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本編
487.ラストチャレンジ7
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「おっ! タクミがとうとうドラゴンとの戦闘を前向きに考えるようになったのか?」
「「やったー!」」
カイザー、それにアレンとエレナは僕達の会話をしっかりと聞いていたらしい。
「行くとは言っていないからね」
「「えぇ~」」
「それよりも人形は手に入ったかい?」
「「あ、あったよ!」」
ドラゴン話が盛り上がらないうちに、僕はさっさと話題を変えることにした。
アレンとエレナは素直な子達なので、すんなり乗ってくれた。
「本当? 何の人形だったんだ?」
「アレンはね、しろいクモ!」
「エレナはね、しろいネコ!」
「「これ、なんのまものだろう?」」
「これは……シルクスパイダーとスノーキャットかな?」
運良く二つの新しい人形を手に入れられたようだ。
「「あっ! またいってくる!」」
再び魔物が現れたようで、アレンとエレナはすぐさま駆けていく。
「で、タクミ。ドラゴン肉確保には、本当に行かんのか?」
「行く予定はないぞ」
「そんなこと言わずに、行こうではないか」
「嫌だよ」
カイザーはもの凄くドラゴン狩りを誘ってくる。いやまあ、確かにドラゴン肉は美味しかったけどさ~。
「カイザーはそこそこ頻繁に食べているんだろう? なら、わざわざ僕達が行く必要はないじゃないか」
「いつもは水竜ばかりであったからな、地竜や飛竜にも興味が出た。そして、やはりタクミに料理してもらったほうが美味いのだ!」
「……」
うっかり「それならカイザーが単独で狩ってくればいいじゃないか。そうしたら、調理してあげるから!」と言いそうになったが、僕は何とか口を噤んだ。子供達の応援ではなく、僕の後押しになってしまうからな!
そうなると、カイザーなら本当にドラゴンを狩ってくるだろう。そして、丸ごと渡してくれる気がする。お肉だけだったら細々消費できる……気もしないが、まあ……少しずつは減るだろう。だが、鱗に皮、牙に血、その他諸々の稀少で性能抜群の素材が《無限収納》で死蔵まっしぐらになるのは間違いない。
「タクミはなかなかに頑固だな~。タクミだって気になっているはずではないか」
「ははは~」
他のドラゴン肉を食べたいか食べたくないか……という選択なら、それは当然食べてみたいさ。
だが、今の僕にはそれを素直に選択する勇気はない。
「とりあえず、先送りで。今は人形集めだね」
「うむ、確かにそれは大事だな。ドラゴン肉については迷宮の探索が終わってから改めて訴えることにしよう」
……とりあえず、保留ということになった。やはりというか、何というか……〝断念〟とはいかないんだな。
「おにぃちゃん、たいへん、たいへん!」
「え? どうした!?」
ドラゴンの話が終わったところで、エレナが慌てた様子で駆け寄ってくると、僕の手をぐいぐい引っ張てくる。
「こっちきてー」
「え、うん、わかった」
理由はわからないが、僕は素直にエレナに引かれるままについて行く。
すると、とんでもない光景が視界に入ってきた。
「おにぃちゃん、こっちこっち~」
「これは……」
「たいへんでしょ?」
「確かにな。でも、どうやったら、ああなるんだろう?」
何と! ベクトルが穴に嵌っていた。すっぽりとね。
《ぬ、抜けない。兄ちゃん、どうにかして~~~》
「何だってそんなことになったんだよ?」
大きめな瓦礫がゴロゴロと転がっているところで、隙間を潜り抜けようとしたようだ。
そして、頭は何とか抜けたが、胴が抜けなかったみたいだな。
《大丈夫だと思ったんだよ~》
「全然抜けなさそうなのか?」
《……びくともしない》
「……後ろに戻るのは?」
《それも無理そう~》
力があるベクトルでも無理だと言う。
「ん~……あっ! ベクトル、【縮小化】スキルの熟練度が上がっているよな?」
《ん? そうだね。オレは小さくなっていることのほうが、ほとんどだしね》
「なら、今のいつもの大きさより、さらに小さくなれないか?」
《おぉ? やってみる!》
ベクトルを喚び出している最中はほぼ小さくなってもらっているので、熟練度は必ず上がる。なら、今まで以上に小さくなれるはずだ。
カイザーだっていろいろ苦労して、ヘビサイズまでできるようになっていることだしな。
《むむむ? お? 小さくなれてる?》
「おぉ、なれてる、なれてる!」
「「おぉ~、ちっちゃくなった~」」
ベクトルは徐々に小さくなっていき、最終的にはジュールとフィートくらいの大きさになれた。
まあ、仔イヌ、仔ネコだと誤魔化せるジュールとフィートと違って、ライオンだということは誤魔化せそうにないけどな。
《抜けられた!》
《わ~、ベクトルおにーちゃん、ラジアンよりちっちゃ~い》
ラジアンが嬉しそうに、無事に隙間から出て来たベクトルを前足の間に収めた。
あれだな、ラジアンが親でベクトルが子の構図だ。
「ベクトルがラジアンの子供になったな」
《おぉ、これは何か新鮮~》
ベクトルもラジアンの足に挟まって、楽しそうにしていた。
《お兄ちゃん、お兄ちゃん、見てみて~》
「ん? えっ!? ジュール!!」
ジュールに呼ばれて振り向くと、ジュールが手のひらに乗るくらい、マイルと同じくらいの大きさになっていた。
《ボクももっと小さくなれた~》
ベクトルがさらに小さくなれたことから自分ももっと小さくなれると気がついたジュールが、試しに小さくなってみたようだ。
「これはまた……ジュール、可愛くなったな~」
《わーい。これでお兄ちゃんの肩にも乗れるね! いつもマイルやボルトが乗っているから羨ましかったんだよね~。最近じゃ、カイザーもお兄ちゃんの首に巻きついたりしていたし~》
手に持ち上げたジュールがひょいと跳ね、僕の右肩に飛び乗った。
《あら、それはいいわね。じゃあ、私も……――》
ジュールに続き、フィートも小さくなると、地面からネコのようにぴょんと跳ね、僕の左肩へと飛び乗った。
「フィートもさらに可愛くなったな~」
《ふふっ、兄様、ありがとう》
本当に可愛い。これはあれかな。ティーカップやティーポットを用意して、ジュールとフィートに入ってみてもらったほうがいいのだろう? 絶対に可愛い気がする。
《ジュールとフィートにわたしの場所が取られたの! でも、いつもはわたしが占領しているから、我慢するの!》
《そうですね。いつもぼく達が乗せてもらっていますから、今はジュールとフィートに譲りましょう》
「ふむ。では、マイルとボルトは、我の肩に来るといい」
《そうするの!》
《お邪魔します!》
ジュールとフィートに場所を譲ったボルトとマイルは、カイザーに誘われてカイザーの肩へと移動していく。
「よし、これで我もタクミとお揃いだ!」
「ははは~」
僕達は上級迷宮の三十階層にいるというのに、とても和やかな雰囲気になってしまっていた。
==========
アレンとエレナが歌います!
「「やったー!」」
カイザー、それにアレンとエレナは僕達の会話をしっかりと聞いていたらしい。
「行くとは言っていないからね」
「「えぇ~」」
「それよりも人形は手に入ったかい?」
「「あ、あったよ!」」
ドラゴン話が盛り上がらないうちに、僕はさっさと話題を変えることにした。
アレンとエレナは素直な子達なので、すんなり乗ってくれた。
「本当? 何の人形だったんだ?」
「アレンはね、しろいクモ!」
「エレナはね、しろいネコ!」
「「これ、なんのまものだろう?」」
「これは……シルクスパイダーとスノーキャットかな?」
運良く二つの新しい人形を手に入れられたようだ。
「「あっ! またいってくる!」」
再び魔物が現れたようで、アレンとエレナはすぐさま駆けていく。
「で、タクミ。ドラゴン肉確保には、本当に行かんのか?」
「行く予定はないぞ」
「そんなこと言わずに、行こうではないか」
「嫌だよ」
カイザーはもの凄くドラゴン狩りを誘ってくる。いやまあ、確かにドラゴン肉は美味しかったけどさ~。
「カイザーはそこそこ頻繁に食べているんだろう? なら、わざわざ僕達が行く必要はないじゃないか」
「いつもは水竜ばかりであったからな、地竜や飛竜にも興味が出た。そして、やはりタクミに料理してもらったほうが美味いのだ!」
「……」
うっかり「それならカイザーが単独で狩ってくればいいじゃないか。そうしたら、調理してあげるから!」と言いそうになったが、僕は何とか口を噤んだ。子供達の応援ではなく、僕の後押しになってしまうからな!
そうなると、カイザーなら本当にドラゴンを狩ってくるだろう。そして、丸ごと渡してくれる気がする。お肉だけだったら細々消費できる……気もしないが、まあ……少しずつは減るだろう。だが、鱗に皮、牙に血、その他諸々の稀少で性能抜群の素材が《無限収納》で死蔵まっしぐらになるのは間違いない。
「タクミはなかなかに頑固だな~。タクミだって気になっているはずではないか」
「ははは~」
他のドラゴン肉を食べたいか食べたくないか……という選択なら、それは当然食べてみたいさ。
だが、今の僕にはそれを素直に選択する勇気はない。
「とりあえず、先送りで。今は人形集めだね」
「うむ、確かにそれは大事だな。ドラゴン肉については迷宮の探索が終わってから改めて訴えることにしよう」
……とりあえず、保留ということになった。やはりというか、何というか……〝断念〟とはいかないんだな。
「おにぃちゃん、たいへん、たいへん!」
「え? どうした!?」
ドラゴンの話が終わったところで、エレナが慌てた様子で駆け寄ってくると、僕の手をぐいぐい引っ張てくる。
「こっちきてー」
「え、うん、わかった」
理由はわからないが、僕は素直にエレナに引かれるままについて行く。
すると、とんでもない光景が視界に入ってきた。
「おにぃちゃん、こっちこっち~」
「これは……」
「たいへんでしょ?」
「確かにな。でも、どうやったら、ああなるんだろう?」
何と! ベクトルが穴に嵌っていた。すっぽりとね。
《ぬ、抜けない。兄ちゃん、どうにかして~~~》
「何だってそんなことになったんだよ?」
大きめな瓦礫がゴロゴロと転がっているところで、隙間を潜り抜けようとしたようだ。
そして、頭は何とか抜けたが、胴が抜けなかったみたいだな。
《大丈夫だと思ったんだよ~》
「全然抜けなさそうなのか?」
《……びくともしない》
「……後ろに戻るのは?」
《それも無理そう~》
力があるベクトルでも無理だと言う。
「ん~……あっ! ベクトル、【縮小化】スキルの熟練度が上がっているよな?」
《ん? そうだね。オレは小さくなっていることのほうが、ほとんどだしね》
「なら、今のいつもの大きさより、さらに小さくなれないか?」
《おぉ? やってみる!》
ベクトルを喚び出している最中はほぼ小さくなってもらっているので、熟練度は必ず上がる。なら、今まで以上に小さくなれるはずだ。
カイザーだっていろいろ苦労して、ヘビサイズまでできるようになっていることだしな。
《むむむ? お? 小さくなれてる?》
「おぉ、なれてる、なれてる!」
「「おぉ~、ちっちゃくなった~」」
ベクトルは徐々に小さくなっていき、最終的にはジュールとフィートくらいの大きさになれた。
まあ、仔イヌ、仔ネコだと誤魔化せるジュールとフィートと違って、ライオンだということは誤魔化せそうにないけどな。
《抜けられた!》
《わ~、ベクトルおにーちゃん、ラジアンよりちっちゃ~い》
ラジアンが嬉しそうに、無事に隙間から出て来たベクトルを前足の間に収めた。
あれだな、ラジアンが親でベクトルが子の構図だ。
「ベクトルがラジアンの子供になったな」
《おぉ、これは何か新鮮~》
ベクトルもラジアンの足に挟まって、楽しそうにしていた。
《お兄ちゃん、お兄ちゃん、見てみて~》
「ん? えっ!? ジュール!!」
ジュールに呼ばれて振り向くと、ジュールが手のひらに乗るくらい、マイルと同じくらいの大きさになっていた。
《ボクももっと小さくなれた~》
ベクトルがさらに小さくなれたことから自分ももっと小さくなれると気がついたジュールが、試しに小さくなってみたようだ。
「これはまた……ジュール、可愛くなったな~」
《わーい。これでお兄ちゃんの肩にも乗れるね! いつもマイルやボルトが乗っているから羨ましかったんだよね~。最近じゃ、カイザーもお兄ちゃんの首に巻きついたりしていたし~》
手に持ち上げたジュールがひょいと跳ね、僕の右肩に飛び乗った。
《あら、それはいいわね。じゃあ、私も……――》
ジュールに続き、フィートも小さくなると、地面からネコのようにぴょんと跳ね、僕の左肩へと飛び乗った。
「フィートもさらに可愛くなったな~」
《ふふっ、兄様、ありがとう》
本当に可愛い。これはあれかな。ティーカップやティーポットを用意して、ジュールとフィートに入ってみてもらったほうがいいのだろう? 絶対に可愛い気がする。
《ジュールとフィートにわたしの場所が取られたの! でも、いつもはわたしが占領しているから、我慢するの!》
《そうですね。いつもぼく達が乗せてもらっていますから、今はジュールとフィートに譲りましょう》
「ふむ。では、マイルとボルトは、我の肩に来るといい」
《そうするの!》
《お邪魔します!》
ジュールとフィートに場所を譲ったボルトとマイルは、カイザーに誘われてカイザーの肩へと移動していく。
「よし、これで我もタクミとお揃いだ!」
「ははは~」
僕達は上級迷宮の三十階層にいるというのに、とても和やかな雰囲気になってしまっていた。
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アレンとエレナが歌います!
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