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三章〜願いを叶えて〜

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「……え?」
「その、だから……俺、ずっとお前と恋人同士になったら迷惑とか……そんなこと考えてて。でも、ようやく分かったていうか……あれだ、お前が笑ってる方がいいなぁって……それで、迷惑かもしんないけど、お前が好きで……お前の服着てて、今勃っちゃってるし……なんか、それほど好きで……でも、迷惑なら止めるから……」

 顔が火照って、自分が何を言っているかの整理がつかない。ただ心に溜まっていた感情を、愛しさを伝えたいと思った。それだけのために吐き出しながら、目じりに溢れそうになる水を引き止めた。泣いたら止まってしまう。その前に、いってしまいたい。渉への愛の言葉を。

「でも、今はすごい渉が好きだ!」

 いい終えると呼吸が激しくて、顔が熱い。正面から見つめてくれている。俺の予想ではおおっぴらに喜んで、抱きつくなりなんなりすると思っていた。しかし、渉は俺の言葉に対して「うん」とも「すん」とも言わない。やばい、やっぱり嫌いになった後だったのかと、俺の頬から涙が一筋流れ出した時。耳を凝らさなければ聴こえないほど、小さな声で何か囁いた。

「………………?」
「渉?」
「夢じゃないよね?」

 渉が掴んでいた手を握り返す。もう離さないというように、それはすがるように手の平を優しく包んだ。さらに流れる涙をぬぐうこともせず、頷き返す。その瞬間、彼の温もりが俺を包んだ。

 渉の顔が、すぐ顔の横にある。腕が背中にある。吐息が耳にかかる距離。心臓は、跳ねあがり加速する。しかし、力強さに抱きすくめられたのも束の間。耳に感じられていた唇が頬に触れ、唇に重ねられた。

 くぐもった声が漏れ、体が緊張のあまり固くなる。俺の唇をこじ開けようと、渉の濡れた舌が表面を撫でるが、俺はかたくなに許そうとしない。というか頭がこんがらがって、この展開についていかないのだ。

 以前に数回キスをされたことはあった。が、それは全て触れるだけの軽いキス。それがいきなりディープキスとか、階段をすっ飛ばし過ぎていると抗議したい。だが、渉の優しい拘束にあらがうことを本能が許さない。つまり、自分は快楽に流されているのだ。でも、なんか駄目……。

 そんな俺の心境を察したのか、一度身を引いた。夕方も終わりに近づき、明りのついていないこの教室にうっすらと浮かぶ渉の苦しそうな、それでいてにじみそうになる笑みを圧し込めているような瞳が、俺に聞いてくる。

「鳴海さん、ダメ……?」
「ダメ……じゃ……ないです……」
「なら、口開けて」

 すると渉の白い指が顎に添えられそっと下にひかれれば、俺の口が虚空を開く。自分から控えめに舌を差し出せば再度口を吸い、舌を絡めてきた。さきほどよりも何十倍も息苦しく何十倍も熱いのに、その何百倍も気持ち良くて背中に腕をまわしてすがる。

 渉の舌が俺のモノを絡め取り吸うたびに、腰が小さく反応をしめす。もう隠しても意味がないのに、なけなしの理性が腰を後ろに後退させようとする。だがその行為も腕によってホールドされて阻まれ、さらに渉自身の腰が当たると股間に相手の足が挟まれる。股間を確認するように、足ですってくる。結論としては、腰の逃げ道はなくなったのだ。
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