻で笑う。
「ネットならとにかく新聞でこんなもん見て買うのがどんな顔してるのか見てみたいわよ! どうせこんなも……」
 スマホゲームに飽きて充電ケーブルに差したおばちゃん派遣社員もつられて手元の折込チラシを手に取ろうとしたその時、2人の電話が同時に鳴る。

「お電話ありがとうございます! こちらハッピーサプリメント電話注文窓口でございます!」
『はじめましてですわ下賤の人間!』
 開ロー番で謎マウント罵倒を喰らわせて来る甲高い声の少女(?)。
『先日そちらのスーパーナントカの広告を見まして高貴な私自らお電話したのですよ、注文は大丈夫かしら?』
「はっ、はいもちろんでございます!!」
 勘違い系痛電波ガールとは言え購入の意思を示す以上、カモ……ではなくお客様。
 コールセンター職員はすぐに手元のメモとペンを手に取り、業務に取り掛かる。
『それは助かりますわ!! とりあえずはお試しで1年分定期購入コース、料金はコンビニ振り込みで全額前払い。届け先の件ですけど……どこでも大丈夫なんですよね?』
「はい! 当社は海外除き、離島を含む日本全国に送料無料でお送りしております。
お住まいの地域はどちらになりますでしょうか?」
 電話口の相手が未成年だろうが関係ない、コールセンター職員は背中のネギどころか羽の1本残らずむしり取らんと畳み掛ける。
『古今東西の神の御使いが住まう『天界』は海外に該当いたしますか?』
「てんかい? 神のみつかい?」
 何の脈絡もなくぶち込まれたファンタジーワード。
『そっ、そうですわよね! 今のは忘れてくださいませ。では、人間界のコンビニ受け取りでお願い出来ますかしら?』
「……えっ、ええと。申し訳ございません、当社は独自の配達ネットワークを持っており、全てのサプリメントをお客様のご自宅に社員が誠意をもってお届けする方針となっておりますのでコンビニ受取非対応でございます。日本国内でお届け可能なテンカイのご住所をお伺いしてよろしいでしょうか?」
 ぼったくリサプリメントに並ぶ会社の収益源たる個人情報獲得の隠れみのとなる『御自宅お届けのみ』の旨を伝えるコールセンター職員。
『……ええと、人間界の連絡先ですか? あるにはあるんですけど、お優しいお姉さまはとにかくあのヘンタイ男にばれたら何を要求されるかなんて想像したくもありませんわ!!
 きっと私の弱みを握ったあの男は着衣を全てを脱ぐように要求し、グヘグヘいやらしく笑いながら清純な私にあんな事やこんな事を……』
「そのようなお話であれば私共ではなく警察にご相談なさった方が……」
 ここに電話して来る時点でそもそもアレな娘だとご察ししていたが、事実であれば警察案件な事を言い出す女の子に若干引いてしまう。
『そうですわ! 私、人間界の日本円を持って直接そちらに買いに行きますわ!! いまそちらの住所を……魔力逆探知いたしますからお電話そのままでお願いしますわ』
「?」
『そちらの住所は…… S県の西良(さいりょう)線、東裏羽(ひがしうらわ)駅近くの雑居ビルの4階。コンビニが1階にあって2階は麻雀屋、3階は空きフロアになっていてビル名は第七山田ビル。貴女がお座りの席の後ろに大量の段ボールが積まれておりますわね、在庫は十分と言ったと……』
 いきなリハッピーサプリメント社の所在地を読み上げつつ、社内を見ているかのようにペラペラと喋り出す少女。
 その不気味さに耐え切れなくなった職員はすぐに電話をブチ切る。
「はあああ……」「どっと疲れたわぁ……」
 ほぼ同時に電話を切り終え、机に突っ伏すコールセンター派遣社員達。
「あんたも大変だったみたいねぇ……私が対応したどこぞの公務員を名乗るインテリ女は場所の仔細は言えないが魔族の住まうマカイに極秘裏に送ってくれと言い出したんだ。しまいにゃ数ヶ月後に肩や胸が丸見えな露出度高すぎナイトドレスを公務で着なくてはならないんだ。夫も同伴だからその時までに少しでもこの体型をどうにかしたいんだ、なんなら生意気な姪っ子を見返してやりたいんだと泣きついてきたんだよ。
 中二病まっしぐらの甥っ子じゃあるまいし、ラノベの読みすぎだよ……一服やりに行く?」
 机上のタバコを手に取って喫煙室に向かうおばちゃん派遣社員。
「いいっすね…… しばらく電話に出たくないしお付き合いしますよ」
 スレンダーボディコンプレックスを抱える美少女天使とダークエルフの血を継ぐ女淫魔の電話対応を同時にとると言うアンビリバボーな奇跡体験をした事を知る由もない女性派遣社員2人はタバコとスマホ、財布を手に取って喫煙室に向かうのであった。

【完】
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