31 / 40
準備期間です。
31.大人達の話し合い(ジルベール)
しおりを挟む
私は仲間から変わり者の精霊と言われている。
一国の騎士団に所属して、人間に紛れて生活をしているだなんて、精霊からすれば相当な奇行な行為なのだから仕方がない。
だが、それもこれも、私が昔、契約していた主の影響が大きい。
私の主はとても変わり者だった。
面白いことが大好きで、人生を面白おかしく過ごせるためだったら、どんな努力でも行う男だった。
その努力を別のことに使えば、誰もが認める人物になれただろうに。
私が騎士として過ごすことを覚えたのも、彼が言い出したのがきっかけだ。
言い出すだけならまだしも、彼は実行するだけの地位と行動力を持ち合わせていた。
そういうことに全力を注ぐ、そういう男だったからこそ目が離せなかったのだろう。
主が亡くなった後も、私は何となく騎士に紛れて時を過ごしていた。
その時、顔見知りの風の精霊がやって来た。
自由気ままだった彼が人間と契約したことにも驚いたが、私もその契約者と契約を交わさないかと勧誘に来たことに驚いた。
とりあえず、会ってみることにした。
自由気ままな彼が契約した人間に会ってみたかったからだ。
契約者は、ヴィクトリアという名前の可愛い女の子だった。
ヴィクトリア――リアの第一印象は〝素直そうな子〟だった。
彼女は既に三人の精霊と契約を交わしていて、それも全員が上級精霊だった。
かなり珍しいことをしているのに驕った感じはなかった。
普通なら人間が精霊に執着するものだが、リアはそんな感じは全くなく、逆に精霊達のほうがこれでもかと執着していた。
見ていて面白い子だった。
そして、この子も目が離せなかった。
だからこそ、私は二度目の契約をすることにした。
「さて、今後について少し話しましょうか」
リアが部屋から出ていくと、私はこの国の王、リアの父親、そして騎士団長を見据えた。
「あなた達はリアに誰の目にも見える護衛をつけたいのではないですか? 精霊が側にいるとはいえ、姿が見えなければ少女が一人で出歩いていると勘違いされますからね」
「「「……」」」
戦力は充分でも、それが目に映っていなければリアが無防備だと思われてしまいます。
ちゃんとした護衛が付いている、そう周りに思わせたい。
カイルの役目は実際にリアを護ることだったのではなく、国から派遣された騎士が常に側にいると周りに牽制したかったのでしょう。
あとはまあ、精霊除けを遣われた場合、側に人がいるといないではリアの安全性が大幅に変わってくる。
そんなにたびたび起こってもらっては困りますが、リアは確か以前にそうやって誘拐されていると噂で聞いた。
ですから、保険は掛けておきたいのでしょう。
だけど――
「私が来る前に何があったのかは知りませんが、状況を見る限りカイルが何かをして、リア、もしくは契約精霊の勘気に触れたのでしょう?」
「「「っ!」」」
図星を指されたようで、息を呑む三人の姿に笑いが込み上げてくる。
様子からして、緑の精霊――確か……ヒューリーと呼ばれていましたね。
きっと、彼の勘気に触れたのでしょう。
風の精霊は私がここに来る少し前に契約したようですし、光の精霊はどちらかといえばリアを喜ばせることに力を注いでいましたからね。
「ですが、契約精霊が二人増えたとしても、このまま国から護衛を派遣しないというわけにはいかないのでしょう? 煩わしいことに、人の世には体裁というものがありますからねぇ」
「そ、それは……」
国の最重要人物であるリアに国から護衛が派遣されていないとなると、同じ国の人間はもちろん、周辺国が煩く言ってくるのだろう。
しかし、ヒューリーの様子からして、今後、人の護衛は絶対に認めないでしょうね。
「そこで提案しましょう。私を近衛騎士に所属したままリアの側に置くつもりはありますか? もちろん、あなた達には私が精霊であることは黙っていてもらって、ですね」
「「「!!」」」
私のことが精霊だとバレていないのなら、私を騎士として派遣することは可能でしょう。
そうすれば、国としての体裁が整えられる。
この提案はそちらちとって好都合なはずです。
「よ、よろしいのですか?」
「ええ、構いませんよ。私のほうから提案しているのですから」
まあ、精霊除けを遣われた場合には対処できませんが、それは別に対策をすればいい話ですからね。
どうとでもなるでしょう。
「では、決まりでいいですね」
「よろしくお願いします」
さて、用も済みましたし、さっそくリアのもとに行くことにしましょうか。
一国の騎士団に所属して、人間に紛れて生活をしているだなんて、精霊からすれば相当な奇行な行為なのだから仕方がない。
だが、それもこれも、私が昔、契約していた主の影響が大きい。
私の主はとても変わり者だった。
面白いことが大好きで、人生を面白おかしく過ごせるためだったら、どんな努力でも行う男だった。
その努力を別のことに使えば、誰もが認める人物になれただろうに。
私が騎士として過ごすことを覚えたのも、彼が言い出したのがきっかけだ。
言い出すだけならまだしも、彼は実行するだけの地位と行動力を持ち合わせていた。
そういうことに全力を注ぐ、そういう男だったからこそ目が離せなかったのだろう。
主が亡くなった後も、私は何となく騎士に紛れて時を過ごしていた。
その時、顔見知りの風の精霊がやって来た。
自由気ままだった彼が人間と契約したことにも驚いたが、私もその契約者と契約を交わさないかと勧誘に来たことに驚いた。
とりあえず、会ってみることにした。
自由気ままな彼が契約した人間に会ってみたかったからだ。
契約者は、ヴィクトリアという名前の可愛い女の子だった。
ヴィクトリア――リアの第一印象は〝素直そうな子〟だった。
彼女は既に三人の精霊と契約を交わしていて、それも全員が上級精霊だった。
かなり珍しいことをしているのに驕った感じはなかった。
普通なら人間が精霊に執着するものだが、リアはそんな感じは全くなく、逆に精霊達のほうがこれでもかと執着していた。
見ていて面白い子だった。
そして、この子も目が離せなかった。
だからこそ、私は二度目の契約をすることにした。
「さて、今後について少し話しましょうか」
リアが部屋から出ていくと、私はこの国の王、リアの父親、そして騎士団長を見据えた。
「あなた達はリアに誰の目にも見える護衛をつけたいのではないですか? 精霊が側にいるとはいえ、姿が見えなければ少女が一人で出歩いていると勘違いされますからね」
「「「……」」」
戦力は充分でも、それが目に映っていなければリアが無防備だと思われてしまいます。
ちゃんとした護衛が付いている、そう周りに思わせたい。
カイルの役目は実際にリアを護ることだったのではなく、国から派遣された騎士が常に側にいると周りに牽制したかったのでしょう。
あとはまあ、精霊除けを遣われた場合、側に人がいるといないではリアの安全性が大幅に変わってくる。
そんなにたびたび起こってもらっては困りますが、リアは確か以前にそうやって誘拐されていると噂で聞いた。
ですから、保険は掛けておきたいのでしょう。
だけど――
「私が来る前に何があったのかは知りませんが、状況を見る限りカイルが何かをして、リア、もしくは契約精霊の勘気に触れたのでしょう?」
「「「っ!」」」
図星を指されたようで、息を呑む三人の姿に笑いが込み上げてくる。
様子からして、緑の精霊――確か……ヒューリーと呼ばれていましたね。
きっと、彼の勘気に触れたのでしょう。
風の精霊は私がここに来る少し前に契約したようですし、光の精霊はどちらかといえばリアを喜ばせることに力を注いでいましたからね。
「ですが、契約精霊が二人増えたとしても、このまま国から護衛を派遣しないというわけにはいかないのでしょう? 煩わしいことに、人の世には体裁というものがありますからねぇ」
「そ、それは……」
国の最重要人物であるリアに国から護衛が派遣されていないとなると、同じ国の人間はもちろん、周辺国が煩く言ってくるのだろう。
しかし、ヒューリーの様子からして、今後、人の護衛は絶対に認めないでしょうね。
「そこで提案しましょう。私を近衛騎士に所属したままリアの側に置くつもりはありますか? もちろん、あなた達には私が精霊であることは黙っていてもらって、ですね」
「「「!!」」」
私のことが精霊だとバレていないのなら、私を騎士として派遣することは可能でしょう。
そうすれば、国としての体裁が整えられる。
この提案はそちらちとって好都合なはずです。
「よ、よろしいのですか?」
「ええ、構いませんよ。私のほうから提案しているのですから」
まあ、精霊除けを遣われた場合には対処できませんが、それは別に対策をすればいい話ですからね。
どうとでもなるでしょう。
「では、決まりでいいですね」
「よろしくお願いします」
さて、用も済みましたし、さっそくリアのもとに行くことにしましょうか。
36
お気に入りに追加
3,717
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】その令嬢は号泣しただけ~泣き虫令嬢に悪役は無理でした~
春風由実
恋愛
お城の庭園で大泣きしてしまった十二歳の私。
かつての記憶を取り戻し、自分が物語の序盤で早々に退場する悪しき公爵令嬢であることを思い出します。
私は目立たず密やかに穏やかに、そして出来るだけ長く生きたいのです。
それにこんなに泣き虫だから、王太子殿下の婚約者だなんて重たい役目は無理、無理、無理。
だから早々に逃げ出そうと決めていたのに。
どうして目の前にこの方が座っているのでしょうか?
※本編十七話、番外編四話の短いお話です。
※こちらはさっと完結します。(2022.11.8完結)
※カクヨムにも掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~
Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。
走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
義妹のせいで、婚約した相手に会う前にすっかり嫌われて婚約が白紙になったのになぜか私のことを探し回っていたようです
珠宮さくら
恋愛
サヴァスティンカ・メテリアは、ルーニア国の伯爵家に生まれた。母を亡くし、父は何を思ったのか再婚した。その再婚相手の連れ子は、義母と一緒で酷かった。いや、義母よりうんと酷かったかも知れない。
そんな義母と義妹によって、せっかく伯爵家に婿入りしてくれることになった子息に会う前にサヴァスティンカは嫌われることになり、婚約も白紙になってしまうのだが、義妹はその子息の兄と婚約することになったようで、義母と一緒になって大喜びしていた
。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
気絶した婚約者を置き去りにする男の踏み台になんてならない!
ひづき
恋愛
ヒロインにタックルされて気絶した。しかも婚約者は気絶した私を放置してヒロインと共に去りやがった。
え、コイツらを幸せにする為に私が悪役令嬢!?やってられるか!!
それより気絶した私を運んでくれた恩人は誰だろう?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる