悪役令嬢の恋愛事情

水無月 静琉

文字の大きさ
上 下
2 / 14

2.設定は…

しおりを挟む
『あら、ごめんあそばせ。影が薄くて見えませんでしたわ』

『ちょっと、あなた! この様なところにいては迷惑ですわ』

『誰に向かって、言っているのかしら?』

 南波 潮里という人間は高笑いしながら、こういう風にヒロインの行動を邪魔するキャラのはずです。



 ああいう台詞せりふはわたしには無理です!
 出来れば関わらないようにしたいのですが……。

 だけど実はこのゲーム、とても怖ろしいのですよ。
 悪役令嬢わたしが何もしないルートを選択するとヒロインによる逆ハーレムが完成してしまうのです。
 どうしましょう……。

 さてさて、わたしが悪役令嬢だとして問題なのは今後、どう行動するかです。
 とりあえず、攻略キャラを確認しておきましょう。
 先程、申しましたように攻略対象者は5名。

東峰あずまね 和登かずと
 子ども向けのゲームソフトから医療まで、ありとあらゆる電子機器を扱う、デジタル関連を主とするTOHOトーホーグループ次期後継者。
 勉学に運動、何でも軽くこなせるハイスペックな王道系。

南波 なぎ
 ホテル経営や輸入業などを手掛けるMINAMIグループの次期後継者。
 人当たりの良さそうな柔和な笑みで巧みにを人脈を広げる王子様系。

西門 雅継まさつぐ
 主席で高校入学を果たした頭脳明晰で寡黙な青年。
 母方のお祖母様が華道家という外孫ですが実は血筋の良い、気品溢れる頭脳派。

北大路 かなめ
 大女優の隠し子で甘えん坊の末っ子キャラ。
 と思いきやそれは表面上で、実は盛大に猫を被っているしたたかな面もあります。

中央なかひさ アキラ
 イギリス人の血が入ったクォーターの英語教師。
 誰にでも親切で少し軟派なフェミニスト系。

 以上が攻略キャラになります。
 それに対してヒロインは――

星篠ほししの 聖良
 星篠学園理事長の親戚。高校から入学した外部生。
 明るく行動的な無邪気な少女。

 ああ、ごめんなさい。本当はもっと詳しい設定があったはずなのですが、わたしが覚えているのは情報はこれだけです。
 もっと真面目に友人の話しを聞いてあげてれば……。
 …とても悔やまれますわ。


 そして舞台は星篠せいじょう学園高等部。
 幼稚舎から初等部、中等部、高等部、大学まである一貫型の学園。
 よい環境で高度な教育を施す、次世代の先駆者を育てることを目的とした学校。
 政治家や大学病院の教授の血縁者、大企業のご子息やご令嬢、大御所芸能人の子ども達が通う学校なのです。
 かくいうわたしも大手企業の娘になります。


 それで問題なのが、わたしのにぃ様の事です。
 あっ、気付かれてました? そうなんですよ!
 わたしの兄・南波 凪が攻略キャラにいるのですよ!

 ゲームの設定上では南波 潮里は兄に付きまとうほどのブラコンでしたが、兄・凪はそんな潮里を疎ましく思っていたはずなんです。
 ですが現実では、兄様はわたしにはとても甘いです。
 甘いでは済みません。デロデロのアマアマのシスコンです。
 もちろんわたしも兄様が大好きなですけどね。
 ブラコン? ええ、そうです。ばっちり、ブラコンです。
 ファザコンで、マザコンでもありますが!
 えっ? 家族が大好きなのはいけませんか? 問題ありませんよね?

 まあ、それには訳があるんですけどね。
 実はわたし、前世では家族に恵まれていませんでした。とっーても冷めた家族でした。
 両親はそれぞれ愛人との逢瀬に忙しく、わたしは幼い頃から放置されて育ちました。
 そういう訳で家族愛に飢えていたわたしは、わたしの事を愛してくれている今の家族が大好きなんです。


 とりあえずそういうわけで、大好きな兄様が逆ハーレムの一員になるのは勘弁願いたいのですよ!
 ついでに兄様の親友であり、わたしの幼馴染みでもある和登くんも攻略阻止しておきましょう!



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生悪役令嬢の前途多難な没落計画

一花八華
恋愛
斬首、幽閉、没落endの悪役令嬢に転生しましたわ。 私、ヴィクトリア・アクヤック。金髪ドリルの碧眼美少女ですの。 攻略対象とヒロインには、関わりませんわ。恋愛でも逆ハーでもお好きになさって? 私は、執事攻略に勤しみますわ!! っといいつつもなんだかんだでガッツリ攻略対象とヒロインに囲まれ、持ち前の暴走と妄想と、斜め上を行き過ぎるネジ曲がった思考回路で突き進む猪突猛進型ドリル系主人公の(読者様からの)突っ込み待ち(ラブ)コメディです。 ※全話に挿絵が入る予定です。作者絵が苦手な方は、ご注意ください。ファンアートいただけると、泣いて喜びます。掲載させて下さい。お願いします。

ヒロインを虐めなくても死亡エンドしかない悪役令嬢に転生してしまった!

青星 みづ
恋愛
【第Ⅰ章完結】『イケメン達と乙女ゲームの様な甘くてせつない恋模様を描く。少しシリアスな悪役令嬢の物語』 なんで今、前世を思い出したかな?!ルクレツィアは顔を真っ青に染めた。目の前には前世の押しである超絶イケメンのクレイが憎悪の表情でこちらを睨んでいた。 それもそのはず、ルクレツィアは固い扇子を振りかざして目の前のクレイの頬を引っぱたこうとしていたのだから。でもそれはクレイの手によって阻まれていた。 そしてその瞬間に前世を思い出した。 この世界は前世で遊んでいた乙女ゲームの世界であり、自分が悪役令嬢だという事を。 や、やばい……。 何故なら既にゲームは開始されている。 そのゲームでは悪役令嬢である私はどのルートでも必ず死を迎えてしまう末路だった! しかもそれはヒロインを虐めても虐めなくても全く関係ない死に方だし! どうしよう、どうしよう……。 どうやったら生き延びる事ができる?! 何とか生き延びる為に頑張ります!

深窓の悪役令嬢~死にたくないので仮病を使って逃げ切ります~

白金ひよこ
恋愛
 熱で魘された私が夢で見たのは前世の記憶。そこで思い出した。私がトワール侯爵家の令嬢として生まれる前は平凡なOLだったことを。そして気づいた。この世界が乙女ゲームの世界で、私がそのゲームの悪役令嬢であることを!  しかもシンディ・トワールはどのルートであっても死ぬ運命! そんなのあんまりだ! もうこうなったらこのまま病弱になって学校も行けないような深窓の令嬢になるしかない!  物語の全てを放棄し逃げ切ることだけに全力を注いだ、悪役令嬢の全力逃走ストーリー! え? シナリオ? そんなの知ったこっちゃありませんけど?

獣人公爵様に溺愛されすぎて死にそうです!〜乙女ゲーム攻略ダイアリー〜

神那 凛
恋愛
気づくと異世界乙女ゲームの世界! メインキャラじゃない私はイケメン公爵様とイチャ甘ライフを送っていたら、なぜかヒロインに格上げされたみたい。 静かに暮らしたいだけなのに、物語がどんどん進んでいくから前世のゲームの知識をフル活用して攻略キャラをクリアしていく。 けれどそれぞれのキャラは設定とは全く違う性格で…… 異世界溺愛逆ハーレムラブストーリーです。

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

【完結】ヤンデレ設定の義弟を手塩にかけたら、シスコン大魔法士に育ちました!?

三月よる
恋愛
14歳の誕生日、ピフラは自分が乙女ゲーム「LOVE/HEART(ラブハート)」通称「ラブハ」の悪役である事に気がついた。シナリオ通りなら、ピフラは義弟ガルムの心を病ませ、ヤンデレ化した彼に殺されてしまう運命。生き残りのため、ピフラはガルムのヤンデレ化を防止すべく、彼を手塩にかけて育てる事を決意する。その後、メイドに命を狙われる事件がありながらも、良好な関係を築いてきた2人。 そして10年後。シスコンに育ったガルムに、ピフラは婚活を邪魔されていた。姉離れのためにガルムを結婚させようと、ピフラは相手のヒロインを探すことに。そんなある日、ピフラは謎の美丈夫ウォラクに出会った。彼はガルムと同じ赤い瞳をしていた。そこで「赤目」と「悪魔と黒魔法士」の秘密の相関関係を聞かされる。その秘密が過去のメイド事件と重なり、ピフラはガルムに疑心を抱き始めた。一方、ピフラを監視していたガルムは自分以外の赤目と接触したピフラを監禁して──?

死亡ルートを回避せよ!

水無月 静琉
恋愛
ちょっと待って!? これって夢でしょう? えっ、私の未来なの!? ここって乙女ゲームの世界? マジで!? どうにかしないと私の将来絶望的……。 ※※※ 転生したことに気がついたヴィクトリア。しかし、そこが乙女ゲームのような世界で自分が悪役令嬢なポジションで……何もかも最悪な未来に愕然とした。 そんな未来を破綻させようとヴィクトリアは奮闘する。

家庭の事情で歪んだ悪役令嬢に転生しましたが、溺愛されすぎて歪むはずがありません。

木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるエルミナ・サディードは、両親や兄弟から虐げられて育ってきた。 その結果、彼女の性格は最悪なものとなり、主人公であるメリーナを虐め抜くような悪役令嬢となったのである。 そんなエルミナに生まれ変わった私は困惑していた。 なぜなら、ゲームの中で明かされた彼女の過去とは異なり、両親も兄弟も私のことを溺愛していたからである。 私は、確かに彼女と同じ姿をしていた。 しかも、人生の中で出会う人々もゲームの中と同じだ。 それなのに、私の扱いだけはまったく違う。 どうやら、私が転生したこの世界は、ゲームと少しだけずれているようだ。 当然のことながら、そんな環境で歪むはずはなく、私はただの公爵令嬢として育つのだった。

処理中です...