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【ミキちゃんちのインキュバス2!(第19話)】「第二のイケメン魔族現る!? 体育会系エンターテイナー・鬼丸くにお!!」

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 金曜日の夜、都内S区某所にあるマンション508号室。
「ただいまぁ……!?」
「おかえりなさい、ミキさん!!」
 一週間の仕事を終え帰宅した株式会社サウザンド人事部社員、守屋 美希・通称ミキちゃん。
 そんな彼女と同居中のイケメン淫魔・アランの爽やかな出迎えスマイルよりも先に目に入ったのはちゃぶ台上に積まれた何十箱ものテイクアウト牛丼(特盛)とカツ丼(特盛)。
 ……そしてそれをバクバクと平らげて行く黒タンクトップにジーンズ姿の虎バンダナ細マッチョGUY。

「ええと……あなたは魔界の人? よね。ラビオさんの親戚なのかしら?」
 何となくだが鬼神族のラビオ刑事と同じ物を感じ取ったミキちゃんはわんこそばの如くカツ丼を平らげて行く赤胴肌の細マッチョGUYに尋ねる。
「初めまして、守屋さん!! 俺はアランの友人の鬼丸 くにお(おにまる くにお)と言います。赤鬼族の父と雷鬼族の母を持つ赤鬼族で、職業はステージエンターティナーです!!」
 赤胴肌の細マッチョGUY、鬼丸はバンダナで隠していた頭頂部の三角錐型の太短い角2本を見せつつ、丁寧に名刺を差し出して自己紹介する。
「ご丁寧にありがとうございます!! 私は守屋美希、株式会社サウザンド人事部社員で人間の両親とボディービルダーの兄を持つ人間族(?)です!」
 久しぶりで正しいのか不安になる魔界人流自己紹介フォーマットに戸惑いつつもミキちゃんは自身の会社名刺を差し出す。

「この前、僕とキアラはS区中央商店街で節分イベントの打ち合わせに参加して、物販ではないステージイベントの件で話し合ったんです」
 鬼丸が自腹で用意した夕食とは別でカツ丼弁当を2つ確保しておいたアランはシャワー後に風呂場で部屋着に着替えて来たミキちゃんに用意しつつ話し始める。
「節分……ああ、もうそう言えばそういう時期よね」
 1月の忙しさに2月になった事も忘れていたミキちゃんはカレンダーを確認する。
「それでそば屋の源さんが言うには、ここ数年のS区中央商店街節分イベントではブテイック・ツキミの桜さんがメンバーのコスプレネットアイドルグループにステージ出演してもらうそうなんですけど今年はそれが出来ないって申し出があったらしくて何か客寄せになるアイディアを出し合ったんです」
「へえ、そうだったんだ!! でも……それは難しいわね」
 いつも服の件でお世話になっていたのに知らなかった桜さんの副業はさておき、曖味すぎる無理難題にミキちゃんも考えてしまう。
「とは言っても僕だっていいアイディアがあるわけでもなし……それで人間界でステージエンターテイナーとして活躍する鬼丸君に相談してみたら『じゃあ俺が出てやるよ!!』って快諾してくれたんです!!
 その後はとんとん拍子に話が進んで、企画会議で『S区中央商店街にイケメン鬼がやって来る!!』の開催が決まったんですよ」
(言われてみれば……アラン君とは違う意味で男前だわね)
『イケメン鬼もやってくる!? S区中央商店街節分セール開催』のチラシと鬼丸君を交互に見ていたミキちゃんは筋肉モリモリマッチョな兄とは違う意味でスタイリッシュによく鍛えられた健康的な肉体、整った目鼻立ち、180オーバーの高身長……海やゲレンデを出ても魅力的な体育会系イケメンを観察する。
「それで人間界にやって来たついでにアランがお世話になっている守屋さんにもご挨拶で参りました。当日は鬼衣装でステージと握手会、チェキイベントをやりますんで……守屋さんもよろしければいらしてください」
 食べ終えた何十箱もの弁当容器を片手で圧縮して片付ける鬼丸は締めくくる。
「ありがとう、鬼丸君! 是非ともそうするわ」
 ミキちゃんはカツ丼(大盛り)をほおばりつつ答える。

 ……数日後、S区中央商店街。
「はいっ、笑ってチーズーッ!!」
 節分セールの客寄せメインイベント『イケメン鬼とチェキ撮影(600円)』コーナーを担当する黒スパッツ上に虎皮腰巻姿の鬼丸は金棒片手にスポーツイケメンにドキドキな女の子とカメラに収まる。

「鬼丸君、大人気ですねぇ。アラン様」
 そのお向かいにある恵方巻販売コーナーでアランと共に店番中のキアラは次の女の子をお姫様抱っこする鬼丸を見つつほのぼのと言う。
「そうだねぇ、キアラ……僕達も見習わないとねぇ」
 アランに気を遣ってか鬼丸とのチェキ撮影はしないと言っていたミキちゃんがノリノリの蓮美(イザベラ姉さん)に根負けして共に列に並ぶ様を見つつアランはほのぼのと返す。
「まあかく言う私もこの後セクシー鬼ガールで茶摘さんを誘惑する予定なので……アラン様も頑張って下さいね!!」
 先日の節分セールの企画会議で虎ビキニ&虎パレオ、虎ブーツの薄着で2月の屋外ステージイベントに耐える桜さん達の写真で茶摘篭絡作戦のインスピレーションを得たキアラはサムズアップする。
(僕が彼みたいな鬼コスプレしても……ううん、どうかなぁ?)
「すいません、(竹)の恵方巻2本ください!!」
 色白で細いアランがそんな事を考えていたその時、鬼丸のサイン入りチェキを持った女の子が恵方巻を買いに来る。
「ありがとうございます!! 1500円になります」
 ミキさんが楽しいならそれでいいか。 困惑とドキドキの笑顔でお姫様抱っこサービスされるミキちゃんを見やりつつアランは思考を切り替えて自分のアルバイトに専念するのであった。

【完】
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