ミキちゃんちのインキュバス 2 !!

千両文士

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【ミキちゃんちのインキュバス2!(第三話)】「魔界刑事ラビオ・文明開化! @S区中央商店街」

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 都内S区にあるマンション、508号室。朝7時半、玄関。
「行ってくるね、アラン君!」
「お気を付けて、 ミキさん!」
 同居人の淫魔族の青年、アラン・インマからお弁当手提げを受けとった会社員女性、守屋美希・通称ミキちゃんは革靴を履き終え爽やかな秋の風とイケメンスマイルに見送られて元気に会社に向かう。
(ミキさんが元気になってくれて良かった! さてと次は洗い物をして……)
『ラビオさんからお電話です! ラビオさんからお電話です!』
 ミキさんの元気な様に癒されたアランがテーブルのお皿を回収に向かおうとしたその時、守屋家のFAXが調子はずれな甲高いトーキーで叫びだす。
「もしもし、守屋です……」
『アラン殿、急に電話して済まない! 実は相談したい事があるのだが……来てくれないだろうか?』
「はい、じゃあ行きますね」
 FAX電話を切ったアランはテーブルのお皿をシンクに入れて水を張り、部屋を出て行く。

「おお済まん、アラン殿……」
「いえ、ラ……黒野さん、姉はもう会社に行ったので大丈夫ですよ」
 アラン・インマの保護観察者となったミキちゃんの安全確保と監視、有事対応のため魔界警察の命で人間界に長期滞在する事となった鬼神族・ラビオ魔界刑事。
 S区の某マンション、408号室に住まう齢70の退任自衛官で映画マニアの年金生活者の黒野 澤男(くろの さわお)と言う経歴設定と偽名を与えられた彼はアランを部屋に招き入れる。
「実はコレの件で相談したい事があってなぁ」
「うわぁ、すごい量ですね…… !」
 引っ越してきたばかりでまだ片づけが終わっていない段ボール部屋の角に置かれていた大量の薄汚れたプラスチックパッケージ映画VHSに歌謡曲テープ。魔界ではまずお眼にかかれないお宝の山に驚くばかりだ。
「この前スーパーヘの買い物の途中、お主も言っておったS区中央商店街のリサイクルショップで大量にたたき売りをしておったから箱買いしたんだ。それで早速見ようと自宅から持ってきたビデオプレーヤーをテレビに繋ごうとしたんじゃが……どうも魔界規格のケーブルは繋がらないようでなぁ……」
 ラビオ刑事はテレビ下のキャビネに収納されたビデオブレーヤーと繋がった先端に細い金属突起が付いた赤・黄色・自の三股三色ケーブルをアランに見せつつ聞く。
「そうは言われましても……僕も専門外ですよ? ミキさんのテレビもブルーレイディスクプレーヤー内蔵型ですけど、VHSは見れないませんね。ジョイステーションエックスも多分……使えないでしょうし」
 確証が持てなかったアランは魔界スマホで『ジョイステーションエックス ビデオ 再生』で検索してみるが結果は芳しくない。
「そうか、それは残念じや……しょうがない。これは魔界に帰ってからのお楽しみにしておこうかのう。 アラン君、呼びつけて済まなかった」
 ラビオ刑事はビデオテープの入った箱を閉じ、物置に入れる。
「あの、ラビオさん! それだったらS区中央商店街の電気屋さんに行きませんか? 今はまだ開店していないでしょうから午後の買い物の時にでも……」
「おお、そうか! その手があったか……」
 アランの提案にラビオ刑事は喜びの声を上げる。

 その日の午後、S区中央商店街にある電気屋。『タカギラジオ』
「ああ、ビデオテープを箱買いしたってえのはアンタだったのか!」
 将棋仲間にしてマブダチのリサイクルショップ店主からビデオテープ大人買いしたおじいさんの話を聞いていたタカギラジオ店主、高木 勇太(たかぎ ゆうた)はアランと黒野の話に頷く。
「あの守屋さんの頼みとあれば断れねぇ! と言いたいところだが……俺んとこでもビデオはもう扱えねぇんだよなぁ」
「そうなんですね……」
 買い物ついでに相談に来たアランとラビオ刑事はがっかりする。
「ああ、地デジ化とか放送電波規格みてえなお上が決めた事にゃさからえねえよ。でもさ黒野さん、ブルーレイプレーヤー持ってる?」
 高木店主はカウンター下から取り出したバインダーをめくりつつ2人に聞く。
「ブルーレイ? それは何の事かね?」
「……よしっ、じゃあこうしようか。
 俺はビデオダビングサービスで黒野さんお持ちのビデオテープを全てブルーレイディスク化して見れるようにする。その代わリー番安いのでいいからブルーレイディスクプレーヤーを1台買ってくれ。今なら商店街のじっちゃとばっちゃにも分かりやすさで大好評な接続マニュアル冊子も無料サービスしちゃうぜ?」
 そう言いつつ高木店主が取り出したのは『あなたの思い出をもう一度……ビデオテープのブルーレイ化はタカギラジオにて格安!』と言うダビングサービス白黒チラシとブルーレイディスクプレーヤーのメーカーカタログ、そしてホチキス止めのA4冊子だ。
「ほうほう……こんな素晴らしいサービスが人間界にはあるのか!? ならば早速、利用せねばならぬ! 店主殿、おすすめを教えてくれ!」
「毎度ありぃ!」
 パイプ椅子から立ち上がった高木店主は喜んで商品紹介を始める。
(やれやれ…… しばらく僕も映画漬けかな。まあ楽しいからいいけど)
 アランは目を輝かせて店主の話を嬉しそうに聞くラビオ刑事を見守りつつ夕飯のおかずに思いを巡らすのであった。

【完】
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