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11.完治しました
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聞いてください!
やっと! やっと、怪我が治りましたの!
ゴールデンウィークの後半、5月に入ってやっと、お医者様が完治したと言って下さいました。
長かった……。本当に長かった。
これであの生活を終わらせる事が出来ます!
怪我をした当初の3日間は自宅での軟禁生活。
学校に登校し始めた1週間は、移動全てが抱きかかえられての行動。
その後も過度に動き回ることを禁止されて、学校では須田くんや瀬戸くんが付き添い。
放課後や家では兄様や和登くんが付かず離れず……。
完全に男性を侍らせている、と美弥ちゃんに言われました……(泣)
どこのご令嬢ですか……。
って……、わたし、割といいところの家柄のお嬢様ですけど、取り巻きを引き連れているわけじゃありませんからねっ!
嫌ですよ。わたしは悪役令嬢なんかには絶対になりませんからね。
さぁ! 不本意な生活から解放されたことですし、せっかくのお休み。
怪我の心配がないのであれば、お出掛けしないと損ですよね?
◇ ◇ ◇
「潮里、アイスでも食べるかい?」
「はい! 食べたいです」
「味はどうするんだ? いろいろあるぞー」
現在、兄様と和登くんを伴ってショッピングモールに来ました。
最初は1人でショッピングに出掛けるつもりだったのですよ?
何故、2人が一緒にいるかというと―――。
まず、お店まで移動するのに距離的に徒歩は無理ですし、送迎していただくために南波家専属の運転手である笹木さんに車の用意をしてもらいました。
ほら、わたしは一応、お嬢様ですので電車やバスを利用するわけにはいかないんですの。
車の準備が整ったので、いざ、出掛けようとしたところで、どこから聞きつけたのか兄様と和登くんが現れたのです。
当然、同行すると言われました。
ねぇ、兄様? 和登くん? 今まで家にいませんでしたよね?
2人がどこから現れたのかが謎でした。
そして当たり前のように3人で車に乗り込み、ショッピングモールへ。
今に至ります。
「迷いますわ~。季節限定のトロピカル味も気になりますが、人気№1のプレミアムチョコレート味も美味しそうですし……。でも、やはり一番好きなバニラ味も捨てがたいですわ」
「くくくっ。潮里は可愛いな~。そんなに迷うなら全部、買ってあげるよ?」
「ダメですわよ、兄様。全部なんて食べられませんわ!」
「それなら、俺達の分は潮里が気になる味を買って、味見すればいいだろ?」
「和登くん、いいんですかっ!」
「ああ、いいぞ」
もちろん、3つの味のアイスを堪能しました。
不意に兄様が『あ~ん』とスプーンを差し出してきたので、咄嗟に食べてしまうという失敗をしてしまいました。
ここは家ではなく、外ですので気を付けなければ!
でも、とても美味しかったですわ。
あら、あれは?
ショッピングを再開させると、こちらに向かって歩いてくる星篠さんを見つけました。
一緒の方はいませんね。1人かしら?
「きゃっ!」
もしかして、これってイベントですか?
と思った瞬間、星篠さんが突然躓き、ちょうどすれ違うところだった和登くんに向かって倒れ込み……――ませんでした。
……あら?
星篠さんはバタンっ、と軽快な音を立てて地面に転びました。
一応、弁明しておきますが、和登くんは自分に向かって倒れてきた女性を除けるような人じゃありませんからね!
和登くんはすれ違う前にわたしの後ろに回って道を空け、何故かわたしの肩を引き寄せていました。
どうやら後方からも人が来ていたので、さらに道を空けるために兄様側へと寄せたようです。
それによって、もともと和登くんが歩いていた場所にそれなりのスペースが出来、そこに星篠さんが倒れたのですね。
「痛っ~」
「星篠さん、大丈夫ですか?」
あまり接点を持ちたくはありませんが同じクラスメイトですし、痛がっている彼女を無視することは出来ません。
とりあえず声を掛けておきましょう。
「えっ? あなた誰よ」
「………」
星篠さんはわたしのことをご存じないようです。
同じクラスになってひと月経つのですが……。
わたし、クラスでそんなに存在感が薄いのですかね?
星篠さんは小さな声でぶつぶつと呟いていますが、よく聞き取れません。
えっと……、『どうして』とか『予定』?
星篠さん、頭を打ったわけじゃありませんよね?
大丈夫なのでしたら、そろそろ立ち上がりませんか?
通行人の邪魔になってしまいますので、再度、声を掛けてみましたが、星篠さんには聞こえていないようです。
う~ん、これはどうしたらいいのでしょうか。
「潮里、彼女は大丈夫のようだから行こうか」
「そうだな。潮里、行くぞ」
親切心で声を掛けたわたしに対して、彼女の態度が気に食わなかったのでしょう。
兄様と和登くんが、どう対応すればいいのか悩んでいたわたしの手を取り、さっさとその場を離れてしまいました。
このまま立ち去ってしまっていいものか悩みましたが、兄様達に促されるまま、その場を離れました。
わたしがあそこにいても、無意味な気がしましたので。
……それにしても今のイベントは一体、何だったのでしょうか?
それともイベントではなかったのでしょうか?
「何だ、あれは」
「気に――――――――存在だよ」
「潮里に対して――――。逆に――――方がいい――ゃないか?」
「それもそうだね。潮里と同じクラスで理事長の姪だしな」
ですが、どうやら兄様も和登くんも星篠さんに興味を持ったみたいなんです。
兄様と和登くんは2人で何かお話ししています。
所々、聞き取れませんでしたが、星篠さんの事を話しているようです。
星篠さんの事はご存知だったのですね?
まぁ、2人はわたしのクラスメイトだけではなく、全校生徒の顔と名前くらいは把握していそうですしね。
軽い経歴まで覚えていたとしても驚きません。
もし仮に今のがイベントだったのでしたら、逆ハーレムの状況に1歩近づいてしまったのでしょうか……。
それだけが心配です。
やっと! やっと、怪我が治りましたの!
ゴールデンウィークの後半、5月に入ってやっと、お医者様が完治したと言って下さいました。
長かった……。本当に長かった。
これであの生活を終わらせる事が出来ます!
怪我をした当初の3日間は自宅での軟禁生活。
学校に登校し始めた1週間は、移動全てが抱きかかえられての行動。
その後も過度に動き回ることを禁止されて、学校では須田くんや瀬戸くんが付き添い。
放課後や家では兄様や和登くんが付かず離れず……。
完全に男性を侍らせている、と美弥ちゃんに言われました……(泣)
どこのご令嬢ですか……。
って……、わたし、割といいところの家柄のお嬢様ですけど、取り巻きを引き連れているわけじゃありませんからねっ!
嫌ですよ。わたしは悪役令嬢なんかには絶対になりませんからね。
さぁ! 不本意な生活から解放されたことですし、せっかくのお休み。
怪我の心配がないのであれば、お出掛けしないと損ですよね?
◇ ◇ ◇
「潮里、アイスでも食べるかい?」
「はい! 食べたいです」
「味はどうするんだ? いろいろあるぞー」
現在、兄様と和登くんを伴ってショッピングモールに来ました。
最初は1人でショッピングに出掛けるつもりだったのですよ?
何故、2人が一緒にいるかというと―――。
まず、お店まで移動するのに距離的に徒歩は無理ですし、送迎していただくために南波家専属の運転手である笹木さんに車の用意をしてもらいました。
ほら、わたしは一応、お嬢様ですので電車やバスを利用するわけにはいかないんですの。
車の準備が整ったので、いざ、出掛けようとしたところで、どこから聞きつけたのか兄様と和登くんが現れたのです。
当然、同行すると言われました。
ねぇ、兄様? 和登くん? 今まで家にいませんでしたよね?
2人がどこから現れたのかが謎でした。
そして当たり前のように3人で車に乗り込み、ショッピングモールへ。
今に至ります。
「迷いますわ~。季節限定のトロピカル味も気になりますが、人気№1のプレミアムチョコレート味も美味しそうですし……。でも、やはり一番好きなバニラ味も捨てがたいですわ」
「くくくっ。潮里は可愛いな~。そんなに迷うなら全部、買ってあげるよ?」
「ダメですわよ、兄様。全部なんて食べられませんわ!」
「それなら、俺達の分は潮里が気になる味を買って、味見すればいいだろ?」
「和登くん、いいんですかっ!」
「ああ、いいぞ」
もちろん、3つの味のアイスを堪能しました。
不意に兄様が『あ~ん』とスプーンを差し出してきたので、咄嗟に食べてしまうという失敗をしてしまいました。
ここは家ではなく、外ですので気を付けなければ!
でも、とても美味しかったですわ。
あら、あれは?
ショッピングを再開させると、こちらに向かって歩いてくる星篠さんを見つけました。
一緒の方はいませんね。1人かしら?
「きゃっ!」
もしかして、これってイベントですか?
と思った瞬間、星篠さんが突然躓き、ちょうどすれ違うところだった和登くんに向かって倒れ込み……――ませんでした。
……あら?
星篠さんはバタンっ、と軽快な音を立てて地面に転びました。
一応、弁明しておきますが、和登くんは自分に向かって倒れてきた女性を除けるような人じゃありませんからね!
和登くんはすれ違う前にわたしの後ろに回って道を空け、何故かわたしの肩を引き寄せていました。
どうやら後方からも人が来ていたので、さらに道を空けるために兄様側へと寄せたようです。
それによって、もともと和登くんが歩いていた場所にそれなりのスペースが出来、そこに星篠さんが倒れたのですね。
「痛っ~」
「星篠さん、大丈夫ですか?」
あまり接点を持ちたくはありませんが同じクラスメイトですし、痛がっている彼女を無視することは出来ません。
とりあえず声を掛けておきましょう。
「えっ? あなた誰よ」
「………」
星篠さんはわたしのことをご存じないようです。
同じクラスになってひと月経つのですが……。
わたし、クラスでそんなに存在感が薄いのですかね?
星篠さんは小さな声でぶつぶつと呟いていますが、よく聞き取れません。
えっと……、『どうして』とか『予定』?
星篠さん、頭を打ったわけじゃありませんよね?
大丈夫なのでしたら、そろそろ立ち上がりませんか?
通行人の邪魔になってしまいますので、再度、声を掛けてみましたが、星篠さんには聞こえていないようです。
う~ん、これはどうしたらいいのでしょうか。
「潮里、彼女は大丈夫のようだから行こうか」
「そうだな。潮里、行くぞ」
親切心で声を掛けたわたしに対して、彼女の態度が気に食わなかったのでしょう。
兄様と和登くんが、どう対応すればいいのか悩んでいたわたしの手を取り、さっさとその場を離れてしまいました。
このまま立ち去ってしまっていいものか悩みましたが、兄様達に促されるまま、その場を離れました。
わたしがあそこにいても、無意味な気がしましたので。
……それにしても今のイベントは一体、何だったのでしょうか?
それともイベントではなかったのでしょうか?
「何だ、あれは」
「気に――――――――存在だよ」
「潮里に対して――――。逆に――――方がいい――ゃないか?」
「それもそうだね。潮里と同じクラスで理事長の姪だしな」
ですが、どうやら兄様も和登くんも星篠さんに興味を持ったみたいなんです。
兄様と和登くんは2人で何かお話ししています。
所々、聞き取れませんでしたが、星篠さんの事を話しているようです。
星篠さんの事はご存知だったのですね?
まぁ、2人はわたしのクラスメイトだけではなく、全校生徒の顔と名前くらいは把握していそうですしね。
軽い経歴まで覚えていたとしても驚きません。
もし仮に今のがイベントだったのでしたら、逆ハーレムの状況に1歩近づいてしまったのでしょうか……。
それだけが心配です。
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