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【ミキちゃんちのインキュバス2!(第14話)】「迎春2023!! おもちゃ屋オババの不思議な神社!?」
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2023年1月1日、都内S区某所にあるマンション、508号室。
『この小切手が百円になるか、はたまた一億円となるか……運命の二択ですよぉ?
ラストアンサア、オウケエイ?』
「アラン君はどっちだと思う?」「僕は……Aだと思います!!」
醤油ベースのスープに鶏肉、ほうれん草、かまぼこ入りのお雑煮を食べ終え、2人で仲良くクイズ番組の年始スペシャルを見ていた年始休み中の守屋美希・通称ミキちゃんとその同居人の淫魔族の青年アラン・インキュバスは意地悪くにたぁと笑う司会者のどアップ顔を見守りつつ息を呑む。
『キアラチャンカラチャットダヨッ♪』
「キアラちゃん? あけおめメールかしら……わあ可愛い!! アラン君、これ見て!!」
そんな中、スマホのチャットアプリ新着音に気付いたミキちゃんはスマホロック解除。
『ミキさん、アラン様あけおめですわ!』のメッセージと共に正月らしい桃色に扇と蝶をふんだんにあしらった豪華な晴れ着姿の自撮り写真チャットに歓びの声を上げる。
「おお、ジャパニーズビューティーですね!!」
キアラと学生時代からの付き合いがあるアランも初めて見る美しい晴れ着姿のキアラに驚く。
『せっかく豪華な着物を着たから茶摘さんのご実家近くの浅草寺に初詣と思ったんですけどテレビ実況的にすごい人出であきらめました』
キアラからのチャットは続く。
『アラン様にお聞きしたんですけど、S区中央商店街の裏通りに神社があるんですよね?』
『イザベラさんも2つ返事でOKでしたしミキさん達もご一緒に初詣しませんか?』
『いいわよ、キアラちゃん。行きましょ!!』
着物キアラに大興奮のミキちゃんはテレビ画面の向こうで百円の小切手を渡される芸能人の悔しそうな表情に目もくれずOKする。
『じゃあS区中央商店街の入り口でお会いしましょう!! ミキさんとアラン様はどれくらいで来れますか?』
「じゃあ30分後でどう?」
『わかりました! では後程』
スマホチャットを終えたミキちゃんとアランはすぐに外出準備に取り掛かる。
「へぇ、ここがアラン様の言っていた神社なんですね!!」
裏通りの物置と空き家の間に建てられた小さな神社前に集合したミキちゃんと魔界人達。
「父の仕事絡みで行った高天原で立派で荘厳なモノをいくつか見たけど……これはこれで風格がある古さね」
タートルネックセーターにジーンズ、もこもこ帽子とロングコート姿でやってきた蓮美(イザベラ姉さん)は一般的な人間界の神社をしげしげと観察する。
「さて、じゃあお参りに……あれっだれか居るのか?」
数段しかない階段を昇って狭い敷地内に入った5人は神社内に設けられた1軒の出店に気づく。
「おやおや、あけましておめでとう……いらっしゃいませだねえ」
「おばばさん!? どうしてここに」
紫色の小袋御守り、ミニ干支人形、その他もろもろの縁起物の露天を出していた大巴 番子(おおば ばんこ)、通称おもちゃ屋おばばはミニラジオを切る。
「そりゃ決まってるだろう。あたしゃここの管理人だよ? あたしの縄張りで何をしようと自由だろ」
「そうだったんですか!?」
今明かされた衝撃の事実に5人は思わず叫んでしまう。
「このお狐様をお祀りする大巴神社(おおばじんじゃ)は今ではこの通り参拝客も来ないボロ神社だがかつては地域の守り神として参拝者も多くいたのさ。
そしてここを管理していたのが神職だったあたしの祖父、百之助(ひゃくのすけ)と父、千次郎(せんじろう)。……だが大巴家の婿としてその跡取りになるはずだったアタシの夫は若くして死んじまったからねぇ。祖父も父も鬼籍に入っちまった今せめてアタシが生きてる間ぐらいはこうして巡回管理しているのさ」
「そうだったんですね……」
歴史の生き証人たるおもちゃ屋オババの言葉に5人は返す言葉も無い。
「あれっ、じゃあここには今男性神職はいない……そういう事ですよね?」
「そうだね、アランさん。こんなボロ神社に関わろうなんて変わり者はアタシ1人だよ。」
(じゃああの時、僕が見たのはここの関係者では無かったんだな……)
あの時、どこからともなく現れて自転車の整備をしてくれた神職さんの件を確かめたアランは確信する。
「それはさておき、参拝はしなくていいのかい? オババ印のお守りに素朴な縁起物ハンドメイドあくせさりぃは逃げやしないからその後ゆっくり見ておくれ!!」
「あっ、はいっ!!」
おもちゃ屋おばばの話に聞き入っていた5人は慌てて本殿に向かい、お賽銭を入れて一礼二拍手一礼する。
『あの時、自転車の練習をしに来た青年が参拝者を4人も連れて来るとは……やはり良い事はしておくものだな!!』
どこか別の場所、和ろうそくの灯る暗い板の間で銅鏡に映る大巴神社境内の光景を見ていた長い銀髪に白狩衣&紫袴、黒烏帽子姿でこの光景を見ていた若い男性は満足げに微笑む。
『なるほど、あの自転車の彼の名はアランであのグラマーでスタイルのいいお姉さまはミキさん。私と同じ何かを持つあの黒いサキュバスさんはキアラでチャツミと言う男性はそのダーリン……だと? リア充、爆散しやがれ!!』
人知を超えた手段で参拝客の個人情報収集に及んでいた銀髪青年が銅鏡に中指を立てようとしたその時だった。
『あれ、このスナオカハスミとか言う若い女性は……人間じゃなくて魔界人なのか?
どうやら針に糸を通し続けるような精密魔力操作で同族さえ気づけないレベルで普通の人間に完全擬態しているようだ。この私でさえも気づくのがやっとだが何のためにそこまで……?』
和装の人物はいつも掃除と見回りで大巴神社を出入りする管理人・おばばの屋台でおばば特製巾着お守りとウサギの干支人形を買う5人の背中を銅鏡モニター越しに見つつ考え込むのであった。
【完】
『この小切手が百円になるか、はたまた一億円となるか……運命の二択ですよぉ?
ラストアンサア、オウケエイ?』
「アラン君はどっちだと思う?」「僕は……Aだと思います!!」
醤油ベースのスープに鶏肉、ほうれん草、かまぼこ入りのお雑煮を食べ終え、2人で仲良くクイズ番組の年始スペシャルを見ていた年始休み中の守屋美希・通称ミキちゃんとその同居人の淫魔族の青年アラン・インキュバスは意地悪くにたぁと笑う司会者のどアップ顔を見守りつつ息を呑む。
『キアラチャンカラチャットダヨッ♪』
「キアラちゃん? あけおめメールかしら……わあ可愛い!! アラン君、これ見て!!」
そんな中、スマホのチャットアプリ新着音に気付いたミキちゃんはスマホロック解除。
『ミキさん、アラン様あけおめですわ!』のメッセージと共に正月らしい桃色に扇と蝶をふんだんにあしらった豪華な晴れ着姿の自撮り写真チャットに歓びの声を上げる。
「おお、ジャパニーズビューティーですね!!」
キアラと学生時代からの付き合いがあるアランも初めて見る美しい晴れ着姿のキアラに驚く。
『せっかく豪華な着物を着たから茶摘さんのご実家近くの浅草寺に初詣と思ったんですけどテレビ実況的にすごい人出であきらめました』
キアラからのチャットは続く。
『アラン様にお聞きしたんですけど、S区中央商店街の裏通りに神社があるんですよね?』
『イザベラさんも2つ返事でOKでしたしミキさん達もご一緒に初詣しませんか?』
『いいわよ、キアラちゃん。行きましょ!!』
着物キアラに大興奮のミキちゃんはテレビ画面の向こうで百円の小切手を渡される芸能人の悔しそうな表情に目もくれずOKする。
『じゃあS区中央商店街の入り口でお会いしましょう!! ミキさんとアラン様はどれくらいで来れますか?』
「じゃあ30分後でどう?」
『わかりました! では後程』
スマホチャットを終えたミキちゃんとアランはすぐに外出準備に取り掛かる。
「へぇ、ここがアラン様の言っていた神社なんですね!!」
裏通りの物置と空き家の間に建てられた小さな神社前に集合したミキちゃんと魔界人達。
「父の仕事絡みで行った高天原で立派で荘厳なモノをいくつか見たけど……これはこれで風格がある古さね」
タートルネックセーターにジーンズ、もこもこ帽子とロングコート姿でやってきた蓮美(イザベラ姉さん)は一般的な人間界の神社をしげしげと観察する。
「さて、じゃあお参りに……あれっだれか居るのか?」
数段しかない階段を昇って狭い敷地内に入った5人は神社内に設けられた1軒の出店に気づく。
「おやおや、あけましておめでとう……いらっしゃいませだねえ」
「おばばさん!? どうしてここに」
紫色の小袋御守り、ミニ干支人形、その他もろもろの縁起物の露天を出していた大巴 番子(おおば ばんこ)、通称おもちゃ屋おばばはミニラジオを切る。
「そりゃ決まってるだろう。あたしゃここの管理人だよ? あたしの縄張りで何をしようと自由だろ」
「そうだったんですか!?」
今明かされた衝撃の事実に5人は思わず叫んでしまう。
「このお狐様をお祀りする大巴神社(おおばじんじゃ)は今ではこの通り参拝客も来ないボロ神社だがかつては地域の守り神として参拝者も多くいたのさ。
そしてここを管理していたのが神職だったあたしの祖父、百之助(ひゃくのすけ)と父、千次郎(せんじろう)。……だが大巴家の婿としてその跡取りになるはずだったアタシの夫は若くして死んじまったからねぇ。祖父も父も鬼籍に入っちまった今せめてアタシが生きてる間ぐらいはこうして巡回管理しているのさ」
「そうだったんですね……」
歴史の生き証人たるおもちゃ屋オババの言葉に5人は返す言葉も無い。
「あれっ、じゃあここには今男性神職はいない……そういう事ですよね?」
「そうだね、アランさん。こんなボロ神社に関わろうなんて変わり者はアタシ1人だよ。」
(じゃああの時、僕が見たのはここの関係者では無かったんだな……)
あの時、どこからともなく現れて自転車の整備をしてくれた神職さんの件を確かめたアランは確信する。
「それはさておき、参拝はしなくていいのかい? オババ印のお守りに素朴な縁起物ハンドメイドあくせさりぃは逃げやしないからその後ゆっくり見ておくれ!!」
「あっ、はいっ!!」
おもちゃ屋おばばの話に聞き入っていた5人は慌てて本殿に向かい、お賽銭を入れて一礼二拍手一礼する。
『あの時、自転車の練習をしに来た青年が参拝者を4人も連れて来るとは……やはり良い事はしておくものだな!!』
どこか別の場所、和ろうそくの灯る暗い板の間で銅鏡に映る大巴神社境内の光景を見ていた長い銀髪に白狩衣&紫袴、黒烏帽子姿でこの光景を見ていた若い男性は満足げに微笑む。
『なるほど、あの自転車の彼の名はアランであのグラマーでスタイルのいいお姉さまはミキさん。私と同じ何かを持つあの黒いサキュバスさんはキアラでチャツミと言う男性はそのダーリン……だと? リア充、爆散しやがれ!!』
人知を超えた手段で参拝客の個人情報収集に及んでいた銀髪青年が銅鏡に中指を立てようとしたその時だった。
『あれ、このスナオカハスミとか言う若い女性は……人間じゃなくて魔界人なのか?
どうやら針に糸を通し続けるような精密魔力操作で同族さえ気づけないレベルで普通の人間に完全擬態しているようだ。この私でさえも気づくのがやっとだが何のためにそこまで……?』
和装の人物はいつも掃除と見回りで大巴神社を出入りする管理人・おばばの屋台でおばば特製巾着お守りとウサギの干支人形を買う5人の背中を銅鏡モニター越しに見つつ考え込むのであった。
【完】
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