令嬢は故郷を愛さない

そうみ

文字の大きさ
上 下
19 / 31

18

しおりを挟む
 チャットが切れた途端、シュンの気持ちも切り替わった。
 いつもはチップやアヤネに進行を任せ、自分は陰ながらそれを支えることを選択している。先頭に立って人を引っ張るよりも、そういう役割が好きだからだ。
 なので、回避盾をメインに役割を請け負っているが、中衛職の支援プレイヤーという意識の方が合っているのかもしれない。
 しかし、今はひとりぼっちである。
 支援するべき相手がいない以上、ひとりで解決していかなければならない。
「チャットがつながってたら、『誰が一番早く出られるか競争な!』って、絶対チップが言い出してるよな。今回だったら、ユキチちゃんの方が先かな?」
 近くにいないパーティメンバー達の顔を思い出し、クスリと笑みを浮かべる。

 シュンが最初に行ったことは、ザッと部屋全体を見回すこと。そして、すぐに行動に移る。
「ま、最初は、これ見よがしに置いてあるコレからだろうね」
 自分が立っていた正面には部屋の出口が、そして、背後には机が置かれていた。
 机の上には小さな宝箱が置かれ、ダイヤル式のカギがかけられており、宝箱の近くには大きめの封筒も置かれている。
 シュンは封筒を手に取ると、中を確認する。
「えーと? クロスワードパズルと指令書が3枚、宝箱の開け方1枚か。良かった。さすがにこっちの世界の文字だったら、ハルマ君がいないと無理だったかも。これならボクでもいける」
 取り出した書類を確認すると、やるべきことが記されていた。
 ヒントを手がかりに部屋の中に散らばる数字を見つけ出し、ダイヤル式のカギを開けること。そして、宝箱の中にある、この部屋から出るためのカギを入手することまでが第1関門であるらしい。
 クロスワードパズルに目を通す。どうやら、一般知識3割、Greenhorn-onlineの知識7割といった感じだ。
 続いて、3枚の指令書にも目を通す。こちらは、知識よりも直感型の謎解き問題のようである。
「うーん。こういう直感型は、チップとかアヤネの方が得意なんだよなあ」
 それでも、彼は学年トップクラスの成績の持ち主であり、発想力も柔軟性を持っている。テキパキと謎を解き進め、25分ほどで3つの数字を見つけることに成功していた。
「ふー。こんなところに隠してあったのか……。これで、赤、青、黄色のボールに書かれた数字が見つかった」
 最初の封筒に入っていた1枚と一緒に、3つのボールを机の上に置く。
「順番は指定されてない、か。ま、3つだけだから、組み合わせは総当たりでもすぐに見つかるだろうけど……」
 シュンはダイヤル式のカギを回し、青、黄、赤の順に数字をそろえると、両手で左右に引っ張ってみる。
「ん、やっぱり! この色合いからして、信号の3色だと思ったんだよね」
 するりと手応えなく外れたカギは、役目を終えたのか宙に溶けて消えてしまった。そのことにさほど驚くこともなく、シュンは宝箱の中からカギを取り出すことに成功していた。
 取り出したカギを持って、即座に部屋の扉に向かう。
 カギ穴に差し込みカチリと回すと、第1関門突破となった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】騙された? 貴方の仰る通りにしただけですが

ユユ
恋愛
10歳の時に婚約した彼は 今 更私に婚約破棄を告げる。 ふ〜ん。 いいわ。破棄ね。 喜んで破棄を受け入れる令嬢は 本来の姿を取り戻す。 * 作り話です。 * 完結済みの作品を一話ずつ掲載します。 * 暇つぶしにどうぞ。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

【完結】円満婚約解消

里音
恋愛
「気になる人ができた。このまま婚約を続けるのは君にも彼女にも失礼だ。だから婚約を解消したい。 まず、君に話をしてから両家の親達に話そうと思う」 「はい。きちんとお話ししてくださってありがとうございます。 両家へは貴方からお話しくださいませ。私は決定に従います」 第二王子のロベルトとその婚約者ソフィーリアの婚約解消と解消後の話。 ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 主人公の女性目線はほぼなく周囲の話だけです。番外編も本当に必要だったのか今でも悩んでます。 コメントなど返事は出来ないかもしれませんが、全て読ませていただきます。

元妻からの手紙

きんのたまご
恋愛
家族との幸せな日常を過ごす私にある日別れた元妻から一通の手紙が届く。

裏切られた令嬢は死を選んだ。そして……

希猫 ゆうみ
恋愛
スチュアート伯爵家の令嬢レーラは裏切られた。 幼馴染に婚約者を奪われたのだ。 レーラの17才の誕生日に、二人はキスをして、そして言った。 「一度きりの人生だから、本当に愛せる人と結婚するよ」 「ごめんねレーラ。ロバートを愛してるの」 誕生日に婚約破棄されたレーラは絶望し、生きる事を諦めてしまう。 けれど死にきれず、再び目覚めた時、新しい人生が幕を開けた。 レーラに許しを請い、縋る裏切り者たち。 心を鎖し生きて行かざるを得ないレーラの前に、一人の求婚者が現れる。 強く気高く冷酷に。 裏切り者たちが落ちぶれていく様を眺めながら、レーラは愛と幸せを手に入れていく。 ☆完結しました。ありがとうございました!☆ (ホットランキング8位ありがとうございます!(9/10、19:30現在)) (ホットランキング1位~9位~2位ありがとうございます!(9/6~9)) (ホットランキング1位!?ありがとうございます!!(9/5、13:20現在)) (ホットランキング9位ありがとうございます!(9/4、18:30現在))

【完結】公爵令嬢は、婚約破棄をあっさり受け入れる

櫻井みこと
恋愛
突然、婚約破棄を言い渡された。 彼は社交辞令を真に受けて、自分が愛されていて、そのために私が必死に努力をしているのだと勘違いしていたらしい。 だから泣いて縋ると思っていたらしいですが、それはあり得ません。 私が王妃になるのは確定。その相手がたまたま、あなただった。それだけです。 またまた軽率に短編。 一話…マリエ視点 二話…婚約者視点 三話…子爵令嬢視点 四話…第二王子視点 五話…マリエ視点 六話…兄視点 ※全六話で完結しました。馬鹿すぎる王子にご注意ください。 スピンオフ始めました。 「追放された聖女が隣国の腹黒公爵を頼ったら、国がなくなってしまいました」連載中!

見捨てられたのは私

梅雨の人
恋愛
急に振り出した雨の中、目の前のお二人は急ぎ足でこちらを振り返ることもなくどんどん私から離れていきます。 ただ三人で、いいえ、二人と一人で歩いていただけでございました。 ぽつぽつと振り出した雨は勢いを増してきましたのに、あなたの妻である私は一人取り残されてもそこからしばらく動くことができないのはどうしてなのでしょうか。いつものこと、いつものことなのに、いつまでたっても惨めで悲しくなるのです。 何度悲しい思いをしても、それでもあなたをお慕いしてまいりましたが、さすがにもうあきらめようかと思っております。

わたくしは、すでに離婚を告げました。撤回は致しません

絹乃
恋愛
ユリアーナは夫である伯爵のブレフトから、完全に無視されていた。ブレフトの愛人であるメイドからの嫌がらせも、むしろメイドの肩を持つ始末だ。生来のセンスの良さから、ユリアーナには調度品や服の見立ての依頼がひっきりなしに来る。その収入すらも、ブレフトは奪おうとする。ユリアーナの上品さ、審美眼、それらが何よりも価値あるものだと愚かなブレフトは気づかない。伯爵家という檻に閉じ込められたユリアーナを救ったのは、幼なじみのレオンだった。ユリアーナに離婚を告げられたブレフトは、ようやく妻が素晴らしい女性であったと気づく。けれど、もう遅かった。

処理中です...