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本編

482.ラストチャレンジ2

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《ねぇねぇ、ロックゴーレムは、オレが担当していい? いい?》
「「えぇ~。やだ~」」

 弱点攻撃を持っているベクトルが張り切っているが、アレンとエレナがそれを許さなかった。

《えぇ!? 駄目なの?》
「アレンもたおしたい!」
「エレナもたおす~」
《アレンもエレナも火魔法が使えないでしょう?》
「「ちがうのでたおす!」」

 先ほどは倒せなかった……というか、戦いを中断させてしまったので、余計に二人の闘争心に火がついてしまったようだ。

「ゴーレム系は総じて、核となる魔石を狙って一点集中して攻撃すれば倒せるであろう」
「「ませき?」」
「うむ、魔石だ。ただ、ゴーレムによって魔石の位置が違う。まあ、頭か胸、腹辺りにあるものが多いがな。そこを狙って研ぎ澄ました攻撃で貫くと良い」
「「……ほうほう」」

 突然、カイザーによる子供達へのゴーレムの倒し方講座が始まった。

「む? ちょうど良い実験体が来たな。子らは魔力を読むのは得意だったな。あやつのどこかに魔力が集中している箇所がある。それがわかるか?」
「「むねー!」」
「ふむ、ちゃんと判別できておるな。まずは見本を見せるぞ。――《ウォーターバレット》」

 カイザーは《ウォーターボール》の水球よりも遥かに小さい、それこそパチンコ玉くらいの水球をゴーレムに向かって飛ばした。
 すると、その小さな水球はゴーレムの頭を貫き、ゴーレムに小さな穴が開いていた。

「「おぉ~」」
「今はわざと胸ではなく頭を狙ったが、あのように威力を凝縮した魔法を放つことによって、固い身体の敵でも貫くことが可能になるのだ」
「「やってみる!」」
「子らの場合は、タクミが空気弾を放つ時のように、力を指先に集中させると良いかもしれぬな」
「「わかった!」」

 カイザーは手のひらをゴーレムに向けて魔法を放っていたが、子供達には指先を使うように指示する。すると、子供達は僕が《エアショット》を撃つ時と同じように手をピストル型にして人差し指をゴーレムに向ける。

「水球を放つ時のように。だが、そのまま魔力をぎゅっと小さく固めるのだ」
「「……むむむっ。――《ウォーターバレット》」」

 子供達が水の弾丸……っぽいものを放つ。
 弾丸は見事にゴーレムの胸に当たった。だがしかし、力が凝縮しきれていなかったからか、弾けて消えてしまう。

「「あぅ~……」」
「小さく固めることに気を回し過ぎて、魔力が足りなかったようだな。だが、初めてにしては上手くできていたと思うぞ。なので、あとは練習あるのみだ! ――《ウォーターバレット》」

 カイザーは子供達に失敗点などを話しながら、だいぶこちらに近づいていたゴーレムに向かってもう一度水の弾丸を放つ。すると、今度は胸を貫通させ、あっさり片づけてしまう。

《大変だ、兄ちゃん! 小さなゴーレムが出た~》
「ん? どういうことだ?」

 ベクトルがカイザーの倒したゴーレムのドロップアイテムを拾いに行くと、おかしなことを言い出した。

《これだよ~。たぶん、ドロップアイテムだと思うんだけど~》
「んん!? これはフィギュアか!?」
「「おぉ~」」

 ベクトルが持ってきたドロップアイテムは、十センチくらいの緑色のゴーレム人形だった。それも樹脂……プラスチックっぽいものでできたものだ。

《それ、ふぃぎゅあっていうものなの?》
「い、いや、何というか、模型? 人形みたいなものだな」
《なるほど、人形か! 何か、面白いね~》

 フィギュアっぽいものがドロップアイテムとして出るとは思わなかったな~。

「「《ウォーターバレット》」」
「ん? またゴーレムか?」
「「ちがーう。だけど、れんしゅう!」」

 そうこうしているうちに、また魔物が現れたようだが、アレンとエレナが新技で素早く倒してしまった。

《あ、ゴブリンだ!》
「え、ゴブリン? 上級迷宮なのに、ゴブリンも出るのか!?」
《あ、お兄ちゃん、違うよ。魔物じゃなくて、人形の話だよ!》
「人形って、樹脂人形?」
《そうそう、それ。ゴブリンっぽい人形だったよ!》

 ジュールがドロップアイテムを拾ってきてくれたのだが、今度は五センチくらいのゴブリン人形が出たらしい。

「うわ~、ゴーレム以外の人形も出るのか~」
「「あつめる?」」
「……え? 並べて飾るのか?」
「「それいいね!」」
「ふむ、そうなると、たくさんあったほうがいいでのはないか?」
「「いっぱいたおそう!」」

 というわけで、当然のごとくフィギュア集めが始まり、魔物が現れた瞬間に討伐されていく。

《あっ! やった! マイルだ! マイルが出たよ!》
《わたしなの?》

 ベクトルがフォレストラットの人形を手に入れたようで、喜びの声を上げると自然と全員が集まってくる。

「「おぉ~、かわいいねぇ~」」
《あら、本当に可愛いわね~。私の人形は……三十階層なら出るかしら?》
《じゃあ、ボクもそこだね!》
《オレはえっと、えっと……二十九階層かな? 絶対に手に入れるぞぉ~》
《ベクトルは赤ですから、次の二十八階層なのでは? ぼくの場合は……どこでしょう?》
《ラジアンは?》
「我は、二十九階層だな! 見つかるといいな!」

 マイルの人形が見つかったことで、全員が自分の人形を手に入れようとさらに張り切りだした。

「ボルトとラジアンは身体の一部が白いから、見つかるなら三十階層になるんじゃないかな?」

 既にゴブリンキング、フォレストタイガー、グリーンホース、フォレストウルフ……などなどの人形が手に入っていて、さらには本当にいるかどうかはわからないが緑色のスライム。色の濃淡が違う緑のパステルラビットが複数。あとは、幹の部分は茶色だが、葉の部分が緑のトレントなどなど。
 大型の魔物で十センチくらい、小さい魔物でも五センチくらいの大きさで、一応階層に合わせて身体が緑、もしくは身体の一部が緑の人形がかなり集まっている。あ、もちろん、塗料剤などの他のドロップアイテムも集まっているけどね。

《早く先に進んで自分の人形を手に入れたいけど、この階層でもまだまだ違う種類の人形が手に入りそうだよね~》
《それね! オレも自分のが早く欲しい! でも、ここでももっと集めたい!》

 ジュールとベクトルが、まだこの階層で粘るか、先に進むかで葛藤していた。

「とりあえず、先に進んでみるか? もしかしたら三十一階層以降の森でも人形が出るかもしれないし、転移装置が使えるんだからまたこの階層に戻ってくることもできるんだよ?」
《 《あっ、そうか!》 》

 他の人形はともかく、僕としてはジュール達みんなの人形だけは確保したい気持ちでいっぱいだ。

《私は移動するに一票よ。とりあえず、次の階層でスカーレットキングレオ、またその次の階層でリヴァイアサン。また移動してフェンリル、飛天虎、サンダーホーク、グリフォンの人形を探したいわ》
《ボクもそれがいいです! まずは自分達を集めて、集め終わってから次をどうするか決めましょう!》
《ラジアン、はやくさんじゅうかいそうにいきたい~》
《わたしも移動に賛成なの! 早くみんなを集めたいの!》

 フィート達も僕と同じく自分達の人形を集めたいようだ。

「アレンもさんせーい」
「エレナもさんせーい」
「我もそれで良いぞ!」

 みんなの意見が一致した。というわけで、僕達はすぐに二十八階層を目指すことにした。





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