ミキちゃんちのインキュバス 2 !!

千両文士

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【ミキちゃんちのインキュバス2!(第21話)】「三回まわってワンと鳴け!!  ミキちゃんと呪いのパーカーパジャマ!?」

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「ああ、いい湯だったわぁ・・・」
 都内S区にあるマンション508号室、金曜日の夜。
 淫魔族の青年・アランと共に住まう守屋 美紀、通称ミキちゃんはお風呂から出てタオルで全身をふく。
「あれ、パジャマ間違えたかな……? キアラちゃんの忘れ物かしら」
 パジャマと間違えて出してしまったであろう茶色い柴犬デザインの尻尾付きロングフードパーカー。パンツ一枚でアランの前に出るわけにもいかないミキちゃんはひとまずそれを素肌上に羽織る。

「さて、明日は……」
 508号室のリビング。ミキちゃんが夕食後のお風呂に入っている間に明日のやる事リスト作成中だったアラン。
「わんっ!!」「ミキさん…… ?」
 そんな彼の傍らに四足歩行で滑り込んで来た正面フルオープンな犬パーカー姿でお座りするミキちゃんにアランは思わず目をこする。
「そのパーカーは……姉さんから預かっていた地域のボランティア活動に寄付する古着ですよね? パジャマと間違えたんですか?」
「わんっ!!」
 演技やおふざけではないミキさんの犬っぷりとリアルな尻尾の動き方に嫌な予感がしたアランはすぐに魔力探知をする。
「…… ミキさん、僕が目のやり場に困るのでとりあえず前のジッパーは締めましょうか?」
「わんっ!!」
 正面丸出しの犬パーカーパジャマのジッパーをそっと閉じてもらったミキちゃんは大きなあくびと共に四足歩行でベッドヘ向かい、丸くなって寝息を立てる。

~それから数時間後、朝~
「うむ、これは参りましたな……キアラ殿、守屋様のお具合はどうですかな?」
 昨夜からのミキちゃんの異常魔力反応と異常行動の連絡を受けて緊急集合したラビオ刑事とキアラ、そして重要参考人のイザベラさん。
 ラビオ刑事はアランの膝枕&頭ナデナデで気持ちよさそうに大人しくしているミキちゃんを調べていた天使モードキアラに聞く。
「……おそらくですけど、このイザベラさんの古着にわずかに付着していた残留魔力とミキさんの犬のイメージが魔潤体質と反応を起こし、一時的に軽い催眠状態になっているようです。時間経過で自然解消すると思いますけど、様子見はした方がいいと思います」
「そうか、それはなによりじゃ……」
 人間でありながら先天的に膨大な魔力を有する特異体質・魔潤体質。ごく最近その存在が判明し、研究が始まったばかりのそれが引き起こした予測不能な事象にラビオ刑事は驚きつつも命に別条が無いと知ってひとまず安心する。
「きゅぅぅん……」「ミキさん、どうしたんですか?」
 膝枕をやめて手足をくの字に曲げてごろんと仰向けになり、アランを見つめつつ何かを要求して来るわんこミキちゃん。アランはその意図が分からず、見つめ返してしまう。
「ナデナデに飽きて遊んで欲しいんじゃないかしら? 守屋さん、こっちよ!!」
 ミキさんに寄付を頼んだ古着の件で無罪が証明され、安心したイザベラさんはマッスルGUY・剛や守屋夫妻が猫ちゃんズに貢いでいた猫おもちや箱からリボン付き鈴ボールを取り出し、わんこミキちゃんの前でちらつかせる。
「わんっ!! わんっ!!」
「ほ―ら、取っておいで!!」
 投げられたボールを追って大喜びで部屋の隅に向かい、ボールのリボンを咥えてイザベラさんの下に運んでくるミキちゃん。
「よしよし、守屋ちゃんはイイ子ですねぇ……」
「わんわんっ!!」
 催眠状態で犬になりきっているとは言え、大好きアピール全開ですり寄ってくるミキちゃんの魅惑的な柔肌に美しく豊満な肉体と美脚。その魅力と可愛らしさに抗えずイザベラさんは全身を撫でまわしてしまう。

「イザベラさんばっかりずるいです!! 私もミキさんと遊びたいです!!」
「わんっ!!」
 ミキちゃんを独占しているイザベラさんに対抗して猫じゃらしを取り出したキアラ。
 床を這うようなその動きにつられたミキちゃんは犬パンチでもふもふの猫じゃらしを追い回してしまう。

「えっ、ええと……じゃあ僕も? ミキさん、お手……?」
 いつもとは違うミキちゃんに戸惑っていたものの、キアラとイザベラ姉さんに遊ばれて全身全霊で喜ぶその様に我慢できなくなったアランは両手の平をそっと差し出す。
「わんっ!!」
 猫じゃらしとボールを放り出してアランの下に駆け寄ったミキちゃんはその手をポコポコ叩き、肉球パンチラッシュを喰らわせる
「ミキさん、こっちもありますよ!!」「私もいいわよ!!」
「わんっ!! わわんっ!!」
 喜びの声と共に肉球連打を3人の手に食らわせるミキちゃん。その犬っぷりに3人はテンション爆上がりする。

~それからしばらくして~
「流石にお疲れね……でも楽しかったわ!!」
 たっぷりと遊び、長クッションを抱えてすやすやと眠るわんこミキちゃん。
 ハラハラドキドキなラビオ刑事を他所にその満足げな表情を見守る魔界人3人は思わず釣られて微笑む。
「ラビオさん、ミキさんの魔力催眠状態は弱くなっているみたいです……この分なら数時間後には自然解除されるでしょう」
 魔力探知でミキちゃんの状態を確認したキアラはラビオ刑事に報告する。
「それってつまり、私達が守屋さんとたくさん遊んで構ってあげたからかしら?
 ねえ、キアラちゃん。せっかく守屋さんがわんこになっているんだから……お外で散歩とかどうかしら?」
「イザベラ殿、人間の警察にお世話になりたいのですかな?」
 猫おもちゃ箱で見つけたフリーサイズ首輪&リードを持ってウキウキのイザベラさんをラビオ刑事は睨む。
「あら、ラビオさん! これは変態プレイじゃなくて守屋さんを元に戻すための治療行為ですわよ? どのみちお巡りさん案件にはならないように幻覚で誤魔化しますし……守屋さんがこのままでいいと言いますの?」
「まっ、まあ……ううん、そうですな。だが何かあった場合わしの切腹では済まぬ可能性も……」
 痛い所を突かれたラビオ刑事が反論に窮する中、アランは犬耳フードを昨夜からずっとかぶったままだったミキちゃんの頭が汗でびしょびしょなのに気づく。
「ミキさん、ごめんなさいね……」
 アランがそっとフードをずらし下ろし、タオルで汗だくの頭をふこうとしたその時だった。
 すやすや寝ていたミキちゃんが目を開く。

「あれっ……もう朝なの? ラビオさんにキアラちゃん、イザベラさんまでどうしたんですか?」
 むっくりと起き上がったミキちゃんは寝ぼけまなこで4人を見回す。
「守屋さん、お戻りになったんですか……?」
「お戻りって何の事?……こんな汗だくになって昼過ぎまで寝ちゃうなんてどうしたんだろう? 私疲れてるのかな?」
 犬プレイで屋外に連れ出される一歩手前で催眠状態解除されたミキちゃんは周りを見回す。
「お待たせしてごめんなさい、ちょっとシャワーを浴びてきますので……しばらくお待ちください!!」
『犬耳フードを他人が外す』と言うまさかの解除方法……4人は驚きつつも着替えを取ってお風呂場に向かうミキちゃんを安堵の息と共に見送るのであった。

【完】
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