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準備期間です。
9.差し入れをしましょう
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――コンコンコンッ。
私は城にある宰相の執務室の扉をノックした。
「ヴィクトリア様っ!?」
父の従者であるアスターが扉を開け、私がいることに驚いていた。
アスターは黒髪をぴしっと撫でつけた精悍な男性だ。
確か父と同じ年のはずだが、父が若く見えるため、アスターの方が少し年上に見えるんだ。
「アスター。お父様はいますかー?」
「ええ、いらっしゃいますよ。どうぞお入り下さい」
アスターは小さな私にもしっかりと丁寧な対応をしてくれる。
優しいうえに真面目で、見目だって良いほうだと思うのに未だに独身。
結婚願望はあるようだが、モテないと嘆いていたのを聞いたことがある。
結構タイプなんだが、今の私にはちょっと年の差がな~。
残念だ。
「お父様ー」
「リアっ!?」
執務室へと入って父に声を掛けると、父が驚いて手に持っていた書類を落とした。
予告なしで来たのだけど、そこまで驚くことか?
城に来るまでは家の馬車に乗って来たし、城の入り口からここまでは案内がいたから迷うこともなく、ここまで普通に来られたけど?
「どうしたんだい? 寂しかったのかい?」
父は直ぐに私のところまで来ると、私を抱き上げた。
頬ずりのおまけ付き。
父は相変わらずだ。
「あのねー。お父様のためにジュースを持ってきたのー」
私は肩から提げた白いポシェットから、瓶に入ったジュースを取り出しました。
実はこのポシェット、中が拡張された魔法の鞄なんです!
しかも中に入れたもの品質が維持できるという優れものなんです!
魔法の鞄は精霊の中でも、稀少と言われる時の精霊さんが魔法を掛けた鞄なんです。
正確には時空の精霊――時間と空間を司る精霊さんですね。
ヒューリーとミリアが知り合いの時の精霊さんに頼んで作ってもらったの。
この鞄一つで、王都に邸が持てるほどの値段はするそうです。
それはポンッ、と作ってくれるなんて凄いですねぇ~。
「あのねー、これを飲むと疲れが取れるのよー」
さぁ、父よ!
私の愛が詰まった疲労回復ドリンクを受けってくれー。
「ありがとう、リア。じゃあ、頂くよ」
父はそれを受け取ると、アスターが用意してくれたカップに注ぎ、さっそく飲んでくれました。
「美味しいよ、リア………んっ!!!!?」
父の動きが不自然のまま止まった。
どうした?
試飲はしたから、不味いものじゃないことはわかっている。
父よ、その反応は何だっ!?
「ヴィクター様、どうなされましたか?」
「疲れが……」
「はい?」
「…………疲れが取れた」
「んん?」
「疲れからくる倦怠感とか、頭痛や肩こりが無くなったっ!」
「!!!?」
ああ、回復の効果に驚いていたようだ。
自分では実感できなかったのだが、ちゃんと効果があったようだ。
さすがヒューリーのお薦めの特製ドリンクだ。
それにしても………倦怠感に頭痛に肩こり?
父よ、相当疲れていたんだな……。
そこまで酷かっただなんて思いもしなかったよ。
道理で顔色が悪かったわけだ……。
「アスター、お前も飲んでみろ。リア、構わないだろ?」
「うん、いいよ!」
父がこれだけ疲れているのなら、常に同行しているアスターだって疲れているだろうしね。
ああ、それは父が飲みきって!
アスターにはこっちをあげるから。
ポシェットからドリンクをもう一本取りだして、アスターに渡した。
いや~、何本か作っておいて良かった~。
「では、失礼します……………っ!!!」
さっそくアスターも特製ドリンクを飲んでみると、普段、あまり表情を動かさないアスターが目を見開いて固まっていた。
「どうだ、アスター?」
「………体がすっきりしております」
おお!
アスターにも効いたようだ。
父の親バカ振りが発揮されて、疲れが取れたと感じただけではないことが証明された。
「リア、この飲み物はどうしたんだい?」
よくぞ、聞いてくれましたっ!
「それね! リアが作ったのー」
「「なっ!!!?」」
あれ?
父とアスターが目を見開いて固まった……。
何でぇ!?
私は城にある宰相の執務室の扉をノックした。
「ヴィクトリア様っ!?」
父の従者であるアスターが扉を開け、私がいることに驚いていた。
アスターは黒髪をぴしっと撫でつけた精悍な男性だ。
確か父と同じ年のはずだが、父が若く見えるため、アスターの方が少し年上に見えるんだ。
「アスター。お父様はいますかー?」
「ええ、いらっしゃいますよ。どうぞお入り下さい」
アスターは小さな私にもしっかりと丁寧な対応をしてくれる。
優しいうえに真面目で、見目だって良いほうだと思うのに未だに独身。
結婚願望はあるようだが、モテないと嘆いていたのを聞いたことがある。
結構タイプなんだが、今の私にはちょっと年の差がな~。
残念だ。
「お父様ー」
「リアっ!?」
執務室へと入って父に声を掛けると、父が驚いて手に持っていた書類を落とした。
予告なしで来たのだけど、そこまで驚くことか?
城に来るまでは家の馬車に乗って来たし、城の入り口からここまでは案内がいたから迷うこともなく、ここまで普通に来られたけど?
「どうしたんだい? 寂しかったのかい?」
父は直ぐに私のところまで来ると、私を抱き上げた。
頬ずりのおまけ付き。
父は相変わらずだ。
「あのねー。お父様のためにジュースを持ってきたのー」
私は肩から提げた白いポシェットから、瓶に入ったジュースを取り出しました。
実はこのポシェット、中が拡張された魔法の鞄なんです!
しかも中に入れたもの品質が維持できるという優れものなんです!
魔法の鞄は精霊の中でも、稀少と言われる時の精霊さんが魔法を掛けた鞄なんです。
正確には時空の精霊――時間と空間を司る精霊さんですね。
ヒューリーとミリアが知り合いの時の精霊さんに頼んで作ってもらったの。
この鞄一つで、王都に邸が持てるほどの値段はするそうです。
それはポンッ、と作ってくれるなんて凄いですねぇ~。
「あのねー、これを飲むと疲れが取れるのよー」
さぁ、父よ!
私の愛が詰まった疲労回復ドリンクを受けってくれー。
「ありがとう、リア。じゃあ、頂くよ」
父はそれを受け取ると、アスターが用意してくれたカップに注ぎ、さっそく飲んでくれました。
「美味しいよ、リア………んっ!!!!?」
父の動きが不自然のまま止まった。
どうした?
試飲はしたから、不味いものじゃないことはわかっている。
父よ、その反応は何だっ!?
「ヴィクター様、どうなされましたか?」
「疲れが……」
「はい?」
「…………疲れが取れた」
「んん?」
「疲れからくる倦怠感とか、頭痛や肩こりが無くなったっ!」
「!!!?」
ああ、回復の効果に驚いていたようだ。
自分では実感できなかったのだが、ちゃんと効果があったようだ。
さすがヒューリーのお薦めの特製ドリンクだ。
それにしても………倦怠感に頭痛に肩こり?
父よ、相当疲れていたんだな……。
そこまで酷かっただなんて思いもしなかったよ。
道理で顔色が悪かったわけだ……。
「アスター、お前も飲んでみろ。リア、構わないだろ?」
「うん、いいよ!」
父がこれだけ疲れているのなら、常に同行しているアスターだって疲れているだろうしね。
ああ、それは父が飲みきって!
アスターにはこっちをあげるから。
ポシェットからドリンクをもう一本取りだして、アスターに渡した。
いや~、何本か作っておいて良かった~。
「では、失礼します……………っ!!!」
さっそくアスターも特製ドリンクを飲んでみると、普段、あまり表情を動かさないアスターが目を見開いて固まっていた。
「どうだ、アスター?」
「………体がすっきりしております」
おお!
アスターにも効いたようだ。
父の親バカ振りが発揮されて、疲れが取れたと感じただけではないことが証明された。
「リア、この飲み物はどうしたんだい?」
よくぞ、聞いてくれましたっ!
「それね! リアが作ったのー」
「「なっ!!!?」」
あれ?
父とアスターが目を見開いて固まった……。
何でぇ!?
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