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14巻
14-3
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第二章 お茶会をしよう。
ロザリーさんは友人二人に、僕はリスナー家と、リシャール様が婿入りしたフォード家、それと……王様のトリスタン様に手紙を出した。
王妃のグレイス様と王太子妃のアウローラ様にはパステルラビットを一匹ずつ譲っているが、王孫のユリウス様には譲っていないのを思い出したからだ。まあ、グレイス様とアウローラ様が飼っているパステルラビットを一緒に可愛がっている可能性もあるが、念のために聞くだけ聞いてみることにしたというわけである。
それと、ヴァルトさんがオーロラバードを保護したことをトリスタン様にも報告したほうが良いと言うからな。パステルラビットがメインで、オーロラバードがついでの内容だ。
「もう返事が来たんですか?」
驚くことに、手紙を出した翌日、全部の返事がルーウェン家に届けられていたのだ。
「ふふっ、そうね。あ、タクミさん宛ての手紙は、一応、我が家宛てでもあったから、先に内容を確認させてもらったわよ。――はい、これね。タクミさんも確認してちょうだい」
「お手数をおかけしてすみません」
僕はルーウェン伯爵夫人で、アレンとエレナが〝おばあ様〟と呼んで懐いているレベッカさんから手渡された手紙を早速確認してみる。
「うわ~~~」
「「どうしたのー?」」
一通目、トリスタン様からの手紙は、もの凄く簡潔なものだった。『明後日、来い』だって。
まあ、オーロラバードのことを説明しに来いってことだろうね。ということは、オーロラバードもこっそり連れて行かないといけないのかな? 人目につかないようにしないとな~。
まあ、ポケットにでもすっぽり入りそうだし、どうとでもなるか。でも、安全性を考えるなら蓋のある籠に入ってもらったほうがいいかな?
あとは、パステルラビットは何色でもいいが一匹欲しいというのも締めくくりに書かれていた。
「明後日、お城においでって。ユリウス様にパステルラビットを連れて行くから、一匹選んでおいて」
「「わかった~」」
色は何色でもいいようなので、アレンとエレナに一匹確保しておくように言った。
「……ん? んん!?」
「こんどは」
「なーに?」
二通目、三通目はリスナー家とフォード家からだ。二家は是非ともパステルラビットを譲り受けたいという内容で、早速譲り受けるために本日お伺いしても良いか……という内容だった。
「えっと……今日ですか?」
「ふふっ、ロザリーさんのほうに来た手紙も、似たり寄ったりの内容だったみたいよ」
「本当ですか?」
どうやら、ヴァッサー家とクラーク家からもすぐに伺いたいという内容の手紙が来ているようだ。
「「なになに? おしえてよ~」」
「えっとな、みんな、パステルラビットを貰いたいって」
「「おぉ~」」
僕とレベッカさんのやり取りだけでは意味がわからなかったのだろう。アレンとエレナは僕の服を引き、内容を教えろと訴えてくる。
簡潔に教えれば、嬉しそうに微笑んだ。
「ということは……四つの家が今日、来たいって言っているってことですか?」
「そうみたいね。一応、四家には了承の返事を出しておいたわ。ご家族でどうぞってね。ああ、それと、同席者もいるという内容でね。まあ、小規模なお茶会だと思えばいいわ」
……なるほど、ルーウェン家主催のお茶会に四つの家から参加者ってことだね。
って! 唐突なお茶会主催だなんて、準備が大変じゃないのかな!?
「すみません! ご迷惑をおかけして!」
「急な来客はよくあることだから大丈夫よ。午後からですから、時間に余裕はありますしね。それに良い機会ですから、采配はロザリーさんに任せてみたの」
「え、じゃあ、ロザリーさんが忙しくしているんですね」
「アルメリアさんに補佐をお願いしたから大丈夫でしょう」
……夫人教育の一環かな? ロザリー様と長男グランヴェリオさんの奥さんであるアルメリアさんが対応に追われているようだ。
……レベッカさんは意外とスパルタだったりするのだろうか?
「あら、何かしら?」
「い、いいえ! 何でもありません」
僕が不穏なことを考えたからか、レベッカさんがそれはもう……良い笑顔でにっこりと微笑む。
「あ、そうだ! まだ早いかもしれませんが、ルカリオくんにもパステルラビットはいかがですか? レベッカさんが飼っている子の番としてでもいいですけど!」
笑顔が若干怖かったので、僕は無理やりレベッカさんの孫であるルカリオくんの話題を振った。
「ふふっ、あら、いいの?」
すると、レベッカさんは笑ってその話題に乗っかってくれた。
「「いいよ!」」
「ありがとう。じゃあ、今日来るお客様が選んだ後に、うちの子のお婿さんを選ばせてもらおうかしら」
レベッカさんが飼っているパステルラビットは雌だったか? 譲った時、鑑定で見た情報を教えたが、誰のが雌で誰のが雄だったかは覚えていないな~。
「先に選んだほうが、好きな色の子にできますよ」
「ありがとう。でも、大丈夫よ。どの色の子もとても可愛いもの」
「そうですか。それならいいんですが……あ、雄が残るとは限らないんじゃないですか?」
「あら、それならお友達を選ぶだけよ」
「ですよね~」
無理に番にする必要はないので、雌雄はどちらでもいいようだ。
「じゃあ、そうなると……残りは三匹かな?」
十五匹連れ帰って、レベッカさんに一匹、ロザリーさんのところに二匹、ユリウス様に一匹、今日来る四家にそれぞれ二匹として……残りは三匹かな?
「「さんびき、のこっちゃうー?」」
「予定ではな。まあ、今日来る人達で、二匹以上欲しいって言ったら、貰ってもらえばいいさ」
「「そうだね~」」
そういえば、ヴァッサー家のレジナルドさんには娘がいるって言っていたから、その令嬢がもし欲しいなら譲ってもいいのかもな。
「じゃあ、今回は全員引き取ってもらえるかもしれないし、とりあえずはギルドに出ている依頼は受けなくても大丈夫だな」
「「おぉ~、よかったね~」」
「そうだな。じゃあ、今のうちにお城に連れて行く一匹を選んで除けておいて、お茶会の準備の手伝いがないか聞いてこよう」
もしかしたら手伝えることはないかもしれないが、ロザリーさんとアルメリアさんに確認してみよう。
「あら、手伝ってくれるの?」
「僕達が原因のようなものですからね」
「ふふっ、タクミさんならそう言ってくれると思っていたわ」
「もしかして、僕にできる仕事がありますか?」
「ええ。タクミさんにはお茶請けをお願いしたいのだけど、今からでも間に合うかしら?」
なるほど、お茶菓子ね。それなら、手伝うことができるな。
「何品も作れと言われれば辛いですけど、一、二品なら問題ないですね」
「本当? それならお願いしてもいいかしら?」
「もちろんです。じゃあ、すぐに取り掛かりますね」
レベッカさんに断りを入れて、僕達はすぐに厨房へと向かうことにした。
「「おにぃちゃん、なにつくるー?」」
「ちょっと待ってな。今、考えるから」
さて、何を作ろうかな。できれば新作がいいけれど……すぐに作業に取り掛からないといけないから、思いつかなかったら……パウンドケーキとかが無難かな。
「アレンとエレナも、厨房に着くまでに食べたいもの考えてみて」
「「は~い」」
僕達は何を作るか悩みながら厨房に向かった。
「さて、どうするかな~。――二人とも何か思いついたかい?」
厨房に着いた僕は、まずアレンとエレナに意見を求めた。
「「はいはい!」」
「はい、アレンくん、エレナさん、どうぞ」
「はい! アレンは、ヨーグルのおやつがいいです!」
「はい! エレナもヨーグルのがたべたいです!」
「ヨーグルね」
そういえば、ヨーグル――ヨーグルトを使った甘味はまだ作っていなかったな。
「うん、いいね。ヨーグルで何か作ろうか」
「「やったー!」」
僕はパンケーキの生地を揚げ、砂糖をまぶしてドーナツにしてはどうだろうと考えていた。
ドーナツとヨーグルト味の甘味……ヨーグルトアイスとかヨーグルトゼリーは、とても合いそうなので、今日のおやつはそれで決定だな。
「アレン、エレナ、アイスとゼリーだったらどっちがいい?」
「「どっちも~」」
「あ、うん、そう言うと思った。まあ、どっちも簡単だし、とりあえず両方作るか~」
「「やったー!」
提供するかはともかく、作っておいて損はないしな。
「アレンは生クリームに砂糖を入れて泡立ててくれるかい?」
「は~い」
「エレナはー?」
「エレナはヨーグルに砂糖を混ぜて、それから牛乳を少しずつ混ぜていって」
「は~い」
まずはアイスとゼリーを同時進行だ。
アイスはヨーグルトと泡立てた生クリームと砂糖を混ぜて、アイスクリームメーカーで凍らせる。
瞬間冷凍でも味は美味しいのだが、やはり手間をかけて凍らせたほうが舌触りが滑らかになるので、アイスクリームメーカーは本当に作ってもらって良かったよな~。
ゼリーはヨーグルトに砂糖と牛乳を入れ、煮溶かしたスライムゼリーを混ぜて冷やすだけ。ヨーグルトは加熱し過ぎると分離するはずだから、今回は加熱しないで作ってしまう。材料はどれも新鮮なので大丈夫だろう。
どちらもレモン果汁を入れてもいいかもしれないが、今回はヨーグルト本来の酸味の味わいにしようと思う。
「ポチッとな♪」
「ゼリーはできたし、アイスもあとは待つだけだな」
「おにぃちゃん、エレナもポチッとしたい!」
「え?」
アイスクリームメーカーのスイッチをただ押すだけだが、アレンが押したのを見てエレナもやりたいと言い出した。
「……まあ、いいけど」
そういうことならもう一度ヨーグルトアイスを作って、今度は最後にベリージャムを混ぜてマーブルにするのもいいだろう。ベリーは……フィジー商会から貰ったミックスベリーのジャムを使うかな。
「じゃあ、エレナ、これを混ぜてな」
「はーい」
「アレンも~」
「じゃあ、アレンはこっちな」
「はーい」
僕は調子に乗って、ミックスベリー味だけではなく、イーチやオレンを混ぜたヨーグルトアイスまで作ってしまった。でも、どれも美味しくできたので、後悔はしていない。
「じゃあ、次はドーナツだな」
「どーなつ?」
「なにそれー?」
「パンケーキの生地を揚げたおやつだよ」
「「おぉ~、おいしそう~。つくろう、つくろう!」」
僕達はさくさくパンケーキの生地を作る。粉は少し多めで〝もたっ〟とよりも固めだ。そして、揚げる準備に取り掛かる。
さすがに輪の形に揚げるのは難しいけど……――
「これが早速役に立つな~」
「「アイスにつかうやつ?」」
「そうだな。でも、それ専用ってわけじゃないから、他のことにも使えるよ」
アイスを抜くカシャカシャを使えば、丸いドーナツが簡単に作れると考えたのだ。
カシャカシャはステファンさんが、サイズ違いで何種類も作ったものを届けてくれたのだ。その中から、今回は揚げやすいように小さめのものを使う。
「じゃあ、揚げてみるから、二人は離れていてな」
「「はーい」」
とりあえず数個揚げてみて、砂糖をまぶし、すぐに味見をしてみる。
「熱いから、気をつけるんだよ」
「「うん!」」
出来立てのドーナツを子供達に渡せば、二人はふぅふぅと息を吹きかけてある程度冷ますと、勢いよく頬張る。
「「はふっ! んん~~~♪」」
子供達に続き、僕もドーナツを食べてみる。
「あちっ! ――うん、意外と良い感じにできたかな?」
「アレン、これすき~」
「エレナもすき~」
贅沢を言えば、もう少しふわふわのドーナツのほうが好きだが……まあ、初めて作ったことだし、こんなものかな。あ、米粉を使えば、ふわもちなものになるって聞いたことがある。白麦で代用すればいいし、今度はそっちを試してみてもいいな。
まあ、それはまた今度だな。今は今日の分を準備しないと。
「味は良いみたいだし、全部揚げるか~」
「「あげちゃおう!」」
とりあえず、残りの生地も全て揚げてしまう。
あ、そういえば、あんパン、クリームパンを揚げて、あんドーナツ、クリームドーナツっていうのもできるな。それも今度作ろう。
「「コロコロする~」」
「じゃあ、お願いな」
アレンとエレナが、僕が揚げたドーナツを砂糖が入った器の中で転がし、砂糖を満遍なくまぶす。
「よし、これで最後ね」
「「おわり~」」
そういえば、チョコレートでコーティングという手もあったな。でもまあ、それも今度だな。
「えっと、今の時間は……ちょうどお昼か」
「「ごはーん?」」
「そうだな。でも、とりあえず、おやつができたことをレベッカさんに報告しようか」
「「そうだね~」」
◇ ◇ ◇
お茶の時間、ルーウェン邸にお客様が次々とやって来た。出迎えはロザリーさんとヴァルトさん。レベッカさんとアルメリアさん。そして、僕達だ。
「ロザリー、改めておめでとう」
「ロザリー、おめでとう」
「セレスティア、オルガ、ありがとう」
まず金髪と薄茶の髪の二人の女性が駆け込むように入ってくると、ロザリーさんに抱き着く。
たぶん、友人だと言っていた二人だな。
「「なかよし~」」
「そうだな。仲良しそうだな~」
ロザリーさんは本当に嬉しそうな顔をしている。
「セレスティア、そろそろいいかい? 会えて嬉しいのはわかるが、先に挨拶をしよう」
「そうね。ごめんなさい」
「オルガも」
「ええ、そうね」
友人二人は、それぞれ旦那さんの横に並ぶ。
「本日は急な訪問になり、申し訳ありません。私はレオナルド・ヴァッサーと申します」
「妻のセレスティアです。お言葉に甘えて連れてきてしまいましたが、息子のアルバードです。――ロザリーも初めてよね?」
「こんちゃ」
「ふふっ、可愛い。セレスティアに似ているわ」
まずはヴァッサー家が挨拶をしてくれる。金髪の女性のほうがヴァッサー夫人だったようで、今日は旦那さんと三歳くらいの男の子の三人で来てくれた。
「お初にお目にかかります。私はハリソン・クラークと申します」
「オルガです。それと娘のメアリーです。訪問の許可をいただきありがとうございます」
そして、続いてクラーク家がそれぞれ名乗っていく。こちらは夫婦と一歳くらいの女の子の三人だ。
「皆様方、ようこそいらっしゃいました。精一杯のおもてなしをさせていただきますので、楽しんでいただければ幸いですわ。では、こちらへどうぞ」
レベッカさんが代表して歓待の言葉を告げ、両家の皆様をすぐに談話室へと案内する。
そしてすぐに、レベッカさんとアルメリアさんは退室した。どうやら、二人はお茶会には参加しないようだ。
「ヴァルト、婚姻早々に邪魔して悪かったな」
席に落ち着いたところで、ヴァッサー様が真っ先に謝罪の言葉を告げる。
ヴァルトさんの先輩騎士というだけあって、鍛えられている感じがする男性だ。
「気にしていませんよ。レオナルド先輩、今日は堅苦しいのはなしでお願いします。あ、そうだ、先輩もクラーク殿もタクミとは初対面でしたよね? ――タクミ」
「えっと、初めまして。僕はタクミ・カヤノと申します」
「アレンです」
「エレナです」
「ヴァッサー様、クラーク様、本日は足を運んでいただいてありがとうございます」
ヴァルトさんが話を振ってくれたので、僕と子供達は挨拶をする。
「カヤノ殿、俺のことはレオナルドで構わないよ。父と区別するためにもな。いろいろ話は聞いているよ」
「その節はレジナルドさんには、大変お世話になりました。では、お言葉に甘えまして、レオナルド様と呼ばせていただきます。僕のことは是非〝タクミ〟とお呼びください」
「そこは呼び捨てか〝さん〟でいくところだろう。タクミくん」
「では、レオナルドさんとお呼びします」
まずはレジナルドさんの息子であるレオナルドさんと交友を深める。
「私は皆様とは初対面に近いですね。どうぞ、私のことはハリソンとお呼びください」
「確かに、しっかりと話すのは初めてかな?」
「そうですね。書類の提出で顔を合わせたくらいですかね?」
ハリソン・クラーク様は細身で、知的な感じの男性だ。
どうやらヴァルトさんやレオナルドさんともそれほど交友がなかったようだ。
それにしても――
ロザリーさんは友人二人に、僕はリスナー家と、リシャール様が婿入りしたフォード家、それと……王様のトリスタン様に手紙を出した。
王妃のグレイス様と王太子妃のアウローラ様にはパステルラビットを一匹ずつ譲っているが、王孫のユリウス様には譲っていないのを思い出したからだ。まあ、グレイス様とアウローラ様が飼っているパステルラビットを一緒に可愛がっている可能性もあるが、念のために聞くだけ聞いてみることにしたというわけである。
それと、ヴァルトさんがオーロラバードを保護したことをトリスタン様にも報告したほうが良いと言うからな。パステルラビットがメインで、オーロラバードがついでの内容だ。
「もう返事が来たんですか?」
驚くことに、手紙を出した翌日、全部の返事がルーウェン家に届けられていたのだ。
「ふふっ、そうね。あ、タクミさん宛ての手紙は、一応、我が家宛てでもあったから、先に内容を確認させてもらったわよ。――はい、これね。タクミさんも確認してちょうだい」
「お手数をおかけしてすみません」
僕はルーウェン伯爵夫人で、アレンとエレナが〝おばあ様〟と呼んで懐いているレベッカさんから手渡された手紙を早速確認してみる。
「うわ~~~」
「「どうしたのー?」」
一通目、トリスタン様からの手紙は、もの凄く簡潔なものだった。『明後日、来い』だって。
まあ、オーロラバードのことを説明しに来いってことだろうね。ということは、オーロラバードもこっそり連れて行かないといけないのかな? 人目につかないようにしないとな~。
まあ、ポケットにでもすっぽり入りそうだし、どうとでもなるか。でも、安全性を考えるなら蓋のある籠に入ってもらったほうがいいかな?
あとは、パステルラビットは何色でもいいが一匹欲しいというのも締めくくりに書かれていた。
「明後日、お城においでって。ユリウス様にパステルラビットを連れて行くから、一匹選んでおいて」
「「わかった~」」
色は何色でもいいようなので、アレンとエレナに一匹確保しておくように言った。
「……ん? んん!?」
「こんどは」
「なーに?」
二通目、三通目はリスナー家とフォード家からだ。二家は是非ともパステルラビットを譲り受けたいという内容で、早速譲り受けるために本日お伺いしても良いか……という内容だった。
「えっと……今日ですか?」
「ふふっ、ロザリーさんのほうに来た手紙も、似たり寄ったりの内容だったみたいよ」
「本当ですか?」
どうやら、ヴァッサー家とクラーク家からもすぐに伺いたいという内容の手紙が来ているようだ。
「「なになに? おしえてよ~」」
「えっとな、みんな、パステルラビットを貰いたいって」
「「おぉ~」」
僕とレベッカさんのやり取りだけでは意味がわからなかったのだろう。アレンとエレナは僕の服を引き、内容を教えろと訴えてくる。
簡潔に教えれば、嬉しそうに微笑んだ。
「ということは……四つの家が今日、来たいって言っているってことですか?」
「そうみたいね。一応、四家には了承の返事を出しておいたわ。ご家族でどうぞってね。ああ、それと、同席者もいるという内容でね。まあ、小規模なお茶会だと思えばいいわ」
……なるほど、ルーウェン家主催のお茶会に四つの家から参加者ってことだね。
って! 唐突なお茶会主催だなんて、準備が大変じゃないのかな!?
「すみません! ご迷惑をおかけして!」
「急な来客はよくあることだから大丈夫よ。午後からですから、時間に余裕はありますしね。それに良い機会ですから、采配はロザリーさんに任せてみたの」
「え、じゃあ、ロザリーさんが忙しくしているんですね」
「アルメリアさんに補佐をお願いしたから大丈夫でしょう」
……夫人教育の一環かな? ロザリー様と長男グランヴェリオさんの奥さんであるアルメリアさんが対応に追われているようだ。
……レベッカさんは意外とスパルタだったりするのだろうか?
「あら、何かしら?」
「い、いいえ! 何でもありません」
僕が不穏なことを考えたからか、レベッカさんがそれはもう……良い笑顔でにっこりと微笑む。
「あ、そうだ! まだ早いかもしれませんが、ルカリオくんにもパステルラビットはいかがですか? レベッカさんが飼っている子の番としてでもいいですけど!」
笑顔が若干怖かったので、僕は無理やりレベッカさんの孫であるルカリオくんの話題を振った。
「ふふっ、あら、いいの?」
すると、レベッカさんは笑ってその話題に乗っかってくれた。
「「いいよ!」」
「ありがとう。じゃあ、今日来るお客様が選んだ後に、うちの子のお婿さんを選ばせてもらおうかしら」
レベッカさんが飼っているパステルラビットは雌だったか? 譲った時、鑑定で見た情報を教えたが、誰のが雌で誰のが雄だったかは覚えていないな~。
「先に選んだほうが、好きな色の子にできますよ」
「ありがとう。でも、大丈夫よ。どの色の子もとても可愛いもの」
「そうですか。それならいいんですが……あ、雄が残るとは限らないんじゃないですか?」
「あら、それならお友達を選ぶだけよ」
「ですよね~」
無理に番にする必要はないので、雌雄はどちらでもいいようだ。
「じゃあ、そうなると……残りは三匹かな?」
十五匹連れ帰って、レベッカさんに一匹、ロザリーさんのところに二匹、ユリウス様に一匹、今日来る四家にそれぞれ二匹として……残りは三匹かな?
「「さんびき、のこっちゃうー?」」
「予定ではな。まあ、今日来る人達で、二匹以上欲しいって言ったら、貰ってもらえばいいさ」
「「そうだね~」」
そういえば、ヴァッサー家のレジナルドさんには娘がいるって言っていたから、その令嬢がもし欲しいなら譲ってもいいのかもな。
「じゃあ、今回は全員引き取ってもらえるかもしれないし、とりあえずはギルドに出ている依頼は受けなくても大丈夫だな」
「「おぉ~、よかったね~」」
「そうだな。じゃあ、今のうちにお城に連れて行く一匹を選んで除けておいて、お茶会の準備の手伝いがないか聞いてこよう」
もしかしたら手伝えることはないかもしれないが、ロザリーさんとアルメリアさんに確認してみよう。
「あら、手伝ってくれるの?」
「僕達が原因のようなものですからね」
「ふふっ、タクミさんならそう言ってくれると思っていたわ」
「もしかして、僕にできる仕事がありますか?」
「ええ。タクミさんにはお茶請けをお願いしたいのだけど、今からでも間に合うかしら?」
なるほど、お茶菓子ね。それなら、手伝うことができるな。
「何品も作れと言われれば辛いですけど、一、二品なら問題ないですね」
「本当? それならお願いしてもいいかしら?」
「もちろんです。じゃあ、すぐに取り掛かりますね」
レベッカさんに断りを入れて、僕達はすぐに厨房へと向かうことにした。
「「おにぃちゃん、なにつくるー?」」
「ちょっと待ってな。今、考えるから」
さて、何を作ろうかな。できれば新作がいいけれど……すぐに作業に取り掛からないといけないから、思いつかなかったら……パウンドケーキとかが無難かな。
「アレンとエレナも、厨房に着くまでに食べたいもの考えてみて」
「「は~い」」
僕達は何を作るか悩みながら厨房に向かった。
「さて、どうするかな~。――二人とも何か思いついたかい?」
厨房に着いた僕は、まずアレンとエレナに意見を求めた。
「「はいはい!」」
「はい、アレンくん、エレナさん、どうぞ」
「はい! アレンは、ヨーグルのおやつがいいです!」
「はい! エレナもヨーグルのがたべたいです!」
「ヨーグルね」
そういえば、ヨーグル――ヨーグルトを使った甘味はまだ作っていなかったな。
「うん、いいね。ヨーグルで何か作ろうか」
「「やったー!」」
僕はパンケーキの生地を揚げ、砂糖をまぶしてドーナツにしてはどうだろうと考えていた。
ドーナツとヨーグルト味の甘味……ヨーグルトアイスとかヨーグルトゼリーは、とても合いそうなので、今日のおやつはそれで決定だな。
「アレン、エレナ、アイスとゼリーだったらどっちがいい?」
「「どっちも~」」
「あ、うん、そう言うと思った。まあ、どっちも簡単だし、とりあえず両方作るか~」
「「やったー!」
提供するかはともかく、作っておいて損はないしな。
「アレンは生クリームに砂糖を入れて泡立ててくれるかい?」
「は~い」
「エレナはー?」
「エレナはヨーグルに砂糖を混ぜて、それから牛乳を少しずつ混ぜていって」
「は~い」
まずはアイスとゼリーを同時進行だ。
アイスはヨーグルトと泡立てた生クリームと砂糖を混ぜて、アイスクリームメーカーで凍らせる。
瞬間冷凍でも味は美味しいのだが、やはり手間をかけて凍らせたほうが舌触りが滑らかになるので、アイスクリームメーカーは本当に作ってもらって良かったよな~。
ゼリーはヨーグルトに砂糖と牛乳を入れ、煮溶かしたスライムゼリーを混ぜて冷やすだけ。ヨーグルトは加熱し過ぎると分離するはずだから、今回は加熱しないで作ってしまう。材料はどれも新鮮なので大丈夫だろう。
どちらもレモン果汁を入れてもいいかもしれないが、今回はヨーグルト本来の酸味の味わいにしようと思う。
「ポチッとな♪」
「ゼリーはできたし、アイスもあとは待つだけだな」
「おにぃちゃん、エレナもポチッとしたい!」
「え?」
アイスクリームメーカーのスイッチをただ押すだけだが、アレンが押したのを見てエレナもやりたいと言い出した。
「……まあ、いいけど」
そういうことならもう一度ヨーグルトアイスを作って、今度は最後にベリージャムを混ぜてマーブルにするのもいいだろう。ベリーは……フィジー商会から貰ったミックスベリーのジャムを使うかな。
「じゃあ、エレナ、これを混ぜてな」
「はーい」
「アレンも~」
「じゃあ、アレンはこっちな」
「はーい」
僕は調子に乗って、ミックスベリー味だけではなく、イーチやオレンを混ぜたヨーグルトアイスまで作ってしまった。でも、どれも美味しくできたので、後悔はしていない。
「じゃあ、次はドーナツだな」
「どーなつ?」
「なにそれー?」
「パンケーキの生地を揚げたおやつだよ」
「「おぉ~、おいしそう~。つくろう、つくろう!」」
僕達はさくさくパンケーキの生地を作る。粉は少し多めで〝もたっ〟とよりも固めだ。そして、揚げる準備に取り掛かる。
さすがに輪の形に揚げるのは難しいけど……――
「これが早速役に立つな~」
「「アイスにつかうやつ?」」
「そうだな。でも、それ専用ってわけじゃないから、他のことにも使えるよ」
アイスを抜くカシャカシャを使えば、丸いドーナツが簡単に作れると考えたのだ。
カシャカシャはステファンさんが、サイズ違いで何種類も作ったものを届けてくれたのだ。その中から、今回は揚げやすいように小さめのものを使う。
「じゃあ、揚げてみるから、二人は離れていてな」
「「はーい」」
とりあえず数個揚げてみて、砂糖をまぶし、すぐに味見をしてみる。
「熱いから、気をつけるんだよ」
「「うん!」」
出来立てのドーナツを子供達に渡せば、二人はふぅふぅと息を吹きかけてある程度冷ますと、勢いよく頬張る。
「「はふっ! んん~~~♪」」
子供達に続き、僕もドーナツを食べてみる。
「あちっ! ――うん、意外と良い感じにできたかな?」
「アレン、これすき~」
「エレナもすき~」
贅沢を言えば、もう少しふわふわのドーナツのほうが好きだが……まあ、初めて作ったことだし、こんなものかな。あ、米粉を使えば、ふわもちなものになるって聞いたことがある。白麦で代用すればいいし、今度はそっちを試してみてもいいな。
まあ、それはまた今度だな。今は今日の分を準備しないと。
「味は良いみたいだし、全部揚げるか~」
「「あげちゃおう!」」
とりあえず、残りの生地も全て揚げてしまう。
あ、そういえば、あんパン、クリームパンを揚げて、あんドーナツ、クリームドーナツっていうのもできるな。それも今度作ろう。
「「コロコロする~」」
「じゃあ、お願いな」
アレンとエレナが、僕が揚げたドーナツを砂糖が入った器の中で転がし、砂糖を満遍なくまぶす。
「よし、これで最後ね」
「「おわり~」」
そういえば、チョコレートでコーティングという手もあったな。でもまあ、それも今度だな。
「えっと、今の時間は……ちょうどお昼か」
「「ごはーん?」」
「そうだな。でも、とりあえず、おやつができたことをレベッカさんに報告しようか」
「「そうだね~」」
◇ ◇ ◇
お茶の時間、ルーウェン邸にお客様が次々とやって来た。出迎えはロザリーさんとヴァルトさん。レベッカさんとアルメリアさん。そして、僕達だ。
「ロザリー、改めておめでとう」
「ロザリー、おめでとう」
「セレスティア、オルガ、ありがとう」
まず金髪と薄茶の髪の二人の女性が駆け込むように入ってくると、ロザリーさんに抱き着く。
たぶん、友人だと言っていた二人だな。
「「なかよし~」」
「そうだな。仲良しそうだな~」
ロザリーさんは本当に嬉しそうな顔をしている。
「セレスティア、そろそろいいかい? 会えて嬉しいのはわかるが、先に挨拶をしよう」
「そうね。ごめんなさい」
「オルガも」
「ええ、そうね」
友人二人は、それぞれ旦那さんの横に並ぶ。
「本日は急な訪問になり、申し訳ありません。私はレオナルド・ヴァッサーと申します」
「妻のセレスティアです。お言葉に甘えて連れてきてしまいましたが、息子のアルバードです。――ロザリーも初めてよね?」
「こんちゃ」
「ふふっ、可愛い。セレスティアに似ているわ」
まずはヴァッサー家が挨拶をしてくれる。金髪の女性のほうがヴァッサー夫人だったようで、今日は旦那さんと三歳くらいの男の子の三人で来てくれた。
「お初にお目にかかります。私はハリソン・クラークと申します」
「オルガです。それと娘のメアリーです。訪問の許可をいただきありがとうございます」
そして、続いてクラーク家がそれぞれ名乗っていく。こちらは夫婦と一歳くらいの女の子の三人だ。
「皆様方、ようこそいらっしゃいました。精一杯のおもてなしをさせていただきますので、楽しんでいただければ幸いですわ。では、こちらへどうぞ」
レベッカさんが代表して歓待の言葉を告げ、両家の皆様をすぐに談話室へと案内する。
そしてすぐに、レベッカさんとアルメリアさんは退室した。どうやら、二人はお茶会には参加しないようだ。
「ヴァルト、婚姻早々に邪魔して悪かったな」
席に落ち着いたところで、ヴァッサー様が真っ先に謝罪の言葉を告げる。
ヴァルトさんの先輩騎士というだけあって、鍛えられている感じがする男性だ。
「気にしていませんよ。レオナルド先輩、今日は堅苦しいのはなしでお願いします。あ、そうだ、先輩もクラーク殿もタクミとは初対面でしたよね? ――タクミ」
「えっと、初めまして。僕はタクミ・カヤノと申します」
「アレンです」
「エレナです」
「ヴァッサー様、クラーク様、本日は足を運んでいただいてありがとうございます」
ヴァルトさんが話を振ってくれたので、僕と子供達は挨拶をする。
「カヤノ殿、俺のことはレオナルドで構わないよ。父と区別するためにもな。いろいろ話は聞いているよ」
「その節はレジナルドさんには、大変お世話になりました。では、お言葉に甘えまして、レオナルド様と呼ばせていただきます。僕のことは是非〝タクミ〟とお呼びください」
「そこは呼び捨てか〝さん〟でいくところだろう。タクミくん」
「では、レオナルドさんとお呼びします」
まずはレジナルドさんの息子であるレオナルドさんと交友を深める。
「私は皆様とは初対面に近いですね。どうぞ、私のことはハリソンとお呼びください」
「確かに、しっかりと話すのは初めてかな?」
「そうですね。書類の提出で顔を合わせたくらいですかね?」
ハリソン・クラーク様は細身で、知的な感じの男性だ。
どうやらヴァルトさんやレオナルドさんともそれほど交友がなかったようだ。
それにしても――
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