【完結】死に戻り伯爵の妻への懺悔

日比木 陽

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番外編ーside セレスティアー

砂上の②

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「驚きました?…実は寝台で驚かせようと待っていたんですが、お疲れの様子で湯殿へ向かわれたので…」


そう言った私の腕に、何か暖かい雫が落ちて来た。
濡れるような事はまだ何もしていない、汗をかいている様子もない。


(…泣いてらっしゃるの?どうしたの?)


話を聞こうにも、脱ぎかけでずっと居ると体調を崩してしまうかもしれない。


「ウィル…?さあお風邪を召されますよ。湯殿へ入って…?」
「はなれ、たくない」


促す私に、こんなに可愛らしい我侭をいうウィル様に少しだけ力が抜ける。
愛おしい…。私は自らの夜着を脱いだ。

「では一緒に入りましょう」

そうすれば離れなくて済む。
振り返ったウィル様が目を見開いている。

(…はしたなかったかしら…)

「……きれいだ」

なんて、面と向かって澄んだ子どもの様な目で見つめてくる。
もっと口説き文句の様に仰ってくださったことは多々あれど、こんなに感性のまま口から出た、というような口調は初めてで、面食らう。


「ふふ、まだお腹も戻り切っていませんのに…」


なんて軽口を叩きながら、ふたり湯殿へと浸かる。


あなたに何度だって、嬉しくて浮かび上がりそうな気持ちにさせてもらえるなんて、想像もしてなかった。
今だってそう、その筈なのに…どうして?


夫の身体を洗って…初めて性交時以外に性器に触れて…戸惑ったけれど楽しい。

(――でも、どうしていつものように、私を真っすぐ見てくださらないの?)




◇◆◇◆



貴方と並んで寝台へと横たわる。


…いつもの優しい雰囲気が流れていて、私への愛も疑いようがないほどの眼差し…。
そう思っているくせにザワリザワリと私の中が落ち着かない。

眠れそうもない気持ちを抱えながら、貴方の肩にに寄り添っている。

「…セレスティア…、君と出会えて、僕は本当に嬉しい。僕の人生にこんなにも幸せをくれて、ありがとう」

―――言葉の意味を考えることを頭が拒否する。

(どうして、そんな……お別れの口上のようなことを仰るの…)







…それからは、頭が真っ白になって、自分が何を言ったのか、あまり覚えていない。


覚えているのは、駄々をこねる様に無理やり貴方の上に乗り上げて、身体を繋げようとしたこと。
結局、暫く触れ合っていたらいつものように激しく抱いてくださったけれど…。


(…有り得ないわ…、旦那様……きっと呆れている…)


翌日の馬車の中、無言の私たちが物語っている気がして。


でも、どうしても。
考えたくないことばかりが浮かんでくる。


――頭に浮かぶことから目を反らすように、流れる景色を必死に見ていた。

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