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5.保健室にて
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「骨にヒビが入っているかもしれないわね」
結局、須田くんにお姫様だっこをされながら、保健室まで来てしまいました。
うぅ~。
しかも足の怪我は思っていたより酷かったようです……。
「潮里!!」
そこに勢い良く、扉を開けて入ってきたのはサラサラの黒髪を乱した兄・凪でした。
わたしを見つけるとそのまま抱きついてきました。
息を切らしているところをみると、走ってきたようです。廊下は走ってはダメですよ、兄様。仮にも生徒会役員ですのに。
「潮里、大丈夫か!? 先生! 潮里の怪我は?」
「ヒビが入っているかもしれないわ。病院に行って、検査してもらった方がいいわね」
「なっ! ヒビ?!」
兄様が保険医の先生に怪我の具合を聞き、驚愕したような表情をしています。
ちょっと、大袈裟すぎませんか? 階段から落ちたにしては軽傷なのですから。
「おう、潮里。大丈夫かー?」
「あら、和登くん? 和登くんも来てくれたの? 生徒会の方は大丈夫?」
「平気だ。それよりも潮里の方が気になるしな。凪の暴走も止めないと」
「早速で申し訳ないけど、助けて?」
兄様だけでなく、和登くんも様子を見に来てくれました。
良かったです。兄様はともかく、和登くんが生徒会室を抜けてくるかは五分五分でしかたから。これでイベント阻止出来ましたね。
あら、和登くんが苦笑しています。
ああ、兄様がわたしにがっつりと抱きついていますものね。和登くんは兄様がわたしの事で暴走した時のストッパー役なんです。
兄様がわたしの事を好いてくれているのは嬉しいのですけど、それに胡座をかいて甘えているだけですと、大変な目に遭うのです。
構われすぎて命の危機に陥ったこともあるくらいで、取り扱いはとても重要なんです。
今も実は少々苦しいんです。なので早急に助けてください。
「あ~。やっぱりかー。こいつ、生徒会室に伝言に来た…瀬戸だったか? …の話しを半分も聞かないうちに飛び出していったんだぜ」
予想通り、といえばそうなんですが…。
……兄様、せめて最後まで聞いて下さい。
「……瀬戸くん、わざわざ ありがとう」
「いいよ。怪我、思ったよりも酷かったって? 酷いなー、突き落とすなんて!」
「突き落としただって! どういう事だ!!」
「落ち着いて兄様。確かに背中を押された気がするんだけど、はっきりとはわからないの」
兄様はしがみついて、伏せていた顔をがばりと上げ、叫んだ。
兄様…耳元で叫ぶのは、よしてちょうだい……。
「で、その相手は?」
和登くんは冷静です。
「ごめんなさい。わたしは見ていないわ」
背後からでしたからね。
「それらしい女子生徒はいたんですけど、他の生徒に紛れられて……。顔ははっきりとは…、腰くらいまでの薄茶色い髪でした」
「故意、と決まったわけではありませんわ。たまたまぶつかったけれど、気付かなかったのかもしれませんし」
押された感覚は確かにありましたが、それほど強い衝撃ではなかったですもの。
事故という可能性もありますわね。
「それより、病院だよ! 潮里、今すぐ病院に行くよ」
「えっ、はい。車を呼んでくれますか?」
兄様はわたしから離れると携帯を取りだして、お迎えの電話をし始めました。
「あ、南波さん。はい、鞄」
「瀬戸くん、本当にありがとう。須田くんも助けてくれてありがとう。お礼は後日、改めてしますね」
「気にしなくていいよ」
保健室を出ていく2人にきっちりと頭を下げて、お礼を言い、見送りました。
本当に助かりました。
須田くんがいなければ、こんな軽い怪我で済まなかったかもしれませんし。瀬戸くんがいなければ、出会いイベントの阻止が出来なかったのですもの。
え? もう会っているかもしれないだろう?
それは大丈夫だと思っています。兄様も和登くんもいつも通りな感じですし、ヒロインに出会って気を取られている感じがしませんもの。
あら? でもこのまま、和登くんを生徒会室に戻らせたら危ないですかね?
「和登くん、今日はもう帰れません? 出来れば一緒に病院まで来て欲しいのですけど……」
「ん? 俺もか? ……問題ないと思うが?」
「潮里、なんで和登もなんだ? 僕だけで問題ないだろ?」
和登くんは不思議そうに。兄様は不満そうにわたしを見てきました。
だって…――。
「兄様、病院では無闇に接触しないと約束できますか? 絶対に暴走しません?」
怪我が足ですので、兄様は絶対にわたしをお姫様だっこで運ぼうとしますよね?
それくらいなら構わないのですが、椅子に座らせてもらえずに膝の上とか、ぎゅうぎゅうに抱きしめながら頬にキスとかは嫌ですよ?
家でしたらいつものことですが、さすがに病院という人目のあるところではね……。
え? 家ではいいのか? それはいいです。むしろ嬉しいです!
というわけでストッパーの役割として和登くんも一緒なら安心なのです!
和登くんを連れ出す口実にもなりますしね。
兄様はわたしから目を逸らしました。
なにをする気だったんですか?
そして和登くんは納得したように頷いています。和登くんから見ても今の兄様は暴走しそうなんですね……。
結局、須田くんにお姫様だっこをされながら、保健室まで来てしまいました。
うぅ~。
しかも足の怪我は思っていたより酷かったようです……。
「潮里!!」
そこに勢い良く、扉を開けて入ってきたのはサラサラの黒髪を乱した兄・凪でした。
わたしを見つけるとそのまま抱きついてきました。
息を切らしているところをみると、走ってきたようです。廊下は走ってはダメですよ、兄様。仮にも生徒会役員ですのに。
「潮里、大丈夫か!? 先生! 潮里の怪我は?」
「ヒビが入っているかもしれないわ。病院に行って、検査してもらった方がいいわね」
「なっ! ヒビ?!」
兄様が保険医の先生に怪我の具合を聞き、驚愕したような表情をしています。
ちょっと、大袈裟すぎませんか? 階段から落ちたにしては軽傷なのですから。
「おう、潮里。大丈夫かー?」
「あら、和登くん? 和登くんも来てくれたの? 生徒会の方は大丈夫?」
「平気だ。それよりも潮里の方が気になるしな。凪の暴走も止めないと」
「早速で申し訳ないけど、助けて?」
兄様だけでなく、和登くんも様子を見に来てくれました。
良かったです。兄様はともかく、和登くんが生徒会室を抜けてくるかは五分五分でしかたから。これでイベント阻止出来ましたね。
あら、和登くんが苦笑しています。
ああ、兄様がわたしにがっつりと抱きついていますものね。和登くんは兄様がわたしの事で暴走した時のストッパー役なんです。
兄様がわたしの事を好いてくれているのは嬉しいのですけど、それに胡座をかいて甘えているだけですと、大変な目に遭うのです。
構われすぎて命の危機に陥ったこともあるくらいで、取り扱いはとても重要なんです。
今も実は少々苦しいんです。なので早急に助けてください。
「あ~。やっぱりかー。こいつ、生徒会室に伝言に来た…瀬戸だったか? …の話しを半分も聞かないうちに飛び出していったんだぜ」
予想通り、といえばそうなんですが…。
……兄様、せめて最後まで聞いて下さい。
「……瀬戸くん、わざわざ ありがとう」
「いいよ。怪我、思ったよりも酷かったって? 酷いなー、突き落とすなんて!」
「突き落としただって! どういう事だ!!」
「落ち着いて兄様。確かに背中を押された気がするんだけど、はっきりとはわからないの」
兄様はしがみついて、伏せていた顔をがばりと上げ、叫んだ。
兄様…耳元で叫ぶのは、よしてちょうだい……。
「で、その相手は?」
和登くんは冷静です。
「ごめんなさい。わたしは見ていないわ」
背後からでしたからね。
「それらしい女子生徒はいたんですけど、他の生徒に紛れられて……。顔ははっきりとは…、腰くらいまでの薄茶色い髪でした」
「故意、と決まったわけではありませんわ。たまたまぶつかったけれど、気付かなかったのかもしれませんし」
押された感覚は確かにありましたが、それほど強い衝撃ではなかったですもの。
事故という可能性もありますわね。
「それより、病院だよ! 潮里、今すぐ病院に行くよ」
「えっ、はい。車を呼んでくれますか?」
兄様はわたしから離れると携帯を取りだして、お迎えの電話をし始めました。
「あ、南波さん。はい、鞄」
「瀬戸くん、本当にありがとう。須田くんも助けてくれてありがとう。お礼は後日、改めてしますね」
「気にしなくていいよ」
保健室を出ていく2人にきっちりと頭を下げて、お礼を言い、見送りました。
本当に助かりました。
須田くんがいなければ、こんな軽い怪我で済まなかったかもしれませんし。瀬戸くんがいなければ、出会いイベントの阻止が出来なかったのですもの。
え? もう会っているかもしれないだろう?
それは大丈夫だと思っています。兄様も和登くんもいつも通りな感じですし、ヒロインに出会って気を取られている感じがしませんもの。
あら? でもこのまま、和登くんを生徒会室に戻らせたら危ないですかね?
「和登くん、今日はもう帰れません? 出来れば一緒に病院まで来て欲しいのですけど……」
「ん? 俺もか? ……問題ないと思うが?」
「潮里、なんで和登もなんだ? 僕だけで問題ないだろ?」
和登くんは不思議そうに。兄様は不満そうにわたしを見てきました。
だって…――。
「兄様、病院では無闇に接触しないと約束できますか? 絶対に暴走しません?」
怪我が足ですので、兄様は絶対にわたしをお姫様だっこで運ぼうとしますよね?
それくらいなら構わないのですが、椅子に座らせてもらえずに膝の上とか、ぎゅうぎゅうに抱きしめながら頬にキスとかは嫌ですよ?
家でしたらいつものことですが、さすがに病院という人目のあるところではね……。
え? 家ではいいのか? それはいいです。むしろ嬉しいです!
というわけでストッパーの役割として和登くんも一緒なら安心なのです!
和登くんを連れ出す口実にもなりますしね。
兄様はわたしから目を逸らしました。
なにをする気だったんですか?
そして和登くんは納得したように頷いています。和登くんから見ても今の兄様は暴走しそうなんですね……。
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