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しおりを挟む実のところアメリーは、部下たちが噂する程には”カタブツ”ではなかった。
奔放という訳ではないが、適度に息抜きはしている。
職場に悟られるようなヘマはしないというだけで。
恋人のいた時期はもちろん浮気などしないが。
結婚は夢のまた夢、というのを逆手にとって貞節はあまり重く考えていない。
(それなら、頑なに断る事もないのかしら…?でも直接的な誘い文句を言われた訳ではないし…)
口元に手を当て、フムと考え込んでいるアメリーに、セドリックは更に声をかける。
「アメリー嬢、こ、今度の休みはいつですか?ご予定は…?」
「休み…は少し先になります、が夜は空けられますよ?」
セドリックのかしこまった誘い文句がまどろっこしくて、アメリーは自分からまたしてもツラっと誘ってしまう。
(あ、しまった…あからさまだった…?でも夜だけの関係の人に休みを丸々潰されるのはちょっと…)
アメリーのドライさが爆発していた。
「よ、夜ですか?…それは…」
セドリックのあまりに戸惑った態度に、おや?読み間違えたか?とアメリーも慌てた。
(もしかして男爵令嬢にコナかけられて困っている騎士様の図になってる?)
慌てて夜の顔を仕舞って、職務中の顔を作る。
「勘違いでしたら、すみませんでした。何か私の休日に御用でしたか?上役の方に問われましたか?」
アメリーの表情が突然隙の無い侍女の顔となり、セドリックは更に焦る。
せっかく、素のアメリー嬢と話せたのに…!と。
「かん、ちがい、ではないです。でも突然夜にお会いするのは、失礼では…」
「あら、お互いいい齢ですもの、咎められる事はないと思いますが…?」
確かセドリックは、アメリーの2歳年上だったと思う。
「あ、ただご婚約者がいらっしゃる、や恋人がいらっしゃる上でのお誘いは勘弁して頂きたいですね。」
にっこり笑顔で拒否するアメリーに、セドリックはもうタジタジとなっている。
「…そんな、不誠実な真似をする筈がないでしょう。…本当に夜に…?」
「セドリック様のような方ばかりではないので、確認しておかないと。…えぇ、今夜になさいますか?」
「アメリー嬢…」
戸惑いつつも陶然とした表情のセドリックに、アメリーは今まで感じた事のない感覚を味わっていた。
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