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三章〜二人で〜

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 渉が疲れたように俺の上に覆いかぶさってくるが、足のことを思い出したのか横に寝転がって来た。俺も相手に顔を向けるため、体勢を横にする。そして、少しだけやつれて青白い渉の額にキスをした。

 そのまま相手に抱きついて、腰を引き寄せる。珍しく俺が甘えてきたことに驚いて、俺の頭を抱きしめてきた。そして頭に顔を押しつけて、匂いを嗅いでくる。

「まだ、少しだけ汗臭いな」
「もっかい風呂入って寝ようぜ……眠い……」
「そうだね、後処理もあるし」
「……渉」
「ん?」
「好きだよ、お前のこと」
「何回いう気だよ」
「三週間溜めこんでたから、その分いってやらないとな。それに俺のために頑張ってくれた、ご褒美たくさんやるよ……」

 渉から少しだけ体を離して、相手の首筋を舐める。ご褒美という言葉に、目を見張っていた。

 相手の右手を握ってみればまた握り返してもらえる。そのことだけが嬉しく、つい声を出して笑ってしまった。渉も同様に微笑を浮かべる。

 彼が風呂に入ろうかといって、俺の手を引く。その手に惹かれて、浴室に向かう。繋いだ手から伝わる熱が心地よくて、風呂に入って抱き合いながら寝るときになっても離すことができなかった。

「起きたら三週間分甘えるから。それと、ご褒美……」
「わかってるよ」

 二人同時に目をつぶって俺は渉に、渉は俺にもたれかかりながら夢の世界に入る。寝る寸前に渉の手を握ると、おやすみとでもいうように握られた。

 夢の中でも会いたい。いつまでも、この温もりの傍にいたい。

 起きたら相手が隣にいる。それこそが幸福だと、夢の世界に身を投じた。

















 それから、起きて三週間分の愛やら性欲やらご褒美やらでセックス三昧したせいで、俺達が学校に登校したのは、体育祭が終わってから一週間後となった。
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