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12巻
12-3
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「本当に、本当にいいのか?」
「「いいよ~」」
エヴァンさんはしゃがんで子供達と視線を合わせると、念を押すように確認する。
「代金をお支払いしますか?」
「「だいきん?」」
「お金ですよ」
「「いらなーい」」
そして、スコットさんは恐縮して代金を支払おうとするが、子供達は即座に断っていた。
「お金より、遊んであげたほうが喜ぶので、そっちでお願いします」
「「うん、あそぼう!」」
一粒いくらになるのか知らないが、子供達にとってはそっちのほうが嬉しいだろうと代案を出せば、子供達は笑顔で頷いた。
それを見たエヴァンさんとスコットさんは〝本当にそれでいいのだろうか?〟という表情をしながらも、最終的にはそれで納得した。
そして、僕達三人は、天の雫を食べてみる。
「「どう? どう?」」
「うん、美味しいよ」
「美味っ!」
「確かに美味しいですね」
天の雫は口に入れた瞬間、瞬く間に溶けて口の中に爽やかな甘みが広がった。
「ん~、美味しいは美味しいんだけど……大金の値が付くほどかな?」
「それは、もう一つの意味合いが原因ですね」
「意味? 降る場所に居合わせると幸運ってやつ以外にもあるんですか?」
「ええ、口にすると運気が上がると言われているんです。本当かどうかは定かではありませんけどね」
「運気ですか」
なるほど、迷信かもしれないけど、信じて欲しがる人が出そうだよな~。
「「ねぇ、ねぇ、おにぃちゃん」」
「ん? どうした?」
「もういっかい」
「ふらないかな~?」
「ははは~、運が良かったら、そのうちまた遭遇するんじゃないかな?」
「「えぇ~~~」」
アレンとエレナが天の雫がもう一度降らないかと空を見上げていると、突然――カーンッ、カーンッ……と船内に警報の鐘が鳴り響いた。
「「なーに?」」
「何だろうね?」
船員達が一気に慌ただしく動き始め、剣呑な雰囲気になる。
「緊急事態みたいですけど、エヴァンさんとスコットさんは行かなくていいんですか?」
「あれは甲板集合の合図だな」
なるほど、甲板に集合なら動く必要はないよな。あっ、確かに護衛っぽい人が船内から出て来るのが見える。
「「あ、あれー!」」
アレンとエレナが何かを見つけて指を差す。
「あれは……船か?」
まだ遠方だが、少しくたびれた感じの船が見えた。
「来やがったか!」
エヴァンさんが苦々しい表情で悪態をつく。
あの口ぶりということは、あれは昨日話に出ていた賊なんだろう。
「難破船とかの可能性はないんですか?」
「その場合は救援の合図があるはずです」
「合図ですか?」
「ええ、煙です。あの船から赤い煙が上がっていません」
「ああ!」
発煙弾! そういえば、そういうものがあったな~。忘れていた。
「タクミさん、念のために伝えておきますが、わざと救援の合図を出して救助のために近づいた船を襲うという場合もあります。あ、海だけじゃなく陸でもですね。ですから、充分に気をつけて、状況をしっかり確認してくださいね」
「あ、はい」
スコットさんは、僕が知らないだろうと追加情報をくれる。
賊が発煙弾で獲物をおびき寄せるなんて知らなかったから、本当に助かるわ~。
「今回は、堂々とやって来たけどな!」
「それだけ、戦力に自信があるのでしょう」
エヴァンさんの言葉に、スコットさんが頷いた。
この船に接近しているのは、海賊船で間違いないようだ。
あ~……確かに髑髏マークの海賊旗っぽいものが見えるわ。
「……この船に乗っている戦力と、海賊の規模はどのくらいなんですか?」
僕は声を潜めて、エヴァンさんとスコットさんに尋ねる。
「専属護衛は八名。護衛でない船員も武術の基本は心得ていると聞いているが……正直、護身術程度で戦力には数えられないだろう。で、追加の護衛の冒険者は俺達を入れて五名だ」
「あとは乗客に冒険者が何名かいるのを見ましたね。海賊は機動力が高く、かなりの人数だと聞いています」
二人は部外秘には当たらない情報は教えてくれる。
「正面衝突は、正直キツイな」
そう言って悩むエヴァンさん達に、僕はとある提案をしてみた。
「それなら、海賊の船自体をこちらに近づけないようにしたらいいんじゃないですか?」
「は?」
「魔法攻撃が届く範囲に来たら、相手の船に穴を開ける……とか?」
「「……」」
僕の作戦(?)を聞いて、スコットさんとエヴァンさんは絶句する。
「……捕縛はできないかもしれませんが、いい案かもしれませんね。我々だけでしたら無理ですけど、タクミさんなら可能そうですね」
「だな、かなりの力業だが……良いんじゃないか」
半分冗談のつもりで言った作戦だが、意外と賛同を得られた。
「タクミさん、上に提案してみてもいいですか?」
「え? あ、はい、大丈夫です」
スコットさんがすぐに、商会専属護衛のリーダーだと思われる人物のところへ向かう。
そして、少し会話をすると、その人物を連れてこちらに戻って来た。
「海賊船が接近していると聞いた時は運がないと思ったが、Aランクの冒険者が乗っているなんて、まだ神に見捨てられていなかったようだな」
相手が僕と顔を合わせた途端、神様に祈り出したので、僕は微妙な気持ちになった。
「えっと……」
「ああ、すまんな。俺はガイウス。護衛のリーダーを務めている」
「タクミです。見えないってよく言われますが、Aランクの冒険者です」
「ははは~、確かに見えんな。だが、この状況で嘘は言わないだろうから、信じるさ。でだ、魔法で海賊船に穴を開けるって? 本当にできるのか?」
とりあえず軽く名乗り合ってから、僕達はすぐに本題に入る。
「えっと、あの船が鉄鉱石やオリハルコンより硬いっていうなら無理だと思うので、この作戦は聞かなかったことにしてください」
「そんな重いもので船なんか造ったら沈むわ! 船と言えば、普通は木製だよ!」
「じゃあ、問題ないと思いますね。念のために聞きますが、もし失敗した場合、不利な状況になりますか?」
「多少、相手方が警戒するだろうが、そもそも全力で襲ってくるのは間違いないから、正直、駄目もとでも問題ないな」
問題ないのであれば、試すだけ試してもいいな。
「あ、もう一ついいですか?」
「ああ、何だ?」
「そもそも、逃げ切ることはできないんですか?」
「無理だな。この船は積載量を重視した造りだから、船足は遅めだ。逆に、あの船は船足を重視しているようだし」
ああ、そういえば、この船は船足が遅めだって、船の予約をした時に言っていたな~。
ということは、やっぱり戦闘になる確率のほうが高いのか。
であれば、と僕は重要なことを尋ねる。
「沈める気でいいんですね?」
「ああ、構わない。捕縛は二の次、乗客と船の安全が第一だ。まあ、海賊の船長だけは兵に引き渡したいから、捕縛あるいは死体の確保はしたいってところだが……それも気にするな! 全力で行ってくれ!」
「了解です」
ガイウスさんの許可を得たので、僕は海賊船が狙える場所に陣取り、船が近づいて来るのを待つ。
「「もうちょっと?」」
「そうだね」
僕の隣にはもちろん、アレンとエレナがいる。
護衛や冒険者達は、こんなところに子供がいていいのかとボソボソと話しているが、聞こえない振りをしておいた。子供達に船室に戻っていろと言っても無駄だしな。
「「そろそろ?」」
「そうだね。そろそろ届くかな?」
魔法の射程範囲に海賊船が入った。
エヴァンさんとスコットさんも近くにいて、僕の呟きを聞いて首を傾げている。
「もう届くのか?」
「届きますね」
「この距離で撃つよりはもう少し近いほうが、威力が上がって確実に穴を開けられるのではないですか?」
しかし僕は首を横に振った。
「それはそうですけど……それだと、無傷で海に落ちた海賊がこっちまで泳いで辿り着きませんか?」
「無傷だったとしても、泳いで、さらにこの船をよじ登った後なら、問題ありません。捕縛できて都合がいいですよ」
「あ、そうか」
じゃあ、遠慮なくもう少し近づいてから攻撃を――
「「《ウォータージェット》!」」
「あっ!」
そう思っていると、子供達が先に魔法を放ってしまった。
当初の作戦通り――ドコーンッ……と大きな破壊音をたてて海賊船に穴が開いたが、こちらにいる人達が唖然としていた。
「「あいたよー!」」
船の穴を見て、アレンとエレナは嬉しそうだ。
「……うん、そうだね~。でも、穴を開ける位置がちょっと上過ぎたかな。まあ、それで良かったけどさ!」
子供達の魔法は船首に穴を開けたのだが、少し高かったため海水が入らない位置だった。
なので、船は沈没せず、海賊達も無傷っぽいので僕はひと安心した。
「アレン、エレナ、勝手に魔法を撃ったら駄目だよ」
「「なんでー? あける、いってた!」」
とりあえず勝手なことをしたのを軽く注意してみたら、子供達は不満そうにする。
「うん、そうだね。でも、それは僕の仕事だよ。アレンとエレナじゃないでしょう!」
「「えぇ~。えっとね、あれ!」」
「はやいもの」
「がち?」
そして、あろうことか〝早い者勝ち〟だと言い出した。だから、どこでそういう言葉を覚えてくるんだよ~。
「いい? あの船に乗っているのは悪い人達とはいえ、人なんだよ。そして、二人の今の魔法は人の命を奪う可能性があった。わかる?」
「「……うん」」
僕は屈んで二人に視線を合わせると、二人がやったことを理解させるべく真剣に伝える。
「お兄ちゃんは二人には人の命を奪うことはして欲しくない。もし、奪うことになりそうでも、お兄ちゃんは最後まで奪わなくて済むように動くし、奪うしか選択肢がなかったとしても……それはお兄ちゃんの仕事だ」
「「うぅ~……」」
僕は相手が悪党であってもできるだけ人の命を奪う行為はしたくないとは思う。だが、やはり自分や子供達、知り合いなどが危ないのであれば……躊躇うことはしたくない。
「アレンとエレナは良い子で賢い子だから、わかるよね?」
アレンとエレナは泣きそうな顔をしながらもしっかりと頷いた。
「じゃあ、約束な。人に向かって魔法は使わない。いいね?」
「「……うん」」
アレンとエレナが納得してくれたので、そういえば海賊船はどうなったかと周囲を見渡してみる。
「……あれ? 止まってる?」
すると、船は何故か止まっていた。
子供達の魔法にいきり立ったらそのまま突進してくるだろうし、怖気づいたのなら逃げるだろう。なのに、停止? 一体どういうことだろう?
「あの船って何で止まっているんですか?」
「動力源である魔石が壊れたのかもな」
「魔石って船首にあるものなんですか?」
「いや、その船によって様々だな。船首だったり船尾だったり、船底や船長室っていうこともある」
「へぇ~」
僕の疑問に、ガイウスさんが答えてくれる。
魔石の設置場所って固定されていないのか。船を動かすための魔石はかなりランクが高いって聞いているし、盗難対策ということかな?
「それで、海賊達はまったく動かないんですか?」
「こちらを襲うのも無理。船を捨てて逃げようにも陸はまだまだ先だし、海にだって魔物はいる。手詰まりなんだろうな。命が惜しかったら投降してくるんじゃないか?」
海賊の動向を確認するために、全速で動いていたこちらの船も止め、しばらく待つことになったのだが――
「……動かないな」
少しの間待ったものの、海賊達に動きはなかった。
「このまま放置して……国に任せましょうか?」
埒が明かないので、ガイウスさんに提案してみる。
このまま僕達はセルディーク国へ向い、国に報告して兵に捕縛に向かってもらうとか? まあ、その場合、海賊は逃げて減っているかもしれないが、船は回収できるだろう。
「……悩むな」
ガイウスさんは唸りながら悩みだした。
「じゃあ、捕まえに……こっちから乗り込みますか」
「いや、無理だろう。相手の戦力は減っていないんだぞ」
「タクミさん、捕まえるって言っても、どうやってあっちの船に行くのですか? さすがにこちらの船はあまり近づけられませんよ?」
「やっぱり泳いでいくしかないんじゃないですか? この距離なら問題ないですよ」
エヴァンさんとスコットさんには反対されたが、僕は《無限収納》から水中でも呼吸ができるようになる魔道具、人魚の腕輪を取り出して身につけ、泳ぐ準備を始める。
ガイウスさんが悩んだまま結論が出なかったので、勝手に行動することにした。
「それ、人魚の腕輪か! 良いものを持っているな!」
「これならこっそり近づけますからね。人魚の腕輪はまだありますけど、どうします? エヴァンさんとスコットさんも同行してくれますか?」
「仕方がないな~。付き合うよ」
「そうですね。タクミさんだけよりは、私達も行ったほうがいいでしょう」
そして、エヴァンさんとスコットさんを誘ってみれば、二人ともあっさりと乗ってくれた。
「……アレンはー?」
「……エレナはー?」
子供達も行きたそうだが、先ほど注意したからか遠慮がちに聞いてくる。
「アレンとエレナはお留守番だね」
「「えぇ~」」
「二人にはここからやって欲しいことがあるんだ」
「「なーに?」」
こてん、と首を傾げる二人。
「牽制をお願いできる?」
「「けんせい?」」
「僕達があっちの船まで行くのを邪魔されないようにするお仕事」
「「おしごとする!」」
仕事と言うとやる気を見せてくれたので、子供達には船に残ってやることを説明する。
「「《ウォーターピラー》」」
海賊船の周りに海から水の柱を発生させてもらうのだ。もちろん、船には当たらないようにね。
「うん、そうそう。良い感じ! それを僕が泳いでいる間、適当にやり続けられそう?」
「「うん、できる!」」
これで海賊は、この船に魔法師が乗っていると勘違いし、その動きや水柱に目を向けるだろう。
「船の正面真っ直ぐは僕達が泳いでいるから、そこは避けて船の両端辺りを中心にお願いな」
「「わかったー」」
「くれぐれも船には当てないように。あとは後ろのほうも避けてな」
「「うん!」」
再度、注意事項を確認すれば、子供達はしっかりと頷く。これで準備万端。
「海中をこっそり移動して船尾から登れば、気づかれずに行けるでしょう」
「そうだな」
そこまで決めたところで、結論を出せずにいたガイウスさんもさすがに納得してくれたようなので、僕はもう少し人員を募集することにした。
とはいえ、さすがにこの船をがら空きにするわけにはいかないので、商会の護衛達にはそのまま船を任せ、追加で雇われていたエヴァンさん達冒険者五名と行くことにした。
「じゃあ、行きますか」
僕達は海賊船から死角になるほうから海に飛び込み、泳いでいく。そしてあっさりと、狙い通り誰にも気づかれずに海賊船に侵入することができた。
最初は隠密行動。海賊達は僕達の乗っていた船や海を呆然と眺めていたので、素早く静かに気絶させていく。そして、人数が減ったところで戦闘開始だ。
少し乱戦となったが、こちらの戦力には大きな怪我はなく、海賊達を制圧したのだった。
第二章 セルディーク国を観光しよう。
「「ついたー!」」
「やっぱり、ちょっとだけ暖かいな」
僕達は、セルディーク国のビルドの街に到着した。
昼に到着予定だったが、海賊騒動で夕方になってしまったけど……まあ、許容範囲だろう。
「「おにぃちゃん、おにぃちゃん」」
「ん? どうした?」
「かわった」
「おようふく~」
「あ、本当だな」
この国には、長袍というのだろうか? チャイナ服のような衣装を着ている人がかなりいる。
しかも、右袖は半袖か袖なしだが、左袖はひらひらとした長袖という変わった作りの服だ。
ガディア国、アルゴ国、クレタ国では見たことがないので、セルディーク国特有の衣装なのだろうか? ナナの実――バナナや、カヒィ豆――コーヒー豆の産地なので、南国や中南米をイメージしていたんだけどな~。
「タクミ、こっちで事情を聴きたいって」
「はーい」
町の様子を眺めていると、捕縛した海賊達を兵に引き渡していたエヴァンさんに呼ばれた。
どうやら、僕からも話を聴きたいらしい。まあ、ほぼ僕が勝手に行動した感じだし、海賊船も《無限収納》に収納して運んできたからな~。当然のことだろう。
「あ、でも、先に宿を探したいんですけど……駄目ですかね?」
事情聴取はいいのだが、暗くなる前に宿だけは確保しておきたいと伝える。
「駄目というか、商会の人間がもう手配に走っているってさ」
「それは、エヴァンさん達護衛のじゃないんですか?」
「何を言っているんだ。船の危機を救った恩人の部屋を用意しないわけがないじゃないか。きっと良い部屋を用意してくれると思うぞ」
「良い部屋かどうかはともかく、確保してくれるなら安心ですね」
宿の心配はなくなったので、僕達は港にある兵士の詰め所へ移動する。
「「いいよ~」」
エヴァンさんはしゃがんで子供達と視線を合わせると、念を押すように確認する。
「代金をお支払いしますか?」
「「だいきん?」」
「お金ですよ」
「「いらなーい」」
そして、スコットさんは恐縮して代金を支払おうとするが、子供達は即座に断っていた。
「お金より、遊んであげたほうが喜ぶので、そっちでお願いします」
「「うん、あそぼう!」」
一粒いくらになるのか知らないが、子供達にとってはそっちのほうが嬉しいだろうと代案を出せば、子供達は笑顔で頷いた。
それを見たエヴァンさんとスコットさんは〝本当にそれでいいのだろうか?〟という表情をしながらも、最終的にはそれで納得した。
そして、僕達三人は、天の雫を食べてみる。
「「どう? どう?」」
「うん、美味しいよ」
「美味っ!」
「確かに美味しいですね」
天の雫は口に入れた瞬間、瞬く間に溶けて口の中に爽やかな甘みが広がった。
「ん~、美味しいは美味しいんだけど……大金の値が付くほどかな?」
「それは、もう一つの意味合いが原因ですね」
「意味? 降る場所に居合わせると幸運ってやつ以外にもあるんですか?」
「ええ、口にすると運気が上がると言われているんです。本当かどうかは定かではありませんけどね」
「運気ですか」
なるほど、迷信かもしれないけど、信じて欲しがる人が出そうだよな~。
「「ねぇ、ねぇ、おにぃちゃん」」
「ん? どうした?」
「もういっかい」
「ふらないかな~?」
「ははは~、運が良かったら、そのうちまた遭遇するんじゃないかな?」
「「えぇ~~~」」
アレンとエレナが天の雫がもう一度降らないかと空を見上げていると、突然――カーンッ、カーンッ……と船内に警報の鐘が鳴り響いた。
「「なーに?」」
「何だろうね?」
船員達が一気に慌ただしく動き始め、剣呑な雰囲気になる。
「緊急事態みたいですけど、エヴァンさんとスコットさんは行かなくていいんですか?」
「あれは甲板集合の合図だな」
なるほど、甲板に集合なら動く必要はないよな。あっ、確かに護衛っぽい人が船内から出て来るのが見える。
「「あ、あれー!」」
アレンとエレナが何かを見つけて指を差す。
「あれは……船か?」
まだ遠方だが、少しくたびれた感じの船が見えた。
「来やがったか!」
エヴァンさんが苦々しい表情で悪態をつく。
あの口ぶりということは、あれは昨日話に出ていた賊なんだろう。
「難破船とかの可能性はないんですか?」
「その場合は救援の合図があるはずです」
「合図ですか?」
「ええ、煙です。あの船から赤い煙が上がっていません」
「ああ!」
発煙弾! そういえば、そういうものがあったな~。忘れていた。
「タクミさん、念のために伝えておきますが、わざと救援の合図を出して救助のために近づいた船を襲うという場合もあります。あ、海だけじゃなく陸でもですね。ですから、充分に気をつけて、状況をしっかり確認してくださいね」
「あ、はい」
スコットさんは、僕が知らないだろうと追加情報をくれる。
賊が発煙弾で獲物をおびき寄せるなんて知らなかったから、本当に助かるわ~。
「今回は、堂々とやって来たけどな!」
「それだけ、戦力に自信があるのでしょう」
エヴァンさんの言葉に、スコットさんが頷いた。
この船に接近しているのは、海賊船で間違いないようだ。
あ~……確かに髑髏マークの海賊旗っぽいものが見えるわ。
「……この船に乗っている戦力と、海賊の規模はどのくらいなんですか?」
僕は声を潜めて、エヴァンさんとスコットさんに尋ねる。
「専属護衛は八名。護衛でない船員も武術の基本は心得ていると聞いているが……正直、護身術程度で戦力には数えられないだろう。で、追加の護衛の冒険者は俺達を入れて五名だ」
「あとは乗客に冒険者が何名かいるのを見ましたね。海賊は機動力が高く、かなりの人数だと聞いています」
二人は部外秘には当たらない情報は教えてくれる。
「正面衝突は、正直キツイな」
そう言って悩むエヴァンさん達に、僕はとある提案をしてみた。
「それなら、海賊の船自体をこちらに近づけないようにしたらいいんじゃないですか?」
「は?」
「魔法攻撃が届く範囲に来たら、相手の船に穴を開ける……とか?」
「「……」」
僕の作戦(?)を聞いて、スコットさんとエヴァンさんは絶句する。
「……捕縛はできないかもしれませんが、いい案かもしれませんね。我々だけでしたら無理ですけど、タクミさんなら可能そうですね」
「だな、かなりの力業だが……良いんじゃないか」
半分冗談のつもりで言った作戦だが、意外と賛同を得られた。
「タクミさん、上に提案してみてもいいですか?」
「え? あ、はい、大丈夫です」
スコットさんがすぐに、商会専属護衛のリーダーだと思われる人物のところへ向かう。
そして、少し会話をすると、その人物を連れてこちらに戻って来た。
「海賊船が接近していると聞いた時は運がないと思ったが、Aランクの冒険者が乗っているなんて、まだ神に見捨てられていなかったようだな」
相手が僕と顔を合わせた途端、神様に祈り出したので、僕は微妙な気持ちになった。
「えっと……」
「ああ、すまんな。俺はガイウス。護衛のリーダーを務めている」
「タクミです。見えないってよく言われますが、Aランクの冒険者です」
「ははは~、確かに見えんな。だが、この状況で嘘は言わないだろうから、信じるさ。でだ、魔法で海賊船に穴を開けるって? 本当にできるのか?」
とりあえず軽く名乗り合ってから、僕達はすぐに本題に入る。
「えっと、あの船が鉄鉱石やオリハルコンより硬いっていうなら無理だと思うので、この作戦は聞かなかったことにしてください」
「そんな重いもので船なんか造ったら沈むわ! 船と言えば、普通は木製だよ!」
「じゃあ、問題ないと思いますね。念のために聞きますが、もし失敗した場合、不利な状況になりますか?」
「多少、相手方が警戒するだろうが、そもそも全力で襲ってくるのは間違いないから、正直、駄目もとでも問題ないな」
問題ないのであれば、試すだけ試してもいいな。
「あ、もう一ついいですか?」
「ああ、何だ?」
「そもそも、逃げ切ることはできないんですか?」
「無理だな。この船は積載量を重視した造りだから、船足は遅めだ。逆に、あの船は船足を重視しているようだし」
ああ、そういえば、この船は船足が遅めだって、船の予約をした時に言っていたな~。
ということは、やっぱり戦闘になる確率のほうが高いのか。
であれば、と僕は重要なことを尋ねる。
「沈める気でいいんですね?」
「ああ、構わない。捕縛は二の次、乗客と船の安全が第一だ。まあ、海賊の船長だけは兵に引き渡したいから、捕縛あるいは死体の確保はしたいってところだが……それも気にするな! 全力で行ってくれ!」
「了解です」
ガイウスさんの許可を得たので、僕は海賊船が狙える場所に陣取り、船が近づいて来るのを待つ。
「「もうちょっと?」」
「そうだね」
僕の隣にはもちろん、アレンとエレナがいる。
護衛や冒険者達は、こんなところに子供がいていいのかとボソボソと話しているが、聞こえない振りをしておいた。子供達に船室に戻っていろと言っても無駄だしな。
「「そろそろ?」」
「そうだね。そろそろ届くかな?」
魔法の射程範囲に海賊船が入った。
エヴァンさんとスコットさんも近くにいて、僕の呟きを聞いて首を傾げている。
「もう届くのか?」
「届きますね」
「この距離で撃つよりはもう少し近いほうが、威力が上がって確実に穴を開けられるのではないですか?」
しかし僕は首を横に振った。
「それはそうですけど……それだと、無傷で海に落ちた海賊がこっちまで泳いで辿り着きませんか?」
「無傷だったとしても、泳いで、さらにこの船をよじ登った後なら、問題ありません。捕縛できて都合がいいですよ」
「あ、そうか」
じゃあ、遠慮なくもう少し近づいてから攻撃を――
「「《ウォータージェット》!」」
「あっ!」
そう思っていると、子供達が先に魔法を放ってしまった。
当初の作戦通り――ドコーンッ……と大きな破壊音をたてて海賊船に穴が開いたが、こちらにいる人達が唖然としていた。
「「あいたよー!」」
船の穴を見て、アレンとエレナは嬉しそうだ。
「……うん、そうだね~。でも、穴を開ける位置がちょっと上過ぎたかな。まあ、それで良かったけどさ!」
子供達の魔法は船首に穴を開けたのだが、少し高かったため海水が入らない位置だった。
なので、船は沈没せず、海賊達も無傷っぽいので僕はひと安心した。
「アレン、エレナ、勝手に魔法を撃ったら駄目だよ」
「「なんでー? あける、いってた!」」
とりあえず勝手なことをしたのを軽く注意してみたら、子供達は不満そうにする。
「うん、そうだね。でも、それは僕の仕事だよ。アレンとエレナじゃないでしょう!」
「「えぇ~。えっとね、あれ!」」
「はやいもの」
「がち?」
そして、あろうことか〝早い者勝ち〟だと言い出した。だから、どこでそういう言葉を覚えてくるんだよ~。
「いい? あの船に乗っているのは悪い人達とはいえ、人なんだよ。そして、二人の今の魔法は人の命を奪う可能性があった。わかる?」
「「……うん」」
僕は屈んで二人に視線を合わせると、二人がやったことを理解させるべく真剣に伝える。
「お兄ちゃんは二人には人の命を奪うことはして欲しくない。もし、奪うことになりそうでも、お兄ちゃんは最後まで奪わなくて済むように動くし、奪うしか選択肢がなかったとしても……それはお兄ちゃんの仕事だ」
「「うぅ~……」」
僕は相手が悪党であってもできるだけ人の命を奪う行為はしたくないとは思う。だが、やはり自分や子供達、知り合いなどが危ないのであれば……躊躇うことはしたくない。
「アレンとエレナは良い子で賢い子だから、わかるよね?」
アレンとエレナは泣きそうな顔をしながらもしっかりと頷いた。
「じゃあ、約束な。人に向かって魔法は使わない。いいね?」
「「……うん」」
アレンとエレナが納得してくれたので、そういえば海賊船はどうなったかと周囲を見渡してみる。
「……あれ? 止まってる?」
すると、船は何故か止まっていた。
子供達の魔法にいきり立ったらそのまま突進してくるだろうし、怖気づいたのなら逃げるだろう。なのに、停止? 一体どういうことだろう?
「あの船って何で止まっているんですか?」
「動力源である魔石が壊れたのかもな」
「魔石って船首にあるものなんですか?」
「いや、その船によって様々だな。船首だったり船尾だったり、船底や船長室っていうこともある」
「へぇ~」
僕の疑問に、ガイウスさんが答えてくれる。
魔石の設置場所って固定されていないのか。船を動かすための魔石はかなりランクが高いって聞いているし、盗難対策ということかな?
「それで、海賊達はまったく動かないんですか?」
「こちらを襲うのも無理。船を捨てて逃げようにも陸はまだまだ先だし、海にだって魔物はいる。手詰まりなんだろうな。命が惜しかったら投降してくるんじゃないか?」
海賊の動向を確認するために、全速で動いていたこちらの船も止め、しばらく待つことになったのだが――
「……動かないな」
少しの間待ったものの、海賊達に動きはなかった。
「このまま放置して……国に任せましょうか?」
埒が明かないので、ガイウスさんに提案してみる。
このまま僕達はセルディーク国へ向い、国に報告して兵に捕縛に向かってもらうとか? まあ、その場合、海賊は逃げて減っているかもしれないが、船は回収できるだろう。
「……悩むな」
ガイウスさんは唸りながら悩みだした。
「じゃあ、捕まえに……こっちから乗り込みますか」
「いや、無理だろう。相手の戦力は減っていないんだぞ」
「タクミさん、捕まえるって言っても、どうやってあっちの船に行くのですか? さすがにこちらの船はあまり近づけられませんよ?」
「やっぱり泳いでいくしかないんじゃないですか? この距離なら問題ないですよ」
エヴァンさんとスコットさんには反対されたが、僕は《無限収納》から水中でも呼吸ができるようになる魔道具、人魚の腕輪を取り出して身につけ、泳ぐ準備を始める。
ガイウスさんが悩んだまま結論が出なかったので、勝手に行動することにした。
「それ、人魚の腕輪か! 良いものを持っているな!」
「これならこっそり近づけますからね。人魚の腕輪はまだありますけど、どうします? エヴァンさんとスコットさんも同行してくれますか?」
「仕方がないな~。付き合うよ」
「そうですね。タクミさんだけよりは、私達も行ったほうがいいでしょう」
そして、エヴァンさんとスコットさんを誘ってみれば、二人ともあっさりと乗ってくれた。
「……アレンはー?」
「……エレナはー?」
子供達も行きたそうだが、先ほど注意したからか遠慮がちに聞いてくる。
「アレンとエレナはお留守番だね」
「「えぇ~」」
「二人にはここからやって欲しいことがあるんだ」
「「なーに?」」
こてん、と首を傾げる二人。
「牽制をお願いできる?」
「「けんせい?」」
「僕達があっちの船まで行くのを邪魔されないようにするお仕事」
「「おしごとする!」」
仕事と言うとやる気を見せてくれたので、子供達には船に残ってやることを説明する。
「「《ウォーターピラー》」」
海賊船の周りに海から水の柱を発生させてもらうのだ。もちろん、船には当たらないようにね。
「うん、そうそう。良い感じ! それを僕が泳いでいる間、適当にやり続けられそう?」
「「うん、できる!」」
これで海賊は、この船に魔法師が乗っていると勘違いし、その動きや水柱に目を向けるだろう。
「船の正面真っ直ぐは僕達が泳いでいるから、そこは避けて船の両端辺りを中心にお願いな」
「「わかったー」」
「くれぐれも船には当てないように。あとは後ろのほうも避けてな」
「「うん!」」
再度、注意事項を確認すれば、子供達はしっかりと頷く。これで準備万端。
「海中をこっそり移動して船尾から登れば、気づかれずに行けるでしょう」
「そうだな」
そこまで決めたところで、結論を出せずにいたガイウスさんもさすがに納得してくれたようなので、僕はもう少し人員を募集することにした。
とはいえ、さすがにこの船をがら空きにするわけにはいかないので、商会の護衛達にはそのまま船を任せ、追加で雇われていたエヴァンさん達冒険者五名と行くことにした。
「じゃあ、行きますか」
僕達は海賊船から死角になるほうから海に飛び込み、泳いでいく。そしてあっさりと、狙い通り誰にも気づかれずに海賊船に侵入することができた。
最初は隠密行動。海賊達は僕達の乗っていた船や海を呆然と眺めていたので、素早く静かに気絶させていく。そして、人数が減ったところで戦闘開始だ。
少し乱戦となったが、こちらの戦力には大きな怪我はなく、海賊達を制圧したのだった。
第二章 セルディーク国を観光しよう。
「「ついたー!」」
「やっぱり、ちょっとだけ暖かいな」
僕達は、セルディーク国のビルドの街に到着した。
昼に到着予定だったが、海賊騒動で夕方になってしまったけど……まあ、許容範囲だろう。
「「おにぃちゃん、おにぃちゃん」」
「ん? どうした?」
「かわった」
「おようふく~」
「あ、本当だな」
この国には、長袍というのだろうか? チャイナ服のような衣装を着ている人がかなりいる。
しかも、右袖は半袖か袖なしだが、左袖はひらひらとした長袖という変わった作りの服だ。
ガディア国、アルゴ国、クレタ国では見たことがないので、セルディーク国特有の衣装なのだろうか? ナナの実――バナナや、カヒィ豆――コーヒー豆の産地なので、南国や中南米をイメージしていたんだけどな~。
「タクミ、こっちで事情を聴きたいって」
「はーい」
町の様子を眺めていると、捕縛した海賊達を兵に引き渡していたエヴァンさんに呼ばれた。
どうやら、僕からも話を聴きたいらしい。まあ、ほぼ僕が勝手に行動した感じだし、海賊船も《無限収納》に収納して運んできたからな~。当然のことだろう。
「あ、でも、先に宿を探したいんですけど……駄目ですかね?」
事情聴取はいいのだが、暗くなる前に宿だけは確保しておきたいと伝える。
「駄目というか、商会の人間がもう手配に走っているってさ」
「それは、エヴァンさん達護衛のじゃないんですか?」
「何を言っているんだ。船の危機を救った恩人の部屋を用意しないわけがないじゃないか。きっと良い部屋を用意してくれると思うぞ」
「良い部屋かどうかはともかく、確保してくれるなら安心ですね」
宿の心配はなくなったので、僕達は港にある兵士の詰め所へ移動する。
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