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【ミキちゃんちのインキュバス2!(第11話)】「ミキちゃん危機一髪!? 黒百合サキュバス ソフィア・アンジェラ!!」
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「飲み屋いかがっすかぁ!!」
「今ならビール飲み放題サービスつきますよぉ!!」
都内環状線の駅、真橋。
(魔界王都平民街にある飲み屋街よりかはマシだとは言え……騒がしい場所ね)
その駅前広場にある待ち合わせスポット・巨大な蒸気機関車の近くで黒ズボンスーツ上下姿で待ち人中の魔界外務省長官秘書長にしてキアラの母、ソフィア・アンジェラはその騒々しさに顔をしかめる。
「アンジェラさん! お待たせしました!」
「守屋様、お久しぶりです!」
スマホ片手にソフィアの近くへ駆けて来たのは株式会社サウザンド人事部社員・守屋美希、通称ミキちゃんである。
「すみません、仕事が長引いちゃって……」
「いえ、こちらこそ無理を言ってしまい申し訳ありません。とりあえず行きましょうか?」
「ええ、そうですね!」
ミキちゃんとソフィアさんは駅前広場を離れて喧騒の街へ歩き出す。
「いらっしゃいませ、ご注文はタブレッドかブザーでよろしくお願いします!」
居酒屋チェーン店『のんべぇ』真橋駅前店。
予約済みの掘りごたつ個室に2人を通したガタイのいい店員はおしばりと箸、パリパリチップを置き、一礼して去っていく。
「なるほど、掘りごたつとはこのような構造物で人間界ではこのような食べ物を食前に出して注文はこの機械で行う……守屋様、この分厚い機械はどのように使うのですか?」
部屋の様子にパリパリチップとお冷、注文タブレットを魔界スマホで記録撮影したソフィアは機械の使い方をミキちゃんに尋ねる。
「ええといつもは茶摘さんにやってもらうんですけど……ここにマニュアルがあるので一緒に見ましょう!」
タッチパネルの右上に『使い方』の項目を見つけたミキちゃんはそこを開いてソフィアさんと共に熟読する。
数日前……とある偉い人の希望で『庶民的で大勢でわいわい飲める気さくなお店』で忘年会を開く事になったソフィアさんとその同僚達。
だが魔界王都内にある平民街の飲み屋に自分たちのような超上級魔族が行こうものなら何をされるかわかったものではない、と言う治安上の理由から白羽の矢が立った人間界のチェーン店。
公務としてその事前調査を命じられたソフィアさんはミキちゃんに案内を依頼し、同行してもらう事にしたのである。
「へえ、人間界のお酒って……ものすごい量があるんですね。おつまみとかも魚・肉・野菜問わず多種多様で……実に素晴らしいですね! これならあの方も満足なさる事間違いありません!」
ソフィアさんは店員にもらった紙メニューを見つつ、ミキさんに頼んでもらった唐揚げ・枝豆・冷ややっこ・刺身盛り合わせに舌鼓を打つ。
「それは何よりです! たまにはこういうのもいいですね!」
ミキちゃんもウーロン茶と共に居酒屋メニューを楽しむ。
「あとはお酒ですけど……これはテイスティングも兼ねて1つずつ飲むしかなさそうですね」
そう言いつつソフィアさんは注文タブレット端末を操作する。
「量があるからスモールサイズで、全種類1個ずつ……」
「ソフィアさん!? そんなに飲んで大丈夫なんですか?」
お金は大丈夫だとは言え、とんでもない注文を進めていくソフィアさんにミキちゃんは目が飛び出しそうになる。
「あら、私こう見えましても酒豪のドワーフ族や古代ギリシャの神々とも酒席を共にした事がありまして酒の強さは自信がありますの!」
ミキちゃんの不安げな表情に構うことなくソフィアさんは酒全種類の注文を承認する。
~それからしばらくして~
「よしっ、これが最後の……カルーアミルクですわよぉ……」
(まさかあれを全部飲むなんて……二日酔いとか肝臓は大丈夫なのかしら?)
大分酔いが回りながらも十数種類以上ある全てのアルコールメニューのティスティングを終え、ノートにメモを記録し終えたソフィアさん。
ひとまずは大丈夫そうな様子に安心しつつもタクシーを呼ぶべきか迷う。
「ミキさん、お待たせしましたあ……今日はお付き合いいただきありがとうございますぅ」
(あっ、こりゃダメだ。ひとまず家までタクシーで帰ってキアラちゃんに連絡して……)
ほろ酔いでテーブルに肘を突いたまま水と共に残った食べ物を片付けていくソフィアさんを前にスマホを取り出したミキちゃん。
チャットアプリでキアラちゃんに連絡していたその時、ジトォっとした目線に気づく。
「守屋さんって……人間なのに淫魔族級のグラマーボデイでスタイルも本当にいいですよね」
「あっ、まあそうですね。よく言われます」
マキとは違う意味でキャラ崩壊したソフィアさんの発言にミキちゃんはドキッとする。
「今更ですけど守屋さんって……本当に人間界の人間さまなんですよね?」
掘りごたつ席の枠を伝ってミキちゃんににじり寄るソフィアさん。
グラマーでセクシーな美しさが特徴的な淫魔族の血筋ではなくスレンダーなダークエルフの血筋が知能のみならず容姿にも強く出てしまった女淫魔・ソフィアはミキちゃんの美グラマーボディを羨望と嫉妬の眼差しで見つめる。
「えっ、ええ……そうですよ」
同性から向けられる獣のような羨望の眼差しに嫌な予感がしたミキちゃんはずり寄ってくるソフィアさんから離れるようにずりずりと動いて入口の方へ逃げる。
「そうですよね、私なんか……どうせ私なんて中学生の姪っ子に鼻で笑われるんですから。
こんな私でも慰めてくれますよね、守屋さぁん…… ?」
「うひゃあん!!」
立ち上がる直前で腰を腕に回され、ホールドされたミキちゃん。
インテリ公務員ではなく魔界の女淫魔として息も荒くじっと見つめて来るソフィアさんに為すすべも無く……となりかけたその時、個室のドアが開く。
「お待たせですわ、守屋さん!! ごぶじ……間に合ってなによりですわ!!」
「キアラちゃん!?」
褐色肌に長い金髪を頭上左右でお団子にし、ねじり鉢巻きと青い甚平にロゴいり前掛け姿の『のんべえ』店員姿のキアラ・アンジェラ。
ミキちゃんの無事とその肩にもたれかかって寝息を立てる母にキアラは安堵のため息を吐きつつ伝票を手に取る。
「守屋さん、お会計は済ませて来ますわ。その間にお手洗いと母をタクシーに運ぶご準備をお願いしますのよ!」
「ええ、わかったわ」
ミキちゃんは室内を確認して忘れ物が無いか確かめる。
~それから数日後~
「守屋様、この度はご協力ありがとうございました。」
『守屋美希様へ 魔界外務省一同より御礼品』と書かれたのしがみ付きの超高級和菓子の詰め合わせを持ってお礼に来たソフィアさんとキアラちゃん。
あの時とは対極的な堅物ギヤップにミキちゃんは驚く。
「またもしも人間界の件で御必要がありましたら……よろしくお願いいたします」
「ええ、こちらこそ。ご丁寧にありがとうございます!!」
次にソフィアさんと酒を飲む時はアラン君かキアラちゃんに同行してもらおう。
ミキちゃんは心の中でそう思いつつ、高級和菓子を喜んで受け取るのであった。
【完】
「今ならビール飲み放題サービスつきますよぉ!!」
都内環状線の駅、真橋。
(魔界王都平民街にある飲み屋街よりかはマシだとは言え……騒がしい場所ね)
その駅前広場にある待ち合わせスポット・巨大な蒸気機関車の近くで黒ズボンスーツ上下姿で待ち人中の魔界外務省長官秘書長にしてキアラの母、ソフィア・アンジェラはその騒々しさに顔をしかめる。
「アンジェラさん! お待たせしました!」
「守屋様、お久しぶりです!」
スマホ片手にソフィアの近くへ駆けて来たのは株式会社サウザンド人事部社員・守屋美希、通称ミキちゃんである。
「すみません、仕事が長引いちゃって……」
「いえ、こちらこそ無理を言ってしまい申し訳ありません。とりあえず行きましょうか?」
「ええ、そうですね!」
ミキちゃんとソフィアさんは駅前広場を離れて喧騒の街へ歩き出す。
「いらっしゃいませ、ご注文はタブレッドかブザーでよろしくお願いします!」
居酒屋チェーン店『のんべぇ』真橋駅前店。
予約済みの掘りごたつ個室に2人を通したガタイのいい店員はおしばりと箸、パリパリチップを置き、一礼して去っていく。
「なるほど、掘りごたつとはこのような構造物で人間界ではこのような食べ物を食前に出して注文はこの機械で行う……守屋様、この分厚い機械はどのように使うのですか?」
部屋の様子にパリパリチップとお冷、注文タブレットを魔界スマホで記録撮影したソフィアは機械の使い方をミキちゃんに尋ねる。
「ええといつもは茶摘さんにやってもらうんですけど……ここにマニュアルがあるので一緒に見ましょう!」
タッチパネルの右上に『使い方』の項目を見つけたミキちゃんはそこを開いてソフィアさんと共に熟読する。
数日前……とある偉い人の希望で『庶民的で大勢でわいわい飲める気さくなお店』で忘年会を開く事になったソフィアさんとその同僚達。
だが魔界王都内にある平民街の飲み屋に自分たちのような超上級魔族が行こうものなら何をされるかわかったものではない、と言う治安上の理由から白羽の矢が立った人間界のチェーン店。
公務としてその事前調査を命じられたソフィアさんはミキちゃんに案内を依頼し、同行してもらう事にしたのである。
「へえ、人間界のお酒って……ものすごい量があるんですね。おつまみとかも魚・肉・野菜問わず多種多様で……実に素晴らしいですね! これならあの方も満足なさる事間違いありません!」
ソフィアさんは店員にもらった紙メニューを見つつ、ミキさんに頼んでもらった唐揚げ・枝豆・冷ややっこ・刺身盛り合わせに舌鼓を打つ。
「それは何よりです! たまにはこういうのもいいですね!」
ミキちゃんもウーロン茶と共に居酒屋メニューを楽しむ。
「あとはお酒ですけど……これはテイスティングも兼ねて1つずつ飲むしかなさそうですね」
そう言いつつソフィアさんは注文タブレット端末を操作する。
「量があるからスモールサイズで、全種類1個ずつ……」
「ソフィアさん!? そんなに飲んで大丈夫なんですか?」
お金は大丈夫だとは言え、とんでもない注文を進めていくソフィアさんにミキちゃんは目が飛び出しそうになる。
「あら、私こう見えましても酒豪のドワーフ族や古代ギリシャの神々とも酒席を共にした事がありまして酒の強さは自信がありますの!」
ミキちゃんの不安げな表情に構うことなくソフィアさんは酒全種類の注文を承認する。
~それからしばらくして~
「よしっ、これが最後の……カルーアミルクですわよぉ……」
(まさかあれを全部飲むなんて……二日酔いとか肝臓は大丈夫なのかしら?)
大分酔いが回りながらも十数種類以上ある全てのアルコールメニューのティスティングを終え、ノートにメモを記録し終えたソフィアさん。
ひとまずは大丈夫そうな様子に安心しつつもタクシーを呼ぶべきか迷う。
「ミキさん、お待たせしましたあ……今日はお付き合いいただきありがとうございますぅ」
(あっ、こりゃダメだ。ひとまず家までタクシーで帰ってキアラちゃんに連絡して……)
ほろ酔いでテーブルに肘を突いたまま水と共に残った食べ物を片付けていくソフィアさんを前にスマホを取り出したミキちゃん。
チャットアプリでキアラちゃんに連絡していたその時、ジトォっとした目線に気づく。
「守屋さんって……人間なのに淫魔族級のグラマーボデイでスタイルも本当にいいですよね」
「あっ、まあそうですね。よく言われます」
マキとは違う意味でキャラ崩壊したソフィアさんの発言にミキちゃんはドキッとする。
「今更ですけど守屋さんって……本当に人間界の人間さまなんですよね?」
掘りごたつ席の枠を伝ってミキちゃんににじり寄るソフィアさん。
グラマーでセクシーな美しさが特徴的な淫魔族の血筋ではなくスレンダーなダークエルフの血筋が知能のみならず容姿にも強く出てしまった女淫魔・ソフィアはミキちゃんの美グラマーボディを羨望と嫉妬の眼差しで見つめる。
「えっ、ええ……そうですよ」
同性から向けられる獣のような羨望の眼差しに嫌な予感がしたミキちゃんはずり寄ってくるソフィアさんから離れるようにずりずりと動いて入口の方へ逃げる。
「そうですよね、私なんか……どうせ私なんて中学生の姪っ子に鼻で笑われるんですから。
こんな私でも慰めてくれますよね、守屋さぁん…… ?」
「うひゃあん!!」
立ち上がる直前で腰を腕に回され、ホールドされたミキちゃん。
インテリ公務員ではなく魔界の女淫魔として息も荒くじっと見つめて来るソフィアさんに為すすべも無く……となりかけたその時、個室のドアが開く。
「お待たせですわ、守屋さん!! ごぶじ……間に合ってなによりですわ!!」
「キアラちゃん!?」
褐色肌に長い金髪を頭上左右でお団子にし、ねじり鉢巻きと青い甚平にロゴいり前掛け姿の『のんべえ』店員姿のキアラ・アンジェラ。
ミキちゃんの無事とその肩にもたれかかって寝息を立てる母にキアラは安堵のため息を吐きつつ伝票を手に取る。
「守屋さん、お会計は済ませて来ますわ。その間にお手洗いと母をタクシーに運ぶご準備をお願いしますのよ!」
「ええ、わかったわ」
ミキちゃんは室内を確認して忘れ物が無いか確かめる。
~それから数日後~
「守屋様、この度はご協力ありがとうございました。」
『守屋美希様へ 魔界外務省一同より御礼品』と書かれたのしがみ付きの超高級和菓子の詰め合わせを持ってお礼に来たソフィアさんとキアラちゃん。
あの時とは対極的な堅物ギヤップにミキちゃんは驚く。
「またもしも人間界の件で御必要がありましたら……よろしくお願いいたします」
「ええ、こちらこそ。ご丁寧にありがとうございます!!」
次にソフィアさんと酒を飲む時はアラン君かキアラちゃんに同行してもらおう。
ミキちゃんは心の中でそう思いつつ、高級和菓子を喜んで受け取るのであった。
【完】
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