最後の仕事は見て行動を起こす事。

さんまぐ

文字の大きさ
上 下
9 / 12

第9話 怨みとダイヤモンド01/04。

しおりを挟む
ドルテをファミリアに迎えたサンスリーは、ドルテを鍛えるためにも荒事専門で仕事を受けていた。

サンスリーは唯一のルールとして、どうしようもない場合を除き、一つの街で受ける依頼は一つまで、一つの領地で受ける依頼は三つまでにしていた。

サンスリーが顔を顰めてしまうのは、このドルテが本格的に言う事を聞かずにサンスリーを困らせてしまう事で、「ドルテ、言う事を聞けないなら呼ばないぞ?」と注意するほどに酷かった。

そんなサンスリーの耳にはドルテの「えぇ!?いいじゃんゲイザー!アイツは倒されるべきだったヨォ」と言った言葉が聞こえてくる気がする。

最近は幻聴を疑わず、ドルテと話している気になっているサンスリーは、やれやれと言うが、確かにドルテの言い分もわかっていた。

今回依頼を受けたのは「街で有名な幼女・少女趣味の男の館付近で行方不明になった娘の捜索」と「幼女・少女趣味の男が子供達を殺している証拠を持ってくる事」だった。

十中八九犯人はこの幼女趣味、少女趣味の変態で、問題はその異常さを知りながら、あえて権力者が面白半分に援助をしている事で、サンスリーの見立てでは「ボロが出なければ援助をしてやる」という話で、変態が街の中で隠れて起こす犯罪を白日のもとに晒して、裁きを受けさせたいのだろう。

館に入り、むせ返る血の臭いを鼻に感じた時に、見立ては確信に変わり、館の中を見て男が画家だと分かった時に、援助の意味を理解した。

教育の一環として、各地の画家から絵画を習わされたサンスリーは、ひと目で「才能なし」と呟くと、「成程、無才だから援助か…。ここの権力者もロクでもない」と言いながら、館の中を回ると、地下室で画家が殺したばかりの幼女を前にしながら全裸で絵を描いていた。

怒りは沸く。
だがそれだけだった。

早く制圧をして、証拠を持って帰ろうとした時に、ドルテの「穴にした!許さない!」が聞こえてきた気がして、光と共にドルテが現れると、超加速で画家をズタズタにして、絵筆を持つ左腕は原型を留めていないほどだった。

一瞬の事でサンスリーが制止し遅れた。
サンスリーが「戻れドルテ!」と注意をしてから、幼女や少女の遺体と共に男の身柄を街の人間に渡した。

その後のことはわからない。
わかることといえば、権力者は画家の才能に期待してしまっただけだと言い、即座に断罪を約束して画家を切り捨てる。

画家は絵筆を持てる腕と後ろ盾を失い、責苦の果てに無惨な死が待つだろう。

そして遺族の元には子供達の命が消える瞬間を、下手くそな花火のような色とりどりの絵の具をキャンパスにぶつけただけの絵を渡される。

恐らくタイトルは「命の輝き」かなんかだろう。
様々な画家から絵を習ったサンスリーには、タイトルもコンセプトもわかってしまう。

最後の子供からは、微量だが独特な匂いがした。アレは非合法の禁止薬物を作った時に出る、あまりカスの匂いで、味も酷ければ効果も薄い。それなのにすぐに脳が焼き切れ、心臓が破裂する。

すぐに殺したい相手をオーバードーズさせるには最適なのだろう。

砂糖菓子が置いてあった。
平民には滅多に口にできない砂糖菓子を、食べさせてやると言われてついて行った少女は、食べるだけで未知の性的興奮まで覚えてしまう。そんな砂糖菓子に困惑したが、手を止めたくても止まらない。
たとえ止まっても画家の男に強要されて、幼い命はすぐに消えてしまう。

男は全裸で性的興奮の中、あの汚い絵を描く。

そして、出来た絵のクオリティを見て後悔する。奪ってしまった命への罪悪感を胸に、また絵筆を持つが子供の命抜きではキャンパスに筆は届かない。

認めたくない無才さを誤魔化す為に、男は再び少女や幼女を狙うだろう。
ずっとそれの繰り返しだったのだろう。


サンスリーは報酬を受け取ると街を離れる。
ドルテには「厄介ごとはごめんだ。言う事を聞けないならレンズを鍛えるからな」と釘をを刺していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜

むらくも航
ファンタジー
ド田舎の村で育った『エアル』は、この日旅立つ。 幼少の頃、おじいちゃんから聞いた話に憧れ、大都会で立派な『探索者』になりたいと思ったからだ。 そんなエアルがこれまでにしてきたことは、たった一つ。 故郷にあるダンジョンで体を動かしてきたことだ。 自然と共に生き、魔物たちとも触れ合ってきた。 だが、エアルは知らない。 ただの“遊び場”と化していたダンジョンは、攻略不可能のSSSランクであることを。 遊び相手たちは、全て最低でもAランクオーバーの凶暴な魔物たちであることを。 これは、故郷のダンジョンで力をつけすぎた少年エアルが、大都会で無自覚に無双し、羽ばたいていく物語──。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

処理中です...