上 下
7 / 12

第7話 家族と領地戦04/05。

しおりを挟む
ようやくドルテが満足をして、サンスリーの腕の中で微睡む中、ドルテが「少し知りたい。ファミリアの事を教えて?何人いるの?」と聞いてきた。

「7人だな」
「ねぇ、レンズってどんな人だったの?」
「レンズは7人の中では最後にファミリアになった。だから今は鍛えている。元々は戦闘奴隷で幼い時から一緒にいたんだ」

「そっか、じゃあラヴァは?」

聞かれると思っていた。
どうしてもサンスリーは残りのファミリアの中では、1番古参のラヴァをよく使う。
それは信頼感も何もかもが群を抜いている。

「ラヴァ…か、ラヴァはウチのメイドだった。初めてウチに来たのは、9つの時だったな。俺と歳が同じだからと親が雇っていた」

「ゲイザーは権力者の子供なの?」
「ああ、3番目の子供だ。1番目ではないから、衣食住は保証されていた…いや、様々な経験をさせられたから、手足が伸び切ると飲まず食わずの日々を味わうように言われて、苦しんだこともあったな」

「どんな子供だったの?」
「実験動物だな。勉強、戦い、生きる為の知識、全てを叩き込まれた。魔法もその一つだ」

話が広がりすぎてそれ始めた事にドルテが「あ、ラヴァのことを聞いてたんだった」と言うと、サンスリーが「そうだったな」と言うと「ラヴァは同い年の女の子だったよ。多分、最初から俺のファミリアにする為に身柄を買ったんだろうな」と言った。

今思っても、あの親は徹底していた。
ラヴァは世話人として、朝から晩までサンスリーと共にいた。
見た目も…、親子だからわかりやすかったのだろう。ラヴァは茶色のロングヘアに笑顔がよく似合う少女だった。

父からは「とりあえず数年は、サンスリーの身の回りの世話をしろ。敬う必要はない。アイツには友が少ない。友になるんだ」とラヴァは言われていた。
ラヴァは他の使用人よりも休憩が長くて、よく「サンスリーと食べろって」と言いながら、おやつを持ってきたりして、2人の時間が多かった。

大まかな勉強が終わり、魔法も一通り身につけて、本格的に戦闘奴隷と共に、戦闘訓練を受ける頃、ラヴァは風俗室送りになった。

これはサンスリーにも耐え難い事で、連れて行かれるラヴァを血の涙で見送った。
父は、すぐに狂っていると評判の男を招き入れた。
その男は、権力者崩れの資産家で、家督を告げなかった代わりに温情で金山を貰っていて、金ならある。実質今のサンスリーに近い状況で、違うのはいつ奪われるかわからない自由を満喫する為に、1秒すら惜しんでいた事だった。

資産家は、さして欲しくない宝石を、父の言い値で買う。
買った物は宝石なんかではない。ラヴァの生殺与奪を買ったから宝石が付いてきた。

ラヴァは一晩で壊された。
禁止薬物をコレでもかと投与され、オーバードーズと酷い中毒で、現実世界にはもう戻って来れなくなっていた。

眠れぬ夜を過ごし、気持ちの悪い朝を迎えたサンスリーは、男が揚々と宝石を持って帰った直後、突然壊れたラヴァを目の前に出されて「今殺すか、死ぬまでこのまま風俗室で使い潰すか、お前に選ばせてやる」と父に言われた。

自分が殺すという事は、覚えたファミリアの魔法に該当する。
心は通じていたと思えていた。
2人でこっそりと、このまま一緒にいたいと話して、見つめ合い頬を染め合った。

それを知った上で、ラヴァと自分を追い込んだ父が憎かった。

ラヴァは全裸にシーツ一枚をかけられただけで、身体は震え続けていて、目は虚で焦点は合っていない。口からはよだれが垂れていて、顔は限度を超えた快感でだらしなく緩み崩れていた。

それでもサンスリーの方を見て、「サンスリー…」、「汚れちゃった…」、「お嫁さん…」、「なりたかった…」、「ずっと一緒…」とうわ言のように言い続けていた。

「安心しろ、世話人ならまた用意してやる。薬で壊れた奴を好む者もいる。生かしても使い道ならある」

父の言葉にサンスリーは心を決めて、「ラヴァ、ずっと一緒だ」と言いながら胸に剣を突き立ててラヴァを殺した。

こうしてファミリアのラヴァを獲ると、サンスリーは闘犬として、各地の権力者が持つ腕自慢と戦わされ続けた。

殺した。
殺し続けた。
自身の力が足りずに、ラヴァの手を借りるたびに、ラヴァの全てが思い出されてしまい、狂いたくなった。

ラヴァを殺した重みに耐えられそうになると、今度は屋敷にいてサンスリーに懇意に接してくれていた者達5人を殺させられた。
当然5人もファミリアになってしまった。


ドルテには伝えられるだけ伝えると、涙ながらに「何だよそれ。権力者の息子だってそんな目に遭うのかよ。辛すぎるじゃんかよ。ゲイザー、話してくれてありがとう。抱いてくれてありがとう」と言ってサンスリーに抱きついてきたので、「もう寝ろ。朝になる」と言ってドルテを眠らせた。

最終日までサンスリーとドルテはテントから出なかった。

サンスリーは迎撃と殲滅をレンズとラヴァに任せて、求められただけドルテを抱いていた。
ドルテはサンスリーの虜になっていて、「ゲイザー、ゲイザー」と何度も偽名を呼び、「死ぬまでずっといて」と言い続けていた。

「ほら、4日経った。終わりだ」と言ってテントを出ると、戦闘は終わったと言われ、サンスリーは給金を渡されて追い出された。

理由は簡単だった。
勝ったのは自称兄でも、後から生まれた方の男だったし、剣も兵士も二流以下しか手に入れられない愚鈍な男で、勝てた今から領主になった時のことを考えて、そろばんを弾いたら金が足らないことに気づき、さっさとサンスリーを追い出してしまう。

これに冷静でいられないのはドルテで、泣いて嫌がったが立場からすれば仕方ない。

「いいな?2度と使うな。また来る」
「本当?ゲイザー?これでサヨナラはやだよ」
「わかってる」

サンスリーはドルテの頬を撫でてから出ていき、「口から出まかせだな」と自嘲する。

迎えに行くなんてありえない。
サンスリーの【自由行使権】があっても、ドルテの身請けは出来ない。
金で買うのも良くない。
足元を見られて、何を言われるかわからない。

だが何処かで父の言った「お前は自由だ」の言葉が頭に棲みつく。
自由ならドルテを連れ去る事も、ここの領主と事を構えて潰す事も可能だった。

不可能な事はない。

武力制圧も、ここの連中なら本気を出せば、2時間もあれば可能だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

悪役令嬢にざまぁされた王子のその後

柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。 その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。 そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。 マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。 人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

処理中です...