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4.出会いイベントの阻止
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少し脱線したものの、無事に星篠(ヒロイン)さんに副委員長になってもらった(押しつけた)わたしは帰り支度を急いでいます。
急いで向かわないといけない場所があるんです。
向かうのは生徒会室。
予定通りならば、ヒロインが落とし物を届けに生徒会室にやって来て、生徒会役員である兄様と和登くんとの出会いイベントが発生するはずです。
星篠さんは今し方、教室を出て行かれました。
このまま一旦、校舎を出てから落とし物を拾い、生徒会室へとやってくるはずです。
わたしは先回りして、出来るなら兄様たちを生徒会室から連れ出したいです。それが出来なかった場合は……何をするんでしょう?
高笑いをして追い出す? 無理ですね。無理。
でしたら……兄様に引っ付いて甘えることにしましょう。
ブラコンな兄を見せつけましょう。
では、行きましょう。
生徒会室は2階。1年生の教室は3階ですので、1つ下ですね。
急ぎつつもはしたなく走らないように階段を降りていると――
「きゃあ!!」
トンッ、と背中に軽い衝撃を受け、バランスを崩し、身体が前へと傾きました。
落ちる!
そう思いましたが、どうにも出来なくて、ぎゅっ、と目を瞑り、ある程度の衝撃を覚悟しました。
あら? しかしそれ程大きな衝撃はありませんでしたね。
「南波さん!? 大丈夫? 南波さん!」
肩を揺すられ、名前が呼ばれている。
誰でしょう?
「……須田くん?」
同じクラスになった須田くんの顔が目の前にありました。
何が、どうなったんでしょう?
「大丈夫? 怪我はない? 段を踏み外したの?」
「……ええ。いえ、今 誰かに…」
須田くんがわたしの状態を心配する声が聞こえます。
クラクラとした頭でそれに答えようとしましたら、やっと状況に気付きました!
大変です!
わたし、須田くんの身体に乗り上げているじゃありませんか!
そうです。わたし、階段から落ちたのでした。
ここは……階段途中の踊り場ですね。
もしかして落ちたわたしの下敷きに!? なんてことでしょう!
「あっ! ごめんなさ、っつ……!」
慌てて立ち上がろうとすると、足に痛みが走り、再び須田くんの上へと逆戻りです。
また抱き留められました。
うぅ~、痛いです。
でもさすにこの状態は頂けません。
どうしましょう?
立ち上がるのは諦めて上半身のみを起こし、床に座り込む形に落ち着きました。
「動かないで。足? 他に痛いところは?」
「わたしより須田くんに怪我はありませんか? わたし、須田くんを巻き込んでしまったのでしょう?」
わたしの前を歩いていたのは確かに男子生徒でした。それが須田くんなのでしょう。
「違うよ。受け止めようとしたんだけ、最後の踏ん張りが足りなかったみたい。支えきれなくてごめんね」
「いいえいいえ。助けて頂き、ありがとうございます」
悪いのはわたしなのですから、謝らないで下さい!
助けて頂いたのに文句なんて言いませんわ!
「ごめん。他の生徒に紛れられて見失った」
「えっ?」
同じクラスの瀬戸くんが駆けてきました。
もしかして須田くんと一緒にいたのですか?
あら? 見失ったとは?
「あれ、覚えてない? 南波さん、落ちた後に『誰かに』って呟いていたから、剛に見てきてもらったんだよ」
わたし、そんな事言いましたか?
ん~……? あっ! 言ってましたね。
転げ落ちて、目が回っていたので普通に答えてしまっていましたわ。
「それより南波さん、保健室に行こう」
「ひゃ! えっ? す、すだくん!!」
そう言って、須田くんはわたしを抱え上げました。
お姫様だっこですか!?
初めてではないですよ? 兄様にしてもらったことはあります。
だけど、待って下さい! さすがに同級生の男性にしてもらうのは恥ずかしいです!
「だっ、大丈夫なので降ろして下さい。そ、そうです! わたし、行かなくてはならないところが!」
「ダメだよ。ちゃんと先生に診てもらわないと。あっ、剛。俺と南波さんの鞄、頼むわ」
「おう。任せろ!」
いやいや! ちょっと待って下さい!!
「せ、瀬戸くん、須田くんを止めて下さい!」
「ん? 無理。大人しく、俊矢に運ばれて?」
無理?! そんな簡単に断らないで下さい!
「でも、わたし、急いで行かないといけない処が!」
「何処へ?」
「生徒会室へ。兄様のとこに行かないと!」
ああ大変、先にヒロインが行ってしまう!
ここが一番大事なんです! 万が一、兄様がヒロインに惚れてしまったら、後が大変なんです!!
「生徒会室? お兄さん? もしかして生徒役員の南波先輩?」
「はい、そうです。急いでるんです!」
「剛、お前 生徒会室に行ってきて。どのみち、知らせないといけないし。ということで南波さんは保健室ね」
「了解。行ってくるわ」
えっ!?
瀬戸くんが3つの鞄を抱えながら、走り去ってしまいました。
「これで大丈夫でしょう? じゃあ、行こうか」
あら? これでいいのかしら? だって兄様を生徒会室から出すことに成功したのですから。
急いで向かわないといけない場所があるんです。
向かうのは生徒会室。
予定通りならば、ヒロインが落とし物を届けに生徒会室にやって来て、生徒会役員である兄様と和登くんとの出会いイベントが発生するはずです。
星篠さんは今し方、教室を出て行かれました。
このまま一旦、校舎を出てから落とし物を拾い、生徒会室へとやってくるはずです。
わたしは先回りして、出来るなら兄様たちを生徒会室から連れ出したいです。それが出来なかった場合は……何をするんでしょう?
高笑いをして追い出す? 無理ですね。無理。
でしたら……兄様に引っ付いて甘えることにしましょう。
ブラコンな兄を見せつけましょう。
では、行きましょう。
生徒会室は2階。1年生の教室は3階ですので、1つ下ですね。
急ぎつつもはしたなく走らないように階段を降りていると――
「きゃあ!!」
トンッ、と背中に軽い衝撃を受け、バランスを崩し、身体が前へと傾きました。
落ちる!
そう思いましたが、どうにも出来なくて、ぎゅっ、と目を瞑り、ある程度の衝撃を覚悟しました。
あら? しかしそれ程大きな衝撃はありませんでしたね。
「南波さん!? 大丈夫? 南波さん!」
肩を揺すられ、名前が呼ばれている。
誰でしょう?
「……須田くん?」
同じクラスになった須田くんの顔が目の前にありました。
何が、どうなったんでしょう?
「大丈夫? 怪我はない? 段を踏み外したの?」
「……ええ。いえ、今 誰かに…」
須田くんがわたしの状態を心配する声が聞こえます。
クラクラとした頭でそれに答えようとしましたら、やっと状況に気付きました!
大変です!
わたし、須田くんの身体に乗り上げているじゃありませんか!
そうです。わたし、階段から落ちたのでした。
ここは……階段途中の踊り場ですね。
もしかして落ちたわたしの下敷きに!? なんてことでしょう!
「あっ! ごめんなさ、っつ……!」
慌てて立ち上がろうとすると、足に痛みが走り、再び須田くんの上へと逆戻りです。
また抱き留められました。
うぅ~、痛いです。
でもさすにこの状態は頂けません。
どうしましょう?
立ち上がるのは諦めて上半身のみを起こし、床に座り込む形に落ち着きました。
「動かないで。足? 他に痛いところは?」
「わたしより須田くんに怪我はありませんか? わたし、須田くんを巻き込んでしまったのでしょう?」
わたしの前を歩いていたのは確かに男子生徒でした。それが須田くんなのでしょう。
「違うよ。受け止めようとしたんだけ、最後の踏ん張りが足りなかったみたい。支えきれなくてごめんね」
「いいえいいえ。助けて頂き、ありがとうございます」
悪いのはわたしなのですから、謝らないで下さい!
助けて頂いたのに文句なんて言いませんわ!
「ごめん。他の生徒に紛れられて見失った」
「えっ?」
同じクラスの瀬戸くんが駆けてきました。
もしかして須田くんと一緒にいたのですか?
あら? 見失ったとは?
「あれ、覚えてない? 南波さん、落ちた後に『誰かに』って呟いていたから、剛に見てきてもらったんだよ」
わたし、そんな事言いましたか?
ん~……? あっ! 言ってましたね。
転げ落ちて、目が回っていたので普通に答えてしまっていましたわ。
「それより南波さん、保健室に行こう」
「ひゃ! えっ? す、すだくん!!」
そう言って、須田くんはわたしを抱え上げました。
お姫様だっこですか!?
初めてではないですよ? 兄様にしてもらったことはあります。
だけど、待って下さい! さすがに同級生の男性にしてもらうのは恥ずかしいです!
「だっ、大丈夫なので降ろして下さい。そ、そうです! わたし、行かなくてはならないところが!」
「ダメだよ。ちゃんと先生に診てもらわないと。あっ、剛。俺と南波さんの鞄、頼むわ」
「おう。任せろ!」
いやいや! ちょっと待って下さい!!
「せ、瀬戸くん、須田くんを止めて下さい!」
「ん? 無理。大人しく、俊矢に運ばれて?」
無理?! そんな簡単に断らないで下さい!
「でも、わたし、急いで行かないといけない処が!」
「何処へ?」
「生徒会室へ。兄様のとこに行かないと!」
ああ大変、先にヒロインが行ってしまう!
ここが一番大事なんです! 万が一、兄様がヒロインに惚れてしまったら、後が大変なんです!!
「生徒会室? お兄さん? もしかして生徒役員の南波先輩?」
「はい、そうです。急いでるんです!」
「剛、お前 生徒会室に行ってきて。どのみち、知らせないといけないし。ということで南波さんは保健室ね」
「了解。行ってくるわ」
えっ!?
瀬戸くんが3つの鞄を抱えながら、走り去ってしまいました。
「これで大丈夫でしょう? じゃあ、行こうか」
あら? これでいいのかしら? だって兄様を生徒会室から出すことに成功したのですから。
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