25 / 40
準備期間です。
25.もういらないです
しおりを挟む
私はヒューリーに抱えられ、カイル=スピネルとともにお店を出た。
カイルは蔦でグルグル巻きにされて、ヒューリーによって引きずられているけどね。
いや~、精霊が人を引きずっている光景に、通行人は誰もが唖然としていたね~。
唖然としたのは私もで、お蔭で涙はぴたりと止まったよ。
この状況をどうにかしたくても、ヒューリーの様子が尋常じゃなかったので、されるがままに運ばれることにした。
後ろから追いかけてきた兄や護衛達が顔を引きつらせていたのを見て、状況は思っていた以上に最悪だと悟ったのでね。
でも、私がヒューリーにやらせていると思われるのが嫌で、ヒューリーの首に抱きついて顔を伏せた。
涙は既に止まっちゃってるからね。
これなら、引きずられている人物が私に何かして、精霊の逆鱗に触れたと思われると思うんだ。
城でも精霊のすることを止める人はいなかったので、ヒューリーはそのまま堂々と城内を闊歩していた。
まあ、城は私達のことを知っている人も多いから、逆に止めないわな。
王様の執務室に着くと、状況を見た王様が即座に人払いをして父を呼び出した。
で、集まった人達が私に事情を聞いてきたが、私は黙りを決め込んだ。
「……」
その間、ヒューリーの怒気もビシバシ。
王様の顔から物凄い冷や汗が流れていた。
「フレッド、バード、何があったんだ?」
埒が明かなく、父は今日一緒にいたフレッド兄とバード兄に説明を求めた。
すると、フレッド兄とバード兄は今日あったことを順を追って説明した。
「「「「「…………」」」」」
説明を聞いた執務室内にいた大人達は全員絶句している。
まあ、もう少しでヒューリーが暴れるところだったと聞かされればそうなるだろう。
さらに今日のことだけではなく、普段の様子についてもヒューリーが説明していた。
「「「「「…………」」」」」
さらに絶句。
あ、父以外の大人――王様と騎士団長さんと王様の侍従さん、それにアスターの顔色がさらに青くなっている。
「あ~、私でも気が滅入りそうな護衛だ。逆に今までリアが我慢していたのが偉いと思うぞ」
「「……」」
王様と騎士団長さんの顔が絶望的な表情に。
何だが気の毒になってくるほどの表情である。
「しかし、何だってそんな状態になったんだ? エルントスやレオニールが選んだくらいだから、彼は護衛としては優秀なのだろう? 私も噂程度には知ってはいるが……確か、真面目な人物だったはずだ。少々融通が利かないとは聞くが、実力で近衛になったんだろう?」
そうか。
父が噂で聞くくらいには、カイルは夢の通りの人物なのか。
「……」
「……エルントス、原因がわかっているって顔をしているぞ。これ以上、悪くなりようにない状況なんだ。正直に話せ」
「……と」
「なんだ?」
「常に側に身を置き、怪しいものは一切近づけず、場合によっては排除しろと……」
「そう命令したのか?」
「……」
「お前は……」
どうやらカイルの態度は、王様の命令を忠実に守っていた結果だったようだ。
まあ、だからといって彼の態度が許せるわけではないけどね。
「カイル=スピネルの性格を考えたらその命令はないだろう……」
父がぽつりと零した。
父よ、私もそう思うわ。
臨機応変に動ける騎士相手への命令ならありかもしれないが、カイル相手には間違ってもしちゃいけない命令内容だと思う。
だって、本当にその命令通りに遂行する人物なのだから。
父は頭が痛いのか、こめかみを揉み込んでいた。
「し、至急、別の護衛の選定を――」
「いらない! もう護衛なんていらないからっ!!」
おい、ちょっと待てっ!
私は王様の言葉を遮り、自分の意思を主張した。
もう、護衛なんて面倒なんでいらないやい!
「しかし……」
「やだっ!」
「あーあ、これは完全にトラウマになっているな~」
私の頑なな拒否に、父は仕方がないという感じだ。
このまま押し切れば、護衛は外してくれるかなー、と思っていたら――
《なーに騒いでんだー?》
誘拐された時に手助けしてくれた風の精霊さんが現れた。
カイルは蔦でグルグル巻きにされて、ヒューリーによって引きずられているけどね。
いや~、精霊が人を引きずっている光景に、通行人は誰もが唖然としていたね~。
唖然としたのは私もで、お蔭で涙はぴたりと止まったよ。
この状況をどうにかしたくても、ヒューリーの様子が尋常じゃなかったので、されるがままに運ばれることにした。
後ろから追いかけてきた兄や護衛達が顔を引きつらせていたのを見て、状況は思っていた以上に最悪だと悟ったのでね。
でも、私がヒューリーにやらせていると思われるのが嫌で、ヒューリーの首に抱きついて顔を伏せた。
涙は既に止まっちゃってるからね。
これなら、引きずられている人物が私に何かして、精霊の逆鱗に触れたと思われると思うんだ。
城でも精霊のすることを止める人はいなかったので、ヒューリーはそのまま堂々と城内を闊歩していた。
まあ、城は私達のことを知っている人も多いから、逆に止めないわな。
王様の執務室に着くと、状況を見た王様が即座に人払いをして父を呼び出した。
で、集まった人達が私に事情を聞いてきたが、私は黙りを決め込んだ。
「……」
その間、ヒューリーの怒気もビシバシ。
王様の顔から物凄い冷や汗が流れていた。
「フレッド、バード、何があったんだ?」
埒が明かなく、父は今日一緒にいたフレッド兄とバード兄に説明を求めた。
すると、フレッド兄とバード兄は今日あったことを順を追って説明した。
「「「「「…………」」」」」
説明を聞いた執務室内にいた大人達は全員絶句している。
まあ、もう少しでヒューリーが暴れるところだったと聞かされればそうなるだろう。
さらに今日のことだけではなく、普段の様子についてもヒューリーが説明していた。
「「「「「…………」」」」」
さらに絶句。
あ、父以外の大人――王様と騎士団長さんと王様の侍従さん、それにアスターの顔色がさらに青くなっている。
「あ~、私でも気が滅入りそうな護衛だ。逆に今までリアが我慢していたのが偉いと思うぞ」
「「……」」
王様と騎士団長さんの顔が絶望的な表情に。
何だが気の毒になってくるほどの表情である。
「しかし、何だってそんな状態になったんだ? エルントスやレオニールが選んだくらいだから、彼は護衛としては優秀なのだろう? 私も噂程度には知ってはいるが……確か、真面目な人物だったはずだ。少々融通が利かないとは聞くが、実力で近衛になったんだろう?」
そうか。
父が噂で聞くくらいには、カイルは夢の通りの人物なのか。
「……」
「……エルントス、原因がわかっているって顔をしているぞ。これ以上、悪くなりようにない状況なんだ。正直に話せ」
「……と」
「なんだ?」
「常に側に身を置き、怪しいものは一切近づけず、場合によっては排除しろと……」
「そう命令したのか?」
「……」
「お前は……」
どうやらカイルの態度は、王様の命令を忠実に守っていた結果だったようだ。
まあ、だからといって彼の態度が許せるわけではないけどね。
「カイル=スピネルの性格を考えたらその命令はないだろう……」
父がぽつりと零した。
父よ、私もそう思うわ。
臨機応変に動ける騎士相手への命令ならありかもしれないが、カイル相手には間違ってもしちゃいけない命令内容だと思う。
だって、本当にその命令通りに遂行する人物なのだから。
父は頭が痛いのか、こめかみを揉み込んでいた。
「し、至急、別の護衛の選定を――」
「いらない! もう護衛なんていらないからっ!!」
おい、ちょっと待てっ!
私は王様の言葉を遮り、自分の意思を主張した。
もう、護衛なんて面倒なんでいらないやい!
「しかし……」
「やだっ!」
「あーあ、これは完全にトラウマになっているな~」
私の頑なな拒否に、父は仕方がないという感じだ。
このまま押し切れば、護衛は外してくれるかなー、と思っていたら――
《なーに騒いでんだー?》
誘拐された時に手助けしてくれた風の精霊さんが現れた。
12
お気に入りに追加
3,716
あなたにおすすめの小説

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

気絶した婚約者を置き去りにする男の踏み台になんてならない!
ひづき
恋愛
ヒロインにタックルされて気絶した。しかも婚約者は気絶した私を放置してヒロインと共に去りやがった。
え、コイツらを幸せにする為に私が悪役令嬢!?やってられるか!!
それより気絶した私を運んでくれた恩人は誰だろう?

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる