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死に戻り編
母の凶行②
しおりを挟む母の剣幕にかなり戸惑って、セレスティアはすぐには言い返せずに居る。
「…母上、あなたがそれを言うのですか?」
母の言いたいらしい事が分かって、呆れかえって足を速めてセレスティアの隣に立つ。
「ウィリアム…!なにを…」
少し怯んだ母が、僕に迷った目を向ける。
「母上?貴方が父上にその様な自由を与えていた様には全く見えませんでしたが?むしろその逆だった様に思いますが?…ご自分で出来もしなかったことをセレスティアに強要するのはどうしてですか?」
母は確かに凄い剣幕で怒鳴るかのように声を張っているが、どこかおかしい。
慣れている僕は元より、セレスティアも傷ついたというよりは、戸惑って母を見ている。
元々過干渉で口うるさいが、ここまで道理に反することを大声で言う様なこともなかったからだ。
「父も僕と同じで、外の女に一切の興味もなく、家で妻と笑い合うことの方が大切な男だったように思いますが…?」
「そんなこと!あるはずがないわ!」
母は確かに怒鳴っている。でもどうして泣きそうな顔をしているのだろう。
「お義母様…?」
セレスティアは気遣わしげに、母を見つめる。
「…してもらわなければならないの!セレスティアさんには!」
「母上…!」
「そうしないとウィリアムも亡くしてしまう…!」
「は、あ…!?」
もう理解が追いつかない僕は、素っ頓狂な声を上げてしまう。
母は呆けてしまったのだろうか?…いや以前は、ひ孫の面倒まで見ていたのに…?
「…お義母様は、ご自分のせいでお義父様が亡くなられたと思っておられるのではないですか…?」
目を白黒させる僕に、セレスティアが小さな声で告げた。
「…!?それこそあり得ないでしょう!父上は運悪く視察先の流行り病が重症化したのですよ。母上が原因の筈がないでしょう…!?」
僕は思わず大きな声で反論した。
何だか目の前の母が小さく見えて、諭すような口調になってしまう。
「ちがう…私が、私があの人に息抜きも許さなかったから!…あの人は疲れ切って病にかかったの…!私がもっと自由にさせてあげられていたら…!」
ついに涙を流して悲鳴の様な声を上げる母があまりにも弱弱しい。
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