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14.親睦会
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5月下旬に行われる星篠学園高等部恒例の親睦会――スタンプラリー兼ハイキング。
事前に決めた班ごとに、星篠学園所有の森林公園の各所に設置されたチェックポイントを周り、課題をクリアしてスタンプを集めるという行事です。
普通、お金持ちの子供が通う学校で親睦会といえば、パーティを想像する方もいらっしゃると思いますが、星篠学園では高等部から入ってくる外部生と内部生を交流させる目的なので、パーティに慣れていない外部生寄りのイベントになっています。
毎年、このイベントに文句を言う内部生はいるみたいですが、残念ながら星篠学園では授業数の少ない体育教科の単位に物凄く重要になるため、参加しないわけにはいかないみたいです。
何となく学園の策略が感じられるんですよね。
まあ、わたしとしてはクリスマスや卒業式には煌びやかなパーティが催される予定なのですから、こういうイベントもあっていいと思っています。
「いい天気になりましたね」
「本当だね。で、潮里。今日はどうするの? 真面目にチェックを回って行く? それとものんびりと回る?」
親睦会当日、わたしは美弥ちゃんと集合場所で合流しました。
そこで、今日の行動予定を確認していたんですが……どうやら、各チェックポイントをクリアして貰えるスタンプは、集めた数に応じて豪華賞品が貰えるみたいなんです。
「そうですね~。わたしはどちらでもいいので、須田くん、瀬戸くん、西門くんの意見を聞きましょう」
「潮里がそう言うなら。でも、結局は潮里が決めることになると思うよ?」
「え?」
美弥ちゃんの不穏な言葉が引っ掛かりつつ、男性3人と合流すると――
「南波さんが決めて」
「そうだね」
「俺もそれでいいよ」
「……」
……何故かわたしに一任されました。
どうしてでしょう?
「では……のんびりで?」
海外旅行、ブランド品、電化製品……と、学校が用意した景品はとても高額な品々ですが、私は特に欲しいものはありません。なので、皆でわいわいとお話しながら散策したほうが楽しそうなので、そちらを選択しました。
「ですが、本当によろしいのですか? 3人とも景品で欲しいものとかあったりするのではないですか?」
「ん~、学校行事だしね~。ここで躍起になる必要はないかな~」
「そうだな。それに、逆に景品が豪華すぎて現実味がないように思えているのかも?」
須田くんと瀬戸くんは景品の一覧に若干引いている様子です。
「おや、まあ。須田と瀬戸はずいぶん冷静だな~。他の外部生は豪華な景品にやる気を漲らせているのにな~」
「あら、美弥ちゃん、内部生も新作のブランドバッグや財布に目を輝かせているわよ?」
「ああ、確かにギラギラしていたな。というより、この学校もなかなかやるよな~。発売したばかりで入手困難な品を用意してくるなんて」
「そうね。普通に買おうにも売っていない品もあったものね~」
素直に凄いと思います。
だって、コネクションがないと手に入らないものまであるんですからね。
「でも、あれは私の趣味じゃないな」
「わたしもです」
そうですね。バッグもそうですが、小物でもショッキングピンクが入った品は、わたしは選びませんね。どちらかといえばパステルカラーや青系統が好みですからね。
「西門くんも本当によろしいのですか?」
「うん、いいよ。特に欲しいものはないらからね。それに本当に欲しいものなら自分で買うから気にしないで」
にっこりと微笑む西門くんは攻略対象者だけあって、とても麗しいです。
ザ・和美人っていう感じです。
「おっ、潮里が西門に見惚れてる」
「「「えっ!?」」」
「はい! 西門くんって、とても美人さんですよね~。羨ましいです」
「「「えぇ!?」」」
美弥ちゃんの言葉に、須田くん、瀬戸くん、西門くんが、一瞬驚いたような表情をしましたが、わたしの言葉を聞いて今度は呆然とした表情に変わります。何故でしょう?
「潮里はやっぱり潮里だね~」
「……美弥ちゃん?」
美弥ちゃんだけが納得したように頷いていました。どういう意味でしょう?
「潮里は気にしないでいいよ。あ、スタートしたみたいだね」
「もう、美弥ちゃんはすぐに誤魔化すんだから~」
美弥ちゃんって、たまにわからないことを言うのよね~。
「のんびりと言ってもずっとここにいるわけにはいかないから、私達もどこかに向かおうか」
「でも、どこに向かいましょうか?」
美弥ちゃんに言われて辺りを見回してみると、生徒達が一斉に四方に散っていくのが見えました。走り出した人達は景品を狙っている人達でしょう。
それにしても……この森林公園は本当に広大なので、目的もなく彷徨うのには適していませんよね~。
「温室とか湖もあるみたいだから、そういう場所を見て回るってどうかな?」
「おっ、須田、ナイス」
「とても良いと思います」
須田くんととても良い案を出してくれたので、即決でわたし達の行動が決まりました。
「じゃあ、時間的にルートは……」
すぐに西門くんがここのパンフレットを手に、場所の確認してくれます。
「ここもいいんじゃないか?」
「じゃあ、こっちを先に回って……」
「いや、お昼の関係もあるから、こっちからこう回って行ったほうがいいんじゃないか?」
須田くん、瀬戸くんが西門くんの手元を覗き込んで指を差し、ルートを練っていってくれます。
「うちの班の男子は優秀だな」
「はい、そうですね。お任せしたら安心です」
わたしと美弥ちゃんはルートが決定するまで大人しく待つことにしました。
事前に決めた班ごとに、星篠学園所有の森林公園の各所に設置されたチェックポイントを周り、課題をクリアしてスタンプを集めるという行事です。
普通、お金持ちの子供が通う学校で親睦会といえば、パーティを想像する方もいらっしゃると思いますが、星篠学園では高等部から入ってくる外部生と内部生を交流させる目的なので、パーティに慣れていない外部生寄りのイベントになっています。
毎年、このイベントに文句を言う内部生はいるみたいですが、残念ながら星篠学園では授業数の少ない体育教科の単位に物凄く重要になるため、参加しないわけにはいかないみたいです。
何となく学園の策略が感じられるんですよね。
まあ、わたしとしてはクリスマスや卒業式には煌びやかなパーティが催される予定なのですから、こういうイベントもあっていいと思っています。
「いい天気になりましたね」
「本当だね。で、潮里。今日はどうするの? 真面目にチェックを回って行く? それとものんびりと回る?」
親睦会当日、わたしは美弥ちゃんと集合場所で合流しました。
そこで、今日の行動予定を確認していたんですが……どうやら、各チェックポイントをクリアして貰えるスタンプは、集めた数に応じて豪華賞品が貰えるみたいなんです。
「そうですね~。わたしはどちらでもいいので、須田くん、瀬戸くん、西門くんの意見を聞きましょう」
「潮里がそう言うなら。でも、結局は潮里が決めることになると思うよ?」
「え?」
美弥ちゃんの不穏な言葉が引っ掛かりつつ、男性3人と合流すると――
「南波さんが決めて」
「そうだね」
「俺もそれでいいよ」
「……」
……何故かわたしに一任されました。
どうしてでしょう?
「では……のんびりで?」
海外旅行、ブランド品、電化製品……と、学校が用意した景品はとても高額な品々ですが、私は特に欲しいものはありません。なので、皆でわいわいとお話しながら散策したほうが楽しそうなので、そちらを選択しました。
「ですが、本当によろしいのですか? 3人とも景品で欲しいものとかあったりするのではないですか?」
「ん~、学校行事だしね~。ここで躍起になる必要はないかな~」
「そうだな。それに、逆に景品が豪華すぎて現実味がないように思えているのかも?」
須田くんと瀬戸くんは景品の一覧に若干引いている様子です。
「おや、まあ。須田と瀬戸はずいぶん冷静だな~。他の外部生は豪華な景品にやる気を漲らせているのにな~」
「あら、美弥ちゃん、内部生も新作のブランドバッグや財布に目を輝かせているわよ?」
「ああ、確かにギラギラしていたな。というより、この学校もなかなかやるよな~。発売したばかりで入手困難な品を用意してくるなんて」
「そうね。普通に買おうにも売っていない品もあったものね~」
素直に凄いと思います。
だって、コネクションがないと手に入らないものまであるんですからね。
「でも、あれは私の趣味じゃないな」
「わたしもです」
そうですね。バッグもそうですが、小物でもショッキングピンクが入った品は、わたしは選びませんね。どちらかといえばパステルカラーや青系統が好みですからね。
「西門くんも本当によろしいのですか?」
「うん、いいよ。特に欲しいものはないらからね。それに本当に欲しいものなら自分で買うから気にしないで」
にっこりと微笑む西門くんは攻略対象者だけあって、とても麗しいです。
ザ・和美人っていう感じです。
「おっ、潮里が西門に見惚れてる」
「「「えっ!?」」」
「はい! 西門くんって、とても美人さんですよね~。羨ましいです」
「「「えぇ!?」」」
美弥ちゃんの言葉に、須田くん、瀬戸くん、西門くんが、一瞬驚いたような表情をしましたが、わたしの言葉を聞いて今度は呆然とした表情に変わります。何故でしょう?
「潮里はやっぱり潮里だね~」
「……美弥ちゃん?」
美弥ちゃんだけが納得したように頷いていました。どういう意味でしょう?
「潮里は気にしないでいいよ。あ、スタートしたみたいだね」
「もう、美弥ちゃんはすぐに誤魔化すんだから~」
美弥ちゃんって、たまにわからないことを言うのよね~。
「のんびりと言ってもずっとここにいるわけにはいかないから、私達もどこかに向かおうか」
「でも、どこに向かいましょうか?」
美弥ちゃんに言われて辺りを見回してみると、生徒達が一斉に四方に散っていくのが見えました。走り出した人達は景品を狙っている人達でしょう。
それにしても……この森林公園は本当に広大なので、目的もなく彷徨うのには適していませんよね~。
「温室とか湖もあるみたいだから、そういう場所を見て回るってどうかな?」
「おっ、須田、ナイス」
「とても良いと思います」
須田くんととても良い案を出してくれたので、即決でわたし達の行動が決まりました。
「じゃあ、時間的にルートは……」
すぐに西門くんがここのパンフレットを手に、場所の確認してくれます。
「ここもいいんじゃないか?」
「じゃあ、こっちを先に回って……」
「いや、お昼の関係もあるから、こっちからこう回って行ったほうがいいんじゃないか?」
須田くん、瀬戸くんが西門くんの手元を覗き込んで指を差し、ルートを練っていってくれます。
「うちの班の男子は優秀だな」
「はい、そうですね。お任せしたら安心です」
わたしと美弥ちゃんはルートが決定するまで大人しく待つことにしました。
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