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【ミキちゃんちのインキュバス2!(第18話)】「アラン、eスポーツ始めます!! 未来のプロゲーマー、田辺裕次郎!」
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都内S区にある某マンション、508号室。午後4時頃。
「さて、今日の夕食のメニューは……温かい鍋物にしようかな?」
アランが冷蔵庫の野菜や肉を取り出しつつ夕食の下準備を始めようとしたその時、インターホンが鳴る。
「オンラインショップとかは頼んでないし……ラビオさんかキアラかな? あれっ?」
部屋の前に立つ見知らぬ小学生と思しき男の子にアランは首をかしげる。
「魔界人ではなく近所の子でもなさそうだし……部屋を間違えてるのかな?」
アランが考え込んでいると男の子はインターホンを連打しはじめる。
(とりあえず最悪の場合は警察を……!!)
いつでも通報できるように魔界スマホを手に取ったアランはそっと扉を開ける。
「ここはモリヤさんの家ですか?」
「そうだけど君は……?」
「俺、田辺 裕次郎(たなべ ゆうじろう)!! モリヤさんの同僚の息子だ!!」
男の子は小学校の学生証を見せつつ自己紹介する。
「(うん、嘘はついていないようだが……)僕は守屋アラン、ミキ姉さんはいないけど……何しに来たの?」
こっそり耳に入れたワイヤレスイヤホン型魔界暗器『舌ヲヌク嘘ツキ(ライアーチェッカー)』で真偽を確かめていたアランはそっと聞く。
「聞いたんだけど守屋おばさんってジョイステーションエックス持ってるんでしょ!? 俺の将来のために使わせて!!」
「えっ、ええっ?」
アランは少年の言わんとすることが全く分からずきょとんとする。
それからしばらくして……
「ええと、君はオンラインシューターゲームに人生を賭けているんだけど、マシンスペックが低いジョイステーションポータブルでこれ以上のランクを目指すのはもう限界だと感じた。
だから出世払いで倍にして返すからジョイステーション5か数十万のゲーミングーPCをママに買って欲しいと頼んだけどダメだって言われたんだね?」
「うん、そうだ」
裕次郎君はアランが出したお菓子をバリバリ食べつつ答える。
「そんなとき、君はママからミキ姉さんがジョイステーションエックスを持っていると聞き、在宅ワーク中のママが送る書類から盗み見た住所でここまでやって来た……と、いう事なのか」
「うん、そう!! アラン兄ちゃん、お願い!! 俺の将来の夢のためにジョイステーションエックスを使わせて!!」
「でも、これはミキ姉さんの物だしそもそも……」
アランが少年を諭そうとしたその時、魔界スマホが鳴る。
「ミキさん!? もしもし?」
『アラン君、ごめんね!! いま田辺さんに事情を話して……裕次郎君に代わってくれる?』
「はいっ、裕次郎君。お母さんから電話だよ……」
『裕次郎!! 何を考えているの!!』
アランが子機を渡した瞬間、スピーカー無しでも部屋中に響く絶叫。
『ママ、あちこちに連絡して大変だったのよ!! 学童の先生も警察に行く寸前だったのよ!!
とにかくそこを動くな!! 今から清井人事部長に事情を話して早退するから……守屋弟さんに迷惑をかけたら承知しないからね!!』
母にブチ切られた電話を無表情で返して来る裕次郎少年。
「アラン兄ちゃん、気にしないでくれ……どうせこうなるのは分かってたんだ。未来の大物プロゲーマー様がこの程度の妨害で動じると思うのかい?」
「うっ、うん……」
肝が据わっていると言おうか、悟っていると言おうか……アランは昨今の小学生の早熟っぷりに驚くばかりだが、ここで中途半端に甘やかしたらまた押しかけてきてミキさんのみならず株式会社サウザンド人事部の皆さんに迷惑をかけてしまう……そんな葛藤の中アランは一計を案じる。
「ところで君がやってるっていうオンラインシューターゲームってどんなの? エックスにプリインストールされていたんだけど触ったことが無くて……」
「じやあアラン兄ちゃんにも教えてやるよ!! 俺、教えるのもうまいんだぜ!」
アランの策に乗せられたとも知らず、少年は大興奮でジョイステーションエックスのコントローラーを手に取る。
「守屋さんまで……本当にすみません!!」
急ぎの仕事を終え、清井人事部長の早退許可を得て午後5時に退社した株式会社サウザンド人事部社員、守屋美希・通称ミキちゃんと二児の母・田辺 貞美(たなべ さだみ)。
「いえいえ、まさか裕次郎君が家に来るなんて想像もしていませんでしたし……アラン君は多分大丈夫だと思いますけど、何のために?」
都内S区某所のマンションに到着した2人はエレベーターに乗り込み、5階へ向かう。
「アラン君!! ただいま!!」
「田辺さんにミキさん!?」
ちゃぶ台で宿題を広げた裕次郎君の家庭教師中だったアランは駆け込んで来たミキちゃんと田辺マダムに驚く。
「裕次郎が宿題……まさか、アランさんが?」
「ああ、母ちゃん。俺ようやくわかったよ……上には上がいるって事をさ」
「???」
『将来プロゲーマーで賞金生活する俺には宿題や学校の勉強なんて必要ないんだ!!』とのたまう息子が横に置かれた守屋さんの高級ゲーム機に眼もくれず大人しく宿題ドリルをやる風景。
母として宿題をやらせるためにゲーム機を没収し、横で終わるまで鬼の形相で監視すると言う強権的措置を取っている田辺 貞美は驚きのあまり怒る気持ちも萎えてしまう。
「ええと、対面では初めましてですね田辺さん……僕はミキさんと同居中のアランです。
裕次郎君はどうやら姉のジョイステーションエックス目当てで来たらしいですけど、僕の説得もあってどうやら反省してくれたし、宿題もきちんと終わらせたようなのであんまり責めないであげてくださいませんか?」
「わっ、わかったわアランさん……ありがとうね」
一時的に魔力操作で五感を超強化し、初心者とは思えぬ天才神プレイの数々で超えられない才能の差を見せつけたアラン。その爽やかなイケメンスマイルと共にお願いされた田辺さんはわけもわからぬままOKしてしまうのであった。
【完】
「さて、今日の夕食のメニューは……温かい鍋物にしようかな?」
アランが冷蔵庫の野菜や肉を取り出しつつ夕食の下準備を始めようとしたその時、インターホンが鳴る。
「オンラインショップとかは頼んでないし……ラビオさんかキアラかな? あれっ?」
部屋の前に立つ見知らぬ小学生と思しき男の子にアランは首をかしげる。
「魔界人ではなく近所の子でもなさそうだし……部屋を間違えてるのかな?」
アランが考え込んでいると男の子はインターホンを連打しはじめる。
(とりあえず最悪の場合は警察を……!!)
いつでも通報できるように魔界スマホを手に取ったアランはそっと扉を開ける。
「ここはモリヤさんの家ですか?」
「そうだけど君は……?」
「俺、田辺 裕次郎(たなべ ゆうじろう)!! モリヤさんの同僚の息子だ!!」
男の子は小学校の学生証を見せつつ自己紹介する。
「(うん、嘘はついていないようだが……)僕は守屋アラン、ミキ姉さんはいないけど……何しに来たの?」
こっそり耳に入れたワイヤレスイヤホン型魔界暗器『舌ヲヌク嘘ツキ(ライアーチェッカー)』で真偽を確かめていたアランはそっと聞く。
「聞いたんだけど守屋おばさんってジョイステーションエックス持ってるんでしょ!? 俺の将来のために使わせて!!」
「えっ、ええっ?」
アランは少年の言わんとすることが全く分からずきょとんとする。
それからしばらくして……
「ええと、君はオンラインシューターゲームに人生を賭けているんだけど、マシンスペックが低いジョイステーションポータブルでこれ以上のランクを目指すのはもう限界だと感じた。
だから出世払いで倍にして返すからジョイステーション5か数十万のゲーミングーPCをママに買って欲しいと頼んだけどダメだって言われたんだね?」
「うん、そうだ」
裕次郎君はアランが出したお菓子をバリバリ食べつつ答える。
「そんなとき、君はママからミキ姉さんがジョイステーションエックスを持っていると聞き、在宅ワーク中のママが送る書類から盗み見た住所でここまでやって来た……と、いう事なのか」
「うん、そう!! アラン兄ちゃん、お願い!! 俺の将来の夢のためにジョイステーションエックスを使わせて!!」
「でも、これはミキ姉さんの物だしそもそも……」
アランが少年を諭そうとしたその時、魔界スマホが鳴る。
「ミキさん!? もしもし?」
『アラン君、ごめんね!! いま田辺さんに事情を話して……裕次郎君に代わってくれる?』
「はいっ、裕次郎君。お母さんから電話だよ……」
『裕次郎!! 何を考えているの!!』
アランが子機を渡した瞬間、スピーカー無しでも部屋中に響く絶叫。
『ママ、あちこちに連絡して大変だったのよ!! 学童の先生も警察に行く寸前だったのよ!!
とにかくそこを動くな!! 今から清井人事部長に事情を話して早退するから……守屋弟さんに迷惑をかけたら承知しないからね!!』
母にブチ切られた電話を無表情で返して来る裕次郎少年。
「アラン兄ちゃん、気にしないでくれ……どうせこうなるのは分かってたんだ。未来の大物プロゲーマー様がこの程度の妨害で動じると思うのかい?」
「うっ、うん……」
肝が据わっていると言おうか、悟っていると言おうか……アランは昨今の小学生の早熟っぷりに驚くばかりだが、ここで中途半端に甘やかしたらまた押しかけてきてミキさんのみならず株式会社サウザンド人事部の皆さんに迷惑をかけてしまう……そんな葛藤の中アランは一計を案じる。
「ところで君がやってるっていうオンラインシューターゲームってどんなの? エックスにプリインストールされていたんだけど触ったことが無くて……」
「じやあアラン兄ちゃんにも教えてやるよ!! 俺、教えるのもうまいんだぜ!」
アランの策に乗せられたとも知らず、少年は大興奮でジョイステーションエックスのコントローラーを手に取る。
「守屋さんまで……本当にすみません!!」
急ぎの仕事を終え、清井人事部長の早退許可を得て午後5時に退社した株式会社サウザンド人事部社員、守屋美希・通称ミキちゃんと二児の母・田辺 貞美(たなべ さだみ)。
「いえいえ、まさか裕次郎君が家に来るなんて想像もしていませんでしたし……アラン君は多分大丈夫だと思いますけど、何のために?」
都内S区某所のマンションに到着した2人はエレベーターに乗り込み、5階へ向かう。
「アラン君!! ただいま!!」
「田辺さんにミキさん!?」
ちゃぶ台で宿題を広げた裕次郎君の家庭教師中だったアランは駆け込んで来たミキちゃんと田辺マダムに驚く。
「裕次郎が宿題……まさか、アランさんが?」
「ああ、母ちゃん。俺ようやくわかったよ……上には上がいるって事をさ」
「???」
『将来プロゲーマーで賞金生活する俺には宿題や学校の勉強なんて必要ないんだ!!』とのたまう息子が横に置かれた守屋さんの高級ゲーム機に眼もくれず大人しく宿題ドリルをやる風景。
母として宿題をやらせるためにゲーム機を没収し、横で終わるまで鬼の形相で監視すると言う強権的措置を取っている田辺 貞美は驚きのあまり怒る気持ちも萎えてしまう。
「ええと、対面では初めましてですね田辺さん……僕はミキさんと同居中のアランです。
裕次郎君はどうやら姉のジョイステーションエックス目当てで来たらしいですけど、僕の説得もあってどうやら反省してくれたし、宿題もきちんと終わらせたようなのであんまり責めないであげてくださいませんか?」
「わっ、わかったわアランさん……ありがとうね」
一時的に魔力操作で五感を超強化し、初心者とは思えぬ天才神プレイの数々で超えられない才能の差を見せつけたアラン。その爽やかなイケメンスマイルと共にお願いされた田辺さんはわけもわからぬままOKしてしまうのであった。
【完】
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