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準備期間です。
32.王子が遊びに来ました
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ジルベールが私の契約精霊になってから数日。
いつもの日常が戻り、今日も今日とて私はヒューリーと温室で薬草の手入れを行っていた。
「あ、お兄様お帰りなさ――」
温室から邸の中に戻ろうとした時、学園帰りの兄・ヴィルフリードが馬車から降りてくるところを見掛けた。
私はすぐさま兄に駆け寄って抱きつこうとした。
しかし、馬車から降りてくるもう一人の人影が目に入り、ぴたりと足を止める。
「ああ、ヴィクトリア嬢、お邪魔しますね」
なんと、兄に続いて馬車から降りてきたのは、この国の第一王子であるサイラス様だった。
ご存知だと思うが、攻略対象者の一人である。
ヒューリーと契約したことにより、王子達との婚約の危機は免れたものの、私を取り込みたいと思っている国の中枢部の思惑を遠ざけるために、私は王子達とはあまり関わらないように過ごしていた。
それなのに――
「……ようこそお越しくださいました、サイラス殿下」
「初対面ではないけでど、こうして話すのは初めてだね」
こうしてサイラス王子と対面するのは、初めて王様に謁見した時以来である。
まあ、あの時に王子達とは会話らしい会話をほとんどしていなかったけどね。
兄と学友でもあるサイラス王子が、うちに来ることもあるかもしれないとは思っていたが、その時は部屋や温室に引き籠もろうと思っていたのに……。
先触れがなく、長兄と一緒に学園帰りに来るとは予想外だった。
逃げ場がなくなったも当然である。
「リア、ただいまー。サイラス様のことは放って置いていいから、私にお帰りのハグをして」
私も王族に対して失礼と思われる態度だと思ったが、兄も大概だね……。
王子がいても通常運転で抱きしめられました~。
「噂は耳にしていたが、それ以上の溺愛振りだな~」
だが、サイラス王子は兄の行動に動揺は見せず、逆に感心するような素振りであった。
しかし、王子の台詞に聞き逃せないものがあった。
「お兄様、噂ってなんですか?」
そう、噂。
王子は噂は耳にしていたと言っていたのだ。
「ああ、それはね。フリードがどうしようもないほどのシスコンだっていうものだよ」
「……ぇ?」
何それ、何それ、何それぇーーー!
兄に聞いたのだけど、王子からまさかと思われることを教えられた。
いや、兄達がシスコンか、シスコンじゃないかと言ったら、間違いなくシスコンだと思うさ!
かなり溺愛されているのがわかるからね!
もちろん、私もブラコンだ!
だが、それが邸内の使用人ならともかく、それ以外で噂として言われているだって!?
そんな噂があるだなんて、まったくもって知らなかったよぉ~。
「お兄様……そんな噂があるって本当ですか?」
「そうだね~。でも、私がリアのことが大好きなのは本当のことだしね~」
「……」
ちっとも恥ずかしく思っていない、だと!?
兄にとって、噂の内容は真実以外の何ものでもないので、気にも留めていなかった感じである。
いやいやいや、真実であっても不特定多数の人達に噂されるって恥ずかしいよね?
私の感覚がおかしいのかな~?
いや、おかしくないよね?
うぅ~~~、これはどう対処したもんか……。
「まあまあ、リア。とりあえず、中に入ってお茶にしようか」
はっ!
そういえば、王子を玄関先で立ち止まらせてしまっていたよぉ!
「殿下、引き留めてしまい申し訳ございません。私はこれにて失礼いたしますが、ごゆるりとお過ごしください」
「おや? 行ってしまうのかい? ヴィクトリア嬢も一緒にどうだい?」
「……え?」
……逃げようと思ったのに、引き留められてしまった。
これって断ったら失礼になるのかな?
できれば断りたい。
できれば、というより絶対に断りたい!
「そうだね、リア。私と一緒にお茶しよう?」
いやいや、兄よ、そこで王子に賛同しないでおくれ!
いつも私の思いを的確に読んでくれるというのに、どうして今日に限ってそれが発揮されていないんだ!?
「サイラス様、中へどうぞ。さあ、リアも行こう」
兄は王子を邸の中に促しつつ、私の手をガッチリ繋いで歩き始めた。
ブラコンである私が、兄の手を振りほどくなどできるはずもなく……結局、一緒にお茶をすることになった。
いつもの日常が戻り、今日も今日とて私はヒューリーと温室で薬草の手入れを行っていた。
「あ、お兄様お帰りなさ――」
温室から邸の中に戻ろうとした時、学園帰りの兄・ヴィルフリードが馬車から降りてくるところを見掛けた。
私はすぐさま兄に駆け寄って抱きつこうとした。
しかし、馬車から降りてくるもう一人の人影が目に入り、ぴたりと足を止める。
「ああ、ヴィクトリア嬢、お邪魔しますね」
なんと、兄に続いて馬車から降りてきたのは、この国の第一王子であるサイラス様だった。
ご存知だと思うが、攻略対象者の一人である。
ヒューリーと契約したことにより、王子達との婚約の危機は免れたものの、私を取り込みたいと思っている国の中枢部の思惑を遠ざけるために、私は王子達とはあまり関わらないように過ごしていた。
それなのに――
「……ようこそお越しくださいました、サイラス殿下」
「初対面ではないけでど、こうして話すのは初めてだね」
こうしてサイラス王子と対面するのは、初めて王様に謁見した時以来である。
まあ、あの時に王子達とは会話らしい会話をほとんどしていなかったけどね。
兄と学友でもあるサイラス王子が、うちに来ることもあるかもしれないとは思っていたが、その時は部屋や温室に引き籠もろうと思っていたのに……。
先触れがなく、長兄と一緒に学園帰りに来るとは予想外だった。
逃げ場がなくなったも当然である。
「リア、ただいまー。サイラス様のことは放って置いていいから、私にお帰りのハグをして」
私も王族に対して失礼と思われる態度だと思ったが、兄も大概だね……。
王子がいても通常運転で抱きしめられました~。
「噂は耳にしていたが、それ以上の溺愛振りだな~」
だが、サイラス王子は兄の行動に動揺は見せず、逆に感心するような素振りであった。
しかし、王子の台詞に聞き逃せないものがあった。
「お兄様、噂ってなんですか?」
そう、噂。
王子は噂は耳にしていたと言っていたのだ。
「ああ、それはね。フリードがどうしようもないほどのシスコンだっていうものだよ」
「……ぇ?」
何それ、何それ、何それぇーーー!
兄に聞いたのだけど、王子からまさかと思われることを教えられた。
いや、兄達がシスコンか、シスコンじゃないかと言ったら、間違いなくシスコンだと思うさ!
かなり溺愛されているのがわかるからね!
もちろん、私もブラコンだ!
だが、それが邸内の使用人ならともかく、それ以外で噂として言われているだって!?
そんな噂があるだなんて、まったくもって知らなかったよぉ~。
「お兄様……そんな噂があるって本当ですか?」
「そうだね~。でも、私がリアのことが大好きなのは本当のことだしね~」
「……」
ちっとも恥ずかしく思っていない、だと!?
兄にとって、噂の内容は真実以外の何ものでもないので、気にも留めていなかった感じである。
いやいやいや、真実であっても不特定多数の人達に噂されるって恥ずかしいよね?
私の感覚がおかしいのかな~?
いや、おかしくないよね?
うぅ~~~、これはどう対処したもんか……。
「まあまあ、リア。とりあえず、中に入ってお茶にしようか」
はっ!
そういえば、王子を玄関先で立ち止まらせてしまっていたよぉ!
「殿下、引き留めてしまい申し訳ございません。私はこれにて失礼いたしますが、ごゆるりとお過ごしください」
「おや? 行ってしまうのかい? ヴィクトリア嬢も一緒にどうだい?」
「……え?」
……逃げようと思ったのに、引き留められてしまった。
これって断ったら失礼になるのかな?
できれば断りたい。
できれば、というより絶対に断りたい!
「そうだね、リア。私と一緒にお茶しよう?」
いやいや、兄よ、そこで王子に賛同しないでおくれ!
いつも私の思いを的確に読んでくれるというのに、どうして今日に限ってそれが発揮されていないんだ!?
「サイラス様、中へどうぞ。さあ、リアも行こう」
兄は王子を邸の中に促しつつ、私の手をガッチリ繋いで歩き始めた。
ブラコンである私が、兄の手を振りほどくなどできるはずもなく……結局、一緒にお茶をすることになった。
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